「素晴らしい日々へ 第一話(GS)」ほんだら参世  (2004.08.30 00:34)


わからない。

 なぜ、こんな山道で寝そべっているのか。   自分は、妙神山の修行場にいたはずなのに。

 なぜ、痛みが消えているのか。        自分は、体中に傷ができていたはずなのに

 なぜ、目の前におキヌちゃんがいるのか。   自分に付いて来たのは、シロとタマモだけのはずなのに。

 いや、それらはどうでもいい。 
 それよりも、なぜ・・・







      なぜ、おキヌちゃんは石を振り下ろそうとしているんだ!!!!

 「えいっ」

 「なぬっ!!」

 振り下ろした、振り下ろしましたよ、この人!
 俺が何をしたっつうんだ! 
 何か怒らせることをしたのか!
 そりゃあ、おキヌちゃんが止めるのも聞かずに無茶な修行をしたよ、だけど、それだけで顔面に石なんぞ振り下ろすかよ!
 当たってたら洒落にならんぞ! 
 美神さんに毒されたのか、それとも普段おとなしい子ほどキレたら怖いってやつか! 

 「え〜っと。」

 「あ、ああああああ、ち、違いますよ! こんな所で行き倒れになっている人なら死んでもらっても文句はないのかな〜、なんて全然思ってませんよ!!」

 「・・・・・・・はい?」

なにを言ってるんですか、あなたは?

 「あ、ああああううううう・・・・。 はうっ、持病のシャクが・・・っ。 すいませんが、そこの薬を取ってくださいませんか?」
 
 と指差した先には、いかにもといった風の薬がこれ以上ないってくらいの怪しさを漂わせながら置かれていた。

 「お願いします・・・・薬を・・・と「何やってんの、おキヌちゃん。」・・・えっ」

 「な、なんで、私の名前を。」

 あれ、何か今度は固まっちゃったよ。
 そういやあ、なんで霊体なんだろう。
 あっ、もしかして初めて会ったときの再現をするいたずらなのか、だとしたら俺ってかなりまずい事をしちゃったんじゃねーか、ここは笑うか、乗るかのどっちかだよな、普通。
 あちゃー、これじゃあ固まってもしかたないよな、元関西人として情けない事をしちまったよ。
 よし、とっとと謝っちまおう。

 「あ〜、おキヌちゃ「 ビクッ  ごめんなさい〜〜〜〜〜!!」・・・・ん〜。」
 
 あれ、行っちゃったよ。
 そこまで気まずかったのかな
 まあ、ここまで凝ったいたずらをして素で返されたら気まずいだろうな。
 どうしよう、とりあえず追っかけて謝った方がいいよな。 

 「よしっ。」

 とりあえず、気を取り直して追っかけようと決めた時、

         プップ〜〜〜〜〜〜〜〜

 「へっ。」
  
 音に反応してくるりと振り向いた先には・・・







  猛スピードで迫る車があった


「どわぁーーーー!」

 突っ込んできた車を、俺は咄嗟に出した栄光の手で真っ二つにした。
 1年程前までの俺だったら、今の車に轢かれるだけだけだっただろうが、今の俺は妙神山での厳しい修行によって、以前とは比べ物にならない反射神経や、戦闘力を手に入れていたので、助かった。

 「ふ〜・・・って、咄嗟に斬っちゃったけど、乗ってた人は大丈夫かな?」

 俺は、心配になって降りかえってみた。

 「あの〜、だいじょう「なにしやがるのよ、この野郎!!!!!!!!!!」ぐほっ」

 降りかえると同時に、問答無用で殴り倒された。
 つーか、車に反応できたのに、なんで今の一発に反応できないんだよ、俺は。

 「よくも、私の愛車を壊してくれたわね〜〜!!!」

 その聞いた事がある声による一言と同時に繰り出された一撃により、俺の意識は闇に落ちた。




 ???SIDE

 「う〜〜〜ん。」

 ゴキッとか、グシャッとかいうイヤなBGMによって、私の意識は再起動を果たした。

 「はふぁ〜〜、どうせなら、小鳥さんの鳴き声のような、爽やかなのが良いんだけどな〜。」

 と、言いつつ伸びをして、回りを見渡すと、ようやく私は現状を認識し始めた。

 「そうだ、たしか美神さんの運転する車に乗ってて、人を轢きそうになったんだ! ・・・あれ、だけど、何で車が真っ二つになってるんだろう?」

 疑問はできたが、あの時轢きそうになった人の安否を確かめるためねば。

 そう考えたと同時に降りかえると、そこには・・・・・





 一人の男の人の命を、今まさに奪わんとする一人の修羅がいた。



 「って、何やっているんですか! 美神さん!!!!」

 一瞬呆然としてしまったが、あのままでは本当に殺しかねないので、間に入って止めることにした。

 「止めないで、唯ちゃん!!! 私は、愛車(相棒)の仇を討たなきゃいけないのよ!!!!」

 本当に、この人は。 
 お金と、車の事となると、本当に目の色を買えるんだから。

 「止めます! 今のはこんな山道で無茶なスピードを出していた、美神さんの方が悪いです!!! 普通の人はこんな山道を、車で走ろうなんて思わないんですから!」

 「うっ! ・・・でも、山道をあんな重い除霊道具を持ってなんて、女の私達じゃあ無理でしょう。」

 「だからと言って、あんなスピードを出す理由にはならないでしょう!!! 私は、最初からもっとスピードを緩めてくださいと、言いましたよ!!!」

 「いや、それはね、困難な峠道ほど燃えるというか、なんというか。」

 私の怒った声を聞いて、美神さんの声が少し小さくなった。
 いけない、そんなことより早くこの人にヒーリングをしてあげなくちゃ。

 「・・・だけど、なんで車が真っ二つになってるんですか?」

 私は、目の前の男の人にヒーリングを施しながら、さっき疑問に思ったことを聞いてみた。

 「えっ。 唯ちゃん、見てなかったの?」

 「私は、あの時目を瞑っちゃってて。 その後は、少し気絶してました。」

 「ふ〜ん、そうだったの。」

 「気づいてなかったんですか。」

 私は、少し白い目になりながら美神さんを見てみた。

 「あははははは・・ああっ、それで、車が真っ二つな原因だけど、・・」

 美神さんは、誤魔化すように喋りはじめた。
 まったく、同乗者の心配はおろか、怪我をさせただろう人への心配もせずに、逆にその怪我をさせただろう人を殴り倒すなんて。
 本当に困った人ですね、この人は。

 「その男が切り裂いたのよ。」

 「えっ。」

 そんな、この人は刃物なんて持って無いのに、どうやって。
 それに、刃物があったとしても、あのタイミングでそんなことができるなんて。
 というより、あんな風に車を切る方法って。

 「信じられないかもしれないけどね。 あの瞬間に、信じられないほどの反応で、ものすごい高出力の霊波刀を出したのよ。」

 「本当ですか! それはすごいですね・・・・あれっ? でも、そんなすごい人なら、なんで美神さんの攻撃に反応できなかったんですか?」

 「さあ? それは、本人に聞いてみないとわからないわ。」

 「そうですか。 あっ、でも霊波刀を使うんでしたら、この人もGSですよね。 だったら、目的地は私達と一緒なんじゃあないですか。」

 「・・・複数のGSに依頼するような仕事じゃあないはずなんだけど。」

 美神さんはこう言っているけど、この道の先にGSが行きそうなところは、今のところ一つしかないはず。
 そうじゃなくても、この人を休ませて上げなくちゃ。

 「いつまでも、こんな所にいるわけにもいかないんですから。 この人と、荷物の半分は私が持ちますから、残り半分の荷物をお願いできますか?」

 「ま、唯ちゃんばかりに持たせるのも悪いわね。」

 私は、荷物の半分を背負うとともに、目の前の人を、俗に言うお姫様だっこで持ち上げて、

 (普通、反対なんだけどな〜)

と、心の中で呟いた。

 「あ〜あ、なんでこんなことになるんだろ。 こうなったら、絶対に車の弁償代と慰謝料をふんだくってやる!」

 美神さんは、そんなことを呟きながら、荷物を持った。

 そして、私達は依頼を受けた場所、『人骨温泉ホテル』に歩を進めた。





*  *  *  *  *  *

 忠夫SIDE

 「知らない天井だ。」

 俺は、目が覚めると同時に、こういう時の定番のジョークである某三番目の子供のセリフをかましてみた。
 しかし、突っ込んでくれる人がいないときのジョーク程悲しいものはない。

 「さっきの、おキヌちゃんの気持ちが少しはわかるな、こりゃあ。」

 つぶやきつつ、辺りを見渡そうと身を起こしかけると同時に、部屋の戸が開いた。

 「あっ、もう大丈夫なんですか?」

 入ってきたのは、長い髪をリボンでポニーテールにした可愛い女の子だった。
 見た感じ、年齢は15、6ってところだな。

 「ホテルまで連れてきたんですけど、全然気が付かないから心配してたんですよ。」

 その女の子は、にこりと笑ってそう言った。
 いい笑顔だな、癒されるって奴だ。
 と、和む前に現在地が何処だかと今の状況を聞いておかないと。

 「ホテルって言うと?」

 「あれっ? あなたも、この『人骨温泉ホテル』に除霊に来たGSじゃあないんですか?」

 人骨温泉だって!
 ・・・おキヌちゃん、本当に凝った演出をしていたんだな。
 どうやって連れてきたんだろ?

 「「あなたも」ってことは、君はGSなの?」

 「いえ、私は助手なんですよ。 いつかはそうなりたいですけど、今はまだ免許すら取ってませんから。」

 「へ〜〜〜、君みたいな優秀そうな助手を雇えるなんて、すごい人なんだろうね。」

 今の言葉に嘘は無い。
 実際目の前にいると、この子の常人より高い霊力が感じられるから。
 しかし、なんで俺ってこの子をナンパしようとしないんだろう。
 いきなり飛び掛ったりはしなくなったけど、可愛い子と出会ったらナンパすることは挨拶代わりみたいなもんになってるのに。
 見た感じ、年齢的には十分許容範囲に見えるんだけどな。
 もしかして女装した男だったりしてな。(笑)

 「そんな、確かにすごい人に雇われてますけど、私は優秀じゃあないですよ。」

 赤くなって、俯きながら答えてるよ、本当に可愛いな。
 なんで、ナンパしようと思わないんだろう、俺は?

 「ところで、そのすごい人の名前は?」

 「あっ、はい! 美神令子さんっていうんです。 女の人なんですけど、すごく強い人なんですよ!!」



 



 ナンデスト、イマアナタナントオッシャイマシタカ。

 その時、俺の灰色の脳細胞が未だかってないほどに活発に動き出した。

 さっきのおキヌちゃんの変な行動、ここが人骨温泉であるということ、そして、目の前の女の子の言葉、それらを統合して考えてみると・・・・いや、しかし、だとすると、目の前の女の子は、

 「と、ところで、君の名前は?」

 俺は動揺を隠せない声色で、目の前の女の子に尋ねてみた。

 「あ、そういえば自己紹介がまだでしたね。 横島唯っていいます、よろしくお願いします。」








 まじですかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!



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