警告 このお話はNTRと呼ばれるジャンルになります 注意
毎回毎回、俺やお袋に恥ずかしくねぇのかよ
愚かだな息子よ。浮気だから良いのだ。本気じゃないからな
アナタ、ちょっとこっちイラッシャイ?
第四話
「まだアゴがガクガクいうな」
手で顎の噛み合わせを確認しながら、横島忠夫は教室を訪れた。
「悪夢再び! かの伝説の野獣、横島が再びこの教室に帰って来た! 獲物を狙う鋭い眼光は今は誰を狙っているのか! 横島忠夫、入場!」
「珍しいな。お前が真面目に連チャンで学校に来るなんて。最近の世界に起こってる天変地異の理由が解明されたな。学会に発表せねば」
たった二日、連続で通学しただけで手厚い出迎えを受ける横島。
「伝わったぜ、お前等の気持ち。いいから歯をくいしばって一列にならべや」
自分がどう思われてるかを心から感じ取り、友情を深めようとする横島。
『おはよ、横島君。顔の調子がおかしいの? 略して顔がおかしいの?』
級友とふざけあいながら自分の席につく。そこに彼を待ちわびていた愛子が声をかけた。
「ほっとけ! いや、あのなアゴが」
殴打された後遺症の事を説明しようとしたその時、蒼き流星を思わせるスピードでピートが突進してきた。
「横島さん! そんなアゴの調子がおかしいって、ばかな! どんなビッグなブツを咥え続けたっていうんですか! 畜生! 神は死んだ!」
なんかもう大変です。
「横島さんがご奉仕主義だったなんて! まぁ、それは美神さんにたいする態度から推測できましたけど。しかしってクソ! こんな事ならなりふり構わず僕のロングバレルをクイックドロウでナイスシュートしとけばよかった! 僕の目を見たまま続けてくださいとか! 一度貯めてから飲み干してくださいとか!」
なんかもう変態です。
しばらくお待ちください。
「邪妖滅殺」
『悪が滅びたのね』
「こういう所を見るとさ、ピートがあの変態親父と血が繋がってるってのが良くわかるな」
ぴくりとも動かなくなったピートを十字架に逆さ磔にし、窓から吊るしながら横島は爽やかに席に戻った。
『ね、実際の所はどうなの? 返答次第では私も明日への切り札をきる事になるかも、ね?』
「意味がわからんし。ただ昨日ボコボコにされたダメージが抜けきってなくてさ。急所を的確に殴打されたもんな〜 まいった」
『また美神さんにセクハラしたの? そのうち刑務所か病院か、どっちかに長いお世話になるわよ〜 もう』
頬をぷうっと膨らませながら優しく諭す様にたしなめる愛子。今回は相手が違うのだが、それを訂正する必要を感じなかったので横島はそのまま話を続けた。
「あの女はサービス精神ってのを理解してないからな。もっとこう、健全な男子のハートにキュっと来る何かをせんと。例えばそう、ノーパンとか。じゃないとそろそろ主役下ろされるぞ」
『つまりノーパンサービスを実施すれば主役になれるチャンスがあると! もっともっと青春を満喫できると!』
やったるで〜 っとスカートに両手をつっこむ愛子。
「一番、ピエトロ・ド・ブラドー! 脱ぎます! 魅せます!」
「脱ぐな!」
『先をこされた!』
彼らは今日も元気です。
「参ったわ。こんな不覚をとるなんて」
岩手県、敷上温泉郷にある旅館の一室。美神礼子は自らの油断から生じた事体の対処に励んでいた。
「原因はこの傷」
部屋に敷かれた布団に氷室キヌは寝かされていた。宿の浴衣を着せられている彼女、その胸元が開かれ、そこに付いた文様のような傷痕を美神は調べていたのだ。
「この傷痕さえ消せばなんとかなるんだけど、自然に治りそうもないし。ほんっとに必要な時にいないんだからあの餓鬼は!」
この場にいない自分の助手の事を愚痴る。
「仕方が無い、呼び寄せるしかないか」
とある事件で横島はその意志で美神と共に戦う戦士たる事を望んだ。その結果、彼は凄まじく成長し自分の助手、いや相棒と少しは認めていたのだ。別に戦士じゃなくったってGS家業を始めた当初から苦楽を共にした相手だし、ある意味では最初からパートナーであったのだが。
「でもねえ、このおキヌちゃんに会わせるわけにもいかないし」
全身を火照らせ、時々甘い声をあげながら眠るキヌ。可哀想だが両手は縛っている。そうしないと自分を慰める事を止めないからだ。
「強力なヒーリングか。冥子に頼むのもいいかも。あ、横島クンに文珠だけ送ってもらえば良いのよ! そうしましょ」
今は薬で寝むらされているキヌ。普段の彼女からは信じられないような艶と色気を醸し出している。その原因は昨日の除霊だった。
幽霊騒動で人気の無い温泉街。実は最初はそうではなかった。エッチな事をさせてくれる幽霊の噂に、全国からそれ目的の男性がやってきていた。それが原因で霊は相当な力を蓄える事になる。そしてやってきた霊能者からもその霊気を吸収し、ソレは強力な悪霊と化したのだ。結果、客は人を殺すような悪霊に恐怖し、温泉街そのものから一足が消えて行ったのだった。
「害が無い幽霊なら客寄せの目玉になると思ったんですよ」
依頼人の温泉街の組合長がそう事の経緯を美神とキヌに説明した。
「信じられません! そんな事をして何になるって言うんですか!」
キヌはおぞましいものを見る目で組合長を睨む。
「今は置いときましょうおキヌちゃん。で、その悪霊についてわかってる事はあるのかしら」
「はい。前回呼んだ霊能力者の方が調べた物なら。お渡しします」
組合長が事務所から持ってきたファイルを受けとる。美神はそれを用意された客室で調べる事にした。そこには、悪霊がこの地に未練を持っている。この地は彼女の思い出の場所である。どうやら恋人に裏切られたことを理由に悪霊と化したらしい。と言った事が書き記されていた。
「可哀想な方ですね」
「よくある話よ」
悪霊には目に写る男が全て恋人に見える事。そして身体を求めてくるという事。
「こりゃ完全な悪霊じゃない。もう見境なしになってんのね」
「酷い」
悪霊と化した女性に同情するキヌ。対照的に美神は冷めたものだった。理由とかそういったものは関係ない。すでに人を殺したそれは退治されるべき悪霊なのだ。しかしその事をキヌには告げない。キヌの持つネクロマンシーの能力の根源に、霊にたいする慈愛の心が必要だからだ。
「さっさと成仏させましょう。それがせめてもの、ね、おキヌちゃん」
「はい! 私頑張ります!」
霊の心を解し、それを鎮め成仏させる。それがネクロマンシーの秘儀で、そしてそれを行えるキヌこそがネクロマンサーなのだ。
「くぅ! させるかー!」
霊を鎮めるネクロマンサーの笛を必至に吹き続けるキヌ。そのキヌに対し悪霊は霊気の爪を振り下ろす。
「いい気になってんじゃないわよ!」
とっさに間に割って入った美神がそれを神通棍で受けとめた。
「おキヌちゃん! いける?」
「はい!」
キヌはネクロマンサーの笛を構えなおし、再び演奏を始めた。キヌの心に悪霊の気持ちが伝わってくる。
『身体の繋がりが 心の繋がりに繋がる そう信じていた』
「く!」
強力な思念が霊波となってキヌに流れこむ。
『足りなかったから あの人が居なくなったのは 愛が足りなかったから』
『身体の繋がりが足りなかったから もっと愛し合わなくてはいけない』
『抱いて』
『抱きしめて』
『もっと私を感じて』
『もっと』
『もっと』
『もっと』
『もっと』
今までに無い強烈な意志。身体の奥底から溢れてくる感情。
『繋ぎとめなくては!』
キヌと悪霊の意識が同調してしまう。苦しみや悲しみ、怒りなどを受けとめるキヌの心が、いまだ未成熟な領域に踏みこんでくるそれと懸命に戦っていた。
「ふざけんなエロ女ああああ!」
美神は少しでも敵の勢いを殺そうと攻撃する。悪霊はそれを強引に払いのけ、キヌにその凶悪に伸びた凶爪を突き刺した。
「させるかってぇ、言ったでしょうがあああ!」
すぐに横から霊気を纏った体当たりを食らわせる美神。悪霊の爪はキヌの胸元をかすり、小さい傷をつけた。しかし、その痛みがキヌに気合を与え、渾身の力で悪霊を鎮める事が出来たのだった。
「ハア、ハア、やり、ました」
荒い呼吸を懸命に整えようとしながら、キヌは膝をつき倒れた。あてがわれた部屋に彼女を寝かせ様子を見ていた美神。その彼女の目の前で、キヌが悶え喘ぎだしたのはすぐの事だった。
「あはぁ うあ! もっと、もっと〜」
「はい!? ちょっとおキヌちゃん! そういうの一人の時にやりなさいよ!」
あまりの事に思考がおかしくなる美神。しかし、その不自然さにすぐに気がつき、キヌを霊視してみた。
「やられた!」
キヌの胸元の傷痕、それを介して悪霊は自らを楔として打ちこみ、彼女に寄生していたのだ。一晩キヌを治療した結果、傷痕そのものが原因である事をつきとめ、それを消せばなんとかなる事までわかった。しかしこの傷は自然治癒するものではない。色々考えたすえ、美神は横島の文珠の力を使う事にしたのだ。
「この時間なら学校かしら? 電話で呼び出すにしてもどうやって文珠だけを送らせよう。私がおキヌチャンから離れるわけにもいかないし、横島クンに今のおキヌちゃんを近づかせるなんて言語道断だし」
一刻も早くキヌを治療してやりたい。大切な妹分を救う為、普段以上に冷静でいなくてはいけない状況とわかっていても彼女は焦らずにはいられなかった。ジェット機でもレンタルして使いを寄越そう。そんな事を考えていた時、意外な人物がやってきたのだった。
「よう、美神の旦那! 奇遇だな」
「あんた! 伊達、雪之丞! なんであんたがここにいるのよ!」
「ん? 横島に聞いてないか?」
雪之丞がこの地を訪れたのはただの偶然だった。ここからすぐの所にある場所での依頼を終え現金収入を得た彼は、宿代などが諸事情で格安になっていたこの宿に偶の贅沢に来たのだった。
「なんでも良いけどちょうど良いわ。ね、今すぐひとっ走りして一時間以内に横島クンから【癒】の文珠を貰ってきてくれない?」
「ま、まあいいけどよ。で、アイツは何所にいるんだ」
美神の頼みをむげに断ることは出来なかった。横島との付き合い上、彼女の恐ろしさは十分承知していたのだから。
「東京」
「遠いわ! 一時間で往復できるか!」
「そこを何とかするのが男ってもんでしょ!」
「なあ、【癒】って事は怪我人かなんかが居るって事だろ。まさかと思うがおキヌか?」
「ええ。彼女、霊障をうけてね。怪我さえなんとかなれば治るんだけど。ほら、くっちゃべる暇があるなら走れ!」
南の方を指差しながら雪之丞の尻を強く叩く。
「あう! ごめんなさいママ!」
気合を入れた筈が予想と違う反応が帰って来ました。
「誰がママじゃ!」
「あう! もっと!」
「鳴け! 鳴きなさいアンジェラ!」
「あう!」
しばらくお待ちください
「横島と違った反応に我を忘れてしまった私。駄目ね、いくらおキヌちゃんの事で動揺していたとしても」
小鳥達と戯れながら優雅にお茶を嗜む。
「は!? こんな事してる暇はないのよ! 起きろ雪之丞!」
「世界が、広がって行く。
嗚呼 ママ」
「正気に戻れ! そして走れ!」
「あんたが言うな! いや、落ち着け! あのな、ちょっとした幸運で俺さ、今霊薬持ってんだよ。効き目はこの身で実証済みのがな」
「寄越せ」
「いいぜ。でもここの宿代と飯代、よろしくな」
「セコイわね! 素泊まり分じゃ駄目?」
「あんたも十分せこい」
小さい壷に入った粘状の霊薬をキヌの傷に塗り付ける。その効能は見事なもので、ものの数分で傷口は見えなくなってしまった。と、同時にキヌの身体から赤みが抜け、呼吸も正常に戻っていった。
「で、どうよ?」
「大丈夫。助かったわ。でもよくここに来たわね。偶然にしちゃ出来過ぎって気もするけど」
「いや、この宿にあんたが居るって話を聞いてな、ちょうどいいから飯でも馳走になろうと思ってな。そういや横島はどうしたんだ?」
「今回はお休み。この依頼をおキヌちゃんの修行に兼ねてたのよ」
雪之丞も自分が行方不明の霊能力者を探していた事を告げた。依頼主はテレビ局。〈天狗の出る森の謎を解け〉、という番組に呼ばれた霊能力者が急に居なくなったという話だった。オカルトGメンの紹介を受けて雇った人物の失踪。その尻拭いにやって来たのが雪之丞だったのだ。
「へぇ、何であんたが」
「その番組ってのがな、アイドルとかを怖がらせてっていう低俗なのでな。ちゃんとした霊能力者が受けるような仕事じゃなかったんだそうだ。で、ちゃんとした霊能力者じゃない俺に白羽の矢がたったってわけだ」
「ふ〜ん、アンタまだGS免許持ってなかったっけ」
「いや、一応今はもってる。俺は試験そのものには合格してたしな。ま、司法取引の結果ってやつだ。そのせいであんな仕事をオカGから受け持つ羽目になったんだが」
霊能力者は芸能人ではない。しかし彼等をテレビに出せば高視聴率を獲得できる。まぁ、色々あり、今、テレビにはオカルトGメンのみたてたGSが出演している。世間にGSやオカルトの誤った知識が広がらないようするためだ。
「でも、その霊能力者は消えた、と」
「ああ、それがな、俺の仕事はそいつの探索のはずだったんだが、番組の都合とかなんとかいわれてな。急遽俺が居なくなったやつの代わりをやる羽目になった、と」
謎の覆面霊能力者。それが顔を出さないようにという雪之丞の配慮であった。新人アイドルに抱きつかれたり頼られたり、意外な役得を得ながら収録は進んで行った。
「あれがこの森の主、伝説の河童、その名もキザクラ! さあ! 覆面GSママスキー! 戦って勝利を掴むのです!」
「なんじゃそりゃー!」
まさか本物の妖怪と戦う事になるとは。ただのイカサマ番組と侮っていた雪之丞は自分が緩みすぎていた事を恥じ、改めて戦いの為に気分を入れ替えた。
「かっぱっぱー!」
「いくぜ!」
「危ないママスキー!」
「るっぱー!」
「この程度で膝をつくものかよ!」
「ちょっぴりぴん!」
「ママスキーが変身した!?」
「どうだ見てくれこの力! ママー!!!!」
「やるな」
「くわ!」
「へへ、やったぜ」
「ってな事があってな。ありゃ、あの河童にライバルの証としてもらった霊薬だ」
「へぇ、河童の霊薬ってあの。随分良い物貰ったじゃない」
これは良い物を貰ったと喜ぶ美神。
「番組からもアイツに出演料があったしな」
「へぇ、俗っぽい河童ね」
「胡瓜だったけど」
「なるほど。もともと河童の霊薬は野菜とかと交換で貰える物だしね。話だと」
「あ、残った分返せよ。あれは修行に役立つ」
「あら、あれは正式に私が譲り受けた物じゃない。報酬は今あんたが食べてるソレ」
「マジかよ!」
多少お酒の入った美神がケラケラと笑う。自分の迂闊さを呪いながら、今は食べる事でソレを発散させる雪之丞だった。
「で、だ。肝心な消えた霊能力者。そいつの足取りを探してるうちに辿り着いたのがここって訳だ」
「まさか、私の前依頼を受けて犠牲になったヤツがそいつなの!?」
「まだ調べがついてないが多分な。くだらねぇヤラセより、近くで起きた事件を優先させたんだろうよ。仕事熱心というか」
雪之丞はここに出た悪霊の性質を知らないらしい。美神はそう考えていた。その能力者は噂を聞いて浮かれながらやってきたエロ野郎に違いない。そいつのせいで悪霊がパワーアップし、おキヌちゃんが酷い目にあったのだ。同情に値しない。
次の日の朝、美神はおキヌの様子を確認する。傷口も消え、見た感じ穏やかだ。
「もう大丈夫みたいね」
念のためにもう一度霊薬を塗り、霊視をしようとした時、別室の雪之丞が訪ねてきた。
「お〜い、美神の旦那。俺もう帰るからよ、あの薬返してくれや。一応ライバルから譲り受けた大切な物だからな」
「ケチな事言わないで全部寄越しなさいよ」
「あのなぁ、必要な分は置いて行くからよ」
ここで粘ってもしかたがあるまい。そう思い、美神は霊薬を返すことにした。必要になったら奪えばよいのだ、と。
「待って、いま持ってくるから」
「ああ」
美神は適当な器を見繕い、壷の中身を三分の一ほど移す。そしてその後、どっちを雪之丞に渡すか悩みだした。
「おいおい」
どうやら真剣に悩んでいる様子の美神。暫くかかりそうだったので、折角だからと雪之丞はキヌの様子を確認してみる事にした。襖を開けた隣の部屋。キヌは規則正しい寝息をたて、静かに眠っていた。
「まぁ、何ともないみたいだな」
なんとも無しに部屋に入り、キヌの寝顔を見下ろす。
「まったく、横島の野郎には勿体無い女だな」
全然そんな事を思っていないくせに、皮肉めいた口調でこの場にいないライバルの名前を出す。
『横島』
それが引き金となった。
「よ こ しま さん」
その名前に反応したキヌが目を覚ます。しかしその目は虚ろで、正気のものとは言いがたかった。
「お、わりい。起しちまっ」
雪之丞の謝罪の言葉が言い終わる前に、布団から這い出したキヌが彼を押し倒した。
「なんだ! すげえ力! ぬぐ!?」
雪之丞の両腕を掴み、万歳の状態にしたまま上乗りになって押し倒す。そして躊躇無くキヌはその唇を雪之丞のそれに重ね合わせ、押しつけた。
「ぬぐ? んん! んんん!!!」
雪之丞の口内をキヌの舌が嘗め回す。口で呼吸ができないほど激しく、強く。鼻で呼吸をすればよい。そんな事はショックのあまり思いつかない雪之丞。
「んむー! ん? んにゅむ!」
窒息寸前で力が弱った彼の手をはだけ出た自分の乳房に当てる。そしてそれを雪之丞の手の上から揉み解す。
「あ、アンタ達 ナニシテルノヨ!?」
何時からいたのか? 彫像のように固まっていた美神が叫ぶ。その声にキヌは反応し、名残惜しげに唇を離した。
「わた さない よこし たさない」
雪之丞の首筋に舌を這わせながら微笑するキヌ。
「あいし わたし だめ ちが ちが ちが ちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちが」
「おキヌちゃん!」
突然胸を抑え奇声をあげるキヌ。その変化が不安で美神が叫んだ。
「ちがう!」
そのおキヌの中から幽体が飛び出してきた。
『チガワナイ! カラダノツナガリガナケレバ オトコハ オトコハ!』
「まだ残ってたか!」
キヌの中に残っていた僅かな残滓。それが何故このような形で現れたか、今の美神にはわからなかった。が、そんな事はどうでもよい。
「滅びなさい!」
破魔札に霊力を乗せた渾身の一撃。それが悪霊を完膚なきまでに打ち滅ぼした。
「なんて事」
美神がそう言い漏らす。しかしそれは雪之丞の台詞だった。キヌから悪霊が飛び出したそのあと、彼女は今だ同じ体勢であったのだ。そして美神によって悪霊が滅ぼされたあと、キヌは綺麗な笑みを雪之丞に向け気を失った。
「何時まで乳もんどんじゃお前も!」
「あわびゅ!」
それを追うように雪之丞も気を失う事になった。
「はぁ、迂闊過ぎたわ」
キヌに必要な心のケアを考えると、より一層やるせない気持ちになる美神だった。
「今日もおキヌちゃん休みか」
六道女子のある教室。会いたいはず親友の姿が見えない日々の為、どんどん心にあった勇気が消えていくように感じる少女がいた。
「そのようですわね」
「なんだ、心配じゃないのかよ!」
キヌの親友の少女、一文字魔理が平然とした少女に向けて怒鳴り散らす。
「あの美神お姉様がご一緒ですのよ。何を心配する必要があるのです」
「ま、まぁそうなんだけどな」
少女は手のひらで遊んでいた珠をじっと見つめる。そしてそれを胸に押し当てたあと、お守り袋に入れ、胸にしまった。
「会いに行こうかな」
魔理に聞こえない小さな声で、ぽつりとそう呟いた。
つづく
流行に後れないように韓国系ドラマをいろいろレンタルで観る。そんな私に友人がお勧めと渡してくれたのが『喜組外貨回収(うろおぼえ)』とかいうの。その内容は北の王国を舞台にしたゴッツイのでして、喜組と呼ばれる女性たちがいや〜ん、うふ〜ん。ある意味コメディでした。アノヤロウ(挨拶)
ども天戸です。NTRの本領が発揮されました。そして結局エロです。でも微エロですので安心。マダネ。しかし、理由や設定があってもあの場に雪之丞が現れるのは実にご都合的ですね。毎回事件現場に居る家政婦や少年探偵なみです。次回はピートが真実の愛を得る為にムーンライトドローンをカオスに作らせるという展開はツマラナイカラ没。
では前回のレス返しです。
>MAGIふぁ様
こんなお嬢様居ないってキャラが良いです。可愛いよ、可愛いよかおりハァハァ。すいません、病気なんです。そして「もういいの」は本当にありそうで悩む。
>九尾様
黒キヌ様は書くのは大好きです。常に幽体化して背後で横島を見守る黒キヌ様なんて最高です。書いては駄目ですか? そんでもって話の時期的なものはさり気なく作品中に伝えようと頑張ってます。わからなかった方、すいません。
>紅蓮様
どうしても好きなキャラは贔屓。出も贔屓されたキャラが壊れるのはどういう事だろう? 可哀想なピート。愛子だけの話も書きたいです。……アレの続きかぁ。
>初めてだから、優しくしてね♪様
ご指摘ありがとうございます。暫く指摘されても気が付きませんでした。彼氏ってところ。なんでおキヌが彼氏なんじゃ! んでもってどじでマヌケ〜 は元ネタがあります。
>槍持ち奴様
すれ違いはこの手の基本。そしてどうなるかは私も気になります。んでもって三点リーダー、使ってない事によく気が付きましたね。実は自分のスキルアップを目標に、三点リーダーを使わず間を表現する練習をしてるんです。恨みなんて無いですよ。
>TF様
王道発進! そう、王道なのです。しかしこの系統の話をGS系であまり読んだ記憶が無いので。なら自分で書いてみようと思った訳です。自分が知らないだけかも。
>キャメラン様
えっと敵がシュレッダーでしたっけ? 忍者亀。その名も激亀忍者伝。この名前を知ってる人は私の同類。んでもってカワバンガ!
>通りすがり・・・・・様
NTRとは寝取られと呼ばれるジャンルの総称です。両方の単語をググッてみてください。新しい世界が広がるかも?
>偽バルタン様
さて、今回は出番と台詞が豊富だった雪之丞ですが、彼はこの後どうするのでしょうか? どうなるのでしょう。テレビ界に颯爽デビューとか。あれ? 逃げた?
>ドッペル様
一応、ずっと昔から伝統あるジャンルなんですけどね。んでもってドラまではよく使われるシチュエーションです。つまりそんな珍しくないし怖くないですよ。