お口の恋人
第八話 軟骨ミサクラ節 / 奴の名はザ・サマー
「タイガーアッパーカット!」
『タイガージェノサイド!』
「タイがどうかしたんですか? ってか大丈夫か二人とも!」
美神令子とキヌが何か知らないが興奮しまくっている。どうやら『たいがまがっていてよ』と言いたいようです。ごっこ遊び?
「タイガーバズーカじゃあ!」
エクトプラズムスーツを着用し、何所から見てもクール系美少女の格好な横島忠夫。本人曰く、妹の姿にうりふたつなそうで。本人は勝手知ったる自分の妹、別にその姿が特別な物とは思わない。
「萌えてきたー!」
『キター!』
しかし、令子とキヌには相当な効果があった様で。女を装備した状態の横島。彼には彼女達の熱狂ぶりが理解できなかった。
「え〜と、そろそろ仕事しましょうよ」
なんかいつもと違うポジションに立つ事に戸惑いを感じながら、横島は興奮覚め止まぬ令子たちに声を再度かけた。
「は! あまりの出来事にわれを忘れてしまった! 横島クン…… 恐ろしい子」
『ですねー』
「そんな変かな? 俺の妹ってこんな感じッスよ。そりゃ俺の体型に合わせてる姿だからもう少し背は低いですけど」
「妹ね〜 あの電話で凄い怒鳴ってきた娘か。そう思うとその顔が憎たらしく感じて来たわ」
先日、横島にかかって来た電話を令子が受けたさい、彼女は強く罵られ罵倒されたという出来事があった。『雌犬が!』とか『兄貴に寄生するフジツボが!』とか。流石に令子は横島妹に良いイメージがない。
「すんませんね。アイツ凄い感情の起伏が激しいやつで。何とかする為に茶道とか華道とかやらせたら随分と大人しくなったんですけどね。怒るとお袋なみに怖えーけど」
「あれで大人しくなった、ね」
「勇気を出して1度俺が叱ったんです。そしたらその時以来、兄上の為に女らしくなるって頑張って。確か飛水流とかなんとかの師範クラスまでなったとか」
『素敵な兄妹ですね〜 横島さんの妹なら会ってみたいな』
「なんか私の霊感が絶対会うなと言ってるのは何故? あ、忘れてた、私ちょっとだけ出掛けて来るから。調査とかは二人に任せるわ。道具も置いてくし、ね? 期待してるわよ」
「え? ――― はい! 頑張ります!!」
令子が自分を信頼し、仕事を任せてくれた。その事がとても彼には嬉しかった。駐車場に止めてある車まで横島は令子を送り、安心して任せてくれと胸を張った。
プルンと揺れた。
「いいわね、ゴーストに躊躇ってはダメ。何かあったらちゃんと引き金を引くのよ」
「うっス!」
令子は元気良く返事する横島のリボンを掴み、自分に彼の顔を引寄せ唇を塞いだ。ついでに舌も入れた。
「ん♪…… 宜しい。じゃ、すぐに戻るからね」
『ぶー』
「任せといてくださいよ」
『私たちのこんびは無敵ですもんねー さ、旦那様。一緒にいきましょ〜』
先ほどのキスに嫉妬したキヌが、横島の腕にしがみ付いて尚且つ頬を胸に摺り寄せた。
「おキヌちゃん? 程々に。ね? しつこいようだけど横島クン、頑張ってね」
キヌの態度に呆れつつ、令子は六道女学院に用事を済ませに言った。さて、実は令子にも色々な考えがあった。なんとか横島の事がGS界に広まらないようにしたい。そこで横島を優秀な助手と彼等に認識させる必要があったのだ。そう、ただの優秀なGS助手であると思わせる為に。
「銃の訓練ッスか?」
「ええ。アンタ山男のときアイツを撃てなかったでしょ」
襲ってきたゴーストを武器を持っていても倒す行動を取れなかった。その理由は情が移ったとか色々あるが、一番の理由が銃に不慣れであるという事だ。
「そりゃ、俺ってただの素人ですし」
「だからね、ちゃんと訓練をしていざという時にさ、ちゃんと自分の身を守れるようにしなくっちゃね。いずれ私を守るくらいの男になる義務があるんだし。アンタには」
あるヤクザが所有する廃工場、に偽装された射撃場。そこで教官を名乗る男に横島は指導を受けさせられたのだ。素人が手っ取り早く力を手に入れるのは、現代では銃に頼るのが一番であろう。それはGSでも同じである。では何故GSの除霊武器に銃が広まっていないかと言うと、ぶっちゃけそれが高価だからだ。弾丸一発だけで破魔符の十数倍の値段がするのだから貧乏人には堪った物ではない。
「片手撃ちなんてバカな事するな! プロでもそんな事せんぞ! 何より身体にかかる負担が凄い」
「うが! 肩の関節が抜けた後に言うな!」
しかし、お金なら売るほど持つ令子にはそれは問題ではなかった。彼女は確かに金にがめついが、使うべき金を惜しむ人間ではなかった。まぁ、これも屈折した愛情表現の一部なのだが。
「重心をしっかり保て! 目標との距離を考えろ! お前じゃ2m先の的に当てれれば上等なんだ! よし、かならず腹に2発以上! うむ、筋がいいな。しかし動く的に当てるなんて思うなよ! よーし! お前本当に筋が良いな。ウチの組みに入らんか?」
「遠慮するッス!」
『へぇ、頑張ってるんですね旦那様。とても素敵です♪』
「しかしなんで重火器の扱いや、爆薬の取り扱いまでみっちり覚えさせられたかは謎なんだよな。持ってんのか?」
これで今から横島クンも立派な狼ね。今度からは幽霊男も幽霊巫女もちゃんとソレで成仏させるのよ? そういった令子の顔はマジでした。置いといて、横島を霊銃使いと世間に認識させれば、そんな金のかかる奴を欲しがるGSも少なくなるはず。お金持ちの令子だから彼を使えるのだと思わせるのだ。
ギャグとエロスの間で令子ちんは頑張ってるんですよ?
「ねぇ、見た?」
「見た! この網膜に焼付けんばかりの勢いで見た! あの素敵なお姉様とデーハー系の女の人のキスシーン! あぁ、ファンタスティック♪」
「巫女の幽霊を手下に連れてるなんてカッコイイです!」
どんな格好をしてようが目立つ事には変わらなかった令子達。そんな令子達を女子校の生徒達が見逃すはずもなかった。そしてその話題は自分達と同年代っぽいセーラー服の少女に集中していた。
「素敵! 冷たい瞳に鋭い視線!」
「背も高くてスタイルも抜群で! まるでモデルみたい!」
「あぁ、お近づきになりたいわ♪」
何もしていないのに好感度急上昇である。そこに先ほどのキスシーン。彼女達のボルテージは最高に達していた。知合いになりたい、出来ればそれ以上になりたい、ぶっちゃけ私を滅茶苦茶にしてぇ〜 とか。
「なんか寒気がするな」
『それって霊感ですよ! 旦那様もどんどん力を身に付けていきますね』
「そういうモン? さて、適当に誰かに声かけるか」
校舎内に戻り、幽霊事件の事をに尋ねる相手を探していた時、我慢しきれなくなった女生徒の一人が横島に声をかけた。
「あの! GSの方ですよね! わ、私で良かったらなんでも聞いてください! かならずお力になります!」
「へ?」
突然話しかけてきた少女に横島は戸惑う。しかし、せっかく協力的な人間が現れたので素直に彼女の話を聞く事にした。
「あらあら、真田さん、一人で抜け駆けはダメですわよ?」
「そうですよ! あ、私は鈴木と言います! 何でも聞いてください!」
「くぁ! むむ…… せっかく私だけが」
最初にやってきた斉賀と呼ばれた少女の背後から、さらに二人女生徒が追加された。
『うわぁ、増殖しました』
「えっと、君が真田さんでそっちが斉賀さん。で、君は?」
ついつい習性で名前を手帳にメモして行く。そんな横島。
「私の事は氷河とお呼びください。失礼ですがお名前をお聞かせ願えないでしょうか?」
「あ、俺は」
『横島さん!』
素で答えようとしていた横島の耳をキヌが引張って内緒話を始めた。少しは女言葉を使えとか、名前をそのまま使う気かとか。確かに自分が浮かれていた事を恥じ、横島は少しは演技をすることにした。
「えっと、ごめんな。私は横島…… えっとタダオ子」
『ずこー』
適当極ってました。
「あら、『俺』で構いませんわ。お名前のほうも何か事情があるのでしょう。では横島お姉様と呼ばせてもらいますわね」
「あ〜 それでいいっス」
横島の雰囲気と口調のギャップに最初氷河以外の娘は戸惑った。しかし、親しみやすくソレもまたよし。と、いった流れになりました。
「へぇ、新校舎ね。それに怪しい古井戸か。おキヌちゃん、言ってみるか。君等もありがとな」
「きゃー! お役にたてて感激です♪」
妙なテンションの女生徒たちに礼を言ってこの場を立ち去ろうとした時、氷河が彼をひき止めた。
「不躾で申し訳ありませんが、横島お姉様は私に覚えがないでしょうか?」
「え? いやゴメン。記憶にない」
氷河が何かを気にした様子で訪ねる。しかし、横島には彼女の記憶がなかった。
「そうですか。失礼いたしました。では、我々は授業に戻りますのでここで失礼します」
「いや〜ん! もっとご一緒したーい!」
「お姉様〜 またお会いしましょうね♪」
新校舎を建てている現場。怪しい物はないかと思っても、良く考えなくったってそれを見付ける能力を横島は持っていなかった。
「見鬼君を忘れたー!」
『えっと、この辺にはおかしな霊気は無いですよ』
うっかりミスをぶちかますタダオ子。しかしソレをキヌが素早くフォローした。
「そっかおキヌちゃんがわかるんだ。ありがとな」
『これも内助の功です♪ でもここで無いとすると後は古井戸のほうでしょうか』
「だろうな。いや、そこに何があるかはわからんけど。ま、とりあえず行ってみよ」
ここからちょっと離れた外れにある古井戸。工事の人間に訪ねた所、まぁ、原作通りの事が聞けた。
『原作ってなんの事ですか?』
「世の中には色んな事があるって訳さ。う〜ん、悪霊がここから出たのは間違い無さそうだな。封印が解かれたのか?」
滓かな霊気の名残をキヌが見付けたのだが、それ以上の事はわからなかった。そんな手詰まりに悩んでいたタダオ子達に、突然やってきた校長の男性が話しかけてきた。
「その井戸に辿り着いてしまいましたか」
「アンタ何か知ってんのか」
訳あり風に自分の過去を語り出す校長。この辺も原作通り。
『だから原作って?』
「おキヌちゃん、原作と同じシーンなんて今じゃ誰も読まないって。無駄に行数増やすよりこうやって端折るべきなんだ」
つまり、この井戸にエロティックエネルギーをぶつけ、ストレスを発散していた校長。その力が形を持って暴れているのが潜在意識の怪物、つまり今回の痴漢悪霊になったのだ。
「いやああああああ!!!」
「また出たー!」
「ひどーい! 助けてー!!」
後者の方から女生徒の悲鳴が聞こえてきた。悪霊が暴れていることを察したタダオ子とキヌは校舎の中に駆け込んだ。
「やだー!」
「下着取られたー!」
下着を取られ、半裸の状態の女生徒が廊下を走って逃げまわっていた。彼女達の来る向う側、そこに悪霊が居るのだ。
「誰でもいい! 悪霊は何所に居るか教えてくれ!」
混乱する少女達の真中でタダオ子が叫んだ。その澄んだ声は廊下に響き渡り、冷静さを失っていた少女達の動きを止めた。
「この先の更衣室に幽霊が現れて! 今までより凄い暴れてるんです! まだ逃げ遅れた子もいるんです! お願いします! 助けてください!!」
「ああ、任せておけ!」
下半身スッポンポンの少女に抱きつかれながらも、タダオ子は安心させる為に微笑みかけた。ソレを見ていた周りの少女達も口々に助けを求めた。
『旦那様! コッチです! 早く!』
半裸の少女達に懇願されているタダオ子にムッとしつつ、キヌは彼を呼んだ。取り残された少女達を心配している事もある。が、いくら横島が女性の姿をしてるといっても、好意的な少女に囲まれる彼を見るのは面白くないのだ。
「危ないから君等はこっから離れとけよ! こう言うのはプロに任せておけ!」
殆どハッタリである。が、これ以上犠牲者を出すわけにはいかないのだ。だって目のやり場に困るし。襲われた少女達は乳も尻もふともももモロ見えになっていたから。先ほどから横島の股間が暴走寸前なのだ。
「す、素敵……」
目にハートを浮べる女生徒の群れを抜け、タダオ子は問題の更衣室に乗り込んだ。そこでは―――
「んむー!」
「んぐ、んぐ!」
「た、たすけ、ひぃ!」
横島やキヌの予想以上事態が起こっていた。
「ぶっはー!!」
霊体を触手のように何本も生やし、それを裸の少女の身体にウネウネと絡ませている。口の中に触手の先端を無理やり入れられている少女。胸やお尻を絞め付けられ、吊るされた少女。触手の先端から出る粘々液を浴びせられ、悪霊の舌で陰部を舐められ泣き喚く少女。
『酷い! あんまりです!』
「はぁぁ…… たす、け」
涙で歪み、ぼんやりとした視界に横島の姿を見つけた少女が助けを求め懇願する。横島に見覚えのある真田という少女だ。斉賀や氷河も居る。どうやら彼女達のクラスが襲われたみたいだ。
「この! やってやらあああ!!」
少しでも知っている少女が凌辱されている事に、エロ大将の横島でも怒りに火が付いた。氷河の陰裂に触手が深く潜りこんでいるのを見付けたからだ。手遅れ。それが一番彼の怒りを燃えあがらせたのだ。
「これでもくらえや! 外道がああ! たまぁ、取ったる!」
モモに装着していた対悪霊コンバットマグナムをスカートに手を入れて取りだし、両手で構えて狙いを定める。
『ちちしりふとももー!!』
その怒気に反応した悪霊が、触手でぶら下げた少女を盾にするように横島に向けた。
「いやぁ…… 見ないでお姉様ぁぁ」
足を無理やり広げられ、陰裂の割れ目までもが丸見えの状態で晒される。その恥辱に斉賀は涙を流す。そんな事を気にせず、悪霊は彼女の胸をグニグニ触手で絞めた。
『ちちー!』
実はこの悪霊、横島の後に居るキヌに、ねぇ、こうやるんだよね? と見せて指導を仰いでいるのだ。コイツにとってキヌはエロスの師匠なのだ。
「クソッタレが! どうする俺!?」
武器はマグナム。コイツの威力なら悪霊を楽に倒せる。しかしその弾丸は悪霊にも効くが人間にも効いてしまうのだ。令子を待つわけにもいかない。ここで自分が何とかしなければ行けないと、珍しくも横島は本気であった。
『横島さん頑張ってー!!』
キヌの声援を受ける。が、声援だけではどうにもならない。なんて事を思っていたら、悪霊がタダオ子を目標に触手を伸ばして来たのだ。
「ぬあ!! この野郎!」
足を触手に掴まれ、逆さまに持ち上げられたタダオ子。触手の攻撃はそれだけに止まらず、セーラー服の上着を引き裂き、無理やり胸をさらけ出させた。
「あら〜」
グジュグジュと膣内を犯されているはずの氷河がソレに反応してる。なんか余裕をかんじる。
『ひ〜ん! 私の横島さんが〜!! このー! 悪い子め! 悪い子め!』
タダオ子をぶら下げる触手をキヌがポコポコ叩く。が、あまり効果は無い。ヌルヌルする触手で胸を揉まれているタダオ子だが、実は全然感触は伝わっていない。偽乳だから当然だ。その反応の薄さに悪霊は不満を覚え、今度はショーツにその狙いを定めた。
「ウザいんだよ! この変態触手メンが!!」
逆さまの状態でタダオ子はマグナムを発射した。今は斜線に盾になる物が無かったからだ。
『ちちー!!!』
弾け飛ぶ触手。マグナムから発射された弾丸は悪霊の本体からはそれ、氷河を捕らえていた触手を吹き飛ばした。流石にこの体制で目標を正しく狙えなかったのだ。
「お前だけでも逃げろ! 残りの娘も必ず俺が助ける!!」
せめて彼女だけでもとタダオ子が叫ぶ。その間に触手はショーツを剥ぎ取り、タダオ子の陰部が晒された。そこに触手をねじ込もうとするがどうしても入らない。ま、当然なんだが。
『ダメですよ! こら! 本当に怒りますよ!!』
キヌがバリバリと洒落にならないほど高圧力の霊気を放出させ始めた頃、陰裂への挿入を諦めた触手が、あろう事かタダオ子のお尻を狙いだしたのだ。
「そこは不味いッス!! いやマジで!! こら、ホントに止めてー!?」
ムリムリとねじ込まれてくる触手に本気で嫌がって暴れる。さようなら横島の純潔。さようならタダオ子のアナルの処女。神すらも彼を見放したと思えたその時、閃光のように何者かが動き、手に持った銀色の刃で悪霊の触手を全て切り裂いたのだ。
「流石に其れはさせられません。お覚悟を」
何時の間にか忍び装束に身を包んでいた氷河。その手には日本刀が握られている。先ほど触手を切り裂いた代物だ。
「な! あんたその格好は何? その姿ってくノ一じゃねえか!」
「ほほほ、正体をばらす気は無かったのですが、横島様の危機を見逃す事は出来ませんでした。正体を隠していた事、申し訳ございません」
悠長に横島の前に膝を付く氷河。
「私、九能市氷雅と申します。戯れに女子高生に成りすましていた所、知っている女性にうりふたつなお方が現れたので、失礼ですが様子を見させてもらいました」
「うりふたつって、そうか! あんた妹の知合いか! 通りで自分知ってるかなんて聞く筈だよ。あっはっは」
「おっほっほ」
『和んでる場合じゃないですよー!!』
全ての触手を切られてオロオロしている悪霊。しかし、まだ倒したわけではないのだ。
「そうだな。とりあえず落し前はつけてもらおうか。ええ!!?」
ネトネトの液で身体をドロドロにした裸の美女。鋭い目をさらにつり上げ、マグナムの銃口をぴったりと悪霊の頭に押しつけた。
『ち、ちちち! しりりりー!!』
「往生せいやああああああ!!」
容赦無く引き金を引き、無慈悲で凶悪な破邪の弾丸を悪霊に撃ちこむ。
『ちちしりぎゃひー!!』
3発の銃声が鳴り響いた後、悪霊は霧散し消滅した。後に残されたのは凌辱の後を体に残す二人の女生徒と、一人の忍。全裸の液まみれの美女に涙で顔がボロボロの幽霊。
「はぁはぁ…… ふぅ、とりあえずどうすっかな」
自分はともかく、全裸の少女と先ほどまで秘部を貫かれていた少女の存在に、つい気を抜いた横島の股間に急激な負荷がかかった。
『膨張している!?』
「あらまぁ、あららら、これはまた勃起い、じゃなくておっきい…… ジュルリ」
エクトプラズムスーツの一部、つまり股間が横島のエネルギーに耐えきれず、そこからジャンボサイズに膨張したペニスが飛び出してきた。チンコを生やした美少女の誕生の瞬間である。
「なんじゃこりゃあ!!」
自分でもそのアンバランスさに混乱する横島。しかし、周りの少女たちの方がもっと混乱していた。
「きゃあ! お姉様のアソコに素晴らしいモノが♪ なんて神々しい」
「天使です! お姉様は天使様だったのです! アポカリプスケルプです♪」
意識を保ち、今までに事をずっと見守っていた真田と斉賀。どうやら彼女達にとってチンコの生えた女性は天使でOKみたいだ。知識が偏ってますね。
「なんか誤魔化せてる? ところで氷河さん」
「いえ、氷雅です。九能市氷雅、できればお前、とお呼びください。貴方様の事は妹君からお聞きしております」
「あ、モロバレ?」
妹の知合いなら最初から色々ばれていたと納得する横島。そう言えば妹もたまに分身とかしてるしなぁ、とか思ってた。
「はい。私もGSを目指す物の端くれ。その変化服の事は存じております。そして、貴方様の事もふふふ…… なんて素敵なんでしょう。さぁ、私の全てを貰ってくださいませ」
せっかく着ていた服をいそいそ脱ぎ、恥ずかしそうにちらちらと横島を見ながら脱いだ服をたたむ氷雅。
「お前な」
「はい、アナタ♪」
何か強引に横島の台詞を曲解しながら彼にしがみ付く氷雅。さり気なく何度か口付をする。目にも止まらぬ早業だ。
『むきゃー! アナタってなんですか! 旦那様は私の旦那様なんですー!! 旦那様! この人霊能力者ですよ! 早く逃げないと犯られちゃいます!』
「うっス、手遅れッス」
『がーん!』
いつのまにやら氷雅に薬を嗅がされ、ピリピリ痺れている横島。どさくさ紛れに真田と斉賀も横島の胸などを舐めまわしている。
「幽霊に汚された身体をお姉様の愛で浄化してください♪」
「あぁ、私ってこのために生まれて来たのね…… 素敵」
この二人は霊能力者ではない。しかし、悪霊の霊気に晒されすぎて、一時的に横島のフェロモンに捕らえられていたのだ。まぁ、そんなものなくても結果は同じだった気がするが。
「それは私も同じ事、仕えるべき君主に心も体も捧げ様とくノ一の身で必至に純潔を守ってきたのです。あの方は…… まぁ、弟に全部任せてしまいましょう」
「アンタさっき犯られとったやん!」
唯一自由に動く口で怒鳴る。
「そこはそれ、忍法、偽性交です。実は犯されていなかったのです。勿論、真田も斉賀も処女を守りとおしております。流石にちょっと潜りこんだ先とはいえ、級友を見捨てる事は出来ませんでしたし」
「あ、それは良かったッスね。って! せっかく守った純潔を大切にしろよ!」
「あぁ、私達たちの事を思ってなんてお優しい。けど! 汚された私達の心の傷を癒すのはお姉様しか出来ないんです! 本当なんです! なんかアソコが疼いてヘロヘロなんです!」
陰部から溢れる愛液を横島に直接擦り付けながら懇願する真田。斉賀は先ほどから胸にしがみ付いて離れない。
「これも人の為なのです。彼女達の心を救えるのは貴方様のみ。そう、私の心の渇きを癒すのも」
「な、なら仕方がないかな?」
『うわーん!! アナタの浮気者ー!! 美神さんに言い付けちゃうんっだからー!! ひーん、ひーん!!』
あっさり陥落した横島にショックを受け、キヌは飛んで出ていってしまった。
「ふふ…… 後は人払いの結界をしいて…… 忠夫様、改めて申します。私、九能市氷雅は横島忠夫を生涯仕える主人とし、富める時も病める時もずっと伴に歩む事を誓います。異議がある場合はさんべん周って目からレーザーを一斉発射してください…… しないののですね。では、これより契りの儀を始めます」
「うわー ごーいんだー」
既に彼、逆らう気がありません。もう馴れたモンです。
「では、誓いの接吻を……んむ」
「むむ!」
せめてもの抵抗で、横島は持てる限りの技を使った。令子やキヌをあっさりおとす必殺のディープキスだ。
「むう!! んむむ! はふぅ…… な、なんて凄い♪」
「あ〜 次は私〜」
蕩けそうな笑みを浮べる氷雅を払いのけ、真田も横島に唇を重ねた。何か調子が乗ってきたのか、恐ろしく濃厚な口付を返す。たっぷりと唾液を絡め、舌で彼女の口を執拗に愛撫する。
「ん! んんん! んん〜 ぱた」
その攻撃に真田はあっさり撃沈。ヘロヘロと横島の上に崩れ落ちた。一方、斉賀は横島の股間から生えたペニスを舌と唇で愛撫していた。先ほど無理やり触手を口にねじ込まれたのだが、それを参考に拙いが懸命に舐めていた。
「さぁ、横島様。私のここもお願いします」
氷雅が横島の顔に跨り、自ら指で広げた陰裂を彼の口に重ねる。ネチョっと音をたてたそこは、すでにぐっしょりと湿っていて、横島の舌使いによってあふれる愛液は唾液と混ぜ合わさった。
「うひぃ! ぬあ! あひ! ひゃひぃ! すご、凄すぎますぅぅ」
どんな拷問にも耐えられると自負していた自分が、少し舌で陰部を舐められただけでとんでもない事になっている。氷雅はその恐ろしい快感に驚愕し、そして歓喜した。
「んむ、ぬむむ! ぐぶぅ! ごぶぁ! んぐ、げはぁ、げへ、げへ!」
何時もの倍以上の量の射精に斉賀は耐えきれなかった。精液を鼻から逆流させ、あまりの濃さと勢いに咽てしまった。しかし、苦しそうな咳とは逆に、顔には至福の表情を浮かべている。そしてその笑みを浮かべたまま彼女は気を失ってしまった。
「あぅぅ…… はぁはぁ、ああ、霊気にあてられてしまったのですね。でもなんて嬉しそうに…… ひゃあ! あひ!」
精液溜まりに顔を埋めて眠る斉賀。飲みきれなかった精液が口から垂れてでてきていた。氷雅は名残惜しそうに横島の口から陰部をどかし、霊気に当てられ気絶した斉賀の口から精液を吸い出した。あまりに粘度が高い為、窒息を防ぐためである。口に広がる高濃度の霊気に驚き、そしてその脳を溶かすような味にさらに驚く。
「あぁ、あの人はこれを…… 羨ましいです。ふふふ、でもついに私も…… あ、念のために」
ペニスの竿に残った精液を吸いだし、先に気絶した真田の口に直接流し込む。
「何してんだよ!」
「ぷはぁ、いえ、勿体無いですけどこうやって先ほどの悪霊の邪気を祓ったのです。横島様は御自覚が無いのでしょうが、横島様の子種にはそういう効果もあるのですよ」
横島の胸を愛撫しながら氷雅が答えた。自分の乳首を横島のそれに擦り合わせ、濡れた陰部で勃起したペニスを擦り合わせる。プクっと膨れた陰核が擦れるたびに、氷雅は甘い声をあげ、喘ぎ悶えた。
「くあ! うぅ、焦らされるのがこんなに辛いとは。なぁ、俺の事ってそんなに有名なのか?」
「はぁはぁ、いえ、たまたま縁があって自分で調べあげただけですわ。横島様があの人の兄上であるのが最初の縁でしょうけど。たまに早くに立つんですねあのような女も」
少し顔を歪めながら氷雅が答える。
「あのさ、これでもアイツの兄だからさ。あんまり酷い事言わないで欲しいんだけど」
「は! これはなんてご無礼を! 申し訳御座いません! ここは潔く腹を切ってお詫び致す…… 所ですが、今回はこれで勘弁してくださいな」
テヘっと舌を出してごまかしながら、氷雅はゆっくりと陰部でペニスをのみこんだ。多少笑みを崩したものの、最後までズブっと腰を下ろした。
「く〜!! こ、これは思ったより来ますね。予想以上です、ひあ! あぁ、ど、どうですか? 毎日の鍛錬で下半身を鍛えあげていますの、絞め具合には自身があるのですが」
「ん〜 確かに狭くてきつくて気持ち良いけど。まぁ、それだけだな」
自身たっぷりな氷雅を横島はキッパリ切って捨てた。
「美神さんの方が技術が凄いし、絞め具合も最高だ。おキヌちゃんもそれに劣らないな。アンタはただ咥えこんで絞めてるだけだ―― よっと」
氷雅と結合したまま横島は上半身を起こした。
「んな! あの痺れ薬の効果がもう切れるなんて!!」
「残念だがな、これと同じモンでなんども酷い目にあっててな。人のトラウマ抉るような事しくさって。さて、悪いがお仕置きが必要だよな〜」
キュピーンと目を光らせながら横島は氷雅に笑みを浮べた。それは綺麗な少女の顔に浮かべるにはあまりに恐ろしいもので。
「うひぃ! そ、その、あの! えっと…… ごめんね?」
「だぁめ。許さん」
「いやああああああ!!! ――――――――――――――素敵ぃ♪」
「あぁ…… もう戻れない♪」
「あかん、やり過ぎたわ」
ゴロニャンと喉を鳴らしながら横島に抱きつく氷雅。もう心も身体も服従しきってる感じだ。真田と斉賀の二人の記憶は消した。氷雅の怪しげな忍術で、悪霊に襲われた辺りの記憶を消し去ったのだ。普通の人間には耐えられないトラウマになると横島が頼んだのだ。二人とも、ロッカーの荷物を勝手に漁って服を着せられている。
「俺等もいこか?」
「はい♪」
とりあえず寝ている二人をそれぞれ抱えて更衣室を出た。
「は〜い横島クン♪ 覚悟の時間は終わりかな〜?」
『酷いんですよ! 酷いんですよ! ひ〜ん…… ふふ、ふふふふふ』
修羅と羅刹。そんな感じでした。
「ちょっと美神さん落ちついて! おキヌちゃんも何言ったんだよ! ねぇ? お前も黙ってないで何か言えよ」
「オマエ! うふ、うふふふふ」
他人事のように見ていた氷雅。しかし、なんか勝手にトリップして横島の台詞は聞こえてないようです。
「とりあえず死ね」
『ごーとぅーへる』
とりあえず横島は死にました。
「なるほど。そこまで強大化してたのね」
「はい。私と横島様が協力しなければあの二人の生徒は大変な事になっていたでしょう。その、横島様の体質の事もありますし、あまり責めないでください」
「アンタに言われなくてもわかってるわよ!」
横島が死んだ後、改めて氷雅から今回の説明が為された。自分が彼の妹の知合いであり、その特異体質は知っていた。知っていたからこそ避けていたが、今回は仕方なく接触した。そして。
「もうメロメロです。これから私は横島様の従者として仕えさせてもらいます。コンゴトモヨロシク」
『ぶー』
「ご指導願えますか先輩」
『あ、え? 先輩って私ですか! えへへ♪ 任せてください』
なんか本人の知らないところで話が進んでいます。
「幽霊にくノ一って。横島クンも災難ね。ほら、起きなさい」
「あんた等が殺ったんだろうが! 本気で死ぬかと思った」
死ぬとか殺すとかの意味が壊れてきてます。さて、校長の潜在意識の怪物であった悪霊。横島たちが結界でエロエロしている間にやって来た令子は、校長からその説明を受けていた。
「あれは大本の人間、つまりこの校長が死なない限り滅びる事はないわ。いえ、たとえ死んだ後でも存在するかもね」
「あれで滅んでなかったんスか!? はぁ、まだまだだなぁ俺」
初めて悪霊を滅ぼしたと思っていたので、横島のショックは強いものだった。
「何言ってんの。最悪の被害も防いだし、頑張ったわよ。ね?」
『そうですよ。カッコ良かったですよ〜 鉄砲をバンバン撃って、地獄で会おうぜべいべーって! 惚れなおすには十分です!!』
「俺そんな事言ったっけ? で、どうするんですか」
興奮して横島の真似(キヌ談)に夢中なキヌを無視し、これからについて令子に指示を願った。
「簡単よ。アレをあるべきところに返せば良いの」
つまり、排斥した煩悩をまた校長に戻すというのだ。
「よっしゃ来い! ワシは準備万全だぜ!」
なんか妙に張りきっている校長。事前に令子がその事を告げた時は妙に落ちこんでいた。が、なんか急に乗り気になったようだ。
「こんな半裸の美少女! しかもノーパンに反応せんなんて男として耐えられん! さあ戻って来い青春!」
今の横島は、破れた上着にボロボロのスカートといった姿であった。ちょっと動けば胸の谷間やお尻が丸見えである。
「はいはい、捻じ曲がった心の歪よ! さまよえる魂よ! 生まれいでたる者の元へと戻り、主とひとつになるが良い! ええい!!」
令子の念で校長の元へ潜在意識の怪物が姿を見せる。
「ち、ちちしり、ふと、もも」
かなり弱っているみたいだ。
「さあばっちこーい!!」
両手を広げてそれを迎える校長。潜在意識の怪物は、吸寄せられる様にその中へと吸収されて行った。その時。
「あ」
ボロボロになった横島のスカートが、耐えきれなくなて切れて落っこちたのだ。
「え?」
校長の目に飛びこむのは萎えてもまだ立派なペニス様。
「まいっちんぐ♪」
可愛らしくポーズを取って横島は誤魔化す。周りに他の人間がいないのが幸いし、その衝撃は校長のみに直撃した。
「ち、ちんこ! 美少女にチンコが生えてるー!!!??? あへ」
「校長? こうちょーう!!」
あまりのショックに校長はその意識を手放した。のちにこの校長はオカマだらけの男子校を設立すし、教育界に伝説を築きあげる。その原因が今回に起因するかは定かではない。
「あぁ、何か異常に疲れたッス。やっぱ俺はまだまだですね」
「あったり前でしょ。でもね、誰だってそうなのよ? 最初はそうやって苦労して頑張って失敗して。そして運良く生き残ったらまた頑張って――― ね」
帰り道。令子の運転する車の助席で横島は改めてへばっていた。どうしても口から出てしまう愚痴に令子が優しく付き合ってくれていた。
「美神さんもそうだったんスか?」
「私は天才よ? ちょっと頑張ったらこの通りよ♪」
「天才ね〜 ま、確かに。せっかく生き残ったんだし、次も頑張りますか! 所で、美神さんの用事って何だったんすか」
ふと、自分が令子抜きで除霊を行った経緯を思いだし、何となくたずねて見た。
「ああ、まぁ、色々あってね、後で話すわ。そだ、そこにある買物袋アンタのでしょ。受け取っておいたわよ」
「ああ!! 無くしたとばっか思ってたのに!! 良かった〜 助かりました!」
「大袈裟ね。また買えば良いじゃない」
横島のあまりの喜び様に呆れてしまう。中身はCDや小物しか入ってないはずだ。カードで買った物の内容は既に把握してるし。
「へへ、実はですね、自分の金でこんなの買ったんですよ」
多少照れながら横島は小さい包み袋を令子に渡した。
「何これ? もしかして私に!!?」
「ええ。悩んでたらそれになったんッス。まぁ、飯とか世話になってる感謝の証って事で」
「開けて良い? 開けるわよ。開けちゃうんだから」
器用に運転しながら丁寧に袋を開ける。そこには綺麗な赤いハンカチが入っていた。細かな刺繍が施された可愛らしいものだった。
「あ…… もう、無理しちゃって。これアンタの買えるブランドじゃないでしょ」
「いや、美神さんに似合いそうなの選んでたら値段とか気にしなくて」
「そう…… 横島クン」
「うっス」
「愛してるわ。これからもずっと。ね?」
ハンドルを握ったまま濃厚なキス。
『ぶー ぶー ぶー 良いな〜 羨ましいな〜 悲しいな〜 呪っちゃおうかな〜』
「って! 美神さんも前見て運転してください! はぁ、おキヌちゃんにもあるよ。ほら、お線香。前に好きだって言ってただろ?」
『わあ! 私ってなんて幸せ者なんでしょう! ありがとうございます! うぅ、生きてて良かった』
線香のケースを抱きしめて号泣するキヌ。
「死んでるって。所でなんで俺って女装したままなんでしょう? ん? 美神さん」
「なんだ。私だけじゃないのね。ま、いいわ〜 ね、さっきからそのスカートの中身が気になるのよね〜 っていうか〜 今回って私エッチしてないし! てな訳でアム〜 んん。 ん、んむ。んぐんぐ」
ハンドルを無視して横島のスカートを捲り上げ、中のペニスを愛撫しだした令子。
「うわ! ハンドル! 車! ぶつかる! 死ぬ! どいておじいちゃん!」
『ここは私に任せてください。運転は得意なんです』
「え? おキヌちゃん運転できるんだ。あ〜 びびった」
『はい! この間もすりるどらいぶって車のゲームで高得点出したんです。被害総額が何百億円も取れたんですよ♪』
「ダメじゃん!!」
ノリノリのキヌの運転で帰路につく一同。どうしても止まらない嬉し涙を隠す為に、令子は我ながらとんでもない事してると、ちょっとだけ反省した。
本日の夏子ちん
「ここもハズレや」
遥か遠く――― 明かに異質な文明の産物であろう建造物に囲まれた地下深くの古代遺跡。灼熱の溶岩に囲まれた祭壇の前。そこに封印されていた謎の金属のプレート。
「こんなん要らんわ。あぁ、よこっちの手掛りにもならへん」
その金属のプレートを手のひらで遊びながら、本来の目的を達っせられなかった悔しさに涙し―――――
「それを渡して貰おうか、宝捜し屋。いや、ザ・サマー」
白いスーツの男が、夏子の入ってきた祭壇の入り口から現れた。周りに重武装の兵士を何人も連れている。
「レリックドーン…… 相変らず鈍間な事やね〜 それになんや? いたいけな少女に機械化小隊なんぞ持ちだしおって」
「私は君を甘く見ていない。何度も我等を欺き、秘宝を奪っている君をね。さぁ、それを渡してもらおうか。その伝説の秘宝、ゲモゲモプレートを!!」
兵士達が一斉にライフルの銃口を夏子に向ける。
「時空間を制御し、安定させる術が記させた古代ゲモゲモ王国の遺産。こんなもんあんた等どうするつもりや? 今の世界じゃ再現できん仕事やで」
「死に逝く君に語る事もあるまい」
「そか。ならこんなんポイや」
夏子の姿を真赤に照らす灼熱の溶岩。彼女はその中にプレートを投げこんだのだ。
「な!! なんて事をするんだ君は!! アレがどれだけの価値を持っているか知らないとは言わせんぞ!!」
「アホかこの世によこっち以上の宝なんてあるかい!! わっはっは! ざまー見晒せ!!」
悔しがる男にアッカンベーっと決める夏子。
「ヨコッチ。それが君がずっと探し続ける秘宝の名か。そうか、ならばそのヨコッチ! 我等がレリックドーンが先に貰いうける。ふふ、あの世で悔しがると良い。殺れ」
男が兵士にアゴで指示する。一斉に死を呼ぶ弾丸が発射されようとしたその時。
〈WARNING〉 〈WARNING〉 〈WARNING〉
「な、なんだ!!」
突然大地を揺るがすような轟音が洞窟に響き渡りだした。
〈不安定なプラズマ波を検出。キルリアン反応の増大を確認〉
夏子の持つHANTが次々と危険を警告してくる。
〈未確認のエネルギー活動を感知。二十秒後に高出力体が顕現します〉
「来るで!」
ボコンと溶岩が膨れあがる。それは意志を持つ腕のような形をし、明らかに敵意を示す様に近くにいた兵士を飲み込んだ。とっさに夏子はワイヤーを天井に射出。危機一髪でその場を離れた。
「あちゃー 守護神の御出座しや。ほなサイナラ〜」
「待て! くそ、遺跡の妖精か! 撃て! 冷却弾を用意しろ! 対妖精用ナウマクサンマン弾もだ! 高い金払って連れてきたガンボーズもとっとと前にだせ!」
さっさと夏子が逃げ出した後、残されたレリックドーンと守護神との壮絶な戦いは凄惨な物だった。それは守護神の一方的な虐殺と言ってもよいだろう。彼等の死はスーツの男が逃げる為だけに消費されていた。ただ死に逝く彼等が知る由も無いが。
「やってくれたなザ・サマー!! こうなれば必ず貴様より先に秘宝ヨコッチを手に入れて見せる!! わーっはっはっは!!」
「今回もアカンかったか。うぅ何所におるねんよこっち」
よこっちという最高、最愛の宝を求め、今日も宝捜し屋を続ける夏子。いつか、その方向性が間違っている事に気が付くその日まで。そう、その日まで彼女の戦いは終わる事は無いのだ。
「次は…… エジプトのカイロか。今度こそ手掛りがあるとええな…… 会いたいよ――― よこっち…… うぅ ひっく」
流れる涙を拭いつつ、行け、夏子!! 戦え、トレジャーハンター、ザ・サマー!!
う〜ん、三話分を無理やりまとめてみますた(挨拶)
どもども、明日の準備でいまだに慌ててるアマドです。さて、次の投稿は早くても来週になります。流れの速い掲示板で、皆様に忘れられる恐怖に震えながら次に訪れるのを楽しみにします。とりあえずレス返しをお昼頃にしに現れる予定ですので、今はお休み〜
真田ちゃんと斉賀ちゃんはこの話だけのキャラです。手元にあった小説から名前を貰いました。霊力無しの普通人です。
今回は誤字の多さに自信があるですよ。きゅぴーん!