立会人の一人アポロが呟く。
「魔物たちの成長の度合いは確かに人間よりひどく遅い。しかしそれでも
四千年も生きていられるハズが・・・」
「ま・そんなことはどうでもいい。しかし何故それに気付いた?」清麿に問うダロス。
「きっかけはイギリスでだ。
あの時見た石版は千年前の地層から発掘されたと言っていた。
そう、あの石版はそこらの骨董屋、あるいは千年前の地層とありとあらゆる場所に散らばっていた。
なのにゾフィスはビョンコと二人で、そのことごとくを見つけ出していたんだ。
アレに目をつけたのがゾフィス、というのも気になっていた。
ゾフィス以外の魔物ではあの石版を有効活用(!)出来なかったんだ。
月の石と月の光を作り出せる知能、千年前の本の使い手の子孫たちを洗脳する能力、
そして何よりそんな風に人や魔物を道具のように使い捨てに出来るクソみてぇな性格!
その全てを兼ね備えたヤツがたまたまアレに目をつけ、たまたま『石』と『光』を作り出したってのか!
それよりは石版の場所を知っている、または判る者がゾフィスを操った、
あるいは本人がそうと判らないよう炊きつけたと見るのが普通だろう。
もしかしたらアイツのあのゲスな性格はあんたが植え付けたんじゃないのか?」
ふふふ。低い含み笑いが聞こえる。
「そこの赤い本の魔物よ・・・ガッシュとか言ったか?
良いパ−トナ−と出会えたな。いやまったくキミの言う通りだよ。
ゾフィス・・・彼は元々なかなかに高い知性を持っていたのでね、石版の存在を
『彼自身が気付くように』彼を誘導した。
月の石と光も『彼自身が思いつくように』囁きかけたしパ−トナ−に対する扱いも
ああするべく私が仕向けた。そもそも彼の「他者の意思を操る」能力も生まれた時わたしが与えた能力なのだしね」
「何故・・・そうか・・・この戦いを引っ掻き回すためか」
「引っ掻き回すため?」シェリ−の問いかけに答える清麿。
「おそらく、ヤツは『本を燃やされた魔物』の魔力を奪っているんだ。
だから戦いを派手にして、それによって魔物達はより強くなる。
あいつにとっちゃ牛か鶏を互いに戦わせて肉をより美味くしようとしてるのと同じような気分なんだろうよ」
「つまり私たちは・・・ココはあいつの玩具だったというわけね」
かつてゾフィスに向けた以上の憎しみを全身から放つシェリ−。
「否定はせんよ。それに、それは私にとっても必要な事だったのだから。
で、君等は私と戦うのかね。それもまあよかろう。
心配は不要だ。君等は私に敗れ魔物達は魔界に戻る。
本の使い手たちは「決勝進出者」を育て上げた名誉としてこの先一生幸運に恵まれて生きていく・・・わたしがそう因果を操作するから。
大いに結構なことではないかね」
「じゃあ最高の幸運を貴方に与えて頂こうかしら」
「テメェをブッ飛ばすって幸運をな!」
ニヤリ
その薄ら笑いに向かって四人は術を放つ。
「ザケル!」「ディオガ・グラビトン!」
続きます
上での魔物の成長具合や人間への褒美というのはオリジナルです。
やっぱ協力する以上人間にも旨味は与えられるだろうと思いまして
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