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▽レス始

「.hack//intervention 第35話(.hackシリーズ+オリジナル)」

ジョヌ夫 (2007-03-16 00:14)
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「た、大変ですッ! 昴様ッ!」

「……何事です?」


司達がヘレシィに導かれるがままに真実への道を直進していた丁度その頃。
システム補助を担うことを目的に結成された紅衣の騎士団の住処では、慌てる騎士の声がやけに響いている。

大声とも取れそうな騎士の叫びに答えるのは、どこか心がその場に無い騎士長の昴。
彼女は最近出会った司という呪紋使いとその彼が捜していたシェリルという少女に思いを馳せていた。

ログアウト出来なくなり現実に戻ることのなくなっている司。
仕様に無いモンスターを操り、カオスゲートを介さないサーバー間移動も可能。
そんな彼は紅衣の騎士達が昴の指示を仰ぐことなく行った罠にかかり、とある場所に監禁される。
昴が彼との邂逅を果たしたのはその時だ。

昴は司の話を聞いて以来、ずっと気に掛かることがあった。
彼の能力は1プレイヤーの領域を遥かに超えており、自ら手に入れたというより巻き込まれたような。
加えてガーディアンを使って人を傷つけたのも、能動的ではなく自分を守る為だと考えれば説明はつく。
そうなると問題は誰にその力を与えられたのか、ということになる。

こういった理論的な理由もあるが、それ以上に心情的な理由で司に会いたいとも思った。
異常事態に巻き込まれて孤独になってしまった彼がどれ程辛い思いをしているのか。
それを知り、また助けたいと考えたのだ。


『シェリルって女の子を捜してたんだ……』


閉じ込められ塞ぎ込んでいた司はしばらくの逡巡の後、確かにそう言っていた。
“シェリル”という名の一度だけ、しかし確かな耳覚えとその後の衝撃的な事件は昴の心に今も強く残るもの。
彼女は司が同名の者を捜していたことに驚き、同時に両者の関連性も考えるに至った。

1年以上前に出会った不可思議な人物“偏欲の咎狩人”の傍に携わる少女シェリルと少し前にミミルからメールで聞き及んでいた“黒い幽霊少女”。
仕様を逸脱しているという意味では司と同様であり、特に上記の2人などにおいては“黒い幽霊少女”という共通の呼び名まである。
更に司が拘束される直前に送られたミミルからのメールで現在の“黒い幽霊少女”がシェリルと同一人物だと分かった。
その時は情報ソースが書かれておらず、また騎士団の仕事で忙しいせいでメールに返事を返す際にそのことをすっかり忘れてしまってもいた。
情報自体に驚かされていたのもその要因の1つだろう。

現在起きている様々な仕様を超えた事件の鍵と成りうるシェリルという少女。
そして彼女を捜していた司は今どこで何をしているのか。


昴がそんなことを考えながら聞いた報告は、しかし彼女を一気に現実へと押し戻す結果となる。


「ドゥナ・ロリヤックにて騎士と一般PCの諍いが発生しておりますッ!
 このままでは何れ近いうちに暴動へと発展してしまいかねませんッ!」

「…………どういうことですッ!?」


『The World』の秩序と安寧を至上とする騎士団にとってあってはならない事件が始まったのだ。


……………………

………………

…………


それはあるエリアにて紅衣の騎士と一般PCの出会ったのが始まりだった。

一言で言ってしまえば『過剰粛清』である。
とある女性剣士のプレイヤーは服の一部の色を変える改造をしていた。
その情報を受けた1人の騎士が彼女の居るエリアに急行、忠告に留まらず過度の粛清行為を行ってしまう。

それから時を待たずして女性剣士はドゥナ・ロリヤックに出現。
知り合いに対して“たかが服の一部の色を変えただけなのにあの連中は……”などとかなりの大声で紅衣の騎士団を罵倒する。
それだけならまだ良かったのかもしれないが、“偶然”その場に粛清を行った騎士が居合わせてしまったのだ。

始めは女性剣士と騎士の言い争い程度だったのだが、両者の物言いに他の一般PCも騎士もそれぞれに賛同し相手を否定していく。
次第に言い争いはエスカレートしていき、とうとう互いに武器を取りかねない状況にまで発展。

一触即発的な場が出来上がったその瞬間、昴達が到着することで一応事態は収束した。
だが騎士達が去る後ろでは彼等に対する非難の声が消えなかったとか。


「何故あれ程申したにも関わらず、注意に留めなかったのですッ!?
 そして暴動一歩手前まで事態を大きくした貴方達に何か言い分がありますかッ!?」


紅衣の騎士団の住処で昴は普段滅多に上げないような大声で騎士達を叱咤する。
あの後、何とGM(ゲームマスター)からの注意まで受けてしまったのだから当然であろう。
システム管理の補助を担う筈が、逆にシステム側の手を煩わせてしまったのだ。

諍いに参加していた十数名の騎士達は仰ぐべき騎士長の言葉に何も言わず俯いているのみ。
その顔に映っているのは罪悪感か、若しくは別の何かか……現段階では判別がつきそうに無い。

そんな中、1人の騎士だけは頭を垂れながらも堂々と昴の言葉に答える。


「恐れながら申し上げますッ!
 今回の行動は些か過剰であったことは私自身認めております。
 しかし同時に、彼等のような不正行為はその程度に関わらず改められてしかるべきな筈ッ!」

「貴方は論点を摩り替えています。
 今重要なのは貴方が彼女に対して越権とも取れるような過度の粛清行為に及んだこと。
 更にルートタウンで行われたあまりにも騎士にそぐわぬ行為についてです」

「……昴様、貴方はただ声高に叫ぶだけだ」


“何を……”と戸惑いを口にする昴を背に立ち上がった騎士は、未だ俯いたままの他の騎士達に視線を移す。
目の前の仲間の突然の行動に思わず顔を上げてしまった彼等の視線は、昴ではなくその騎士へと向けられていた。

何故なら彼の言った言葉こそ、自分の本心であったから。


「昴様の理想は本当に素晴らしい、それは我等騎士の指標であり理想でもある。
 我々はその理念に感銘を受け、共に『The World』の秩序を守らんと立ち上がった誇り高き騎士。
 ……だが昴様が声高に唱える理念を実際に実現せんと動いているのは誰だ?
 一部の不正に悩み苦しまされている一般PC達を実際に助け、時に罵倒されながらも不正を正しているのは誰だ?」

「「「「……………………」」」」」

「この世界は広い。あまりにも広すぎてシステム管理者の手に負えない輩が跳梁跋扈してしまうくらいだ。
 PCのデータを消してしまうという“吸魂鬼”とそれを連れている“黒い幽霊少女”。
 同じくPCデータに被害を及ぼすような不正規アイテムを一方的に他人に渡してまわる“猫PC”。
 そして…………仕様に無いモンスターを操り、我等が分団長のリアルに及ぼす程の負傷を負わせた司という呪紋使い」

「何度言えば分かるのですッ! 彼は「彼は被害者だから仕方が無い、ですか?」……ッ!?」


司を庇おうとする昴に、してやったりな声色で答える騎士。
彼の口元には、まるでその言葉を待っていたかのような反応が伺える。
尤も、紅衣の騎士に共通した顔の大部分を隠すヘルメットのおかげで周りは気づかなかったが。

一騎士の範疇を超えている筈の彼の言葉に、いつの間にか自然に引き寄せられる他の者達。

それは彼の言葉によるものか、それとも――――


「昴様は本当にお優しい方だ……犯罪者に手を差し伸べようとする程に。
 そう、貴方は優しい……しかし貴方はそれだけ。貴方には想いはあってもそれをなそうとする意志が無いッ!
“平穏を……”“より良い世界を……”そう唱える昴様が為した実績というものは果たしてどれ程存在する?
 理想を現実に具現化せんと必死に戦う我等を、昴様はどんな言葉で以て労った?
 確かにここはネットゲーム、所詮は仮想の世界に過ぎないのかもしれない。
 しかし同時に人の心が素直に表面化してしまっていることもまた事実なのだッ!
 理想や願いだけで奴等犯罪者が改心する程この世界は単純ではないッ! だからこそ我々という世界の断罪者が存在するッ!
 …………同志諸君もそうは思わないか?」


その言葉に立ち上がり、無言で問い詰めるようにして昴を見つめる騎士達。

彼等を従えながら、騎士は再び昴の方を振り返り宣告する。


「昴様ッ! 我々の行いは貴方の理想を具現化するために必要不可欠なことなのですッ!
 今この場に居るものだけでなく、私の発言はおそらく騎士達全員の総意と考えても過言では無いでしょうッ!
 それをお疑いなら皆を集めて確かめてみるのもいいでしょうッ! 結果はこの場と変わらないことは間違いないのだからッ!
 さあ昴様ッ! この『The World』を真なる平穏へと導く為、今一度我等にご指示をッ!!」

「昴様ッ!」「昴様ッ!」

「……………………」


あたかも自分が咎人であるかのような雰囲気に包まれていく昴は、彼等の言葉に静かに目を閉じる。

自分の望んでいた騎士団とはこのような姿であったのか。
システム補助を担う筈の自分達がシステム側の手を煩わせるような真似をしてしまった騎士団に是はあるのか。
彼等の言う秩序の為の行為が果たして真に『The World』の為になり得るのか。

様々な葛藤の後、昴は決断する。

より良い世界を作る為の自治から完全なる管理へとその目的を変貌させてしまった騎士団は、もう既に『The World』の為にならない、と。


――――その時を以て『紅衣の騎士団』は解散した。彼女の決断に戸惑う騎士達の中に唯1人密かにほくそ笑む騎士が居たとか。


.hack//intervention 『第35話 それぞれの居場所の為』


「んじゃヘルバ……シェリルの子守、しっかり頼むね」

「あらあら、それじゃあ私は差し詰め“お母さん”で貴方はお父「下らねぇこと言ってないでさっさと行きやがれ」フフ……」

「だからその笑いは止めろって……」


今からシェリルはヘルバに連れられて冒険に出かけることになっている。
現在の彼女のレベルは3、一度ヘルバと一緒に冒険に向かった際に一応ほんの少しだけ上げていたらしいが、それでも足りなさ過ぎだ。
まずはヘルバの助けがなくとも一人でダンジョン攻略が出来る程度にはレベルを上げて貰う必要があった。
ある程度成長すれば、時間制限のないシェリルはいくらでもレベルが上げられるし。

シェリルには出来る限りいつでも外で行動が出来るように準備して貰いたい。
そう思っての今回の冒険であり、それだけではなく何故か彼女自身がヘルバに懐きつつあるのも大きい。

……万が一に備えての意もあるがな。


「……アンタは行かないの?」

「俺が同行したら他人にバレた時にやば過ぎる」

「…………ふ〜ん」


ヘルバ達が居なくなった現在、ここにいるのは俺とシェリルに連れて来られた司のみ。
彼にはシェリルに説得して貰い、しばらくはモルガナの所に戻らずここを拠点に行動することになった。
他人を拒絶する筈の司の胸中は知る由も無いし、俺みたいな外部の人間が踏み込んでいい範囲では無いのでおいておく。

彼をここに招いたのは、俺が知っている物語が原因になっている。

モルガナによってログアウト出来なくなった司は彼女の目的、即ちアウラの覚醒阻止の為に利用されている。
司とアウラは精神的に繋がれており、司がネガティブになればなるほどアウラの精神もそれに比例して歪められてしまうのだ。
そうなったアウラは本来のハロルドが望んだ究極AIでなくなり、アウラがアウラたりえなくなる。
その為に司を自分に依存させ、周りに対して心を閉ざすようにしむけたわけだ。

この地へ呼び寄せたのはこれ以上モルガナに利用させない為。


(しかし俺が想像していたのと何処か違うような…………まいっか)


シェリルはともかく、俺の言葉にきちんと答えてくれる司に少しばかり違和感を感じたが敢えて無視。
とりあえずは、ここに来て貰った時の“君の知ってる姿なき声の主、モルガナの下に今帰るのは危険だ”という言葉に耳を傾けてくれただけで十分。
基本的に彼もずっとここにいるわけじゃなく、偶にシェリルと外に出たりしているようだし。

1つ問題があるとすれば…………会話が続かないことくらい。


そう思った矢先に、いきなり司の方から声を掛けられた。


「……アンタってさ、何者?」

「いきなりどうした。そんなに俺が不可思議に見えるのか? ……ってそりゃあ見えないわけ無いわな」

「見た目も勿論だけど、僕が気になってるのは中身の方」

「…………あっそ」


少し気に入らないが話の方を優先させたいので我慢。
それにいい加減、こういう扱いされるのに耐性がついたというか何というか。

……そう思う度に泣きたくなってくるのにすら慣れてしまったくらいさ。

しかし司よ、“中身”って言い方はちょっと酷くないか?


「アンタは『The World』中の色んな奴等に追われてる。あの女の人だってそうだった。
 ミミルやベアはアンタを捜してたし、紅衣の連中も一応見つけようとしてた。昴だってシェリルの名前に聞き覚えがあったみたい。
 皆が皆アンタを注目してるのは当然だと思う。いつも一緒にいた僕も知らないようなあの女の人の名前を知ってたくらいだから」

「どうして知っているのか。それに答えるつもりは無い」

「そんなことはどうでもいいんだ……」

「…………何だって?」


本当にどうでも良さそうに呟く司の言葉が嘘とも思えず、俺は僅かに驚く。
今まで同じような質問をしてきた者達(特にミミルとか)とは違ったパターンらしかったからだ。
おそらく司はその言葉に対する答えを求めているんじゃなく、他の何かを求めているんじゃないだろうか?

気のせいか出会って以来感じていた彼の存在の希薄さみたいなものも関連しているかもしれない。


「アンタは何でも知ってるように思える。それはあのヘルバって人も同じ。
 でもあっちがそれっぽいのに比べてアンタはミミルとかとあんまり変わんないような気がする」

「……それはどういう意味ですかね?」

「上手くいえないけど……ヘルバが天才っぽいならアンタはその反対って感じかな?
 例えるならヘルバが専門職についてそうで、一方のアンタは中学生レベル……みたいな」

「ちゅ、中学生ッ!?」


驚きというよりビックリ仰天ってな感じで声が裏返る程に驚いてしまった。

いや流石に中学生は言い過ぎだと思う。これでも20歳超えてるんだから。
幾らなんでも黙っていられない言われ様だが、以前シェリルから言われたことも考えると“自覚していないだけかも”とか思いたくなってくる。
けど本職ハッカーのヘルバと極普通の大学生の俺を比べたら納得がいかないわけでもないような、そうでもないような……。

ま、まあこの件は後回しにしておくっつーことでッ!
…………決して逃げたわけじゃないぞ? 


司が下を向いたまま話しているのは幸いだったかもしれないな。

下手に今の慌てた俺の表情見られたりしたら、また同じようなこと言われちまいそうだし。


「シェリルはアンタを凄く慕ってる。あの子にとっての居場所がアンタの傍になるくらいに。
 じゃあアンタの居場所はどこにあるの? やっぱりシェリルの傍?
 それなら何で態々外のことを考えようとするの? ここが1番安全ってアンタも行ってたのに」

「…………俺の居場所?」

「あの子のことが大切ならずっとここで守ってあげればいいのに。
 外の世界の奴等はシェリルやアンタのことを敵だと思っているのに……」


何だかついさっきの話と微妙に絡み合ってないような気もするが、きっと本人の中では何らかの形で順序だてられてるんだろう。
そう思える程に司の表情は真剣で、純粋な気持ちそのままに口走っているのがすぐに分かった。

司の言葉を頭の中で反芻しながら考えてみた。

もしかしたら……これは憶測に過ぎないけれど、司は自分の環境と今の俺の状況を重ね合わせているのかもしれない。
いや、正確にはシェリルの状況と言うべきか。具体的にどうこう言えるわけじゃないが、何となくそんな感じがした。
恰も自分のことを言っているかのような口調になってきた、ということもある。


(本来なら他人に話すようなことじゃないんだが……)


確かに一見俺とシェリルにとってこのエリアこそが安全であり、外に出るべきでないように思える。
しかし俺はモルガナというこの世界の神がこれから起こす災厄を知っており、ここが真に安息の地となり得ないことも知っている。
だから長期的に見れば俺の知る物語の流れを早めることこそが、1番シェリルの為になるのだ。

尤も司が知りたいのはそんなことじゃないだろうが……。


今から俺の言うことは彼の欲している答えじゃないかもしれない。

だが俺は迷い子のような雰囲気を醸し出す司の言葉を無下に返せる程に薄情じゃない。


「司、これから話すことは絶対誰にも話すなよ?
 ……それこそ相手がシェリルであっても、だ」


司が無言ながらしっかり頷いたのを確認した俺は、未だシェリルにも話せていないことをほんの少しだけ話してあげることにした。

それが自分の境遇に苦しんでいる司の心にとって、僅かでも手助けになることを密かに願いながら。


《side シェリル》


「ねえヘルバ、レベル上げって何か退屈だね?」

「それは人それぞれよ。単純に自らの強さを求める者もいれば、他の目的の為に仕方なく自分を鍛える者もいる。
『The World』が広い分、その楽しみ方も十人十色」

「ふ〜ん……」


アタシは今、トモアキに言われてヘルバと一緒にレベル上げっていうのをダンジョンでやってる。
相手にしてるのはゴブリンとかいう小人がほとんど、偶にパラパラナイフって名前の剣の集まりが出てくるくらい。
ソイツ等にひたすら呪紋を打って倒すのがアタシの仕事で、ヘルバはSPが足りなくなった時の回復だけしかしてくれない。
ヘルバが言うには、PCの体に慣れる為には自分で戦うことも必要なんだって。


「トモアキも来れたら良かったのになぁ……」


宝箱を開けながら誰に言うでもなくブツブツ愚痴をこぼす。
やってることはトモアキと一緒にいた時と大して変わりないんだけど、今やってるのは冒険ってより作業って感じ。
ヘルバってあんまり面白い話とかしないから、正直ちょっとつまんない。

アタシがそんなことを思ったからかな?

タイミングを合わせるようにしてヘルバが珍しくあっちから話しかけてきた。


「シェリル、これから貴方はその体を使って1人のプレイヤーとして動くことになる。
 彼以外の様々なプレイヤーと接し、その先にあるものが何か……貴方はどう思う?」

「……よく分かんない。トモアキはそれがアタシの為になるって言ってたけど」

「究極AIたるアウラはこの世界に生きる全てのPCの生き様をデータとして収集し、完成に至る。
 ではこの世界の一部として生きる貴方が、人と同様の形でデータではなく体験として積むことで至るものとは何か?
 シェリルは彼と同等か、それ以上に興味深いわね」


“フフ……”そんなヘルバの癖みたいになってる笑いが少し面白くて少し嫌い。
この人がアタシ達と一緒にいるのは色んなことを知ってるトモアキと、アウラの失敗作であるアタシが面白いから。
前聞いた時はそう言ってたけど、何だかそれだけじゃないような気もする。

だってアタシには分かるから。
目隠しみたいなのの奥で確かにトモアキみたいな優しい目をしているのが。

だからアタシはトモアキ程じゃないけどこの人も好き。

だからまだトモアキにも言ってないことも相談できた。


「ヘルバ……トモアキの体、何とかならないかな?」

「…………今のところは私にも手のつけどころがない」


アタシは依然変わらないヘルバの言葉に少し沈む。
ネットスラムに連れて行って貰った時に勇気を出して言ってみたことをヘルバにはずっと調べて貰ってた。

今のトモアキの体は何の異常もない。
多分余程のことが無い限りそのことに変わりは無い筈だし、きっと“終わり”までそのまま。

だけどこのままだとトモアキの言うことが本当なら、必ず“終わり”が来てしまう。


「ウィルスバグそのものに関してはある程度の調べはついている。
 しかしそれと彼の関係となると話は全く別物、いえ次元すら変わった問題になってしまうのよ。
 ……司のケースであればまだ分からなくもないけど」

「そう……やっぱり駄目なのかな?」


トモアキがこの世界に来ているのは奇跡に奇跡が重なり合った現象。
ヘルバはそう表現してて、その構造を掴むのは不可能にも程があるって呆れるように言ってたのを覚えてる。
再び呼び戻したアタシ自身も構造が分かってるわけじゃなくて、ただ核とトモアキの結びつきに気づいただけ。

もしその方法を知っている人がいるとしたら、多分それは唯1人。


「やっぱり母さんに聞く以外に方法はないのかぁ……でもそれも絶対無理だし」

「そうね。“偏在する意志”が自らに仇なす貴方達に協力するとはとても思えない。
 せめて他により近いケースがあれば研究のしようもありそうなものでしょうけどね」

「はぁ……」


アタシは遠くに見えてきた新しいモンスターに溜息をつきながら向かっていく。

今はアタシに出来ることをするしかない。

アタシ自身の成長がトモアキを助けるのに役立つのなら、その為の訓練も頑張れるような気がした。


『俺の知る限りモルガナは、近い将来倒され消滅することになっている』

アタシの聞いたそれが本当なら、母さんの欠片であるウィルスバグも一緒に消えてしまう。

つまりトモアキとは母さんが消滅するのと同時にお別れになっちゃうってこと。

てっきりこの時のアタシはトモアキがそれを知らずに行動しているものと思っていた。


――――アタシとトモアキは互いに相手が知らないものと勘違いしたまま、相手を傷つけまいとこの先ずっと黙り続けることになる。


あとがき

主人公と司のお話、でも詳しいことは伏せたまま&ヘルバとシェリルの冒険の巻。
司のところで敢えて主人公の言葉を入れなかったのは、今ここで明かすには早すぎる内容だったから。
つまりこれから展開される予定の主人公の計画の一部に関係しているわけです。
そのうち司と誰かさんの会話の中でそこら辺は話されることになってます…………あー最近後回しばっかだ。

次回はSIGNメンバー集結&最終決戦へ一気にGOな話になる予定。
……いい加減戦闘シーン入れた方がいいのかなぁ。


レス返しです。


>金平糖さん

主人公と彼を守ってくれてる人物の正体はSIGN編の最後でわかります。
具体的には多分今から4話程行った所で、でしょうか。
パロディーモードは……さ、流石に無理そうです。すいません。
……でも全部G.U.編まで終了したら書いてみるのも一興かも。

ということで次回もよろしくお願いします。


>なんさん

SSを切欠に原作に手を出して下さるのは至上の極みッ!
こちらこそ本当に、本当に感謝ですッ! 

これからも見守ってくれると幸いです。


>TAMAさん

主人公を守ってくれているのは誰なのか?
何故その人物は主人公を守ってくれるのか?
そしてこれから主人公がミミル他登場人物達にどれだけ弄られていくのか(笑)?

今までの謎がこれから一気に明かされていく予定なので、これからもよろしくお願いします。

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