「ねぇ、ヨコシマはGSになるつもりは無いの?」
ここは唐巣神父の教会。美神の事務所一同は一仕事終えて、教会で一休みしている。特に用事がある訳ではなかったのだが、なんとなく、である。その時タマモの口から出た言葉があれ。
「ゆくゆくは、欲しいけどなぁ……。」
と口では何気なく言った横島。しかし、上記の質問と同時に近くに寄ってきたタマモから何気なく距離を取りながら答えた。
「だけど俺、霊能力無いんだもん。」
確かに、横島は前世の霊能力の全てを受け継いで入るが、それを使いこなせるかは別問題。素質は十分、だけの男。それが今の横島である。
「それでは、妙神山に行ってみたらどうかな。」
お茶を持ってきながら神父が口を開いた。それに美神も続く。
「そうね。横島君、霊力はすごいけど今のままじゃちょっと合格は難しいわ。」
美神からも仕事の合間に色々指導して貰って、サイキック・ソーサーは出す事が出来るのだが、それ一つでGS試験合格は難しい。近年悪霊の強大化が進み、GS達の質もかなり上がってきているのだ。
「それに私もこの辺でレベルアップしたいし。」
美神の言葉に神父が良しっとばかりに
「では、美神君と横島君の妙神山への紹介状を書いてあげよう。」
と美神はともかく、横島の了解も取らずにさっさと奥に入ってしまった。
「おいおい……俺は承諾してないぞ、神父。」
<宿命ですから>
横島の呟きに答えるかのように礼拝堂の奥にある十字架に貼り付けられている人辺りから声が聞えたような気がした。その声に驚くが他のメンバーには聞えていない様子だったので、気のせいだと言う事で納得した。そして神父が持ってきてくれた紹介状を受け取り、明日出発すると言う美神の言葉を聞きながら、一同教会を後にした。
「シャレにならんわ〜!!」
妙神山――文字通り、山である。その頂上に修行場が存在する。頂上に在ると言う事は当然、登らなくてはならない。この山――妙神山は結構、高い。
「し、死んでしまう〜。」
それなりに鍛えてはいるが、前世ほどの扱いは受けてはいない現世の横島には気楽に登れるほど、体力は無い。
「このままじゃ、修行を始める前に力尽きてしまう……。」
それでも、これだけ文句が言えるということは、まだまだ余裕はあるようである。周りの事務所メンバーは既に、横島の愚痴に突っ込むほどの体力は無いらしい。
そんなこんなで、それらしい門が目に入ってきた。
「あれが、そうなんですか?」
横島の言葉にようやく着いた事に安堵の表情を浮かべる美神が答える。
「そのようね。」
付き添いとしてついてきたおキヌとタマモも安堵の表情を見せる。そして門の前に辿り着いた一行。息を整えて、美神が声をかける。
「もしも〜し!だれか居ない〜!」
その声に門が答える。
「「此度の修行者よ。この門をくぐる覚悟があるのなら、我を制してみよ。」」
その言葉が終わると、門の両隅にたたずんでいた首なしの石像が動き出した。
「「此度の修行者よ、前へ。」」
そう言って首なし石像は手にしていた棍を構える。
「テストって訳ね。」
「やっぱ、俺も受けるんですよね。」
「当然でしょ、何しにきたのよ。」
「「いざ!!」」
石像は前にでた二人に向かって攻撃を仕掛けてくる。
「横島君、お願い!」
美神の声に横島は大きめのサイキック・ソーサーで二本の棍を受け止める。その隙に美神は神通棍で一体の石像の足元を攻撃。バランスを崩した石像の鳩尾に横島からサイキック・ソーサーが命中、爆散する。
「右のー!」
一体がやられた事に気を取られたもう一体の気が一瞬逸れる。その隙を見逃すわけは無い。
「せいぃ!!」
受け止めていた棍を弾き、そのままサイキック・ソーサーをもう一体の方に叩き付ける。それと同時に美神が大上段に構えたまま、飛び上がり石像を真っ二つに叩き割る。
「それまで!」
叩き割った時、門から声が聞えた。そちらの方を向くと頭に角を携えた女子大生ぐらいの女性が門を開けていた。
「ようこそ、妙神山へ。テストは合格ですよ。」
「あなたは?」
美神の質問に女性は笑みを湛えながら答えた。
「私の名は小竜姫。この妙神山の管理人をしています。」
その答えに驚くのは、もちろん横島。
(何故だ!何故、俺の周りにはこうも女性が多いんだ。これじゃ、学生のころのほうがよっぽどましじゃ!!)
そう思いながら、かつて自分の唯一の理解者であった親友を思い浮かべる。残念な事に、今は諸事情で、実家のある国へと戻っている。
「それでは、お二方。こちらへどうぞ。付き添いの方も。」
小竜姫は、笑顔で招き入れた。
(やっと、再び横島さんに会う事が出来ました。今世でも『仲良く』しましょうね。)
<なあ、キーやん。タダやんの霊能力は前世と今世が混ざっていんねやろ。前世の能力は『栄光の手』と『文珠』や。今世は?>
<私もそこまでは知りませんよ。しかし、元々素質はあったようですし、『栄光の手』『文珠』プラスαであることは間違いないと思いますけど……>
<せやな。しかし……>
<ええ。その素質が目覚めたとしても、決して……>
<タダやんにとっちゃ、今の状況が好転することは……>
<<無い(でしょうね)(やろな)>>
後書き
横島妙神山修行編です。この話はまだ続きます。横島君のニュースキルは、一応決まっています。ですが、話になるのにもう少し時間がかかりそう……。
ご意見、ご感想お待ちしております。