お口の恋人
第三話 ほわいとでぃんご
「へー 結構良い感じじゃない」
人骨温泉ホテルに出没するムサイ男の幽霊を退治するためにやって来たGS美神令子とその助手、横島忠夫。
「あの〜 美神さん? なんでもう脱いでるんですか?」
「そういう横島クンはなんで着てるのかな?」
バスタオルを体に巻き、頭も手拭でまとめてある令子。(露出度は普段と変わらず)いつもの格好に巨大なリュックを背負っている横島。
「これから除霊するんじゃなかったんスか!」
「なんだかんだでゴニョゴニョが濡れてて早くお風呂入りたいのよ!」
「そ、それは仕方ないッスね」
ここまでの道中、ヤリっぱなしでしたし。女性としては早く何とかしたかったんです。下着は毎回代えてたんですけどね。使用済みはつい習性で横島のポッケの中だったり。
「ほら、見鬼君もこの辺に霊の気配を感じてないし。どうやら自縛霊ではないみたいね」
見鬼の式の能力を模した索敵霊具を令子は事前にチェックしていた。ついでに『除霊中立ち入り禁止入ったら死ぬぜ?』と書かれた看板も立てて置いてある。
「なんだ、ちゃんとやる事はやってるんすね。そりゃそうだよなー すんませんした美神さん。じゃ、俺は素人が中に入り込まないように入り口見張ってます」
「アンタも汗まみれでしょ? ほら、脱いだ脱いだ!」
「あれ〜 お代官様〜 って! 立場が逆じゃあ!」
「あら脱がしたいの?」
「アンタ殆ど全裸やんか!」
令子の体にはバスタオルが巻かれている。しかしそれは令子のゴイスバデーを包みきれず、胸やお尻がさらけ出された状態だ。今、欲望に流されたら横島はかなりヤバイ。体力はもう枯渇状態に近いのだ。食事は取ったので後は休憩と睡眠が必要なのだ。生きる為に。
「当たり前でしょ? 温泉なんだから。ほらほら〜 お姉さんに全部任せなさい!! ってアラアラ……もう、元気いっぱいじゃない♪ うりうり」
「仕方ないんや! 脳と体と魂には逆らえんのやああ!!」
そう、令子の体の魅力に逆らう事など出来ようも無し。どんだけ抱いても馴れる事なんてありませんでした。これが若さか?
「そっか〜 ん〜 そうね、たまには私がサービスしてあげよっかな。ね、胸で体を洗ってあげよっか?」
「どこでそんな知識仕入れたんですか!」
「ん? アンタ妬いてんの? 大丈夫よ。ほら、横島クンの私物の雑誌に書いてあったのを研究してみただけだから」
「私物ってエロ本か! 何時の間に…… そういやこないだ家に帰った時、部屋が妙に片づけられていたと言う怪異があったような」
現在横島は令子の自宅と事務所に泊まりっぱなしである。食事はおろか着替えまで彼女が用意してくれるのだ。たいした尽しっぷりといえよう。ゴッツい独占欲の現れでもあるのだが。
「人の好意を怪異扱いすな! あ、そういやその時さ、勝手にかかって来た電話に出ちゃったんだけどアンタの妹からっての。なんか怒鳴られっぱなしでまともな会話できなかったんだけどさ」
横島に2つ下の妹がいる事は令子も把握している。件の電話のあと戸籍を調べたのだ。しかしその時の電話の相手が本当にその妹のものかは確められない。横島にちらつく他の女の影。なんか苛ついてその時の電話の件を横島に話していなかったのだ。
「あ、そういや定期連絡をずっとさぼってたな。お袋も怒ってだろな」
「定期連絡?」
「ほら、俺って無理やり一人暮しをしてまして。お袋や妹がいまだにそれに反対してんスよ。実は妹の奴が重度のブラコンでして。ここで離れんと兄離れできんとちゃうかアイツ」
横島の家族がナルニアという国に赴任しているのも令子は知っている。しかし妹がブラコンというのは初耳だった。まさか…… まさか!
「アンタ…… もしかしてその妹さんって霊能力があるとか?」
なんとか冷静に言葉を紡ぐ。微妙に声が震えてはいるが。
「多分あるんでしょうね。お袋もそうみたいです。美神さんのおかげで妹が妙に懐く理由も今じゃわかってんですけど。わかったからってどうしようもないみたいですし。やっぱ離れて正解だったんだなー」
「離れて正解? うん!! そうよ!! 兄妹なんてインモラルで不謹慎よ! あぁ、アンタがこっそりと妙な理性持ってて安心したわ」
現実は手遅れな事態が発生してるんだけど、知らなきゃそれで良いわけで。令子が受けた電話の内容が『この泥棒猫が!』『股にナスで栓すんぞゴラぁ!』『兄貴を返せ売女が!』といったものだったので少し、いやかなり心配していたのだ。
「本物の妹に萌えられるわけないッスよ。そんなのただの虚構ッス。夏場でもベタベタ抱きついて来たり、風呂あがりに裸でうろついたり、人の服かってに持ち出したり、あまつさえ勝手に人の日記を読むは出かけたら俺をストークするは! ごみ箱漁んなっちゅーねん! そこは男汁専用ボックスじゃ! ……すんません、なんか嫌な記憶の扉が解放されちゃって」
「…… ねぇ、本当に大丈夫よね? ね?」
「はは……勿論ッスよ。まぁ、ヤバイと思ったから逃げ出したのも事実なわけですけど」
変な汗を掻きながら視線を泳がす横島にかなり令子は不安を覚えた。今は離れているからよい。しかし、この妙に押しに弱い男の前にその妹が現れたら? …………殺る?
「ねぇ、しよっか」
「一度湯にあったりましょうよ。ほら、体冷たくなってますよ」
「や〜だもん♪ ん」
なんか色々不安な事を考えていたら幼児退行したご様子です。口調は可愛らしくもその濃厚な接吻は激しく情熱的なものですよ? 歯茎まで舐めまわす激しい舌使いです。
「はふ、ん……んむ」
『あの〜 お忙しい所申し訳ないんですけど』
「んむ!? ぷは! 美神さん! 幽霊です! なんかムサイ男の霊が居ます!」
半裸の横島を抱きしめながら、ギラリと視線だけでその霊を令子は確認した。もうちょっと力を強めればそれだけでこの霊は消滅したであろう、というくらい強い視線でした。
「で、アンタは何しに出たの?」
ここで心を怒りに任せたら、自分はとんでもない破壊活動を行う気がする。そう思って令子はなるべく自然に男の霊に話しかけた。
『くひぃ! じ、自分は明痔大学山岳部に所属していた者であります! 名前は』
「あんたの名前なんてどうでもいい。で?」
『そ、そうでありますか! で、では』
その山男の霊の説明によると、遭難して死んだんだけど自分の遺体が放置されたままなのが未練で成仏できないというのだ。
「どうするんすか? お札でちゃちゃっとやります?」
横島もさきほど山男に邪魔された事を多少怒っていた。が、良く考えたら命の恩人かも知れないという思いに至り、こっそりと感謝していたりもする。
「う〜ん、あれって一枚300万するのよね。ようは死体を発見すればいいのよね?」
『そうッス!』
「………………わかりました。俺が行ってきますよ。ま、こういう所で役に立っとかんと男が廃りますし」
「え? あ、そ、そうねがんばってね」
『自分がご一緒しますんで安心してください!』
令子は一緒に行くつもりだった。しかし、せっかくなんか自分に尽そうとする横島の気持ちを無下にする事も出来ず、寂しいが任せる事にした。
「いくぞワンゲル! ところで場所わかってんのか?」
『えっと、結構曖昧ッス』
「秋っつーても山は危険だしな。あ、美神さん、荷物持って行って良いッスか?」
「当たり前でしょ。ほら、携帯ビーコンも非常食も衛星通信機も対悪霊コンバットマグナムも出前一発ICBMボタンも持ってきなさい。あ、消滅式広範囲殲滅秘密爆弾は命から2番目の最後の手段だからね」
「うっス」
『なんでそんな物までもってんスか』
霊にたいする攻撃能力を持たない横島の為に、令子はこっそりと色々用意していたのだ。それこそ吸魔符よりも高価な道具なんだが。マグナムの弾一発でピザの大食い世界大会が開けるくらいなのだ。緋緋色金(日本産)に精霊石(ザンス産)や黄金火薬(エジプト出土)を使ってるし。多少過保護かもしれない。
「じゃ、がんばってね。帰ってきたらお楽しみのすっごいサービスしてあ・げ・る♪」
「う、うっス! 楽しみだなぁ」
「ってかさ、お前なんで温泉なんかに居たんだよ」
『自分がですか? そうですね、なんか温泉って男同士の裸の付き合いがあって素敵じゃないッスか! それでつい自分もそこに混ざりたくなって』
雪が残る山道を探索する横島と幽霊山男。横島はちょっと疑問に思っていたことを尋ねたのだが、どうやらそれは禁断の扉を開く鍵であった様だ。
「ま、まあ趣味は人それぞれだしな。あ、これ以上近づいたら霊も滅ぼす弾丸ぶち込むからな」
『そりゃないッスよ横島サン!! しかしまた山登りが楽しめるとは自分は感激ッス!』
自分に害がなければ男でもホモでも構わない。それくらい横島の心は広くなっていた。令子の存在が心の余裕を生んでいるからだろうか。
「おい、なんか吹雪いてきてないか?」
『山の天気は変わりやすいッス。あのアシュラマンも言ってたっス。しかしこれはビバークの必要がありますね』
「お天気デスマッチかよ! まぁ、休めるならなんでもいいや」
『じゃ、自分が用意するッス! らら〜らら おききなさい♪ やまおとこにゃほられるなよ〜♪』
南国?
「なんか久しぶりに落ちつくわ〜」
『横島サン、コーヒー出来たっスよ』
「あんがとな」
外はかなり吹雪いたきた。山男が立てたテントの中で、彼等はビバークしていた。なんか令子と離れて休憩するのがとても久しぶりに感じ、このような状況でも横島はリラックスしていた。彼には休息が本当に必要だったようだ。
『横島サン。俺嬉しいスよ。死んだ後もこうやって男同士、夜の山を過ごせるなんて!』
「おい、コイツが見えるよな?」
今にも飛びかからんとする山男をマグナムで牽制する。女性に攻め寄られる経験が生かされているのだ。女にはこんな事出来ないが男にゃ容赦せん。一方その頃、木陰からテントを見張る影が存在していた。
『昼間はやり方がまどろっこしすぎたんだわ。こんどはもっとストレートに!』
昼間、横島の前に現れた巫女装束の幽霊、キヌであった。
『血も通わぬ冷たい身体…… でもあの人の事を思うだけで胸やモニョモニョが熱く火照ってくる! これって運命ですよね!? アリですよね!? 別に幽霊とゴニョゴニョしちゃうお話なんてよくある事ですし! では…… キヌいざ参る!!』
『横島サーン! もっと身体を寄せ合って温まりましょうよ! これは命に関るッスよ!!』
「大丈夫だから黙れ!! ちゃんと懐炉を持っとるから!!」
激しい戦いを繰り広げる男と男。そこに熱き魂を持った少女が飛びこんできた。
『横島さん私を貰ってください!! 身体を貪り合いながら肉欲に溺れ魂までも溶け合いましょう!! さぁ、契りを!!』
『なんスかあんた!! ここは神聖なお山ッス!! ファッキン女! 女ゴーホームッス!』
「おいおい」
『貴方こそ誰ですか! ここはこれから神聖な肉欲の悪魔な横島さんと私の契りを交す聖域っていうか性域です! ホモ畜生は舌噛んで死んじゃえ!』
「おいおい」
『ぐがー!』
『むきー!』
「おいおい」
雨の日が続きます。それでもカレー博物館にいざ逝かん!(挨拶)
いや、近所なんですけどね。さて、今回はエロ少なめ。さすがに毎回ってのも飽きがきますしね。ところで、『横島妹』の名前をどうしましょう? 大樹来日の話はもう書いたのですが、その時も妹(不確定名)のままでいたんです。ここまで来たらずっとそのままで良いかな? では次は夜頃に現れます。
部屋掃除をしたらヴァンパイアパニックが出てきた。未開封。シマッタと思ってプレイ。えっと…… 楽しみだなベルセルク。