その日、私は美神さんに頼まれた仕事をしていたので遅くなり、一人で帰っていた。
「すっかり遅くなっちゃったな。 忠夫さん、お腹すかせてるだろうな。」
そう言って、私は夕飯の材料の入った袋を持って家路を急いでいた。
いつもは忠夫さんと一緒に帰っているけど、こんな風に待っててもらえる人がいる家に帰るのもなにかいいな。
「でも、どうせなら忠夫さんが帰って来るのを迎えてあげたいな。」
私は、その情景を想像してみた。
ただいまと言って帰って来る忠夫さん、お帰りなさいと迎える私、その際のセリフはもちろん。
【ご飯にします? お風呂にします? それとも・・・】
キャー、キャー、私ったら何考えてるのよ・・・でも、最初にその覚悟は出来てますって言ったし、べ、別にそうなってもイヤじゃない気がするし・・・・キャーッキャーッキャーッ。
そんな事を考えて悶えていたらどこからか視線を感じて、周りを見てみると目の前に女の人が立っていた。
は、はずかしい、今の光景を全部見られたの?
その何か感情を写していないような目で見られていると、顔全体が熱くなってきたような気がした。
「ご、ごめんなさい〜!!」
あわててその場を走り去ろうとしたが、すぐに人にぶつかってしまった。
「す、すいませんっ!」
すぐに謝って、その人のほうをみてみたら・・・見るからに怪しいコートを来た、一人のおじいさんがいた。
この雰囲気は、まさか。
そう思った瞬間に、おじいさんはいきなりコートの前を開こうとした!
「ハッ!!」
考えるよりも先に、一撃を入れていた。
ご老人は敬うものだけど、人としての道を踏み外したような人は別だ。
「お巡りさ〜ん!」
ちょうど巡回に来たらしいお巡りさんに、そのおじいさんを渡した。
お巡りさんに連れられていくおじいさんが何か言っていたようだが、うめき声のような小さな声になっていたので気にしないことにした。
そういえば、さっきの女の人はどうしたんだろう?
気になって振り返ってみると、いつのまにか女の人はいなくなっていた。
* * * * * *
「只今帰りました、遅くなってすいません。」
そう言って、唯ちゃんが帰ってきた。
だが、別に一緒に住んでいるわけではない。
俺の住居を探す際に唯ちゃんは一緒に住めば良いと最初の提案を俺に飲ませようとしていたが、流石にそれはまずいと言って、何とか隣の空き部屋に住む事になったのだ。
隣に越してきて以来、唯ちゃんは事有るごとに掃除をしにきたり、食事を作りにきたりしてくれている。
「おかえり。 美神さんから聞いていたより時間がかかっていたようだけど、なんかあったの?」
エプロンを着けつつ、台所に入っていく唯ちゃんにそう尋ねた。
全然関係無いが、こう言うときの女の子の後姿ってなにか、こう男心ってやつにくるものがあるよな。
元の時代で、おキヌちゃんが食事を作りにきてくれた時も思ったけど。
「あ、そうなんですよ。 じつは・・・・」
唯ちゃんの話では、じいさんの変態にあって、それを撃退してお巡りさんに突き出していたのだという。
そのじいさんとその前に見たという女の特徴からみて、ドクター・カオスとマリアと見て間違いなさそうだった。
そうか、もうあいつらの出てくる時期か。
「どうしたんですか、忠夫さん?」
完成した料理を運んできた唯ちゃんが、そんな事を尋ねてきた。
どうやら遠くを見るような目ってやつをしていたらしい。
「いや、なんでもないよ。 今日もおいしそうだね、それじゃあいただきます。」
俺はそういって誤魔化して、唯ちゃんが作ってくれた夕飯を堪能することにした。
* * * * * *
それから数日たったある日。
某ボロアパートにて
「出来ました。 ドクター・カオス。」
「おお、出来たか。 ・・・よし、いい出来だぞ、マリア。」
そこには、ケーキを持った無表情な女性 −アンドロイドのマリア− と、唯によって警察に突き出された変態じいさん −ドクター・カオス− がいた。
「よし、すぐに包装して、美神令子の事務所に届けるのだ!」
「イエス、ドクター・カオス。」
「くくく、見ておれよ、小娘。 この儂に、あれほどの生き恥をかかせおって、その罪、死をもってもまだつぐなえぬ!! 完全にこの世から消えてもらうぞ、この時空消滅内服液によってな。 この時空消滅内服液は・・・・・・」
ボケじいさんが演説をしている間に、マリアはとっとと出て行っていた。
このじいさんがそれに気付くまでに、1時間かかったという。
* * * * * *
いつも通り出勤してきたら、事務所の前にいたマリアを発見した。
手に持っている箱の中身は、多分あれだろうな。
「うちの事務所に何か用ですか?」
「ドクター・カオスに・頼まれて・届け物・来ました。」
俺の質問に、マリアはそう言って返してきた。
おいおいマリア、一応初対面なんだから、ドクター・カオスが誰かなんてわからんだろうが。
「では・失礼・します。」
俺に箱を渡すとそう言って、マリアは去っていった。
いや、自己紹介とかくらいしとけよ、マリア。
「さて、こいつをどうすっかね。」
渡されたケーキの箱を持って、どうしようか考えていたが、すぐに良い事を思いついた。
まず、[複][製]の文珠を使ってコピーを作り、コピーした方に[変][化]の文珠で外見と中身の作りを変えて、[変][質]の文珠で時空消滅内服液を強力な下剤に変えてやった。
後は、[透][視]でカオスのじいさんの場所を確認して、じいさんの死角に[転][移]で細工したケーキを送ってやった。
どうなるかは知らんが、まず間違い無く、愉快な事になってくれるだろう。
とりあえず、俺は[消][失]で時空消滅内服液を消したケーキを持って、事務所に入った。
結構うまかったんだよな、このケーキ。
* * * * * *
次の日、歩いている俺の前にマリアが見えた。
「おう、マリア。 昨日のケーキ、ありがとな。 うまかったぜ。」
自己紹介もされてないのに名前を呼ぶのはまずいかと思ったが、まっ、マリアなら大丈夫だろ。
「どうも・横島さん。 ありがとう・ございます。」
マリアは、そう返事をした。
俺の方も自己紹介をしてないのになんで知ってるんだろ?
まっ、多分カオスのじいさんが調べたのを聞いていたんだろうな。
「あ、そうだ。 こいつはケーキのお礼な。」
そう言って、俺はマリアにさっき商店街のくじ引きで当てた口紅を渡した。
なんでも新製品の宣伝代わりに、大量に景品にしてあるのだそうだ。
「私には・必要・無いもの・です。 それに・これを・貰う・理由・ありません。」
「マリアだって女の子なんだから、必要ないってのはなしにしようぜ。 後、これはお礼って言ってるだろ。 お礼される必要がないってんなら、友達からの贈り物とでも思ってくれや。」
そう言って、マリアが返そうとした口紅をもう一度渡した。
今度は、返そうとする事はなかった。
気のせいかもしれないが、友達って言った時に、マリアがうれしそうにしたような気がした。
うん、良い事をしたな・・・だから、
「口紅を送るなんて、親密なご関係なんですか? 忠夫さん。」
後ろからこんな声が聞こえたって、後悔なんかしないぞ、うん!
後書き
マリアとうじょ〜〜〜〜〜〜(じいさんは無視(笑))
でも今回・・・・・・・・・・・・・短か!!!
今までで一番短いんではないか(汗)
ま、まあ、それは良いとして、一応いじめに関する最終報告をば。
『館いじめ』と『竜いじめ』の製作に入りました、でも出すのは改丁版が出揃ってからです。
館はこっちで出す予定ですが、竜に関しては最近出来た焔さんのHPの18禁版の方に出します。
なぜかと言うと、あるお方より借り受けるあるキャラを使うんで、あっちのHPの方が良いだろうで判断しての事です。
では、また次回で。
ばいばいき〜〜〜〜〜〜ん。
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