まじですかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!
「そういえば、あなたの名前も聞いていませんでしたね。 よければ教えてくれませんか。」
私は、目の前の人にそう尋ねてみた。
しかし、なぜか目の前の彼は固まってしまって、何も答えてくれなかった。
「もしもし、どうしたんですか?」
もう一度声をかけても、彼はなにも答えてくれなかった。
心配になって、もう一度、今度はもっと大きな声をかけてみようとすると、彼がなにかうわごとのような事を言っていることに気が付いたので、耳を近づけてみた。
「はははは、こんなのは嘘だ。 そう、これは夢なんだ。 だって目の前にルシオラが見えるんだから。 ははっ、ルシオラー。 なんでそんな川の向こうにいるんだよ、こっちに来いよー。 なんだよ、来ないんならこっちから行くぞー。」
うつろな目をしながら、彼は小さくそんなことを呟きながら、窓の方に歩き出した。 私は、慌てて彼を止めた。
「ちょっと、何やってるんですか! しっかりしてください! 気をしっかり持って!!」
そう言いながら、私は彼の頬を軽く叩いた。
「う〜〜ん。」
何度か叩いたら、なんとか彼の目に正気が戻ってきた。
良かった、でも、何でいきなりこんな事になったんだろう?
やっぱり、さっきの事が原因で、頭に何らかの障害が残ったのかな。
美神さん、手加減せずに殴ってたから。 だとしたら、私にも責任がある。
元はといえば、私が最初から美神さんを止められたらこんな事はおきなかったんだから。
美神さんは責任をとろうなんて思わないだろうから、助手であり弟子である私が責任をとらなくちゃ。
忠夫SIDE
「う〜〜ん。」
あれっ? 俺は何をしていたんだ。
そう思うと同時に辺りを見まわすと、目の前に可愛い女のこがいた。
・・・・・思い出したよ、状況から察するに俺は過去に戻っているんだよな。
しかも、唯の過去じゃあない、目の前の女の子がこの世界の俺であるらしい事から、ここはいわゆる平行世界って奴の過去なんだよな。
しかし、俺が女の子ってのは勘弁して欲しかったな。
びっくりして、危うく成仏するところだったぜ。
川の向こうで手を振っているルシオラが、見えたような気がしたもんな。
「すいません!!!」
目の前の女の子、唯ちゃんがいきなり頭を下げた。
「私が美神さんを止められなかったから、あなたに酷い目に合わせてしまいました!」
そんな事を気にしていたのか。
「気にしなくていいよ、殴ったのは君じゃないし。 それに、どんな理由があっても君達の車を壊したのは俺だし。 そのせいで、君達も危ない目にあっただろう。 だから、お相子ってことせいいさ。」
(それに、美神さんにシバかれるのはいつものことだしな。)
と、心の中で付け加えながら、俺は、
(どうりであの一撃がよけられないはずだよ。 ナンパと同じように、美神さんのシバキがよけられないってのは本能に刷り込まれているからな〜。)
などと、考えていた。
「いいえ、私が最初から美神さんがスピードを出すのを止めていればこんな事にはならなかったんです!」
気にするね〜、この子は。
別にそんなに深く考えんでもいいのに。
「別にいいって。 ここに連れてきてくれたのは君達なんだろ。」
「はい。 怪我にヒーリングをかけてから、ここに連れてきました。」
へ〜、唯ちゃんはヒーリングが使えるのか。
性格といい、能力といい、この世界でのこの時期の俺とは思えんな。
さすが、パラレルワールド(笑)
「ですが、私ではあなたを治しきれなかったようです。 いつまたさっきのような錯乱状態になるかわかりません。」
なんだ。
さっきの状態が怪我から来るものと思ったのか、この子は。
だったら大丈夫だと伝えないとな。
「だいじょ「だから、私が責任をとってあなたの世話を見ることにしました。」・・・へ?」
・・・・・・・・・ナンデスト。
ナニヲイッテルンデスカ、アナタハ。
「ち、ちょっと、唯ちゃん「大丈夫です、炊事洗濯は得意ですし、うちのマンションは二人で住めるくらいの広さはあります。」いや、そうじゃなくてね。」
なんか、えらい事になってきたぞ!
な、何とかせんと!
「ほ、ほら、俺は男なんだし、こう見えても俺って結構スケベだから唯ちゃんみたいな可愛い女の子に世話なんかされてたら、襲っちゃうかもしれないよ!」
「覚悟の上です。 あなたが男であるように、私も女なんですよ。 女として責任をとって世話をするということは、あなたの妻となる事と同義と考えています。 ああ、でも別に籍を入れろとかは言いません、あくまで責任をとるのは私なんですから。」
おいおいおいおいおい、マジだよ、この子。
どうするよ、俺!
なんでこうピンチが続くんだよ、不条理だろ、おいっ!
責任者出てこーい、チクショー!!
「不束者ですが、よろしくお願いします。」
床に三つ指をたててお辞儀をする唯ちゃんを見て、俺は乾いた笑いを浮かべながら、こうなった運命ってやつを呪った。
「・・・・誰か助けて。」
うめき声のような小さな囁きが、白いガス状の物質と共に俺の口から出ると同時に救いの主は現れた。
「ちょっとなに言ってんの、唯ちゃん!!」
その声が聞こえると同時に、美神さんが部屋に入ってきた。
美神さん、いつもは守銭奴の鬼にしか見えないあなたが、いまは如来様に見えますよ。
ああ、後光がまぶしいぜ。
「何って、今回の責任について話していたんですよ。」
「責任って、あのね唯ちゃ「あなたが唯ちゃんの上司の美神さんですか。 すごい人だって唯ちゃんから聞きましたよ。」」
俺は、唯ちゃんと美神さんが言い合おうとしている所に割って入った。
唯ちゃんは頑固なところがあるみたいだから、下手に言い合って意固地にさせるよりも話をそらせた方が良い。
俺の意図に美神さんも気が付いたらしく、話を合わせてくれた。
「そう言うあなたも、さっきの霊波刀は凄かったわよ。 よかったら、名前を聞かせてくれない。」
「ああ、そういえば自己紹介をまだ一度もしてませんでしたね。」
「えっ、一度もしてないって。 もしかして、唯ちゃんにもしてないの?」
「ええ、する前にああいう状態になってたもんで。」
「あ、あはは、唯ちゃんって普段は良い娘なんだけど、そういうところがあるのよね。」
俺達二人の間に乾いた笑いが流れた。
「で、俺の名前なんですけど、苗字は唯ちゃんと同じ横島で、名前は忠夫。 横島忠夫っていいます。」
「えっ、私と同じ苗字なんですか!」
「そ、だから気軽に忠夫とでも読んでね。」
唯ちゃんはそう言うと、小さくなにやらブツブツ言い出した。
時折、「運命」やら「赤い糸」のような単語が聞こえてくる。
唯ちゃん、君は妄想癖まで有るのかい。
そういうのは小龍姫さまだけで十分なんだけどな、俺的には。
「変ね、横島忠夫なんて聞いたことないわよ。 あれだけの霊波刀を出せるGSなら、名前が知られてても良いはずなのに。」
「ああ、それは当たり前ですよ。 俺はGSじゃないですから。(この時代ではまだね)」
「「ええええええええ!」」
二人とも声が大きい。
それに唯ちゃん、君はいつ現実に帰って来たんだい。
「忠夫さんは、ここに除霊にきたGSじゃあなかったんですか!」
「ここには、霊能の修行中の事故で飛ばされただけだよ。 だから、偶然ってわけ。」
その言葉を聞いた唯ちゃんは、「やっぱり運命」などと赤い顔をしながら小さく呟きだした。
もう勝手にしてくれ。
「へー。 あっ、でも霊能の修行してるってことはGS志望なのよね。 ならうちで働いてみない。」
今後のことを考えると、美神さんの所で働くべきだよな。
でも、あの時給は勘弁してほしいな、
そこら辺は俺の交渉術しだいだな、まったく自信がないけどな。
「時給は・・・そうね、あなたほどの能力なら無免で助手扱いだとしても、相場からいって時給5,000円でどう?」
その言葉を聞き、俺はこの世界がパラレルワールドであるという深い確信を得ると同時に本日二度目のプッツンを経験した。
「・・・・・・・・・・あ、鳥。」
* * * * * *
「で、今日はどういう除霊なんですか?」
あの後、俺は唯ちゃんの手厚い看護を受けて気を取り戻した。
またプッツンした所為で、唯ちゃんはますます責任を取らねばと思うようになったらしい。
「ん、簡単な除霊よ。 ここのホテルの露天風呂に出る霊を払ってくれっていう依頼。 出てくる霊は・・・そうね、この気配から言って、仲間とはぐれて雪に埋もれて死んだ明痔大学のワンダーホーゲル部員ね!!!」
「すごいです、美神さん! 気配だけでそこまで分かるんですね!!」
「いいえ、事前に近くでそういう事故が有ったらしいっていう事を調べておいたの。 霊能者には、ハッタリが重要よ。」
その美神さんの一言を聞くと、唯ちゃんは勢い良くズッコケた。
うん、いいコケだ。
「よその霊能者が聞いたら怒りそうなセリフですね。」
「お喋りは終わり、来たわよ!」
その美神さんのセリフと同時に、目の前に何かが現れようとした。
って、この気配はひょっとして。
「ど・・・どーも・・・」
そう言って出てきたのは、巫女服を着た幽霊おキヌちゃんだった。
* * * * * * *
「それで、あなたは300年前に人柱になった巫女ってことね?」
おキヌちゃんの話を最後まで聞いた美神さんはそう言った。
「はい。 でも、あたし才能無くて、成仏できないし、神様にもなれないし・・・ 一目で私の名前を言い当てた人なら、私をお助けくださるかと思って・・・」
「あんた、そんな事をしたの?」
「ええ、さっき美神さん達に会う前にチョット。」
俺は、苦笑しながら美神さんの質問に答えた。
「でも、やっかいね。 こういう場合は、山の神様になる為に地脈との繋がりができてるのよ。 下手な事はできないわ。」
「そんな、美神さん。 この娘がかわいそうですよ、何とか「できるよ。」」
俺は、唯ちゃんのセリフを遮りながら一歩前に出た。
「できるって、なにをするのよ。」
「簡単なことですよ。 ヒントはさっきの美神さんのハッタリは正解だったってことです。」
そういって俺は窓のほうに歩いていき、声をかけた。
「出てこいよ、ワンダーホーゲル部員。」
そう言うと、目の前に今度は鬚面のいかつい霊が出てきた。
「よ、よくわかりましたね。」
「んーな事はどうでも良い。 それよりお前、ワンダーホーゲル部なんてのに入ってたんだ、山は好きだよな。 山の神様ってのになるつもりは無いか?」
その言葉で、一瞬呆然とした美神さんも理解した様子だった。
「や、山の神っすか!? や、やるっす!! やらせて欲しいっす!! 俺たちゃ街に住めないっす!! 遠き山に陽は落ちるっす!!」
「よし。 おキヌちゃんもそれでいいね。」
「は、はい!!」
展開に着いて来れなかったおキヌちゃんも、勢いよく返事をした。
「じゃあ、美神さん。 後は任せてもいいっすよね。」
「最後までやってもらいたい所だけど、唯ちゃんに怒られそうだから少しは働くとしましょうか。」
その美神さんの言葉を聞くと、唯ちゃんは当たり前ですと言わんばかりに頷いた。
ははっ、本当にえらい違いだな、この世界での俺と美神さんの関係って。
「この者を捕らえる地の力よ!! その流れを変え、この者を解き放ちたまえ・・・!!」
その美神さんの言葉と共におキヌちゃんを縛っていた何かが、ワンダーホーゲル部員に移り変わり、着ている服は登山服から山の神様っぽい服装に変わった。
「これで自分は山の神様っすねーっ!!」
「とりあえずはね、力をつけるにはまだまだ永い時間と修行が必要よ。」
「おおっ、はるか神々の住む巨峰に雪崩の音がこだまするっすよー!!」
そう言ってワンダーホーゲル部員はどこかに去っていった。
あいかわらず、わけわからん奴だったなー。
「これで成仏できますね、おキヌちゃん。」
「はい! ありがとうございました。 このご恩は次の人生でも忘れません。」
「いーのよ、仕事のついでだったから。」
「それでは皆さん、さよう「ちょっと待った。」」
あぶねー、多分大丈夫だろうけど一応止めないとな。
「何ですか、横島さん。」
「あー、素朴な疑問なんだが。 君、成仏の仕方って知ってんの?」
時が止まった。
あの後の展開は、唯ちゃんが「成仏させてあげなくちゃ。」という意気込みを見せたのを、「人柱なんてものにされるなんていう幸薄い人生をおくったんだから。 少しは楽しい生活って奴を経験させてあげてからにしようよ。」という言葉で説得する以外は、ほぼ俺の記憶と同じような事になった。
俺に関しては、助手になるかは修行をしていた所に一度もどってから決めるということになった。
加えて、車のことに関しても話があるから、どっちにしろ必ず一度は来るようにと言われた。
唯ちゃんがごねたが美神さんにも手伝ってもらって、なんとか説得した。
さて、これからどうするにしても、まずは妙神山に行ってみますか。
後書き
ども、ほんだら参世です。
知っている方は、毎度でございます、知らない方は、初めまして。
この作品は別所にて投稿していたものですが、諸事情によってそちらでの連載は取りやめにしたものです。
先程米田鷹雄さんの許可が頂けたのでこちらに移ってきました。
これからよろしくお願いします。
BACK<
>NEXT