ある日の事──
自室にて、すぴすぴ寝こけている横島姫。
鬼道と銀一の姿は見えない。
そんな所に。
「・・むぅ・・横島クンの為に作ってきた桃のタルトが・・」
・・何だか色々と脱線しまくっている某魔神(人間形態)が来訪していたりした。
「・・仕方あるまい、起きるのを待つか。・・ふふふ、私の愛の篭りまくった至上の菓子!!これを食べれば横島クンもいちころだぁ!!」
馬鹿丸出しでポーズをつけつつ高らかにのたまうアシュタロス。
・・色々とおかしくなりすぎな魔神である。
更に。
「・・むぅ。ツッコミがまるで来ないとは・・何だ!?一体どんな企みがっ!!どんな罠がっ!?」
・・疑心暗鬼に陥っている魔神。キョロキョロ部屋を見回してみるが、何かが仕掛けられている様子は無い。
この塔は、元々はアシュタロスの精神エネルギーで建てられたもの。その本人が知り得ない事などある筈が無いのだが・・。
「・・いいや・・あの二人・・もとい魔王・・ではなく多分人間腹黒俳優・・何をしているのか想像もつかんっ!!」
・・魔神にここまで言わせる人間も珍しいだろう。
──で。
「・・起きんな・・」
魔神の騒々しさなど問題にせず、相変わらずすよすよ寝こけている横島姫。
無邪気な、子供の様なあどけない、いとけない寝顔。
それを、魔神は傍らで椅子に座りつつ、見詰める。
「・・・・・・」
見詰める。
「・・・・・・・・・・・・」
見詰め続ける。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
──と、手が動く。
ふわり、と。
そうするのが自然であるかの様に、髪を撫でていた。
優しく、髪の流れに沿って。髪に指を差し入れて、梳いて。
(・・髪の毛、柔らかいのだな・・)
ぼんやりとそう思って。
(・・睫毛も長い・・)
見惚れて。
(・・無防備な・・)
静かな衝動に、突き動かされて。
横島に上半身だけで覆い被さる様にして、顔を近付ける。
そうして、唇が触れ合う寸前。
「・・・・・・ッ!?」
正気に戻った(爆)
「・・ぬ・・ぬおおおおおおおっ!?」
弾かれた様に飛び起き、ずざざざざっ、と床を後ろ向きのまま滑り、思わず辺りを見回して。
「何だっ!?今のは何だっ!?何をしている私っ!?」
・・大混乱だ。
「大体ツッコミの一つも来ないとはどーゆー事だっ!?ハッ!!罠か!!罠だな!?どんな罠だぁっ!?」
・・実はツッコミが欲しいのかもしれない(爆)
しかし、時間も経てば落ち着いてくる。
幾分冷静になった頭で考え、そして──
「・・そうか!!これはチャンス!!」
やっと気付いた。
「ならば今の内に横島クンと愛の営みを!!」
拳を血管が浮き出る程握り締め、吠える。
本気だ。そして必死だ。
後の事は考えない。色々と怖いから。
・・へたれが染み付いていてちょっぴり物悲しい魔神様である。
とにもかくにも、気を取り直し、再度横島に覆い被さる。今度は全身で。
・・因みに横島は未だ寝こけたままである。
日常がとことん騒々しいので、慣れた為だろうが・・危険な事この上無い。
「いざ!!」
しかし魔神はそんな事には構わず。
気合いと共に顔を近付け──止まる。
「・・むぅ!?」
勝手に止まってしまった己の身体に戸惑いつつ、その状態で。
「・・・・・・ぅ」
横島の顔を間近に、見詰め続け──
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
無言でベッドを降り。
とことことこと壁際に歩みを進め。
両手を壁について、顔を下に向け。
「何事だああああああああぁぁぁっっ!!?」
何故か真っ赤になっている己を自覚しつつ、絶叫した。
(何だっ!?もっと凄いコトしていた筈がっ・・ぬおおっ!?)
ぶるぶる震えながら苦悩中。
頭を抱えて部屋中をごろごろ転がりまくりそうな感じだ。
──そして、結局。
「・・何しくさった人間達っ!?」
・・行き着いたのはそこだった。
「おのれっ!!私に一体何をしたと言うのだあの人間達はっ!?・・多分腹黒の方だろうが・・ハッ!!この前ヨーロッパの魔王だとかからチョロまかしたという怪しげな物体X!?」
「誰がチョロまかしたかボケェーーーーーーッ!!」
ずっぱあぁぁぁあああぁぁぁんっっっ!!!
「げふぁ!!」
叫び声と共に銀一登場。
「ぐはぁっ!!出たな人間!!」
「だかましっ!!何人聞きの悪い事抜かしとんねん!!俺はただ単に、おだてて良い気分にさせてその隙に気付かれん様至極穏便に黙って少しばかり借りてきただけやっ!!」
ごす
「ぐはっ!!」
「変わらんやろ、それ。・・てゆーか、そっちの方がもっとタチ悪いど」
銀一の言葉に冷静に突っ込みを入れる鬼道。
・・力関係がよく解る一連の光景である。
因みに、勿論監視していたらしい。方法は不明。
そして、その数瞬後。
「・・いきなり出てきて真実を口にした者をはたくとは何事だ、人間」
「やかましいわボケ魔神。・・てゆーか鬼道さん、ハリセンの柄でどつくのやめて下さい」
「いや、これ神器やし。フツーにはたくと無駄に霊力増強とかされるんで吹っ飛ぶし。ちゃんと加減はしとるで?」
・・既に何事も無かったかの様に会話。タフである。
「・・で!!貴様等、私に一体何をしたのだ!?」
指を突き付け、そう問う魔神に鬼道と銀一は顔を見合わせ。
「・・ちょお来いや、魔神」
「まぁ、今更起きんとは思うけど・・横島に聞かせるのもアレやしな」
「あああっ!!だから襟首掴んで引き摺るのはやめろぉーーーーーーっっ!!!」
・・連行される魔神だった。
──最初が身体。
最後が心。想い。気持ち。
・・とどのつまりは。
「・・順番が違うんや」
「・・順番?」
三人して、茶なんぞを啜りつつ(でも魔神はやっぱり床に正座)
「心の方が追っついておらんのや。愛がどーだとかほざいて、そーゆーモン解ってたつもりで横っち犯しとったやろ。そのツケやな」
「・・犯したのではなく愛を持って抱いたのだ」
「それはオドレの思い込みや」
「むぅ・・」
憮然とする魔神に冷たく言い放ち、黙らせ。
「・・とにかく、オドレはとっぱらった所にあった・・ある筈やった所を今経験しとんねん」
「・・具体的には?」
「オドレの状態そのままがそうやろが」
「・・・・・・むぅ?」
銀一の言葉に渋面になる魔神。やっぱりよく解らないらしい。
「・・愛しい気持ちに喰われて、触れられないんやな。怖くて」
「は!?」
引き継ぐ様な鬼道の言葉に、声を上げる魔神。
「・・怖い、だと?」
「そうや。嫌われる事。壊すんじゃないか、ゆう不安。・・あとは、好きすぎて、触るだけで緊張してどーしよーもなくなるとかな。まぁ、逆に、愛しいから触れたい思うんも真理やろうけど・・。細かい所は自分にしか解らんし、自分でも解らん事もあるけどな」
「・・・・・〜〜〜〜・・・・???」
魔神、更に渋面。
「・・ま、取り敢えず──」
静観していた銀一が、ふっ、と息を吐いて──
「自分の今の状態も把握できんヘタレがデカイ面して横っちに近付くなやボケがっ!!きっちり考え抜いてマシなイキモノに進化してから改めて横っちに言い寄っとけやドアホッ!!まぁ多少マシになった所で、今までのオドレがやらかしてきたクソの数々が消える訳やないんやから、無駄な夢見てる間のみが幸せだとは思うがなぁぁ!!クククッ・・懲りもせず言い寄った挙げ句に惨たらしくフラれて地に伏してみっともなく泣く魔神かぁっ!!ウケるでぇ!?そうなったらオドレのへたれっぷり世界中に報告して世界一の笑い者にしたるから、せいぜい無駄な努力しとけやぁぁっっっ!!!」
「・・どっ・・どちくしょーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!」
・・魔神は罵声に逃げた。
「・・アイタタタ」
そして鬼道は、人間の方の壊れっぷりに額を押さえて呻いていた。
「ぽー!!ぽぽぽー!!」
「んにゅ・・ハニ・・おあよー・・」
・・因みにその頃、やっとお目覚めの横島。
ハニワ兵に起こされ、目元を擦りながらのそのそと起き出す。
「・・んー・・?」
「ぽー・・?」
首を傾げて、自分の頭をぽふぽふ触ってみる横島の顔を、ハニワ兵が覗き込んでくる。
「ああ、いや・・」
ハニワ兵の視線に、少々困った様に笑って。
「・・何か頭撫でられた様な気ィしてさー・・。何だろな?」
言って、着替え始め──
(・・何か優しい手だったなぁ・・?)
「ぽー・・?」
そう思う横島を、ハニワ兵は不思議そうにじっと見ていた。・・が、そのままではなく。
「・・ぽー!!」
「・・へ?手伝う?いや、いいって」
「ぽー!!」
「はい?新しい服?・・ってコレ・・」
差し出されたのは、淡く、柔らかいピンク色の──
「・・ハニ、コレ、どっから持ってきた?」
「ぽー♪」
「・・うん、アシュ、取り敢えず出会い頭にハリセンと文珠での攻撃決定♪」
・・アシュタロスが用意していたという、正にお姫様の着るであろう可憐なドレスを血管浮き出る手で握り締め、同じく血管を浮かせた笑顔でそんな決意をする横島であった。
・・勿論その後、ちゃんと魔神は攻撃を受けて吹っ飛びました(爆)
無論、その攻撃が大したダメージにはなってくれなかったのはお約束であるが。
そんなこんなの毎日の中。
「・・何だコレは」
「・・私にもサッパリなのだが」
「・・子供がわらわらと・・」
「・・皆同じ顔やしなぁ・・」
呆然とその光景を眺める四人。
眼前には、黄色のセーターと青い半ズボンという格好の、横島に似た顔をした子供──少年達が大勢、そこらをてこてこと歩き回っていた。
髪と瞳の色は全員アシュタロスと同じ薄紫。しかし髪型と顔の造形は横島、というろりしょたな感じの少年達。
「ぽー♪」
その内の一人が、横島に気付いてちょこちょこ近付き、
「ぽぽー♪」
「わっ?」
ぱふっ、と嬉しそうな笑みと共に、横島に抱きついた。
「・・ハニ達、だよな・・?」
「・・こーゆー機能はなかった筈だが・・?」
「・・やっぱり言葉は喋れんらしいけどな・・」
「・・はぁ・・」
それぞれ呆れなんだか感心なんだか、幾許かの困惑と共にハニワ兵を眺める。
(・・やっぱコレ・・ドクターカオスから失敬・・いや、借りてきた薬の数々の作用か?・・ってどんな作用やねん。・・やっぱちゃんと用法聞いとくべきやったなー。つーか、一度ぶち撒けてもうたヤツのやろなぁ、こんな広範囲の作用て・・)
・・どうやら某腹黒俳優が原因だったらしい。
(・・しかししまったなぁ。これじゃあもしもの時使お思っとったハニワ達の自爆機能使えんやないか・・)
・・更に外道な事を考えていたりもした。
(・・まー最近はこいつら横っちと仲ええし、どーせできんかったやろーけどなー。横っち悲しむし)
・・最後にはのほほんとそんな結論を出したりしたが(爆)
とまぁ、某腹黒俳優さんがそんな思考をかましている時──
「ぽー♪」
「ぽぽー♪」
「のえぇ〜〜〜っ!?」
「ああっ横島クンがハニワ兵達に埋もれたー!?」
「・・懐かれまくっとるなぁ・・」
「おっ、お前等っ、いっぺんにくるなぁーーーっ!!」
・・横島は少年姿のハニワ兵達にじゃれつかれまくっていた(笑)
因みに、それは三日程で元に戻ったりしたのだが──
「・・まぁ、何か・・良かったよな・・。一緒に風呂入ったりして、弟できたみてーでちょっと楽しかったんだけど・・」
「何故兵鬼にばかり優しくするのだ横島クンは!?くそぅっ!!私だって!!」
ごべずっ!!
「だかましっ!!黙れやクソ魔神っ!!横っちが喋っとるやろがぁっ!!」
「何か物凄い音したぞ貴様ぁっ!?何か仕込んでいるだろうそのハリセン!!」
「だーもうやかましーーー!!!」
「ああもう、やめいや・・。で、どないしたん?横島」
「あぁ、うーん・・。何か、あのまんまだったら、どっかの女魔族に狙われてたよーな気がひしひしと・・」
「・・あぁ、何故かボクもそー思ったわ・・何でやろな?」
「・・恐るべしやな、GSの二次創作に携わる者の大半の心にはこの上無くしっかりと刻み込まれたであろうデフォの代表!!」
「貴様が言うかそれを・・黒銀め・・」
無論そのデフォには敵うわけないが。
「オドレこそやろが!!壊れ(へたれ)が!!」
「何おぅっ!!」
・・色々と危険な事を言っている魔神と腹黒はスルーして。
「ぽぽー♪」
ハニワ兵の一体が横島の胸にダイブ!!
「おおっ?どしたー?ハニ?」
柔らかく抱きとめ、胸に抱いたまま尋いてみる。
「ぽー!!ぽぽー!!」
「ん?メシ作ったから味見に来いって?」
「ぽー!!ぽぽー♪」
「そっかぁ。サンキュな、ハニ♪」
なでなでっ♪
「ぽぽーっ♪」
にっこり笑って、ハニワ兵を抱きながら、その頭のてっぺんを撫でる。
「「・・・・・・・・・・」」
その様子を、先程までの言い合いはどこへやらで羨ましそうに見ている魔神と腹黒。
「・・やっぱり付き合い長くなると、アレでも意思の疎通はできるんやなぁ・・」
そして、一人少々ズレた事にしみじみと頷いている鬼道がいるのであった。
そんな、とことん間違った感じに平和な塔では、色々と雑談も多く。
ある日の事──至極真面目な顔で、魔神が発言した。
「・・横島クンは、性欲処理をどうしているのだろう?」
・・その部屋の温度が、三度程下がった。
「・・さて、そんじゃあ・・尋こうか、アホ魔神」
「・・うむ・・それはだな──・・って、コレはないのではないか?・・取り敢えず、地に足を着ける許可を申請する」
「「却下」」
「・・むぅ」
あの発言の後。
お約束の如きハリセン攻撃が鬼道と銀一からぶちかまされ、魔神は逆さ吊りの刑に処されていた。
・・因みに、横島は初めからいない。
「・・で?」
「・・むぅぅ、おーぼーな・・」
「・・魔神・・俺等は質問しとるんや・・とっとと答えや」
「・・横島がおらん時に言ったのは評価しとく。・・けどなぁ、オドレの考えるべき事は他にあるやろ?それとも、オドレの頭の中はそーゆーコトでしか構成されとらん混沌の無法地帯なんか?確かに魔族や神族は人間とは生き方も考え方も違うやろ・・。しかしなぁ、愛してるいうんが自分と違う人種なら、そこの人種の事も考えてみるのが、心を持つ生物の当たり前やろ?相互理解する余地も無く、オドレの持つ色々なモンをただ単に押し付けて、相手を無理矢理自分の思う通りにして満足するだけなら、ホンマにそこらの性犯罪者連中と同類の低レベルどころやない底の底のそのまた底で自分に陶酔しとるゲス・・」
「早よ答えろや魔神ー!!また説教の嵐が襲ってくるでーーー!!!」
流れる様に始まった鬼道の説教を、慌てて銀一が遮る。
・・明らかな恐れを伴って。
「ううううむっ!!流石にもうあの淡々ととうとうとした説教の渦に巻き込まれるのは嫌だぁぁっ!!」
こちらも明らかな恐れと共にアシュタロス。
・・最早鬼道の説教は恐怖の対象らしかった。
「・・そういう説教せんといかんと思わせたオドレ等のせいやろが・・。ボクも流石に、声張り上げての三日ぶっ続け説教はノドがもたんのや」
そんな二人の反応に、ぶすっとした顔で呟く鬼道。・・しかし。
「「三日ヤル気ダッタノデスカーーー!?」」
・・二人共、そこに注目してハモッた。
微妙にカタコトちっくな所に動揺が表れている。
「・・五日がええか?」
「「イイエメッソーモナイー!!」」
二人してカタカナ語で顔色を悪くしながら、恐ろしさの余り顔を強張らせて首をぶんぶん振りまくる。
魔神など、その勢いに身体が左右に揺れまくっている。
「・・で、魔神!!早よ答えや!!」
「うむ!!やはり以前は私とらぶな営みをかましていた横島クン!!しかし貴様等の出現と共にそーゆーコトもなくなってしまった最近!!それでもやはり若く、煩悩魔神になる素質さえ持ち合わせているだろう横島クン!!身体は色々と求めているだろーというコトでっ!!ただ気になったダケナノデスヨ!?」
「ナルホドー!!!」
訳の解らないテンションと勢いでアシュタロスと銀一。
「・・オドレ等・・そないに説教が嫌か・・?そうか・・やっぱりボクみたいに同じ事を何度も言うボケジジイや酔っ払いのグチと同レベルな説教は肌に合わんのか・・そうか・・」
昏い瞳で二人を見据えつつ、背に何だか凄まじいオーラを持って鬼道。
「「・・イイエーメッソーモナイデスヨー」」
そんな目の前のキレかけな教職者に危険を感じつつ、またもや二人してハモる。
最早瞳も虚ろだ。
そんな二人に、教職者の反応は。
「・・まぁええ・・。所詮説教ばかりの教師なんぞ嫌われるのが世の常や!!それなら徹底的に嫌われたろーやないかっ!!その方が記憶には残るしなぁ!!とゆー訳で、ぶっ続け五日いくでぇっ!!」
「「ギャーーーーー!!!」」
「それとも一週間か!!」
「キサマガタオレマスヨ!?」
「キドーサンオチツイテー!!つーか横っち助けてぇーーー!!!」
・・鬼道暴走。やはりストレスのせいかキレやすくなっている様だ。
「って落ち着け鬼道!!」
ぺんっ!!
「おうっ!?」
それを止めたのは、横島の声と、軽く鬼道の頭をはたいた手。
「ったくもー・・何やってんのかと思ったら・・。またアシュが何かやらかしたのか?」
呆れた様な溜め息と共に、魔神を半眼で睨む。
「う゛っ・・。いや、横島クン、私はただちょっと素朴な疑問をだね・・」
魔神も流石に本人には言い辛いらしい。
「ふーん?・・まぁいいや。どーせろくでもねー事だろ。銀ちゃんも止めろよー。一度スイッチ入ると、本当にぶっ続けでやるんだから、鬼道ってば」
「・・いやー・・俺にはそう簡単には止められんし・・」
横島の言葉に、苦笑しながら銀一が返す。
それが事実である為に、苦笑しか出てこない。
「・・いや、すまんすまん・・。ついなー・・。ボクの説教、ハッキリ言って、役に立っとらんのかと不安な所もあってなぁ・・」
「鬼道・・。鬼道はよくやってくれてるし、俺も感謝してるんだから・・あんま悩むなよ?」
「横島・・」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」
情けなさそうに心情を吐露する鬼道を気遣う横島。そんな横島を見詰める鬼道。
勿論それを面白くなさそうに、だが口出しもできずに見ているアシュタロスと銀一。
・・何だかおかしな雰囲気だ。
──と、そこに新たな来訪者。
「ぽー?」
「あ、ハニ!!」
横島にちょこちょこと近付いて来たのはハニワ兵。
船の中、まだただの捕虜だった時に、よく雑用を一緒にこなしていた、ハニワ兵の中でも特に馴染みの一体である。
・・因みに先のハニワ兵達の擬人化騒動の時も特に仲良く、元の姿の時も何かあれば横島にくっついてきた一体だったりする(笑)
「ぽぽー♪」
「あ、そうそう!!そーだった!!メシだぞ、メシ!!今日は鍋にしてみた!!」
そのハニワ兵を当然の様に胸に抱き、にぱっ、と明るい笑みで告げる横島。精神状態が良好な証である。
「・・ん、そうか」
「オッケーや、横っち♪」
横島の笑みにほんわかと和む鬼道と、のほほんと癒されたりしている銀一。
しかし、アシュタロスだけは真剣な顔で。
相も変わらず逆さ吊りのまま、ぶらぶら身体を揺らしながら──
「ハッ!!まさかハニワ兵達とっ!!」
ドベギャアアアァァァァァァァァァァァッッッ!!!!! ×2
・・通常、ハリセンでは出ない筈の打撃音と共に、アシュタロスは吊っていた(特注の頑丈な)縄さえ引き千切る衝撃を受け、空の彼方へ吹っ飛んだ。
「・・え?え?・・な・・何?」
物凄い形相でアホ魔神の吹っ飛んだ先を睨みつつ、肩で息をする鬼道と銀一を、オロオロしながら見るしか術の無い横島を置いて──
「戻って来たら十日ぶっ続けで説教やからなボケ魔神ーーーーーーーっっ!!」
「よっしゃあ乗ったで鬼道さん!!そん時は一日ずつ交代やーーーっ!!」
「応!!」
「な・・何?一体何が・・?」
テンションの高い二人の会話・・というか叫びに、横島は呆然と佇み。
「ぽぽー・・?」
胸に抱かれたハニワ兵も、相変わらずの表情の無い顔のまま、しかし疑問符を浮かせる様な雰囲気と共に、首を傾げているのであった。
・・んで。
「せっ、せーよくしょり!?あっ、あほかぁっ!?こんな所でそんなんできるかっ!!・・文珠で、塔全体そーゆーの無効化してんだよ・・。前アシュのアホが『淫』とか使ったから・・抑止力みてーの、必要かと思って・・」
取り敢えず気になって仕方無いので尋いてみたら、そんな答えが返ってきた。
因みに顔は真っ赤だった。
「・・成程な・・。どーりで朝の生理現象も無い筈や・・!!」
「・・文珠、凄いなぁ・・」
「・・私はバリバリだが?」
「いや、お前変態だし」
「変態やしな」
「・・腐っても魔神やから、くらい言ったれや・・まぁ、変態やけどな」
「・・うぅ・・不遇だ・・」
「ぽー・・」
(自業自得で)涙する魔神を、柱の影から見守るハニワ兵。
「・・お?どしたー?ハニ?」
「ぽ!!ぽー♪」
しかし横島に気付いてもらったので近寄ったら、お決まりの如く胸に抱かれ。
「ぽぽー♪」
魔神の事はサッパリ忘れ、ご機嫌なハニワ兵。
「・・・・・・・・・・・・・・どっ・・・・・・どちくしょおおおぅぅっ!!!」
その様子に己の立場の無さを痛感したのか、叫びつつ魔神敗走。
「兵鬼のくせにーーーーーーーーーーーっっっ!!!」
・・己の作り出した兵鬼にまで負けるのはいかがなものか。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「・・どーしたんだ?アイツ・・」
魔神の憐れな姿と、遺憾無く己の鈍感っぷりを発揮する横島に、いろんな意味で沈黙する鬼道と銀一であった。
だがやっぱり魔神は無駄にタフで。
「しかし最近横島クンはよく寝るな。・・眠り姫!?」
とっとと復活して、相も変わらず馬鹿発言。
「黙れ悪い魔法使い」
「酷ッ!?」
「・・いや、それシャレにならんから、二人共」
・・何だかんだとそれに付き合う二人もある意味魔神以上にタフなのかもしれない。
そして、更にそれらについていける者達もいたりする。
「ぽー!!」
「ん?」
「ぽぽー!!」
「へ?」
「ぽーっ!!」
「・・何しとんねん・・」
そこには、何故か赤いマントを翻し。
どこから持ってきたのか、ハニワサイズな剣(ハリボテ)を掲げた、ハニワ兵達の姿。
「ぽ!!」
「・・王子?」
「ぽぽー!!」
「・・騎士?」
「ぽーっ!!」
「・・勇者?」
『ぽー!!』
「「「姫狙い!?」」」
ガビーン!!な感じ。
ついていけるというより追い越しているのかもしれない。
まぁ、ハニワ兵達の場合、そこまで深刻なものでもあるまいが。
「・・何かハニワ達の性格も・・アシュに影響されてアホにっ!?」
「酷ッ!?・・貴様の腹黒のせいではないのか?」
「・・何やとコラ」
「ハハハーナンデモー」
「・・学芸会?」
相変わらずな二人を置いて、ぽつりと漏らされた鬼道の言葉に、改めてハニワ兵達を見て。
「ぽーぽー♪」
剣をぶんすか振り回したり。
「ぽーっ!!」
くるくる回ったり飛んだり跳ねたり。
「ぽぽーっ♪」
何やらポーズを決めてみたり。
「「・・確かに」」
同意する銀一とアシュタロス。
「・・しかし何かの教育番組でありそーやなー。ハニワマンとか」
「ハニワマンて・・」
何とも言えない表情の鬼道を余所に、何やら考え込む銀一。
「・・おう、結構イケるか?」
にやりとか笑む銀一。
「何考えとる!?何かまた腹黒いとか言われそうな笑みが・・」
「いや、何か使えそーかと」
「黒ッ!?とゆーか俳優の貪欲さ!?いや、教育番組で子供層ゲットの策略!?怖ッ!!」
「だかましっ!!」
べしっ!!
「むごっ!!おのれ・・しかし、姫か・・」
銀一にハリセンではたかれた頭をさすりつつ。
やはり浮かぶイメージは。
どこから取り出したのか、きゅぽんっ、と蓋を外し、描いてみた。
油性のペンで。
そこらの壁に。
横島姫のドレス姿とかハニワマンとか色々を。
「こんな感じか!!」
「うわ無駄にうまっ!!」
『ぽぽぽー♪』
「・・ハニ達喜んどるなぁ・・」
「ぽー!!」
「・・って、ハニ達モロに教育番組の何かに影響されて作ったみたいやなー、こういう衣装・・。・・あと、横島のドレス見て思い付いたて・・ドレス?」
「ハッ!!ヤバ!?」
「・・何着せようとしとんねんアシュ・・!!またオドレは人の意思を無視した・・」
「シマッター!!いやしかしそれは未遂・・」
「・・ってコレ、横っちに見られるとマズイんやないか?」
説教に入ろうとする鬼道と言い訳をし始めるアシュタロスの声を遮る様に、銀一が汗ジトで呟いた。
その言葉に、鬼道とアシュタロスもそれを中断し、銀一が見ているものに目を向ける。
横島姫のドレス姿とかハニワマンとか色々の描かれた、壁。
油性で、思いっ切り壁一面に描かれたそれは、何と言うか・・。
改めて見ると──色々とヤバイ。
主に姫の精神状態やらに。
「・・しまった!!姫に見られたら怒られる事必至!!」
「・・その前に一旦泣きそうやしなぁ・・。ヘタに似とる分余計に」
「・・横っちの可愛さはよく出てるんやけどなぁ・・。横っちは解っとらんから・・」
ハニワ兵達のコスプレだけなら横島も苦笑で済ませただろうが。・・元々そんな服着てたし。ルシオラとか。
とにもかくにも。
「・・とにかく消すでー」
いつの間にやらモップ片手に。
「・・横っちが起きてこん事祈るか・・。取り敢えず魔神、後で十発殴る」
それらを消す為お掃除タイム。
「うぅ・・魔王め・・」
『ぽー・・」
しょんぼりしているハニワ兵達は痛々しいが、こればかりは仕方が無い。
因みにその最中、横島は起きてこなかったが、一同のお掃除は結局一晩かかり、次の日にはいつもとは逆に、横島以外が寝こけていたらしい。
・・で。
「・・どーしたんだ?皆・・。何かハニ達も寝てるし・・」
首を傾げる横島の膝の上には、目を閉じて寝こけるハニワ兵が一体。
・・口はそのまんま開いてたりするのだが。
なんかもう、ドクターカオスの薬なんぞ無しにその内自力で擬人化しそうだ、ハニワ兵(爆)
──ハニワマン♪──
「・・ククッ・・土くれ共が・・」
暗い──暗い闇の中。
そこにある光は数本の蝋燭に灯された、頼りなく儚いものだけ。
闇に揺らめく淡い微かな光は、圧倒的な闇に包まれていた。
それでも闇に喰われまいとするかの様に、その光はそこに在る。
だが──その光に照らされる事も無く。
闇の中、響く声が一つ。
「・・我が姫を奪おうなどと・・身の程知らずだと思わんか?」
そして、もう一つ。
「ハッ・・!!仰る通りでございます!!」
仕える者は一人。
他には闇だけが。
「さて・・しかしどうするか・・。ただ打ち壊してもつまらんしな・・。・・姫は未だ目を覚まさん・・」
声の主は少し考え込む様に沈黙した後、どこか面白そうに言った。
「・・姫を目覚めさせる者がいるならば、それも良し・・。褒美に、我が直々に打ち壊してくれよう・・」
「では、やはり城まで招くと?」
「フッ・・暇潰しには良かろう?」
「ハッ!!・・主の──魔王様のお望みのままに・・」
──眠り続ける姫。
その傍らには、その世話を仰せつかった者。
「・・・・・・・・・・」
その傍らで、その者は見詰め続ける。
その姫を。
──やってくるハニワ達。
ていうかハニワマン達。
赤いマントを翻し。
掲げるは煌く剣。
慕い、愛する姫の為。
「ぽー!!」
「ぽぽー!!」
「ぽーっ!!」
王子と騎士と勇者とが。
『ぽー!!』
姫を捕らえし魔王と対峙。
魔王に仕えし者は、ハニワマン達の従者として後ろに控えし者と対峙。
そして──────────・・・・・・・・
「そんなトコで目ェ覚めマシタヨ!!」
「・・正にハニワマンやな」
「つーか、影響受けやすいなぁ、魔神・・」
(当然)夢オチでした。
「というかキャストが!!キャストがっ!!ええいクソ!!何故私は部下その1!?」
「「へっ?」」
ぱちくりと目を瞬かせて鬼道と銀一。
「・・魔王て、オドレやないんか?」
「・・"魔王"だぞ?」
「・・俺かっ!?」
「無論!!」
「何でやねんっ!!」
銀一、正式に魔王に決定(爆)
今更の感もあるが。
「・・つー事は・・まぁ、姫は横島で・・ボクは?」
「・・姫の世話係かハニワ達の従者だと・・」
「・・そういえば、その『二人』て・・」
「貴様と貴様の式神だ。・・どっちがどっちだったのかは思い出せんが!!」
「何で威張っとんねんオドレはっ!!」
べしっ!!
「ぶふうっ!!」
魔王と魔神の漫才放って。
「・・なんや、ビミョ〜な立場やなぁ、どっちにしても」
とかなんとか、感想を漏らす鬼道である。
「・・む、そういえば──」
ハリセンではたかれた衝撃によってか、何やら思い出す魔神。
「蜂やら蛇やらが周りにいたよーな・・?」
──同じ頃、某所にて。
「うええぇぇん!!」
「・・もーその辺でやめときなよ・・」
「ううっ・・アシュ様のアホー!!」
「あ〜あ・・ったく・・」
飲んだくれている蜂の化身と、それに付き合わされている蛇女がいたりしていた。
データ復旧出来たので直ぐ様UPです!!・・でも加筆部分・・。ハニワマン・・何てアホな回なんだ、コレ・・(遠い目)
で、前回のレス返しです。
>玲鳳様
はい、年末年末ですね〜。
ミニスカサンタだったり短パンサンタだったり・・何のイベント会場ですかね、此処は(笑)
ええ、黒銀ですね〜。魔神はどんどんへたれに・・ていうかこのケーキ対決の一件でお菓子作りにハマッてみたり(爆)
鬼道は天然で下心ないからこそこのポジションなんですよ、フフフ・・。そしてハニワ兵達も何気に良いポジションだったり(笑)
それでは、これからも宜しくお願いしますねv
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