全身を波打たせながらダロスを睨み付けるガッシュら四人。
あれだけの電撃と重力波を浴びて微動だにせず、微笑みすら浮かべているダロス。
「こいつ・・・これだけオレの術を食らって平気だというのか・・・」
「もういいかね?」にっこり笑って話し掛けてきたりする。
「後ろの『立会人』らが動かないのもキミらが両方とも比較的弱めの呪文しか使わないのも
赤い本の使い手よ、君の指示だろう?
私の能力、あるいは術の系統を知りたいために」
「ああ、その通りさ」
「判ったかね?」
「いや全然。判ったのは、てめぇは俺らの術を体で受け止めたってこと位だ」
「利きはせずとも、やはり好き勝手されるのはあまり楽しくない。少々反撃させてもらおう。『ドレミケル』」
突き出した右の掌から放たれた強烈な「音」を浴びて吹き飛ぶ一同。
「ぐはっ」「きゃあ」「あううっ」「ぐあああっ」
「清麿・・・今のは確か・・・」
「ああ、ヨポポの術だ。あの野郎魔力だけでなく術まで奪いやがる。
ならばこれだ!『ザグルゼム』」
光球が、腕組みをしたダロスの胸にヒットする。
「ふむ。で、次はバオウでも使うのかね」
「いや、おれが使うのはこれだ!食らえ!第三の術『ジケルド』」
放たれた光球が萎んでいく。
「見たところ周りに金属は無いようだが」わざとらしく周囲を見回すダロス。
「そうでもないぜ」
見ると、地面が最初は小さく、やがて大きく脈打ち始める。
「これは?」「砂鉄だよ」シェリ−に問われて答える清麿。
「あんた達が戦いを申し込んできた時『場所は好きにしろ』と言ったんで、ジケルドの力が最大限に発揮できるここを指定したのさ」
言い終わると同時に地面その物がダロスに襲い掛かる。
「全身が重くて動けまい。しかもその状態ならどこに電撃を打ち込んでも全身に広がって行くぞ!
いっけぇ『ザケルガ』!」
「『ビドム・グラビレイ』!」
全身鉄の砂で真っ黒になったダロスを電撃が包み込み、強大な重力球が上から打ちのめす。
ゆっくりと、前のめりに倒れこむダロス。
「清麿、なぜバオウを使わぬのだ?」
「ヤツはこの程度ではまだ倒れてはくれないだろう。ならば切り札はとっておくべきだ。
ブラゴ達が最大呪文を使わないのも恐らくそれが理由。判るな」
やがて全身を覆う砂鉄がはがれ、ゆっくりと立ち上がるダロス。見たところさしたるダメ−ジは受けていなさそうだ。
「ふむ、正直これほどやるとは思わなかった。
ブラゴ。君が極めて強いのは判っていた。・・・少々予想より上ではあったが予想外というほどではなかったがね。
そしてガッシュよ。いや正直きみは、いうなれば序盤で退場するであろうザコAくらいにしか思ってなかった」
「全て清麿のおかげだ」
「まったくだ。極めて強い魔力を持ちながらその使い道を全く知らない落ちこぼれ。
その君がこれほど自分の力を使いこなせるとははっきり言って全く予想していなかったよ。
だから、君等に敬意を表してこの一撃を見せてあげよう。
感謝してくれてかまわんよ」
組んでいた腕を解き、握り拳を光らせるダロス。
そしてその掌を開くと、その輝きは玉となって宙に浮かぶ。
「『ディオガ・ザケリオン』」
そして10mほど浮かんだ光球は、強烈な電撃を四方八方に放ち始めた。
その様、まさに電撃の雨というべきものであり、全く隙間が無い。
声を出す事もできずはじけ飛ぶブラゴとシェリ−。ガッシュと清麿は辛うじてラシルドを張るが、刹那の時すら持たず粉砕される。
(あれは・・・)ラシルドが打ち砕かれた瞬間、清麿は見た。
避ける事すらせず、電撃の雨にその身をさらすダロスを。
(当たっていない?防御の術か・・・いや違う!電撃が体表ギリギリの所で弾けているのか。まさか)
そこまで考えた瞬間、数本の雷撃が清麿の体と意識を薙ぎ払っていく。
続きます。
少々ダロスの力の片鱗をお見せしました。
あと個人的にかなり好きなジケルドを効果的に使いたくて。