ここは日本でも有数の霊山【妙神山】
その険しい山道を軽装で登っていく男、横島忠夫
「ふー、そろそろ見えてもいい頃だよなー。」
だが、見慣れた建物はまだ視界に入らない。
「まっ、あと少しだしな。よいせっと。」
更に山道を進む横島。
ついに頂上にたどり着いた。
「あーやっと着いた。えっ……………なっ、なんじゃー!」
魂の在処は? 2
一言で言えばそこは【更地】だった。
逆天号の断末魔砲は、瓦礫を残すことすら許さなかったらしい。
打ち込まれた杭と、それに這わせている有刺鉄線が、かろうじて敷地の範囲を示している。
そんな中でやけに目立つ物体があった。
「よう! 久しぶりだな。」
話しかける横島。
それは妙神山修行場の門番、右・左の鬼門の顔がくっついた門扉であった。
有刺鉄線で囲まれた敷地の入口にそびえ立つ大きな門扉……かなりシュールな光景である。
「おおっ、横島ではないか。」
「うむ、変わりはなかったか?」
「まあ、こっちはそれなりにな。お前たちは……………変わったな。」
「「言うな(涙声)」」
「…そっ、そうだ! 小竜姫さま達に用があって来たんだけど、居るかい?」
さりげなく(そうか?)話題を変える横島、男の優しさであろうか。
「おお、小竜姫さまとパピリオなら、おるぞ。」
「二人だけ? 老師やヒャクメ達は?」
「他の方々は、神界や魔界に報告等に言っておる。あの事件からまだ一月と経っておらぬのじゃからな。」
「そっか…。まあいいや、中に入ってもいいか?」
「まあ、いいだろう。」
「サンキュ! それじゃー」
扉を押し開け、中に入ろうとする横島。
「「まっ! 待て!!」」
大声で制止する左右の鬼門。
「な、なんだよーでけえ声なんか出して。」
驚いて立ち止まった横島。
「…実はな、この扉は。」
「扉は?」
首をかしげる横島。
「我らの本体が後ろから支えておるのじゃ…」
………しーん………
「そっ、そうか。それほどまでに困っていたとは。ま、まあ、がんばれよ。いつかいいこともあるさ。」
「「うっ、うむ。」」
「なあ右の。横島に慰められるとわな。」
「うむ。我らも堕ちたものよな。」
「あー! もういい! もういいから通してくれー。華(女性)の居ない情景描写はもういやじゃー!!」
作者の思いまで言い放つ横島。
「わ、分かった。今小竜姫様に連絡を取る、少し待て。」
「急げよ! フー! フー!」
いいかげん我慢の限界に来ているようである。
やがて扉が開……かないで退かされた先には、小柄な竜神の女性が立っていた。
「お久しぶりですね横島さん。」
笑顔で挨拶する小竜姫。
「お久しぶりっス小竜姫様、相変わらずお美しい。まるで廃墟に輝く一輪の花のようです。」
………しーん……… よ、横島、その喩えはシャレにならんぞ。
小竜姫の頬も少々ヒクついている。
「………失言でした。どうもすいません小竜姫様。」
「…まあいいでしょう。立ち話も何ですし、中に入りましょう。」
………中? 一体何処に建物が?
「あのぅ小竜姫様、中とはいったい?」
「まあ、着いてきて下さい。こちらです。」
敷地の奥に向かい歩き出す小竜姫、周りをキョロキョロ見回しながらも続く横島。
「ここから中に入ります。」
小竜姫が指さす。
…………………ど○でもドア?
「しょ、小竜姫様。こっ、これは?」
驚く横島。
「昔修行に使用していた異界空間に、居住施設を急遽追加しました。間取りは壊れる前と同じですから、さほど不自由は感じないと思いますよ。」
「そ、そうスか。すごいんですね。」
そうしか返せない横島であった。
居間に移動した二人は、静かに湯飲みを傾けている。
「はー!、やっと落ち着きましたね。」
ほのぼのとした声を出す小竜姫。
「ふー!、そうっスねー。」
つられて和む横島。
「あっ!、小竜姫様。パピリオは何処に居るんですか?」
「彼女は今修行中です。うーん、あと1時間くらいは掛かると思いますよ。」
「修行中ですか、えっ!でも修行をつける小竜姫様がここにいるのにどうやって?」
「それは大丈夫です。修行といっても主に精神面を鍛えるための瞑想に近いものですから。」
「はー、そうなんですか。精神面を鍛えるためですか。」
「ええ。パピリオの魔力はかなり強力で、当面鍛える必要はありません。しかし精神面は、生きている時間の短さからも想像できると思いますが、かなり未熟なんです。」
「まあ確かにそうかもしれませんね。お子チャマですし。」
苦笑する横島
「でも私の知っている人で、17年も生きているのに未熟な精神をしている人もいますよ。」
いたずらっぽく笑う小竜姫
「ちょっ、それって俺のことっスかー、ひどいっスよ小竜姫様。」
「ふふっ、そうですね。ごめんなさい横島さん。」
謝罪しながらも、笑みは消えない小竜姫であった。
「ところで、今日はどういった用件で来られたのですか?」
小竜姫が尋ねる。ああーやっと本題が先に進めそうである。
「えーとですね小竜姫様、実は…………」
横島は掻い摘んで事情を伝える。
自分の中のルシオラの魂について、
ルシオラの転生先が自分の子供になる可能性、
自分の精液にはルシオラの魂や、霊基構造が含まれているかもしれないこと
その魂が含まれているかもしれないモノを、罪悪感により自慰等で排泄できないこと、
そして最後に、ソレが溜まりまくって限界が近いこと。
それを聞く小竜姫の表情も複雑そうだ。
「事情はおおむね理解しました。それで横島さんは、何を求めてここに来られたのですか?」
「はい、先ずは精液に霊基構造等が含まれている可能性をヒャクメに調べてもらいたいのです。
そして次に、この性欲というか、排泄欲というか………まっ、まあソレを抑制する方法が知りたいのです。
老師なら知っているかもしれないと思いまして。
あとついでに、煩悩に頼らずに霊力を安定して出せる方法を教えてもらいたくて……………あの〜小竜姫様?」
小竜姫は怒りでブルブルと震えていた。
「ほほー、そうですか。この妙神山修行場に来る本来の目的が、つ・い・で・なんですね!!!」
己の失言にようやく気づく横島。
「すいません、すいません小竜姫様。どうか命ばかりはお助けを……」
土下座をし、米つきバッタのように頭を上下させる横島
神剣を抜き、じわじわと近づいてくる小竜姫。ああっ、この世に神は居ないのか?(いや、責めてるのが神様だけど)
しかし、それはいた!
「小竜姫ー。今日の修行は終わったでちゅ」
扉を開け、パピリオが居間に入ってくる。
救いは魔族によりもたらされた。(やっぱり神ではなかった(笑))
「パピリオ! ああ、もうそんな時間ですか。」
「忘れてるなんてひどいでちゅ、まったく小………………ヨコシマー!!」
横島に向かい、飛びついて行くパピリオ。
「ようパピ、久しぶりだな。元気だったか?」
先程まで土下座をしていたために、床に尻を着けたまま上体のみを起こし、パピリオの頭を笑顔で撫でる横島。
「もちろんでちゅ、まあ小竜姫は口うるさいし、ヨコシマにもベスパちゃんにも会えなくてちょっと寂しかったでちゅけど。」
頭を撫でられ、ご機嫌の笑顔で答えるパピリオ。
「パピリオ! 誰が口うるさいんですか?」
声を荒げる小竜姫。
笑顔を横島に向けたまま、小竜姫に向かい指さすパピリオ。
ゴゴゴゴゴゴゴ……………
小竜姫の氣がどんどん高まってゆく。
「落ち着いて下さい小竜姫様。こら、パピもそんな言い方をしたらだめだろう。きちんと謝りなさい。」
横島の認識では、ベスパとパピリオは愛しい妹として設定されている。よって、兄が妹をしかるような口調となっているのだ。
「うー、わかったでちゅ。ごめんなさい小竜姫、ちょっと言い過ぎたでちゅ。」
横島の言葉には素直に従うパピリオであった。
(うむ、ナイスだパピ。しかも、さっきの話がうやむやになったぞ。らっきー!)
自分の命を守るためなら、どんな状況の変化も利用する。師(美神令子)の教えは、しっかりと弟子の血となり肉となっていた。(いいのか?…)
スーハー・スーハー
小竜姫は懸命に氣を静めている。
「まあ、いいでしょう。ではパピリオ、横島さんが泊まる部屋の準備をしてきなさい。」
「えー、【ギロッ】 わ、わかりまちた。じゃあヨコシマも一緒に行くでちゅ。」
「だめです。横島さんはまだ私と大事な話があります。」
プーと音がするくらい頬をふくらませるパピリオ。
横島はそんなパピリオの頭を撫でながら話す。
「ごめんなパピリオ。そのかわり話が終わったら、一緒に遊ぼうな。」
「わかったでちゅ。約束でちゅよヨコシマ!」
機嫌も直り、パピリオは居間から出て行く。
「ふー、まったくパピリオときたら。」
ため息混じりに愚痴る小竜姫。
「すいません小竜姫様。いもう…パピには良く言っておきますから。」
「ふふっ、横島さんの中では、パピリオは妹なのですね。」
「ええ、まあそうですね。」
照れながら答える横島であった。
「では先程の話に戻りましょうか。」
テーブルに向かい合って座り、新たに煎れ直したお茶を前にして小竜姫が話し始める。
「はい。」
横島も真剣な表情に戻る。
「先ず、ヒャクメを呼ぶ件ですが、例の事件の報告はすでに終了したとヒャクメ本人(本神?)から聞いていますので、今から連絡を取れば明日にはこちらに来られるでしょう。」
「そうですか。」
「しかし、老師については……。事件の影響が大きかったために、今後の対策会議が神魔界の代表を集めて開催されていて…。一応連絡はしてみますが、いつ戻ってこられるか………。」
「…そうですか。」
俯き返事も小さくなる横島。
「あっ、でも一体どんな話をしているんですか?」
尋ねる横島。
「色々です。全ては知りませんし、教えられることも限られますけど、デタントの今後の進め方や、神魔双方の人間界の拠点の再建策などです。」
「へー、じゃあここの再建案なんかも話しているんですね。」
感心したように言う横島。
「はい、もちろんです。神界関係のみに限っても、人間界での全ての拠点が破壊されてしまいました。その再建順序も決められています。」
「ふーん、じゃあ最後まで残って抵抗したこの妙神山なんかは、きっと最初に再建されるんでしょうね。」
笑顔で話す横島。
その言葉を聞き、引きつった表情の小竜姫。
「どっ、どうしたんですか小竜姫様。何か問題でも?」
「じ、実はこの妙神山修行場が再建されるのは、かなり後の方になるんです。」
「えー! どうしてですか。最後の砦だったのに。」
「そのー、老師が……」
「老師がどうしたんですか?」
「再建順序を決める、………ジャンケンで…負けてしまって……」
「……………はい? 何か今、とんでもないことを聞いたような? ……ジャンケン?」
目が点になる横島
真っ赤な顔で答える小竜姫
「その通りです。」
「あんたらホントに真面目に会議しとるんかー!!!!!!!!」
横島絶叫
更に小さくなる小竜姫
「言葉もありません………」
フー。
ちょっと落ち着いた横島。
「な、なら自力で再建するのはどうですか? 前に逆鱗に触れて壊した時に美神さんが『50億もあれば1週間で再建できる』って言ってたんじゃ。」
第2案を提案する横島
「それが、断末魔砲で宝物殿まで消滅してしまって……」
小竜姫の返答で、第2案は消えた。
『この世は金よ!金なのよー!!』
亜麻色の髪の某守銭奴の言葉が思い出される。
「じゃ、じゃあ気長に順番を待つしかありませんね。ハッハッハー……」
「そ、そうですね。ホッホッホー……」
空しい笑い声が居間に響いていた。
その後は3人で夕食を食べ、一緒に入るとだだをこねるパピリオを何とかなだめて入浴し、パピリオの部屋でパピリオが寝付くまでゲームステーションに付き合わされた。
「うーん、ヨコシマー。もっと遊ぶでちゅ……」
寝言を言うパピリオをベットに寝かしつけ、
「お休みパピ。いい夢見ろよ。」
一声掛けてから部屋を出る。
トイレで用を足し、横島が使用する部屋へと向かう。
部屋の前には人影があった。
「あれ? 小竜姫様どうしたんですか?」
小竜姫は心配そうな顔で横島に尋ねる。
「横島さん。大丈夫ですか? 昼に聞いた話では、よく眠れないとのことでしたので。」
「ああ、そういうことですか。まあ、絶対大丈夫とは言えませんが、ここ(妙神山)に来たおかげで少し光明が見えてきましたから。久しぶりに小竜姫様やパピの顔も見れましたし、気持ちは落ち着いています。」
横島はそう笑顔で小竜姫に答える。
「そうですか、判りました。では、お休みなさい横島さん。」
「はい、お休みなさい小竜姫様」
横島は部屋へと入る。
ベットに潜り込み、『お休みルシオラ』と声を掛け眠りについた。
翌朝、小竜姫はパピリオを起こし、朝の修練を済ませ、朝食の準備をしていた。
「うー、おはようございます小竜姫様。」
そこへ横島が入ってくる。
「あら、おはようございます横島さん。良く………は眠れなかったみたいですね。」
「いえいえ、これでも眠れた方ですよ。前に比べればね…」
「…そうですか。もう少ししたら朝食です。待っていて下さいね。」
「はい。あのーそういえばパピリオは何処ですか?」
「パピリオなら朝の修練後の清めの行水をしています。横島さんも顔を洗って着替えてきて下さい。」
「えっ、そうなんですか。はい、わかりました」
頭を掻きながら台所を出る横島、クスクス笑って見送る小竜姫だった。
朝食の並んだデーブルを囲む3人。おいしそうな匂いがあたりに漂っている。
「それでは。」「「「いっただきま『こんにちはなのねー』………
謎の鞄を尻に敷き、突然空中から降ってくるヒャクメ。
「ヒャ、ヒャクメあなた。」
「あー、ナイスタイミングなのねー。お腹も空いてたし、いただきまーす……モグモグ」
「ペス! 何をしてるんでちゅか!」
焦る小竜姫、怒りのパピリオ、のーんびりマイペースなのはヒャクメだけ。
「モグモグ、ズズー、ごっくん。いい加減ペスは止めてもらいたいのねー。えーと、ところで横島さんは?」
「いい度胸だな! ヒャクメ!」
地の底(よりは少し上か?)から怒りの声が聞こえる。
「えっ、よ、横島さんモグモグ、だ、大丈夫ー?ごっくん」
『先ずはどけー! そんで俺の朝飯を食いながら喋るなー!!」
ようやく横島の上からどくヒャクメ、でも右手の箸、左手の茶碗は放さない。
「おっ、お前なー! 鞄をどけもせずに茶碗から手を放さないとは、後でお仕置きしちゃる!」
「まあまあ、かつては一緒の部屋で過ごした仲じゃない。そんなことくらいで怒らないのねー。」
「本当ですか? 横島さん。」
小竜姫の雰囲気が少し怖い
「あほー!! それは逆天号の檻の中で、しかもほんの数時間だろうがー!」
「ヒャクメ♪」
神剣に手をかけたまま、小竜姫がヒャクメの方を向く。これ以上ないくらいの笑顔で。
「ご、ごめんなさいなのねー。もうふざけるのは止めるのねー。」
「まあいいでしょう。さあ、朝食を食べましょうか。」
「小竜姫様、俺の分まだ有りますか?」
「はあー、少し待っていて下さい。」
「どうもすいません。」
「まったく横島さんは。小竜姫に迷惑かけちゃダメなのねー」
キレる横島
「お・の・れ・の・せいだろうがー!!」
「そうでちゅよペス! あんまりヨコシマをからかうと霊波砲の的にしまちゅよ。」
「わっ、分かったのねー。」
無事(?)に朝食も終わり、居間で話し合いが行われた。(ちなみにパピリオは修行中である。)
「横島さん、事情は昨日のうちに小竜姫から聞いているのねー。」
「そうか。で、俺の体は調べてもらえるのか?」
「もちろんなのねー。霊力、霊質、霊基構造…。調べる内容はたくさんあるのねー。」
「じゃあヒャクメ、早速頼む!」
「分かったのねー。それじゃあ横島さん、服を脱いでベットに横になって。」
「脱ぐー! 全部かー?」
「違うのねー。下着は着たままで良いのねー。ただし、金属物や他人の霊力を帯びた物は全て外してもらうのねー。」
「…分かった。……………これでいいか?」
「はいOKなのねー。じゃあ調べ始めるのねー。データ収集に2〜3時間は掛かるから、リラックスしていてなのねー。」
ベットに横たわる横島の横でヒャクメが怪しげな機器を操作している。
(ふー! ヒャクメのやることだし、本当に大丈夫かな?)
横島の心配をよそに、データ収集は終わった。
「横島さん、もう起きて服を着て良いのねー」
「あっ、ああ。でさヒャクメ、何か分かったか?」
「横島さん。私は情報分析官だけど、霊質や霊基構造の細部までは分からないのねー だから今収集したデータは神界の専門家に分析してもらわなければならないのねー」
「……そうか。何日くらいかかるんだ?」
「それは私にも分からないのねー。それに本当なら、問題の精液のサンプルも欲しいところなのねー」
「なっ! ヒャ、ヒャクメそれは!」
「心配しなくて良いのねー。横島さんの想いを無視したことはしないのねー」
「お、脅かすなよーヒャクメ。」
「クスクス、ごめんなさいなのねー。じゃあ、そろそろ小竜姫を呼びましょうか。きっと部屋の外で心配してるのねー」
ヒャクメが部屋の扉を開けて、声を掛ける。
「小竜姫ー! 終わったわよー!」
慌てたように小竜姫が部屋に入って、横島に話しかける。
「横島さん! 大丈夫ですか?」
それに笑顔で横島が応える。
「ええ大丈夫です。どこにも異常はありませんよ小竜姫様。」
「よ、よかったー 心配したんですよ。」
「小竜姫も何げにひどいことをいうのねー」
頬を膨らまし、怒っているヒャクメ。
「ごめんなさいねヒャクメ。」
頭を下げて小竜姫が謝る。
「まあいいのねー。それよりもうお昼でしょ、お腹空いたのねー」
「そうですね。お昼ご飯にしましょうか。横島さんも食べますよね?」
「もちろんですよ、小竜姫様。」
午前の修行を終えたパピリオを含めた4人で昼食を摂る
横島の失敗談などを聞きながらの楽しい昼食だった。
「うにゅー」
パピリオが眠そうに目をこすっている。
「どうしたパピ。眠いのか?」
横島が心配そうに尋ねる。
「横島さん、パピリオは今精神面の修練を多く行っているので、その心の器を大きくするために、お昼寝の時間を設けているんです。」
「へぇー、そうなんですか小竜姫様。じゃあパピ、少しお昼寝してこい。」
「うーヨコシマ、あたちをベットまで抱っこして行くでちゅ。」
パピリオの駄々に横島は笑って応える。
「分かった、分かった。じゃあ行くぞ。」
パピリオを【お姫様抱っこ】で部屋まで連れて行く横島。
それをクスクス笑いながら見送る小竜姫とヒャクメ。
「ふふ、パピリオも横島さんの前では子供ですね。」
「いつもの無理しているところが無くて、とっても幸せそうなのねー」
二人が二杯目のお茶を煎れたところに横島が戻ってきた。
「いやー、まいりました。なかなかパピが放してくれなくて。」
「クスクス、お疲れさま横島さん。お茶のお代わりはいかがですか?」
「あ、いただきます。」
少しの間、ほのぼのとした空気が流れる。
小竜姫が口を開く
「それでですね横島さん、これからなんですけど、つ・い・で・の霊力を安定して出せる修行に入りたいんですけど♪」
輝く笑顔の小竜姫、目さえ見なければ。
(まだこだわってたんかい!)
「そ、そうですね。真の目的である霊力の修行に入りましょう!!」
心の中で毒づきながらも、リカバリーに挑戦する横島。
「あらそうだったんですか? てっきりつ・い・で・の修行だと思っていました♪」
「しょ、小竜姫様ー 機嫌を直して下さいよ。」
「大丈夫ですよ横島さん。例えつ・い・で・の修行でも、私が全力で教えますから♪」
(その語尾に付けた音符は止めい!)
などと、妙なところに突っ込みながら、横島の挑戦は失敗に終わった。
場所は変わって、修行場である。
準備運動をする横島、それを眺めている小竜姫、謎の鞄を開けていじっているヒャクメ。
………………ヒャクメ?
「あのー、小竜姫様。何故ここにヒャクメが居るんですか?」
「それはですね、横島さんの現時点の霊力を数値化するためです。」
「数値化ですか?」
「はい。煩悩を使用した最大霊力を測定しておかないと、煩悩を使用しないで霊力を安定して出すための目標値が定まりませんから。」
それを聞いた横島は固まる。
「まっ、待って下さい小竜姫様。それって俺に【煩悩全開】を使えということですか? か、勘弁して下さい。それをやったら、思いっきり【暴発】してしまいます。とても抑える自信がありません。」
横島は半泣きで話す。
はたと気づいた小竜姫とヒャクメの二人。顔は真っ赤である。
「そ、そうでしたね。それを抑えるのも目的でしたね………。では、解決策が見つかるまでの間は、パピリオと一緒に精神面を強化する修練をして下さい。」
何とか第2案(?)を話す小竜姫。
聞いた横島もいくらかほっとする。
「分かりました。何とかがんばってみます。……………………いつまで保つか判りませんが。」
しばらく言葉も出ない二人だった。
「ちょっと思いついた方法があるのねー」
「えっ、ヒャクメいったい何を?」
驚いた小竜姫が尋ねる。
「思い出して欲しいのねー 横島さんには文珠という技があるのねー」
「文珠ー。確かにあるけど一体どう使うんだヒャクメ?」
横島も興味を示す。
「えへん。つまり溢れそうなら、文珠でその器を大きくすればいいのねー そうすれば解決策が見つかるまで何とかなるのねー」
横島はその状態を想像する…………。
「ヒャ、ヒャクメー!!! 俺は信楽焼の狸かー!!!!」
終わり
『あとがき』
どうも、「小町の国から」です。
拙作を読んで下さった方々、どうもありがとうございます。
書いている間に論点がずれてきまして、表現力のなさを痛感しています。
未熟な前作に感想等をいただけて大変感謝しています。今後この作品が続くのか、かなり難しいところです。
なんせ暖めていたネタを使い切ってしまったので。
でも気分を一新し、また挑戦したいと思います。
その時はよろしくお願いします。
レス返しです
九尾さん
登場している横島本人は真剣なつもりなのですが、何せ横島を取り巻くキャラ達がおもちゃにしたがるもので、こんな状態になっています。
高沢誠一さん
はい、私もそう思っていました。でも数多い横島SSにも、こんな展開の作品を見たことがない物で、何とか一つの作品にしてみたかったんです。ちなみに感染源D,さんの「横島プロポーズ大作戦!!」は残念ながら読んだことがありません。数多くの作品がこの作品から派生しているというのに。
まさのりんさん
その可能性を指摘されてしまうと私も苦しいです。まあ、拙作の横島は超純情でそこまで考えが及んでなかったということで。
偽バルタンさん
襲われはしませんでしたが、おちょくられはしました(特にヒャクメ)。力量不足により、確かに笑えるほど楽しくは書けませんでしたが、苦笑くらいをしていただければ幸いです。
水カラスさん
うーん夢の内容ですか。まあきっと、横島の横島による横島のための夢でしょう(笑)
武者丸さん
そうですね。むしろ武者丸さんのおっしゃる可能性の方が高いのかもしれません。ただ、拙作の横島はルシオラの転生を望み、幸せにすることを第一に考えているということなのです。
初(略)さま
横島が賢ければあるいは思いついたかもしれませんが、学校にはほとんど行かない、見る・読む物は頭にエロの2文字がついたものばかり。きっと教えてでももらわなければ考えつかないでしょう(笑)
siriusさん
Danさん
それに近い作品は、KAZ23さんが名作を書かれていますので、私にはとても書けません。
コピーキャットさん
私はその書物を読んだ経験がないもので、拙作にはその設定は活かせないかもしれません。それにやはり横島には、幸せな結婚生活を送ってもらいたいです。ちなみに、一時期私の遊ぶ名前変更可能なギャルゲー・エロゲーの主人公の名前は、全て横島忠夫でした。
片やマンさん
そうなんですよね。あの時だけは作者も少し厳しいなーと思いました。でも考え方を変えれば、そのおかげで、ルシオラが幸せになるSSが多く出てきたのですから。やはりルシオラーの一人としては、これからも多くのSSを漁ろうと思います。
名称詐称主義さん
『帰ってきた横島』は名作でしたね。私もKAZ23さんのようなアイディアが湧いてきて欲しいものです。
MAGIふぁさん
すいません。私はそのSSは読んだことはありません。そんなに似ていたでしょうか? 以後はもっとアンテナを張り巡らせてから作品を書きたいと思います。