Legend of Devil vol.1 Opportunity その1
「美神さん・・・・・・ちょっと話したいことが」
「何? 昇給の相談? 良いわよ最近のアンタ使えるようになってきたし」
横島の言葉に対しいつものことだからと安易に給料のことだと考えた美神はそう言った。実際月に一度給料日になると毎回のように昇給の談判に来るのだ。しかしこの日は給料日まであと5日、いつもより早いが横島の話に給料以外のことが無いと考えた美神は相談に乗ることにした。
更についさっき5億の仕事の依頼が入ったばかりだ。美神の浮かれようは誰の目から見ても明らかだった。こんな時でなければどんなに昇給を願っても1円すら上げてはくれない。
「・・・・・・・・・俺、独立します」
「「「!!!!?」」」
出社した横島にお茶を煎れようと部屋から出ようとしていたおキヌ、ソファーに横になり女性週刊誌を読んでいたタマモそして美神との話が終わったら横島と散歩に行こうと思って待っていたいたシロ、この3人は驚愕し横島に視線を向けた。
「独立ね、それじゃこの書類に・・・・・・・・・ってはぁ!!!?」
仕事の依頼に浮かれていた美神も横島の言葉に驚いた。流されるように出そうとした書類をまた引き出しにしまい机を叩きながら立ち上がり横島を問いつめる。
「ちょっと横島くんどうゆう事よ!!?」
困惑する美神に対し横島は平然としたままそれでいて瞳の奥には決意の光を宿して、頭を掻きながら答えた。
「そのぉ俺も高校卒業して1年経ちますし、そろそろ将来のことも考えていかないといけないんで・・・・・・・・・小竜姫様や隊長にもその方が良いとも言われたので事務所の方も何とか、小竜姫様が手を回したとか何とか言ってましてけど。それに雪之丞も手伝ってくれます」
美神は呆気にとられた意識を戻し、がむしゃらに受話器を取って美智恵に電話した。
『あら令子どうしたの?』
「どうしたじゃないわよ!! ママ一体どういう事よ!!?」
美神は気に入らないと言わんばかりに叫び倒す。しかし美智恵は当たり前のように返事を返してきた。
『横島くんの事? あれだけの逸材だもの事務所を構えるくらい当たり前でしょ? あんな薄給で雇ってるアンタの方がおかしいのよ。そんなに離れたくないんだったらもっと早く素直になれば良かったのに、今からでも素直になれば?』
カチャ、ツー、ツー、ツー
美智恵はそれだけ言って電話を切ってしまった。この後の美神の言い訳など聞こうとすらしていないようだった。実際聞くつもりもないのだが。
「ちょ、ちょっとなんなのよ! あんのクソババァ!! 私はそんなんじゃないってのに」
最後の言葉は誰にも聞き取れないような小声だった。
「あの美」
Tululululululu
横島が声をかけようとした瞬間事務所の電話が鳴った。美神が受話器を取ると相手は美智恵だった。
『親をクソババァなんて言うモンじゃないわよ!』
それだけ言って美智恵は電話を切った。向かいのオカルトGメンのビルを見ると美智恵が額に血管を浮かべながら作り笑顔で美神を見据えていた。
(エスパーかあの人は・・・・・・・・・)
怒りは何処かに消え呆気にとられてGメンのビルをながめている美神をを余所におキヌとシロそしてタマモが横島に詰め寄ってきた。
「横島さん・・・・・・・・・本当に辞めちゃうんですか?」
「先生が辞めるなら拙者も付いていくでござる!」
「ちょっと寂しくなるわね〜」
三人三様の言葉が横島に向けられる。彼女らの言葉に美神も我に返り横島に詰め寄ってきた。
「そう言えばアンタさっき小竜姫がどうとか言ってたわよね? 一体どういう事? 妙神山でなにを吹き込まれたのよ!」
3日前横島は突然妙神山に呼び出されたのだ。
「その実は・・・・・・・・・」
3日前・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Tululululululu
美神所霊事務所の電話が鳴っていた。受話器を取ったのはおキヌだった。
「ハイ、美神所霊事務所です」
『あ、おキヌちゃん? 私、小竜姫です』
声の主は小竜姫だった。今まで小竜姫が電話してくることはなかった、用事があれば小竜姫自身が出向いてきていたからだ。(妙神山に電話が無かっただけかも)
「美神さんですか? 今代わりますね」
『いえ、横島さんいらっしゃいますか?』
「え? あ、はい」
美神ではなく横島指名に驚いたおキヌは少々ふて腐れて横島に代わった。指名が所長の美神ではないと言うことはプライベートなお話しだと察知したからだ。
「はい、横島っス」
『あ、横島さん。 え〜と簡潔にお話ししますね。 貴方とルシオラのことでお話ししたいことがあります。 早急に妙神山に来てください、斉天大聖老師もお待ちです』
「!!!? 分かりました」
『それから絶対に一人で来てくださいね』
「は、はい」
横島は受話器を置き電話の内容を美神、おキヌ、シロそしてタマモつまり美神所霊事務所所員全員に話し妙神山に行くことになった。シロが一緒に行くと駄々を言ったが一人でと言う条件だったために却下された。
「これだからバカ犬は、話聞いてなかったでしょ?」
「狼でござる! 話も聞いてたでござる、妙神山に行くのでござろう?」
いつものやり取りに全員がやれやれと溜め息を吐くが見ているだけで和む光景である。
「それじゃぁ行ってきます」
そう言うと横島は文殊を2つ取り出し”転”と”移”の文殊を作り発動させた。
(ルシオラのことって言うことはもしかして復活させる方法が分かったのか?)
横島は期待に胸が膨らんでいた。
続く
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