「いたりやって空港ってとこにそっくしですね。」
「・・・・・・・いや、ここは空港だっての、おキヌちゃん。」
「Excuse me.」
「はう!! ワタシニホンジン、イタリヤゴワカリマセン!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、英語だって、唯ちゃん。」
見ての通り、俺達はイタリアに居る、・・・・・・・・約一名かなりテンパっているが。
前回の除霊から帰った後に、前の歴史通り、唐巣神父の救援の願いを聞いた美神さんに連れられて、ここに来る事となったのだ。
「あの、良いんですか?」
「良いの良いの、あの二人は横島君に任せりゃOKよ。」
空港に到着した俺達を迎えにきたピートと、ニヤニヤしながら面白そうにこちらを眺めている美神さんが、そんな事を話しているのが聞こえてきた。
・・・・・・・・いや、かなり助けて欲しいんですけど。
「あう〜〜〜〜〜〜〜〜〜、忠夫さ〜〜〜〜〜〜〜ん。」
あああああ、そんな目をうるうるさせてこっちを見んといてくれんか、唯ちゃん。
の〜〜〜〜〜〜〜、しがみ付かれた腕から柔らかい感触が〜〜〜〜〜〜!
「・・・・・・・・今回は素で追い詰めてるわね。 良いわよ、唯ちゃん(にやり)」
「・・・・・・・・・・・・・先生。 この人達に任せて、本当に大丈夫なんでしょうか?」
* * * * * *
「島までこれで行くの?」
結局最後まで助けてくれんかった美神さんが、そんな事を言った。
・・・・・・せめて、おキヌちゃんの相手だけでもしてくれたらえーのに。
「いえ、途中で船に乗り換えます。 なにしろ何もない島なもんですから。」
えーっと、すでにエミさんやマリアがいるはずなんだが。(カオスはどうした!)
お、居た居た。
「あ、エミさん。 その節はどうも。」
唯ちゃんも気付いたらしく、挨拶しながら近づいて行った。
「あ、あんたは! ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」
あ、逃げた。
「すいませんごめんなさい許して見逃して、すいませんごめんなさい許して見逃して、すいませんごめんなさい許して見逃して・・・・・・」
「え、エミさん! どうしたんですか!?」
「・・・・・・唯ちゃん、そっとしてあげな。」
つーか、君が離れれば良くなるから、・・・・・・・・・・・・・・でも、やっぱりトラウマになってたんだな、エミさん。
まあ、当たり前つえば当たり前なんだが。
「なんじゃ、さわがしいの〜〜〜〜。」
「ああ、あなたは! あの時の変態老人さん!!」
お、今度はカオスのじいさんの登場か。
「ぬっ、お前は!・・・・・・・・・・・・・・・・・・誰だったかの?」
ドゴシャッ!(横島と唯のこけた音)
おひ、本当にボケたんかい、じいさん!
「美神除霊事務所・の・横島・唯さん・です。 ドクター・カオス。」
「お、マリア。 どうしたんだ、じいさんは? なんか、様子が変だが。」
「はい。 つい先日・ドクター・カオス・極度の下痢・なりました。 それ以来・痴呆が・進行した・様です。」
ああ、俺が原因か・・・。
すまんじいさん、つい悪ノリしちまったんだ、許してくれ。
「あ〜〜〜〜〜〜、横島君だ〜〜〜〜〜〜!」
「あ、冥子さん。 冥子さんも呼ばれてたんですか?」
「あ、唯ちゃんもいる〜〜〜〜〜。 うん、冥子も呼ばれたのよ〜〜〜。」
そう言いながらも、冥子はロック・オンした俺の方に来て、そのまましがみ付いた。
この子の場合、本当に子供相手って感じがするんで、微笑ましいとしか思えなんな。
・・・・・・・・・でも、柔らかい感触が腕に当たってるのは勘弁して欲しいです。
「む、何をニヤけてるんですか、忠夫さん。」
それを見て、少しむくれたようになった唯ちゃんが反対の方にしがみ付いてきた。
・・・・・・・・・当然のように、柔らかい感触が押しつけられてます。
「唯さんも冥子さんも、そんな事してたら横島さんが座れませんよ。 離してあげてください。」
おキヌちゃん、そう言いながら、何故に肩の上に乗っかってるんですか。
「ふふふふふ、面白くなってきたわね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はあ。」
「ピートー。 エミ怖いの、助けてーーー。」
「マリアや。 飯はまだかのー。」
「1時間前・食べたばかり・です。 ドクター・カオス。」
なんか、収集つかなくなってきたな、・・・・・・・・て、もう離陸しとるやないけ、気付かんかった(汗)
つーことは、そろそろ
ザザザザザ ズガガーーーーーッ 来たーーーーー!
「蝙蝠か!! しまった、昼間と思って油断した! げっ。」
おお、早速パイロットが逃げとんな。
なんであの蝙蝠達は、パイロットを襲わんのやろな〜〜〜〜〜。
「横島君! 何かないの、この状況をなんとかする術か技は!!」
ん〜〜〜〜〜、文珠はまだ見せんほうがいいしな〜〜〜〜。
「この前使った浄瀑布なら、こいつら位一発でどうにかなるっすけど。」
「じゃあ、さっさと使って!」
「いや、この機体がばらばらになっちまいますよ。」
「だったら、空飛んでこの機体を支えるとかしなさい。」
「いや、流石に(文珠無しで)こんな機体を支えながらじゃ飛べませんよ。」
「て、飛ぶ事はできるの!!」
「あの〜〜〜〜〜、美神さん、忠夫さん。 二人が漫才してる間に、かなりまずい事になってきてるんですけど。」
唯ちゃんが声をかけてきたんで振り向いて見ると、機体に大穴が開いていた。
・・・・・・・・じいさん、やっぱ行っちまったか。
* * * * * *
「遅かった
ドゴン ゴファオ!」
前の時と同じように船を徴発(唯ちゃんは気絶させといた)して島に着いた所で、カオスの奴がそう言って近づいてきたんで、とりあえずサイキック・ソーサーをブチかましといた。
「なにすんじゃい、小僧!」
「うっさいわ! 事態をややこしくして出ていった奴が、・・・て、元に戻ったんか、じいさん。」
「んん、確かお主は横島忠夫じゃったな。 美神令子の事を調べとった時に見たわい。 ここ数ヶ月の記憶があいまいなんで、元に戻ったとかはわからんのじゃが、マリアから聞いた話から考えると、戻ったと言う事になるのう。」
マリアに引きずられてった時に、記憶がぶっ飛んだって所かな。
んなんで戻るなんて、あいかわらずお手軽な脳みそやな。
「それより、マリアのジャイロによれば、ここはブラドー島のはずじゃが、そっちのおまえさんの師匠とやらはどこにおる? 村を見つけたが、人っ子ひとりおらんぞ!」
「なんですって!? 村の人もですか!? 一人も!?」
ん、やっぱあのボケ親父にやられたあとか。
「食いもんだけはこんなにあったぞ! ほれ。」
おひ、じいさん。
んな事やってたら、唯ちゃんが・・・
「カオスさん! それは空き巣泥棒って言うんです!!」
あ、やっぱ始まったか。
おーー、ヨーロッパの魔王と言われたじいさんが、現代の女子高性に正座させられて説教食らっとる。
何気にシュールやな。
「くっ!」
「あ、ピート!」
村の方へ走って行ったか。
「俺達も手分けして、手掛かりがないか探しましょうか。」
その俺の意見に反対者はいなく、何人かに別れて村の中の捜索に向かった。
* * * * * *
「このワインは自家製ね。 なかなかいけるじゃない」
「美神さん、まだ解決して無いんですから、ほどほどにしてくださいね。」
「キャンプみたい〜〜〜。」
「あまった食材をもらっていっても良いかの?」
「ピート、ちっとも食べてないじゃない。 はい、あ〜〜ん♪」
「いや、僕は今食欲が・・・・」
あの後に合流したピートに案内されたあいつの家で飯を食っている訳だが、・・・・・・・・・緊張感の一欠けらも無い風景やな。
「奴らは今夜、必ずここへ攻めてくる筈です。 下手に動くより、ここで応戦した方がいいと思いますが・・・・」
「夜明けを待って反撃するわけね。 いいんじゃない」
飯を食い終えた美神さんとピートがそんな事を話していた。
さて、そいではっと。
「んじゃあ、俺はちょっと見まわりにでも行ってきますわ。」
「あ、じゃあ私も一緒に。」
「いや、何が起こるかわかんないから、単独の方が動きやすいよ。」
俺はそう言って、同行を申し込んできた唯ちゃんに断りを入れた。
実際、単独の方が動きやすいし、・・・・・ちょっとした目的もあるし。
「じゃあ、そう言う訳で。」
ピートが自分が変わりにやると言っていたが、腹ごなしの散歩代わりと日課の鍛錬もついでにやっから、と言ってこちらも断っておいた。
* * * * * *
十分後
「ふふふふふふ、やっぱり俺の目に狂いはなかったようだな。」
コルクのふたを抜いたビンから匂ってくる芳醇な香りに、思わずほくそ笑みながらそう呟いてしまった。
最初に手分けして捜索していた時に発見したのだが、この一本は他のモノとは比べ物にならないほどの出来映えなのだ。
ワルキューレやべスパにはワインを、小竜姫様や老師には日本酒の味を覚えさせられていたので、たとえコルク越しとは言え、それくらいの見分けはつくようになっているのだ。
「唯ちゃんに見つかったら、怒られてまうからな。」
さっきのカオスのじいさんみたいに、正座させられてしまう事間違いなしだかんな。
「さて、んな事より、今度は味のほうをば。」
そう呟きつつ、同じく取ってきたグラスに、そのワインを注ぎ込み。
さあ、いざ、桃源郷へようこそや!(意味不明)
「いただきま〜〜〜〜〜〜
ドゴゴゴゴン ぬお!」
今まさに口の中にワインを注ぎ込もうとした瞬間に、いきなり霊波砲が何発かこっちに飛んできた。
とっさに避けたが、危なかった。
ワインに夢中になるあまりに、注意が散漫にまって、た、・・・なっ!?
「くくく、今のを避けるとは、なかなかやるようだな。 やはり、お前が今日来た人間の中で、一番の実力者のようだ。 喜べ! 世界の王となるこの私の部下にしてやるのだからな!!」
ブラドーの野郎が何か言っているようだが、んな事はどうでも良い。
重要なのは、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・奴の足元で、あのワインのビンが割れていることだ。
ああ、キャサリン(名づけてたんかい!)そんなになってしまって・・・・、仇は取ってやるからな。
そう考えながら俺は手の中に双文珠を作り出した、込める文字は・・・・・
[電/鋸]
「くっくっくっ、・・・・・・・・・ダーーーーーーーイ♪」
* * * * * *
唯SIDE
「遅いですね、忠夫さん。」
アレから大分時間がたったのに、一向に忠夫さんが帰ってこないので、心配になって美神さんにそう尋ねて見た。
「ん〜〜〜〜、まあ、鍛錬もしてくるって言ってたから、これっ位は大丈夫でしょ。 それに、横島君なら、どんな相手でもむざむざやられたりしないでしょうし。」
美神さんの言っている事はもっともだけど、心配なものは心配だ。
冥子なら一緒に行ってくれるだろうけど、もう完全にお眠の状態だし。
かといって、一人で行って自分がやられてしまっていたら、どうしようも無いし。
「僕が一緒に探しに行きましょうか?」
「え、良いんですか?」
どうすべきか悩んでいた私に、ピートさんがそう言って声をかけてくれた。
う〜〜〜〜、良い人だ。
「それじゃあ、行き 「た、助けてくれ!!!」 て、へ?」
早速外に出ようとすると、いきなり外から人が入ってきた。
・・・・・・・あれ、なんか、ピートさんに似てないかな。
「き、貴様はブラドー!?」
「ブラドーって、敵の吸血鬼ですよね! なんでこんなにピートさんに似てるんですか!?」
何事かと近寄ってきていたおキヌちゃんが、ピートさんにそう尋ねた。
「・・・誤解の無いように先生に会うまでふせようと思っていたんですが。 僕の名は、ピエトロ=ド=ブラドー。 ブラドー伯爵は僕の父です。」
って言う事は、ピートさんも吸血鬼?
でも、
「ピートさんは昼間でも平気でうろついてましたよね?」
「恐らく、バンパイア・ハーフという奴じゃな。 吸血鬼と人間のハーフか。」
「・・・・・そうです。」
「まあ、んな事はどうでも良いとして。 この馬鹿は、なんでいきなり助けてくれって言ってきたの。」
そう言えばそうだ、と全員が思って、問いただそうとすると、なにやら不安を誘うような歌声が聞こえてきた。
「みなごろしーーー みなごろしーーー ひとりもーー 残さねーーーー」
「・・・・・これって、忠夫さんの声ですよね。」
「ええ、多分そうね。」
とりあえず、私達は外に出てみることにした。
すると、そこには、
「ラララルラ ジェノサイド 」
ゆらりゆらりと幽鬼のような歩みで、
「リリリルリ 血のオーシャーン 」
不気味なぐらい爽やかな笑みを浮かべつつ、
「レッツビギンさ キリング ターイームーーーー」
微妙に血が付いた電気のこぎりを構えた忠夫さんの姿があった。
「た、忠夫さん?」
「おお、唯ちゃん。 悪いんだが、そこにいる吸血鬼の馬鹿をこっちに渡してくれないかい。」
い、一応、いつもの忠夫さんに見えるんだけど。
「えーーっと、横島君。 これをどうするつもり。」
美神さんがそう尋ねると、忠夫さんはさらに笑みを深めて、
「生まれてきてごめんなさいと思うほどの、生き地獄を味合わせます♪」
いや、♪じゃなくて、♪じゃなくてーーーーーー!!
「ぶ、ブラドー、貴様何をやったんだ!?」
「い、いや、何もやってないぞ! 強いて言えば、奴が飲もうとしていたワインのビンを割った事ぐらいだ!」
ピートさんとブラドーのそんな会話が聞こえてくると、忠夫さんは笑いながらブルブルと震えだした。
「“ぐらい”? “ぐらい”だと。 くっくっくっ、貴様はアレが、キャサリンが“ぐらい”で済むようなワインだと言うのか? あの芳醇な香りを湛え、宝石が如き輝きを見せた、キャサリンが!!」
・・・・・いや、キャサリンって。
とりあえず、もはや忠夫さんが止められない領域にいる事はわかったけど。
美神さんとおキヌちゃんの方を見ると、同じ意見のようだし。
「もはや、語る事は無い。 大人しく散れーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
ギュイイイーーーーーーーーーーーーーン
電気のこぎりを唸らせながら、忠夫さんが宙を飛んだ。
・・・・・・・ブラドーさん、そして、とばっちりを受けるっぽいピートさん、迷わず成仏してくださいね。
南無南無。
「「ギニギャアーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」
「ぴ、ピート! れ、令子、あんたの所の事務所はあんなんばっかなワケーーー!!」
「いや、まあ、なんと言うか。」
「あ、あははははは。」
「とりあえず、とばっちりがこっちに来る前に、逃げた方が良いと思うぞ、ワシは。」
* * * * * *
「空しい勝利だったな。」
「だったらやるな!!」
帰りの飛行機の上で、そんな事を言う忠夫さんに、美神さんが突っ込んだ。
ちなみに、ピートさんはボロボロだったんで、ブラドー島に残って、エミさんはその看病をする為に残ってたりする。
「あーー、えっと。 そう言えば、なにか忘れてるような気がしませんか?」
「ん、そうね。 なんか忘れてる気分だわ。」
「確かに、なにか有ったような気が。」
「え〜〜〜〜〜、吸血鬼退治の他に、何かあったの〜〜〜。」
「そう言えば、美神さんの師匠って人は、どうしたんですか?」
「「「あ。」」」
「ふふ、僕はね、自分がこう言うキャラだってわかってたよ。 でも、最後まで誰にも気付かれずに、こんな風に終わるなんて、あんまりじゃないか。」
ブラドー島の地下通路の片隅で、そんな風に愚痴りながら酒を飲む、幸も薄けりゃあ毛も薄い男がおったそうな。
「ちくしょーーーー、ちくしょーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
後書き
ブラドー編しゅーーりょーーーーー。
今回、冥子ちゃんがあまり動かせなくて、ちょっと残念。
でも、彼女を動かすと、話が収まりきらなくなりそうなんで、今回はこれぐらいで。
さてと、これで次回からは、妙神山編、つまりは過去編の始まりとなるのでござい。
まあ、過去編となるのは、正確には次々回になるんですけどね。
そういやあ、この『素晴らしい日々へ』なんですが、どうやら完結までに100話超えそうっすわ。
SS初挑戦で書き始めた作品だったのに、なんつうもんを書いてんだか。
自分がどれだけ無謀な馬鹿だったか、思い知らされましたわ。
ま、気長に最後まで書き続けるつもりなんで、良ければ御付き合いください。
では、次回にてまた。
さいならーーー♪
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