まさかこんな話だなんて思いもしなかった。あまりにショッキングな話しに横島は騒ぎ立てることしかできなかった。
Legend of Devil vol.1 opportunity その2
転移した横島は妙神山修行場の入り口にいた。
《おおぉ横島ではないか!》
背中越しに声をかけられた。声の主は勿論妙神山修行場門番の鬼門の2人(2体?)である。
「やぁ久しぶりやなぁ鬼門のおっさん達。 呼び出されたんやけど小竜姫様は中に居るんかぁ?」
横島は上機嫌で鬼門達に話しかける。ついつい関西弁が出てしまうくらいに舞い上がっていたのだ。
《おおぉ中にいらっしゃるぞ! ヒャクメ様やジーク達も来て居るぞ》
横島は少し驚いた。神族のヒャクメはまだしもアシュタロス戦役関係の魔族まで来ているとは聞いていなかったからだ。しかし予想はできていた。ルシオラのことはアシュタロス戦役に関係した人間(神族魔族含む)ならみんな知っていることだ、ヒャクメやジークも情報を集めてくれると言っていたし居てもおかしくない。
そんな考えを巡らしていた間に門が開いた。出迎えたのは勿論パピリオと小竜姫だった。
「ヨコチマー!!!逢いたかったでちゅよー!!」
パピリオが横島に飛びついてきた。しかし、2年経っても言葉遣いは幼児言葉のままだ。
(成長してるんかなぁ?)
後頭部に大きな汗を出しながらパピリオを受け止める横島に小竜姫が口を開いた。
「横島さん良く来てくれました。 さ、中に入ってください。 お話しはそれからと言うことで」
「は、はい!」
誘導されるまま小竜姫に付いていくと談話室のような部屋に通された。中では斉天大聖を始めヒャクメ、ワルキューレそしてジークが真剣な表情で待っていた。そして何故か雪之丞も居る。その雰囲気にたじろいながらも部屋に入り空いている席に着いた。移動の間もパピリオは横島の腕にしがみつき離れようとはしなかった、あくまで余談だが。
「なんで雪之丞まで居るんスか?」
当然の疑問に小竜姫が答える。
「いえ、お引き取り願おうと思ったのですが横島さんの事なら俺にも聞かせろと騒ぐものですから」
「俺は横島のダチだぜ! 聞いたって良いじゃねえか!」
当然という感じで雪之丞が胸を張る。
「口外もしないと言うのでいっそのこと協力してもらおうと思いまして」
「協力?」
訳が分からないと感じ横島の頭には?が多数浮かんでいる。この3人が話している間沈黙を保っていた他のメンバー、その沈黙を破ったのは斉天大聖だった。
「横島よ」
「はい?」
「単刀直入に聞く、おぬし魔族になる覚悟はできておるか?」
「は〜?」
「ろ、老師!!」
突然の訳の分からない言葉に素っ頓狂な声を出す横島。斉天大聖の言葉に驚き粛正をかけようとする小竜姫。
「いずれ解ることじゃ、それにその為に呼んだのじゃろ?」
「で、ですが」
横島は2人のやり取りにこれまでの経緯と言葉の意味を掛け合わせていく。
(ルシオラと俺について・・・・・・・・・魔族になる? ルシオラの復活・・・・・・・・・ルシオラ、魔族・・・・・・・・・もしかして俺がルシオラになっちまうんじゃないだろうな?)
俯いたままの横島の考えを否定したのはヒャクメだった。
「違うのね〜。 今貴方の身体では魔族化が進んでいるのね〜。 でもこのままで行くと貴方の人格もルシオラの霊気構造も消えてしまうの」
「ど、どういう事だよ!!!?」
ヒャクメの言葉に驚愕し、立ち上がりながら叫ぶ。それに応じたのはジークだった。
「今横島さんの身体では貴方の霊気構造がルシオラの霊気構造と融合を始め、あなた方とは全く違う霊気構造が出来上がろうとしています。 そして分かったのは”それ”が魔族であること。 次第に”それ”は貴方の身体を蝕み魔族化するということ。 そして魔族化は早ければ3年以内と言うことです」
その場にいた全員の表情が暗くなる。雪之丞にしても事の重大さに険しい顔つきになっている。また、この部屋に入ってからパピリオが一言も喋っていない、重大な話しを遮らないためである。この程度の成長はしているみたいだった。
「つまり3年後には俺が死ぬってこと?」
横島の言葉に誰も反応しない。
「・・・・・・・・・いややぁ〜!! キレイなねーちゃんとの経験も無しに死ぬのはイヤじゃ〜!!!」
その場にいた全員がずっ転けた。予想はしたのだ。イヤ予想していただけに予想と全く同じ行動をとる横島に呆れてしまったのだ。
「落ち着け横島」
ワルキューレが横島を制止しようとしたが横島は聞こえないのか、部屋中を駆けずり回っている。何度か同じ言葉をかけるが全く聞こえないようだった。次第にワルキューレの額には血管が浮かび上がる。
「落ち着けと言うのが分からんかー!!!」
そういうとワルキューレは横島に対し銃を乱射した。
「ね、姉さん落ち着いて」
ジークの制止に我を取り戻したワルキューレは取り乱したことに謝罪した。横島はというと静かになったものの殆ど瀕死状態だった。それでもすぐに立ち直るのがさすが横島である。
「やっぱ俺死ぬんスか?」
横島の問いはその場にいた全員に向けられた。
「いえ、そうならない為の話し合いです」
「じゃぁ何か方法があるんスね?」
小竜姫の言葉に横島が食い入る。全員が頷くと横島の顔が見る見るうちに輝いていく。まるで人生バラ色といった感じである。
「ふむ、肉体の魔族化は最早免れ得ぬ、しかし精神は別じゃ。 霊気構造の融合が始まってしまってはいるがいきなり人格が消えるわけではない。寧ろ押さえ込むことが出来るやも知れぬ。 しかしそれには御主の精神力と霊力の向上が必須じゃ! つまり力で押さえ込むしか手はないという事じゃ。 ま、成功すればルシオラとやらの霊気構造も確保できるはずじゃ。 巧くいけばその娘も復活できるかもしれんぞ?」
斉天大聖の言葉に多少のショックはあった。身体の魔族化のことだ。しかし前に誰かから言われたことがある。【人間の魂はもろい、そう簡単にくっつけたりちぎったりは出来ない】と。
(でももし魔族なら・・・・・・・・・復活できる!)
「そうなのね〜。 可能性はあるのね〜」
またもや横島の考えを読んだヒャクメが答えた。
「そこで横島さんには修行をしてもらいます」
「なるほどそれで俺の出番となるわけだ」
小竜姫の言葉に雪之丞が続いた。
続く