警告 このお話はNTRと呼ばれるジャンルになります 注意
男女間の友情? 性欲抑えればなんとかなるんじゃない?
むりむり、本人達より周りがそれを認めないもん
第二話
「ってなわけでな、これからちょっと遠野の方に仕事にでなきゃいけねーんだ」
食事を終え、本来の目的を語る伊達雪之丞。
「遠野? 岩手だっけか?」
お茶をすすりながらおぼろげな知識を返す横島忠夫。
「まあ、そっちの方。なんかよ、そこに天狗が出るって噂の修行場があるって話があるんだ」
「なんだよ、また修行か。肉体的なマゾだな」
自らを鍛え、自分を戦いの場に置く事を好む雪之丞。楽する所は楽で通していたいと考える横島とは正反対である。
「いや、今回はな、その修行場に行ったっきりで行方がわからなくなってるやつの捜索が仕事なんだ」
「それってGSの仕事か?」
「まぁ、ほら、いくら小竜姫の取り成しがあったとはいえ、俺が問題をおこした人物ってのがあってな」
「GS試験のあれか。また古い事をもってくるヤツもいたもんだな」
二人が初めてGS候補のライバルとして出会った事件。その事件をきっかけに、二人はライバルかつ悪友としての関係を持つようになっていた。ときには協力し、ときには互いに修行に励む。そして下らないことで争い、しょうもない事で笑いあう。それが今の二人の関係だ。
「古いってお前、そんな前の事じゃないだろ」
「なんか俺の周りで色々な事がありすぎてさ、どんどん記憶が更新してな。なんか普通の一年以上の体験をしてるような? あれ? 俺高校に入って何回新年を迎えたっけか?」
「知るか! そういやこないだは月に行ったんだってな。俺よりハードな人生送りやがって。ま、置いといてだ、なんかよ、霊感つーかそんな感じがな」
「はぁ?」
「この依頼がって事かどうかわからんが、何かやな予感がするんだ。だから保険をかけておこうと思ってな。そのなんていうか」
少しぬるくなったお茶を一気に飲み干し、雪之丞は自分でも上手く説明できない感覚をどう説明するか悩んでいた。
「六感とか虫の知らせっていうのですね」
と、洗いものを終えたキヌが自分の分のお茶ともってテーブルについた。
「そんなんかな? ってなわけでだ、俺に何かあったと知ったら宜しくたのまぁ」
「任せとけ。弓さんにはお前は北の地に散ったと後で連絡しとく」
任せとけ、そう言わんばかりに自らの胸をバシッと叩く横島に、ありがとよっと追撃を食らわす雪之丞。それは霊気を纏った一撃であったという。
「あ、すいません。私そろそろ御暇しますね」
キヌは時計が九時近くを示している事に気が付き、帰宅する事を横島達に伝えた。キヌが住んでいる美神の事務所までは電車を必要とする距離がある。
「じゃ、俺もそろそろ行くわ。飯の礼ってワケじゃねえが駅まで送ってやるよ」
他意の無い雪之丞の誠意を断るすべの無いキヌはその申し出を快く受けた。なぜか横島は突然取り出した絵本、『赤ずきんちゃん』の狼が猟師に殺されるシーンの朗読を始めたりもしたが。
「狼は 死んだ 死んだのだ。わかってるな雪之丞?」
「わかってるって。俺はそんな野暮じゃねえよ」
俺の女に手を出したら殺すぞ、意訳すればそんな感じの横島のプレッシャーに苦笑しながらキヌと雪之丞は横島宅を後にした。
「なんだか 私って一人でいい気になって、一人で騒いで入た気がしますわ」
失意のどん底状態の弓かおり。彼女は、実はまだ横島宅からたいして離れていない小さい児童公園に居た。今の状態で自分がちゃんと帰宅できる自信も無かったし、なによりも1度現在の状況を静かな所で考えたかったのだ。
「本当に、なにをやってんでしょう」
ネガティブになりがちな思考を必至に抑えようとする。が、それをうち払う考えが浮ぶ事も今は無く。止まる事の無い涙はかおりの顔から生気も一緒に流し尽くそうとしていた。
「そういえば」
まず、キヌと雪之丞の関係。キヌはその事情により最近まで生霊であった。そしてその生霊時代から美神令子のもとでGSのアシスタントをしていた。彼女と雪之丞が出会ったのはその時期であるという。つまりキヌは自分より遥かに長い期間、雪之丞に接して来たのである。恐らく二人はかけがえの無い
「仲間? かしら」
命の危険には事欠かないのがGS家業。苦難を乗り越える仲間が大切な人間へと変化して行くのは
「あるのでしょうね」
しかし全てを恋愛事で結び付けるのもおかしな話だ。必ずしもそこに愛が芽生えるとは言えないのではないか? これは前から思っていた事だ。キヌと横島の関係。キヌは横島の事を大切な人だという。かおりはそれを恋愛事に思考を結び付け、勝手に横島を相応しくない男と論じてきた。しかしキヌのそれは慈愛や博愛に通じるものであったのなら
「そう! それは雪之丞にたいしても同じなのでは!? あの万年欠食児童に配給するのも! そうですわ」
ちょっと強引にポジティブ思考になってみた。でも、少しだけ希望が見えてきた気がした。もう大丈夫だ。とりあえず家に帰ろう。そして明日直接、は無理だから間接的にでも配給の件を尋ねてみよう。かおりはゆっくりと立ちあがり、握り締めていたハンカチを水道で洗い、それで顔を拭いた。多分今の自分はすごい醜い顔をしている、そんな気がしていたから。
「え?」
談笑する男女の声。かおりに聞き覚えのあるその声が、ゆっくりと近づいてきた。とっさに水道の影にしゃがみこむかおり。自分でも何故こんな行動に出たか理解できないが、本能がそれをさせたとそう思うしかなかった。
「 でさ ってのが」
「ふふふ そんな すき」
会話の内容はうまく聴き取れない。しかし楽しそうに仲睦まじく歩く二人、彼らは先ほどまでかおりの思考の中に居た人物に間違いなかった。
「雪、 之丞?」
街灯に浮びあがった男女は、直に公園の入り口を横切り見えなくなってしまった。
「う、うぅ うぅぅ」
変な声が聞こえる。
「ひっく、うぅぅ ぐす」
ああ、なんだこれは自分の声だ。
「ん、ううぅ、ああああああ」
恥ずかしい。こんな所で自分は一人で泣いているんだ。惨めだ、本当に惨めだわ。少し考えればわかる事ではないか。誰にでも優しく綺麗で美神お姉様の秘蔵っ子でもある氷室さんにはあの横島さんよりも雪之丞の方がお似合いではないか。横島さんはダミー彼氏だったのだ。そうだ、お似合いではないか
「私と」 「私と」 「私と」
雪之丞より
少女は一つの恋が終わった事を感じていた。
「おはよーっす!」
その日、横島は珍しく登校していた。
「おおっと! 空位の時代はついに終わった! そして時代は戦国の世へ! 欠席大王横島のご入場だ!」
「なんだ、セクハラが祟って南米に郵送されたってのはデマか」
めったに顔を出さないにも拘らず、横島はクラスのムードメーカーとなっていた。大抵の騒動の中心に居る彼。彼特有の人を惹き付ける言わばカリスマが常に横島の周りを賑やかにしていたのだ。
「どっから流れた情報じゃ! ったく一月も前の情報に踊らされやがって」
『郵送されたのは事実なのね』
学校の机の付くも神、かなり変質しているが。の愛子が呆れながら苦笑を浮かべる。彼女は本来退治されるべき妖怪であったが、横島との出会いを介し、今ではクラスメートの一員として普通に受け入れられている。
「ちょっと下着の構造を研究しようと失敬しただけなのにぃ!」
『下着の構造?』
「ああ、なんか美神さんの使ってる高級ランジェリーって構造が複雑でな。いざと言う時に外し方がわからんとみんな困るだろ?」
みんなって誰? 一斉に心の中でつっこむクラスメート。
「日々の努力の積み重ねがいざという時にモノを言うって事だ! お? 普段ならここでフンガー って叫ぶ役のタイガーは休みか?」
「ええ。一昨日から仕事が入っているそうで」
「エミさんとこのか」
巨体の存在感だけはある友人の所在を教えてくれたのはピエトロ。仲間内でピートと呼ばれるヴァンパイア・ハーフの青年だ。いや、実際は物凄い年齢で青年ではないのだが、見た目は横島達と変わらない年齢に見える。
『プレゼント代を稼ぐんじゃー! ってはりきってたわ。女に貢ぐ勤労学生って青春よね』
「タイガーの分際で色気付きやがって! ここは1度痛い目に会う必要があるな」
「そんな事言ってちゃダメですよ。そういえば横島さんはアルバイトの方はどうなんですか?」
最近やっと人生の春を捕まえ始めた友人の為、ピートはさり気なく話題を変えてみた。
「あ〜、なんか今回のってか、今日の仕事は俺はお休みなんだと。相性っちゅーかなんかがな、今度のそれがおキヌちゃんのレベルアップにちょうど良いとかで」
「へぇ、頑張ってるんですね、おキヌちゃん」
美神曰く、今おキヌに足りないのは自信だそうだ。横島がそばに居るとどうしても重要な部分で影響が出てしまう。良くも、悪くも。それを愁いたための置いてきぼりである。そう横島は聞かされていた。
「六道女子でもがんばってるし、なんか先越されてるっつー感じがするな。まぁ、もともと荷物持ちの俺が言う台詞でもないが」
自信が必要なのは横島ではないか? そう思いながらピートはそんな事無いと励ます。
「昨日、雪之丞のやつがたかりに来たんだが、あいつも自分で依頼とか受けてGSの仕事やってるし。タイガーは女といちゃいちゃしてるし! ピートはモテモテ王国の建設活動に励んでるし! 裏切ーり者の〜 名を〜受けろー!」
説明しよう。ピートはその良く整った容姿の為モテモテである。そんなピートに対し横島の怒りが頂点に達した時! なんかもう、色々な物の封印が解かれるのだ。
「憎くなんて! 憎くなんてないやーい!」
どこからともかく取り出した藁人形に五寸釘を打ちつける横島。
「うぐ! 本当に苦しいから止めてください! って、なんで僕なんですかぁ!」
横島の行ったの厭魅の効果をモロにうけるピート。
「己の胸に聞け! あ、愛子、悪いがノート貸してくれ」
『どうぞ』
一応、横島も休みの間のノートを書き写す。結構な量になるそれだが、すでに馴れた行為なのでテキパキとやっていく。
「ったく、めんどくせーな」
『だったらもっと学校に来なさいよ』
「みんな貧乏が悪いんじゃー!」
うがーっと叫んだ後、今使っていた古びた机にパタっと突っ伏す。愛子からのノート借用の条件としてなるべく自分の机を使う事、という条件を彼女から出されていた。使われてこそ机。机の性分を全うさせろと、そういう事だそうだ。
『しょうがないんだから』
机妖怪愛子の本体は机である。その机は今横島が突っ伏してる机であり、そう見えないが愛子は今横島に抱きつかれているのである。彼女にとっては素晴らしき報酬であった。
「ほら、横島さん! ちゃんと終わらせないと進級できませんよ」
「わかってるわい」
その様子を面白く無さそうにみていたピートが急かす。
『手伝おっか?』
垂れていたよだれを拭い、返事も聞かずに横島の隣に座りノートを広げる愛子。まぁ、イカサマはゆるさねぇゼ? っという級友の猛攻が教師がやってくるまで続いたので、そうは問屋が下ろさなかったのだが。
午前の授業が終わり、昼休みを告げるチャイムが学校に流れた。生徒達は皆思い思いの場所に出向き、短い休憩を堪能していた。
『ほら、横島君、起きてよ、もうお昼よ』
「んあ?」
完全に熟睡していた横島を、愛子が優しく揺すって起す。ああ、幸せだった。ずっと自分は抱きしめられていた。最高だ。これが青春だ。なんて事実を知っている人間は少ない。机妖怪の秘めた思いが解放されつつある昨今、横島は今日をのりきるエネルギーの搾取に乗り出していた。
「ってな訳でピート! その弁当は俺がいただきじゃ!」
美形青年ピートには毎回沢山のお弁当の差仕入れが届く。先輩これ食べてください! ってな感じに。それを狙う味狩人が横島と今は居ないタイガーなのであった。ピートは無理に食事をする必要を感じていない。植物などから生気を吸収できる能力があるからだ。そんな自分の代わりに弁当を片づけてくれる横島はありがたい存在だったりする。
「学校に来る最高のメリットは昼食にありつけるって事だなぁ」
何所か世間との認識のずれた感想を漏らしながら弁当を食べる横島。これはいつもの光景なのだが、毎回自分の弁当をピート以外に食われる製作者の気持ちはどうなのだろう。
「しょうがないヤツよねぇ」
「ホントよね〜 もっと味わって食べなさいよ」
嫌がられてはいないみたいだ。
「頑張って作ったんだから」
誰の為に? とかいう意見は無粋だろう。ここは、餌付け、とかそういった単語で済ませておく。
「んぐ!」
「どうしました?」
突然箸を止めた横島にピートは疑問をなげる。
「このサラダ、妙に力強く野趣溢れる感じがしてな。えっと、トマトを食うとナトリウムが不足して塩が欲しくなる所だがそこにチーズを持ってくる事で、えっと、霊気とか妖気とかがプンプンするこの野菜の塊はなんだ!」
「あ、それ僕が作ってきたんです! なんか今日は横島さんが来るお告げのようなものがして! それ先生の所の庭で取れた野菜ですよ」
先生、ピートの師匠、唐巣の事である。
「キラートマトかよ!」
「見ためはなんですけど味と効能は期待できますよ。高濃度の魔素がたっぷり含まれてますし!」
「まぁ、味は良いんだけどな」
喰うの!? またもやクラスの人間が一斉に心でつっこむ。
ピエトロ・ド・ブラドー。彼は一応、ホント一応述べておくが同性愛者ではない。しかし彼の種族的な特徴で、異性にたいする人間的な欲望が薄い。種を反映させる為に必要な欲望が。それは強大な能力を有する個人、そして種族にたいしてかけられた世界からの強制力とも言える。本当か?
「良かった! パン屋で貰ったミミを揚げたクルトンも入ってるんですよ」
その代わりに彼は友情を強く欲する。種族の垣根を越えて接してくれる稀有な存在を心から愛する。えっと、ライクですよ。仮にこの横島が女性だったとしても、ピートが望むのは友情だろう。友情のはずだ。友情ですか?
『豚の?』
「パンのです! なんでパン屋でミミガー貰えるんですか。何所のお徳情報ですか」
『お徳なの? それ』
「今日は氷室さんはお休みです」
担任から告げられた事実にかおりはホッとした。今彼女にどうやって接すれば良いかわからないからだ。しかしそれは何時までも先に送る事は出来ない。自分の彼氏をとったキヌが憎い? そもそも雪之丞は自分の彼氏か? 向うからしてみれば、ただの異性の友達だったのでは? むしろ愛し合う二人を邪魔していたのは自分?
「どうした弓? 落ちてるもんで食って腹壊したのか?」
いつもと違うくらい雰囲気のかおりに、彼女の親友の一文字魔理が話しかけた。最近はかおりの高慢さは影を潜めてきたが、過去に気づきあげた嫌味で高飛車なエリートという彼女に親しく声をかけるものは少なかった。
「そんなマネしますか! 少し体調が優れないだけです」
「あ、そっか。お前って初日は重いんだっけか。つらかったら医務室行けよ」
今はその不器用過ぎるほど不器用な気遣い、勘違いの励ましがとても嬉しいかおりだった。辛い時に手を差し伸べてくれる友達。
自分は友達を無くしたくない。
自分が素直に身を引けば丸く収まる。
なに、男なんて星の数ほど居る。ちゃんと自分に相応しい男が現れるはずだ。今なら白馬にのった王子だろうが木馬にのったリュウ・ホセイだろうがどんと来いだ。
だから今は自分が
チクショウ
つづく
主役は誰なんだろう? ピート?(挨拶)
ども天戸デス。初回で自分のハンドルを間違える愚か者です。もうこの話ではこのままでいますですよーだ。この話は90年代ちっくなお約束を多量に含んでおります。この話にエロは必要なのだろうか? あ、この話は29巻前半って設定です。つまりルシオラもシロも当然タマモも出ません。
さて、前回のレス返しです。
>九尾様
ドラマのタイトルとかで駄洒落が出来ないかと、適当につけたタイトルです。もっと短くすれば良かったです。直に読者がわかる真相なのにそれにたどりつけない登場人物にやきもきしてください。
>ゼフィ様
巫女服ですか。ふふ……ならばその下にスク水を着こんでいる! としたら? ふふふ…… えっとスク水の股についてるポッケの使いみちっていまだにわかりません。うわぁ、関係ねぇ事いってるし私。そして次回も食事シーンがあったり。
>高沢誠一様
だから意味はありませんって。
>you 貴方らしくもないわ しくじったなんて♪
そうだったり。
>偽バルタン様
その期待こそがこの話の醍醐味です。当然のようにそんな展開があったりなかったり無視されたりスルーされたり。需要? 知りません。忍び寄るピートの影にご期待ください。あれ?
>リーマン様
馬に蹴られるって事ですね。痴情の縺れって関って良いためし無しです。ああ、なんて不憫なかおりちゃん。がんばれ甲斐性無し。ところで何所からサングラスをもってきたんでしょうね?
>司様
豪雨の中に倒れるかおりを見付けた横島。悩んだ末に彼は彼女を自宅に運び看病した。
「よりにもよって何で貴方に助けられなければならないんです! 貴方なんかに、貴方なんかに! うわああああ」
とにかく今は彼女の激情をその胸で受け止める事しか出来ない横島だった。
次回予告?
>矢沢様
他はともかく季節を抱きしめてまで当てるなんて! ガタガタ オヌシデキルナ!
実際、すれ違いや勘違いなんて些細なもので。でもそれを是正する事の難しいことで。どうやってケリをつけるか神ならぬ我が知る由も無しって事で。困ったものです、ええ。