前話したわね、以前さまざまなジャンルのエキスパ−トに色々と鍛えられたって」「ああ」
「その中に居たのよ。ヘンなヒゲにヘンなサングラス付けたオ−ルバックの男が」
「・・・・・・なるほど」
燃え上がる炎の中から姿を表すダロスを眺めながら、二人は暢気な会話を交わしていた。
「大丈夫か?」「ええ、なんだったらまだ寝ててもかまわないわよ」
後ろからかけられた声に、振り向くことすらせず答える。
かろうじて、というレベルではあったがそれなりに立ち直った清麿とガッシュの赤本コンビ。
正直彼らの力量のみならずその精神に、心の強さに敬服しかけている。
彼らが味方で嬉しいと思う。
彼らが(少なくとも今は)敵でなくて何よりありがたく思う。
そして・・・「『ザケル』!」「『ディオガ・グラビトン』!」
その同時攻撃を、しかしダロスは「『アムゼリオン』」岩の鎧を身にまとって防ぐ。
「くっ」「まだ駄目か」「うぬぅ」歯噛みする面々の中でニヤリと笑う者ひとり。
「どうやら勝ち目が見えてきたぞ」「「?」」 「・・・そういうことか」
「どういうこと?聞かせて欲しいわね、高嶺清麿君。自分だけで分かってないで聞かせなさいブラゴ」
「さっきからそのケはあったが、あいつは今こちらの呪文を防いだ。つまりはそういう事だ」
「・・・わたくしが暴れる前に、わたくしが分かるように言いなさい」
「つまりは、こういうことさ。これまでヤツは魔力の効率の悪い『直接魔力放出してこちらの攻撃を防ぐ』
という防御をしていた。しかし今あいつは鎧を纏った。
つまり魔力が枯渇している・・・とまでは言わないが
少なくとも余裕満々とは自分でも言えない状況ってことだ」
「なるほどね。ようやく分かったわ」「わたしはわからぬのだ!」
「・・・ようするにさっきまでのあいつは殺しても死ななかったが、今のあいつはあともう何回か殺せば死ぬんだ。わかったか」
「ウ、ウヌ」
「行くぞ!」
ドシャア!地面に叩きつけられるガッシュ。ボロボロのブラゴ。
「さすがに疲れたな。これでどうだ!『エムルロン』」
ダロスの右拳が岩に包まれ、そしてにょ−んと伸びた。さしずめ『未来忍者ゴ−ムズ』のように。
「何ィ!」ブラゴの腹部にメリ込んだその拳は、そのままシェリ−にも叩き込まれる。
「そこで『ウォケル』」メリ込んだままの拳から放たれた衝撃波は、さしもの強者ブラゴとシェリ−を悶絶させる。
「『ザケル』」放たれた電撃を飛びのいてかわすダロス。
「さて、これで今度こそ君達だけだ。赤い本の二人よ」
「く・・・」
「まだだ。少なくとも俺たちはまだ負けていない。
負けていない以上俺たちは戦う!いくぞガッシュ!『ラウザルク』」
天空よりの雷鳴を受けてパワ−アップしたガッシュは、ダロスに飛び掛る。
だが、ダロスも負けてはいない。
「『オルゴ・ファルゼルク』」突如湧き出したヒトデを体に貼り付け、殴りかかるガッシュを受け止める。
「えいえいえいえいえいえいえいえいえい」
「でやでやでやでやでやでやでやでやでや」
某少年マンガならでっかく見開きで扱うであろう強烈な殴り合い。
ガッシュが殴る!ダロスが受け止める!ダロスが肘打ちを繰り出す!まともに顎に食らうガッシュ。
どうやらパワ−は互角でも経験の差から来る格闘技術はダロスが上のようだ。
わずかにステップバックしたガッシュは、強烈な頭突きをダロスの腹部に繰り出す。
「ぐむっ!」
速い右フックをダロスの肩に繰り出すが受け止められ、逆にボディブロ−を食らう。
「ガッシュ!それでいい、それでいいんだ!」
赤い本の持ち主の声が聞こえる。
「!」気付くと、体表面に貼り付けたヒトデの殆どが破壊されている。
「その術はわたしの友が用いた術。おぬしなどが使うことは許さぬ!」
「くそっ」『アムゼリオン』の鎧のせいで今ひとつ動きにキレが無い。
ガシッとまるでどこぞの平面ナントカのように胸にへばりつくガッシュ。
フと見ると、本の持ち主がこちらを指差している。あのラウザルクという術は発動している間は
他の術が使えないハズ・・・他の術・・・発動している・・・間?
目をやると、その瞬間へばりついている魔物の子の、全身を覆う輝きが消えた。
本の持ち主のニヤリという笑顔が、そちらに目をやらずとも見える、いや感じる。
「食らえ!『ザケル』」岩の鎧が電撃を弾く。
「『ザケル』!」またもや弾く。
「『ザケル』!」またもや弾く。
「『ザケル』!」鎧に小さなヒビが入る。
「『ザケル』!」ヒビが広がる。もはやヒビではない、亀裂だ。
「『ザケルガ』!」岩の鎧が砕け散る。赤い本の魔物が吹き飛ぶがこちらも小さくない、
いや大きなダメ−ジを受ける。
「うぐぐぐぐぐぐ」「くおおおおおおおお」
「無事か、ガッシュ」「無事ではないが・・・大丈夫なのだ」
「わたしは勝ちたい、あの者に」「ガッシュ・・・」
「あの者は、苦しい事も悲しい事も辛い事も全て自分ひとりで背負い込んでしまっておる。
だからあの者の為に、わたしは勝ちたいのだ」
「そうだな」
「それになにより、あの者は強い。だから勝ちたいのだ」
「ああ。勝つぞ、俺たちは!だから、行けガッシュ!」
再び飛び掛るガッシュ。ようやく立ち上がったダロスはふら付きながらもガッシュを殴る、ガッシュに殴られる。蹴る。蹴られる。そして
「いくぞ、ガアアアアアアッュ!『ザグルゼム』!」
続きます
これまで少々歪んだギャグが多かったので今回はちくとマジで。
どうやらそろそろこの戦い(そしてこの駄文)の終わりが見えてきそうです。
エピロ−グと合わせておそらく二十回を超えるくらいになりそう。多分二十五回は超えません・・・いややっぱ超えるかな?
正面からまともに当たればガッシュ達に勝ち目は全くありません。絶対負けます。
しかしあのコンビはかならず正面から向かうことでしょう。
逆転の手段は、正直私が最も練りこんだ(つもりの)アイデアです。
活目して待て!ってなカンジで。
じゅうろくとじゅうなながいささかならず短かったのでまとめてみました。
最近「絶対可憐チルドレン」SSのアイデアをちみっと思いついたのですが・・・文章にするまでいかないです。
困った・・・