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▽レス始

「.hack//intervention 第34話(.hackシリーズ+オリジナル)」

ジョヌ夫 (2007-03-15 00:16)
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“どいつも……こいつも……使えないッ!”

「……………………」


ここはかつて青々とした草木が生い茂り、他のエリアとは違ってどこか幻想的な場所だった。
白いベッドに熊のヌイグルミ、そして白い少女が静かに眠る静寂の世界。

しかし今、草木は枯れ代わりに繁茂する数多の茨の蔓がベッドやそこに眠る少女に絡み付いている。
明るかった空模様はまるで悪意を体現したかのような暗闇に包まれ、轟々と全てを吹き飛ばしそうな程の突風までも吹き荒れていた。
楽園のような世界は既に真逆のそれへと変貌してしまっていたのだ。

そんな場所に響くのは今までの優しい声では無く、“怒り”ただそれのみ。
その声色は、傍に控える猫PCマハを怖がらせ…………同時に悲しませる。


“司は最早私の言うことを聞こうともしないッ!
 あんなに優しく接してやったのにッ! あの恩知らずがッ!”


ずっとこのエリアに閉じこもっていた司は、最近ほとんど帰ってこない。
ミミルやベア、昴と接していく中で外の世界にも少しだけ興味を示し始めた為である。
更に“key of the twilight”が眠ったままの白い少女を目覚めさせる鍵になると判断し、ミミル達の捜査に協力するようになったのも大きい。

この世界に閉じ込められてからずっと白い少女が何故か他人に思えなかったのだ。


“何より気に入らないのは……あの男だッ!
 何故居場所を掴めないッ! 何故私の意志が届かないッ!”


加えて司以上に許せないのはヘレシィと名乗る男。

彼に目を付けたのは今から約2年前、所謂“実験”に成功したのが切欠だ。
自らの消滅を避けるべくその元凶と成る究極AIアウラの覚醒を防ごうと様々な方法を試みた。
アウラを間接的に成長させる放浪AI達をシステム管理者達を利用して消していったり、“失敗作”に力を与えてアウラそのものを消そうとしたり。
そのどれもが結局中途で失敗に終わる中、唯1つ成功したと言えるのがヘレシィという“融合体”なのだ。

怒りの声の主、即ちモルガナは常々人間の“思考”というものの複雑さがとても気に入らなかった。
0と1の集合体に過ぎない自分には到底理解できないような感情による思考が多く見られ、今現在も理解に苦しんでいる。
そのことは『The World』の神たる自分がまるでたった1人の人間にも勝っていないように思え、酷く気分を害していた。
しかし彼等の感情の持つ力を認識してもいるわけで、それを利用しようとして行われたのが“実験”。

己の分身であり、また同時に“種子”でもあるウィルスバグをPCに癒着させる。
その上バグの核に人間の意思を閉じ込め、感情による力と己の種子の力の“融合体”を作り出そうという試み。
この試みはあくまで試作であり、その後最高の体と最高の力を与えた意思あるPCを利用してアウラを消去させようと考えていたのだ。

そして結果生まれたのが“ヘレシィ”というバグPCであったが、これは半分成功半分失敗だったと言える。
本物の神の悪戯か、そのPCに宿されたのはリアルの存在しない正体不明の男であり、しかも何故か己の分身たるウィルスバグが自らに反応しなくなってしまう。
それどころか本来なら“世界”のどこにいても居場所が分かる筈の自分でさえ居場所を特定することが叶わなくなってしまった。


“何故だ、何故あの男は守られているッ!?”


モルガナは困惑と怒りを露にした言葉を吐き出す。

先程特定できないと言ったが、正確には居場所を探れないわけでもなかった。
『The World』内に奴がいる限り一応エリアの特定くらいは可能だったが、何故かそこから先は自らにエラーが出てしまうのだ。
酷い時はヘレシィがいるエリアそのものに強固なプロテクトが掛けられ、その場所はこの世界の神ですら触れられない領域と化している。

この世界のどこかに自分より上位の存在がいるとも思えない。いるとすれば未だ眠る究極AIアウラだけ。
そう思うのが当然であり、またその答えはあながち間違ってもいなかった。


“だが……もういい、あの男は十分役に立った。
 プロセスさえ掴めればどうにでもなる”


これまでと一変して穏やかな、けれど冷たい声で笑うモルガナ。

彼女の言う通り、ヘレシィという存在は元々“試作”に過ぎない。
実験が成功したというその一点だけ確認できれば、応用は如何様にでも出来るというもの。
現に次なるステップへの道は既に開いている…………司の“ガーディアン”として。

あれは唯のモンスターではなく、触手から微弱なデータドレインを行うことが可能になっている。
それによって倒された紅衣の騎士団の分団長こと銀漢達はリアルに影響を及ぼすまでの負傷を負わされることになった。
手軽に人間の意識を『The World』内に取り込む手段を模索する上で出来た力、それがデータドレイン。

後はその力を昇華させ、人間を完全に取り込みそれを形にすることで、未だ目覚めない現段階のアウラであればどうにでもなるのだ。


“……もう司も、あの男も要らない”


今はヘレシィの影響で居場所が分からないものの、近いうちに必ず司は見つけることが出来る筈。
まずは司を“壊す”ことでアウラの覚醒までの時間を稼ぎ、その隙に人間の精神を取り込んだ己の分身を作り出す。
それさえ成功してアウラを完全に封印してしまえば、ヘレシィなどという一個体はどうにでも出来る。

モルガナはそう判断し、司が視界に入ってくるのを楽しみに待ちながら新しい己の分身の作成に取り掛かる。


「……………………」


そんな彼女の様子にマハは言葉を発することなく表情に翳りを見せる。

マハは知っていたのだ。

自らを生み出した母たる彼女の言葉が、まぎれも無い本心によるものだということを。


――――そして同時に“もう1人”の彼女が相反する感情を抱いているだろうことも。


.hack//intervention 『第34話 時計の針を進める為に』


つい先程まで『逆城都市』に居た俺とシェリルは今、データの残滓らしき物体の山で築かれたエリアに到着した。
すぐ傍には何が起きたのか今一理解出来ずに周りを見回しながら困惑している司やベア、それにミミルの姿が。
彼等を連れてきたのは俺達であり、この場所は予めヘルバに用意して貰ったネットスラムの1つ。


「うわッ!? ちょっと何ここッ!?」

「ここは一体……?」

「……………………」


それぞれがそれぞれの反応を示す中、俺は頭の中でこれから為すべきことを再確認する。

俺が態々この地まで彼等を招いたのは、他でもない今後についてだ。
まずはミミルとベアを俺が、司をシェリルが担当して聞くべきことを聞き、その分相手の話にもある程度答える。
シェリルには司達がハロルドの居た部屋に行っている間に説明してあるから任せても大丈夫だろう……多分。

早速実行すべく彼女に目配せして合図を送り、


「司……って名前だよね?」

「…………え?」

「一緒に来て。話があるから」

「え? うわぁッ!?」


司の手を取りここから少し離れた場所へと連れて行って貰った。
しかしシェリルよ、手を繋いで連れて行くのはいいんだが……どっちかと言うと“引き摺っている”感じだぞ?
何だか傍から見れば“怪力少女”っぽくて妙な気分にさせられちまうんだが……。

さて、それじゃあ俺の方も計画を進めるとしますか。


「ベア、ミミル……まずは突然の非礼を詫びさせて貰う。
 だがこの形を取る他に方法が思いつかなかったんだ」


連れてかれた司から頭を軽く下げる俺に視線を移すミミルとベア。
その顔からは、困惑とも何とも判断しがたい微妙な表情が伺える。
まあ、いきなり“吸魂鬼”などと呼ばれる化け物から全く知らないエリアに転移させられたんだ、無理も無いことだろう。

だが彼等の心が落ち着くのを待っている暇はあまり無いと考えるべきだ。
モルガナの力を持った司がいる以上、この地は使い捨てと見なした方がいいくらいなのだから。
ヘルバにもそう言ってあるし、それらしいデータ増量が確認されればすぐに連絡するようにも言ってある。

それでもクリムやBT達の時とは違い幾分落ち着いているだけあって、俺の頭も十分に冷えている。

俺は“BT達が妙な誤解をしてなけりゃいいんだけどなぁ”なんて思いつつも、話を続けることにした。


「色々言いたい事もあるだろうが、先にこちらの質問に答えて欲しい」

「嫌よ」「お、おいミミルッ!?」

「そうか、有難う。それならこっちも話が<ガァンッ>むぎゃッ!?」

「嫌っつってんだろうがッ!!」


何かヘルバの時と同じような反応をされたけど敢えて無視してみたんだけど……。

すると(一応)お淑やかなヘルバじゃなかったせいか、ミミルの大剣による武器突っ込みと乱暴な言葉で返された。
……つーかミミル、いくらなんでも人の頭に剣を振りかざすのはやりすぎじゃないか?

別に痛くは無いけど癖みたいな感じで触手を使い頭を撫でる俺だったが、流石にミミルの反応に驚かないわけが無かった。

俺がミミルと出会ったのはこれでたった3回目であり、別段恨まれたり怒鳴られる程関わったつもりはない。
しかも3回というのは1年前までの分も含めて、の話で今の化け物状態で出会ったのはこれが初めての筈。
今と昔ではあまりにも違う姿の俺を判別できているかどうかも…………いやちょっと待て。


(そもそも何故ベアやミミルは俺に対して武器を構えない?)


俺が色んな奴等に狙われてることや姿の特徴などが“吸魂鬼”としてBBSの話題になっていることは周知の事実。
なのにベア達はこのエリアの特異性に困惑することはあっても、俺に対しては特に構えた様子がない。
一応ミミルは武器を構えているが…………あれは多分警戒しての意じゃなく突っ込み専用だ。

彼等、特にミミルがこれでも結構悪名高くなってる俺のことを恐れない。

これがどういうことなのか、そんなもの簡単に予想がつく。
……当たって欲しくないけどな。


「え〜と、お二方。もしや俺が誰か<ゴォンッ>ちょっと待<ガァン>何で殴んのッ!?」

「うっさいッ! アンタみたいに馬鹿げた奴はヘレシィ以外の何者でもないでしょうがッ!
 何でか分かんないけどアンタを殴りでもしなきゃやってられないってのッ!!」

「ミミルッ! 一旦落ち着「ベアは黙っててッ!」……はぁ」


理由も分からないまま執拗に大剣で殴られる俺に何かの鬱憤を晴らすかのように殴り続けるミミル。
そんな俺達を止めようとしたベアはミミルの剣幕に気圧されてしまい、溜息をつきながら一歩離れた場所に座り込む。

結局理由を教えられることもなく、俺への体罰はそれから約10分程続くのだった。

…………って見てないで助けろよ、ベア。


……………………

………………

…………


「あ、あの〜……そろそろ気は済んで貰えましたでしょうか?」

「ハァ、ハァ…………まだまだ足んないけど止めとくわ。
 アンタには聞かなきゃいけないことがここのゴミ山以上にあるし」

「やれやれ、これでようやく話が進められるな」


しばらくして荒い息を吐きながらもミミルは武器を納めてくれた。
第三者気取りで胡坐を掻いて座っていたベアも、その言葉通り“やれやれ”といった感じでやってくる。
一方の俺は、さっきからミミルのご機嫌伺いばっかりしてる……何かもう意味分からん。

ラスボスチックな化け物が女剣士にひたすら頭を下げ続ける光景って…………すんごい情けなくね?


「そ、それじゃ質問なんだけど、司についてなんだ」

「……アンタ、こっちが先に聞きたいことがあるって言ったの聞こえてなかったわけ?」


再び武器を構えて俺に叩きつけようとしているミミルだが、いい加減俺も真面目方面に持っていきたい。
少し前に言ったことだけど、司がいる以上このエリアは捨て地であり長居は無用なんだから。
下手に長居してモルガナの尖兵たる薄明の放浪者(司のガーディアンと同系統の色違いモンスター)などが送り込まれてはたまったもんじゃない。

それに俺が聞きたいのはたった1つだけ。


「君達に…………司の真実を知る覚悟はあるか?」

「は? 司の真実?」

「…………成る程な」


俺のある種抽象的な質問、というか確認にミミルは首を傾げ、ベアは表情を硬くする。

おそらくベアはすぐに気づいたんだろう。
態々俺がこんな場所を用意してまで彼等を招き、司と別行動させたのが切欠か。
やはりというか何というか、彼は状況理解が早くて助かる。


「これから君達に告げるのは“key of the twilight”の真実、そしてそれはイコール司の真実でもある。
 無論俺が知っているのはその一部に過ぎないが、それだけでも十分に“真実”と称するにふさわしい内容だ。
 少なくとも俺はそう考えている」

「……それってヘレシィが司をリアルに戻す方法を知ってるってこと?」

「手段は知っている。でも理解しているわけじゃない」

「その“真実”の中にアンタやシェリルに関しても含まれるのか?」

「……含まれない。シェリルは関係ないわけじゃないが、俺は全くの無関係……だと思う」


ベアがシェリルのことを名前で呼んだことに一瞬驚いたが、そのまま話を続ける。
言った覚えは無いが、そもそも1年以上前に何を話したかすら碌に覚えていないのだから、きっとその時にでも名前を教えてしまったのだろう。
考えてみれば、そこから昔の俺と今の俺の共通点を見出したのかもしれないな。

どうせ今更だ、大したことじゃない。
今大事なのは俺のことではなく、ミミル達にこの世界の真実を知る覚悟があるか否かだ。


「今から俺が告げる内容を知れば、おそらく『The World』は唯のゲームではなくなってしまう。
 そして同時にもう引き返せなくなる…………それでも聞くか?」

「「……………………」」


俺の言葉にミミルとベアは黙り込む。
しかしこの確認は既に確約されたようなものだと俺は思っている。
俺がこんな発言をしたのは会話の流れの上でいきなり真実を喋るのはどうかと思ったから。

そもそも彼女達は司を取り巻く事件の紛れも無い当事者。


「下らないこと言ってないでさっさと教えなさいッ!」

「俺達は周りで起きている異変に目を逸らせる程、『The World』とは浅い関わりじゃないんでな」


その言葉を合図に、俺は司に関する自分が知る限りの全てを彼女達に語る。

彼女達は俺の一言一言に驚き、それを知っている俺に色々問い質してきたがどの質問にも答えなかった。

というか俺のことを伝えて事態をややこしくしたくなかったからな。


《side 司》


「…………ミミルって実は結構ストレス溜め込む方?」

「あたしに聞かないでよ……」


僕はシェリルに引っ張られるがままにちょっと離れた所に移動していた。
あっちの2人とこっちの僕でそれぞれ聞かせるべきじゃない内容があるから、とか聞いてる。

で、今は遠くからミミル達の様子をシェリルと一緒に呆れながら眺めてるんだけど。


「シェリル、アイツっていつもああなの?」

「……ノーコメント」

「君ってアイツと一緒にいるんだよね?」

「うん。……夜の時間帯だけだけど」


僕の言葉に結構適当な返事を返すシェリルはヘレシィ達の方をぼんやりと見てる。

僕が知ってるこの子の顔は冷たい憎しみと、真逆の親愛の2つだけ。
前者は僕、いやちょっと前まで僕が“母さん”と呼んでいた声だけの女の人に対して。
後者はあっちで相変わらずミミルに八つ当たり染みた感じでやられているヘレシィに対して。

けど今目の前にいるシェリルの表情はどっちでもない。
一見無表情とも取れそうなんだけど、その視線には何かの想いがこもっているような気がする。

何の脈絡もなしにちょっと聞いてみたくなった。


「……アイツと一緒にいるのって楽しい?」


答えなんてわかってる。きっと“楽しい”って答える筈。
僕が知りたいのは言葉での答えじゃなくて、どんな表情で答えるか。

正確には答える時の表情が見たいってのが正しいかな?

そんな僕の質問にシェリルは、


「勿論ッ!」


以前初めて出会った時にヘレシィに向けていた子供っぽさのある笑顔で答えてくれた。
もしかしたら前以上に喜びとか嬉しさみたいなのが詰まっているかもしれない。


(多分この子は自分の居場所がちゃんと分かってるんだ……)


シェリルの笑顔を見たいと思ってた一方で、それを羨ましく思う自分もいる。

ログアウト出来ない今の状態になり始めた頃、僕はあの姿の無い女の人がいる所が自分の居場所だと思ってた。
誰も味方のいない現実にいるより、僕に危害を加えない優しい言葉をかけてくれるあの人の場所の方がずっとマシ。
それどころか僕にガーディアンや特別な力を与えてくれたんだ。あの人は僕から何も奪わずにひたすら与えることしかしなかった。
だから僕はあの女の人の言う通りにやってきたし、それでいいと自分でも考えていたんだ。

でもそれからお節介なミミルや何故か僕のリアルまで調べようとしてるベア、そして優しいけどそれだけじゃないような気がする昴。
今まで碌に人と接してこなかった僕に不躾なくらいしつこく近づいて来る皆を見ているうちに、あの女の人の優しさに違和感を感じるようになってきている。

あの女の人は優しい言葉を掛けてくれる。僕に自分を脅かす他人から守ってくれるガーディアンや特別な力を与えてくれる。
一見誰もが心地良いと感じるだろうそんな状態は、今思えばどこか空疎な安寧だったように思えるんだ。
そう思ったのを境に、僕は自分がどこに居たいのかが分からなくなってきてる。

あの女の人の場所は自分を脅かす奴等はいなくても、そこは何も満たされない停滞の場所だった。
前の僕ならそれでもいいと思ったかもしれないけど、ミミルや昴と話す中で何かが違うと感じてしまった以上、僕の居場所はもうそこじゃなくなっていた。
つい最近ではあの女の人の言葉の影に明らかに優しさ以外の何かが含まれているような気がしてしまい、碌に戻ってもいない。

今の僕はどっちつかずの宙ぶらりん状態。

そんな僕にとって、自分の居るべき場所を分かっているシェリルはとても羨ましかった。


「……ところで僕に何の用?」

「ついてきて欲しい所があるから、まずはその確認」

「それってここじゃないの?」


沈む心に一区切りつけて話を切り替えようとシェリルに話しかける。
てっきり僕をここに連れてきたのは僕にだけ特別な話があるからかと思ってた。
…………というかさっきシェリルもそう言ってた気がするんだけど。

そのことについて問い質そうかと思ったけど止めておいた。
聞いても答えてくれないような気がしたし、もしかしたらその言葉通りの意味もあったかもしれないしね。


「今から来て貰う所は絶対誰にも言わないって約束できる?」

「誰にもって……大体行くとは言って無いし」

「いいから約束出来る、出来ない?」


何だか小さい子に偉そうに言われたせいか、素直に返事したくない。

だけどそれ以上にシェリルが言う場所に興味があった。
何となくそこが他とは違う場所で、この子にとって特別な場所のような気もしたから。


「…………分かった」


しばらくして僕は無意識のうちに了承の言葉を紡いでいた。
無意識と言うより余計なプライドとかそんなのを省いてってことになるかな?

僕のその言葉に幾分安心したような顔を見せたシェリルは、


「それじゃ行こっか」

「えっと……どこに?」


一度離していた僕の手を再び取りながら、


「あたし達の“ホーム”ッ!」


そう元気良く行き先を告げると同時に、ミミル達と強制転送された時と同じような歪みに包まれていく。

勿論そのまま僕はついていく形で連れて行かれることになり、一瞬ミミル達が何をしているのか気になりながらも静かに目を閉じた。


その後ミミルとベアは、ヘレシィから色々教えて貰った後ヘルバって人に強制転送されたらしい。

ちなみにそれを僕が知ったのはシェリルに連れて行かれた先に、ヘレシィ自身が戻ってきてからのことだ。


――――僕が来たのはヘレシィ達が“ゴミ箱”と呼ぶ奇妙なバラバラ空間。そこで僕は様々な事実を知ることになる。


あとがき

主人公、ミミルとベアに色々話す&司がシェリルに連れ去られるの巻。
何気にモルガナから守られていた主人公。
実は『逆城都市』の崩壊が始まらなかったのもそのせいだったり。
主人公が誰に守られているのか、それはSIGN編の最後に明らかになります。これは予定じゃなく確定。
そのことが主人公にとってのSIGN編の区切りとも言えることですから。

1週間後に発売される【.hack//G.U.】の設定資料集が待ち遠しいジョヌ夫です。
さり気なく既に始めちゃってるvol.3も、もうすぐ終わりそうで丁度いい頃合。
……でも設定資料集買ったら買ったでG.U.書きたい病が復活しそうなのも怖かったり。

次回は主人公と司のお話になるかと……多分。
以上、SIGN原作に出てくる『カオちん』というキャラがG.U.にも出ていたことに何気に驚いたジョヌ夫でした。


レス返しです。


>金平糖さん

始めまして、ジョヌ夫です。
応援であろうと指摘であろうと、ジョヌ夫は物凄く嬉しいのです!
たった一言の感想でも執筆速度が3倍(と見せかけて実は1.3倍)に増えるのです!

ということでこれからもよろしくお願いします。


>コピーさん

【.hack】の売りはゲームの中だけではなくリアルにもあると感じているジョヌ夫です。
頑張ってそこら辺も上手く書けるよう日々精進していきたいと思っています。
ちなみにゲーム編というのは……ぶっちゃけどちらも、です。
無印の方はかなりオリジナル展開が書けそうだし、G.U.編はAIDAと主人公を関連付けてみたいし……ってな感じなのです。

次回もよろしくおねがいします。


>TAMAさん

原作で崩壊が始まる筈のエリアは冒頭のような理由で変化が起こりませんでした。
しかし勿論主人公はそのことを知らず、常にモルガナを警戒しながら動く羽目に……。
主人公と司の対談は次回になると思いますが、それでもあまり詳しい話は敢えて載せない予定です。
伏線というか後に語られるというか……まあそんな感じです。

次回もよろしくお願いします。


>白亜さん

主人公の計画が成功するか否か……まあ今まで成功した試しがないんですけどね(笑)。
フィアナの末裔とアルフ達についてですが、一応理由みたいなのはあるんです。
ほくとの場合、詳しい描写はその重要性から敢えて省いていますが、このSSの中で一度フィアナの末裔と3人で居たことがあります。
具体的にはフィアナの末裔が“吸魂鬼”と対峙した後のことです。その際に色々お話をしたことになっているのです。
でも1番大きな理由は……ほくとや彼女と一緒に居たアルフに対して所謂“第六感”で苦手なタイプと判断したこと。
ここら辺については近いうちにZERO編のフィアナの末裔視点で説明されることになる予定です。

これからもよろしくお願いします。

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