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▽レス始

「.hack//intervention 第33話(.hackシリーズ+オリジナル)」

ジョヌ夫 (2007-03-14 00:02)
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「でね、ジークって聞き上手だし――――」

「いいなぁ、そうゆーの」


Δサーバーのルートタウン、マク・アヌ。静かに流れる川の上に掛けられた橋に呪紋使いが2人。
その2人組はレベルは低いものの、連星やフィアナの末裔が遭遇すれば裸足で逃げ出しそうな程のある意味最強パーティーである。

片やとんがり帽子にビキニのような白いセパレートだけを身に着けた魔法少女、ほくと。
片やウサギの耳のように先端が2つに分かれた帽子を被ったボストンタイプの眼鏡が特徴的な呪紋使い、アルフ。
彼女達はこの街のカオスゲートにて知り合い、すぐに意気投合するに至った。

別に劇的な切欠があったというわけではない。
単に偶々周りにお互い以外に誰もおらず何となく話しかけてみようと思った、ただそれだけの話である。
元々社交的な2人は話題が尽きることなく、こうして橋の上で何時間も会話を続けている。

現在はアルフによるジークというPCの自慢話。

時の神像のタイムアタックイベントを始めとした様々なレースイベントで常に上位に入っている実力派プレイヤー。
顔以外のほぼ全身を白銀の甲冑で包み、その姿から一部では“鋼の貴公子”と形容されることも。
彼の面倒見の良さや人の良さはほとんどの人に好印象を与えており、アルフ自身世話になっている。
要約すればこんな感じの話だ。多少脚色染みていることは否めないが。


「だから何か困ったことがあったら彼に頼ったらいいと思うよ。
 多分今なら冒険中だと思うから、良かったら紹介してあげよっか?」

「う〜ん……どうしよ。
 アルフがそこまで言う人、ぜひぜひ会ってみたいとは思うんだけど。
 ……実は今、待ってる人がいるの」

「え? でもほくとって用事なかったんじゃなかったっけ?」

「そ、用事は無いし約束しているわけじゃないけど……それでも待ってるんだよね」


さっきまでの会話において子供のような口調だったほくとの変化にアルフはほんの少しだけ驚く。
そこに居たのは自分と同じかそれより年下に思えるような女の子ではなく、どこか大人染みた印象を与える女性だったから。

ほくとは毎日のように『The World』にログインしている。
しかし最近していることと言ったらルートタウンをぶらぶらする程度、冒険に出たりはほとんどしない。
目的もなく歩きながら考えるのは、ここのところ全く連絡が取れないアルビレオのことばかりだ。

彼がシステム管理者らしいということは、以前共に行動する中で何となく確信に近いものを感じていた。
確たる証拠があるわけではないが、隠しているつもりでも彼の言動や行動にはそう言えるだけの要素がある。
だからそんな彼が現在起きている様々な現象の処理に追われていることは容易に想像出来た。

ほくとが知っているのは“黒い幽霊少女”と“吸魂鬼”くらい。
他にも色々あるかもしれないものの、彼女が知っている限りでシステム管理者の手が必要になりそうな話はそれだけだ。
尤もアルビレオの様子が変わり始めたと感じたのは、今から約1年前のことだと彼女は考えているが。

その時彼に何があったのかは知らないし、敢えて聞かないようにもしている。
ある日アルビレオはほくと、いや“W・B・イェーツ”に対して黄昏の碑文に関する資料を求めてきた。
どういうわけか黄昏の碑文を可能な限り集めようとしているアルビレオの雰囲気はかなり切羽詰まっており、思わずたじろいでしまった程。
それ以来ほくとは鉄面皮とも称されそうな彼の表情の裏で、その心がまるで何かにもがき苦しんでいるような錯覚を覚えるようになっている。


「……ほくとって意外と大人?」

「体は大人、心は子供……ってのはどうかな?」

「ほくと、それって言葉通りなら微妙に駄目人間っぽくない?」

「むぅ〜、それってどーゆー意味ッ!?」

「あははッ! 冗談だってッ!」


自分に出来ることなんて程度が知れている、ほくとの“リアル”は冷静にそう分析してしまっていた。
突き放すような言い方になるが、彼の問題の解決は最終的に彼自身の手に委ねられている。

彼は基本的に人を求めようとしない。性格故か職業柄故か、1人で悩み1人で苦しむ。
ほくとに出来るのはそんな彼の手助けをほんの少し、そして彼が自分に心を求めてくるのを静かに待つこと。

彼女がこのマク・アヌの街で待っているのは“アルビレオ”ではなく“渡会一詩”なのかもしれない。


「それじゃさ、わたしがジークを連れて来ようか?
 そうすればほくとも動かなくていいし、ねッ!」

「うんッ! じゃあお願いしちゃおっかな?」

「よぉし決定ッ! ほくとも絶対気に入るから楽しみに…………あ」

「どうしたの……ってあれは」


会話の途中に視線を遠くにある2つの人影へと向けるアルフ。
それに合わせるようにして同じ方向に目を逸らしたほくとは、その人影が誰のものであるかすぐに分かった。
何せ彼等はこの世界においてかなりの有名人なのだから。

銀の髪に白銀の鎧、他では見られない2枚の翼を背中に付けた繊細華麗な印象の男、蒼天のバルムンク。
銅の髪に肩当や腰回り、分厚い長靴のみで身を包んだ筋骨隆々の巨漢、蒼海のオルカ。

フィアナの末裔という“W・B・イェーツ”によって付けられた二つ名を冠する2人組。
何やら互いに真剣な表情で意見を交わしているようで、遠巻きに眺める周囲の人々にも気づいた様子ではない。
それ程彼等が傾倒することが何なのか、ほくとは朧気ながら知っていた。

彼等はアルビレオも捜していたらしい“黒い幽霊少女”や“吸魂鬼”と遭遇している。
ほくと自身、一部ではあったがその光景を目撃し、アルビレオに情報提供として連絡した覚えがあった。
彼女が辿り着いた時には既にフィアナの末裔しか残ってなかった為、結局“黒い幽霊少女”達の姿は遠くからの影程度にしか拝めなかったが。
その後彼等がエリアの各地に点在しているらしいバグを基に例の2人組を追っている筈だと、ほくとは記憶していた。

記憶をたどっていくうちに、ほくとはふと思いつく。

一般PCに過ぎない自分でも、フィアナの末裔の力を借りればアルビレオの手助けが出来るのではないか。
ただ待つばかりではなく、少しでもアルビレオの負担を軽くする為に積極的な行動に出ることも必要なのではないか、と。

ほくとは憧れのような視線をフィアナの末裔に向けるアルフに声を掛けようとして、


「あ「会いに行こッ!」……ってアルフ?」

「あれってフィアナの末裔のバルムンクさんとオルカさんだよねッ!?
 絶対間違いないよ、うんッ! 会わなきゃ損だって、ね、ねッ!?」

「え、あ、ちょっと〜ッ!!」


その前に異常なほど興奮したアルフに手を引っ張られていた。

しかしすぐに気を取り直してそのまま自分の足で駆け出す。
フィアナの末裔たる彼等にどのような形で協力を申し出ようか考えながら。


――――ほくと達に気づいたフィアナの末裔の2人は、他では滅多に見られないような引きつった表情を露にしていたとか。


.hack//intervention 『第33話 招きという名の拉致』


「おかしい……おかしすぎる」


俺とシェリルはクリム達が離脱した後、フワフワ浮かびながら扉の前で司達を待っている。
特に何か考えるでもなく、ただ静かにこの部屋に来るであろう彼等に対して為すべきことを頭の中で復唱していた。

それを始めてからどれくらい経ったろうか? 
別に計っていたわけじゃないが、大体10分程度は過ぎたと思う。

なのに人影1つすら見えやしないのだ。


(それに何故未だに崩れ始めないんだ?)


クリムが来た頃からおかしいとは思っていたんだが、ここに至るまで何の変化も起こらないのはあまりに不自然。
モルガナから力を与えられた司の位置を彼女本人が把握出来ない可能性はかなり低く、更にこのエリアはネットスラム等と違って彼女の領域。
言わば彼女の思い通りに出来る世界であるにも関わらず、司の居るこのエリアに手を出さない。

これは俺による物語の変化とかそういった次元を超えた問題のような気がする。
たとえ物語の流れが変わろうとモルガナと司の関係、それにモルガナがこの世界の神であることには変わらない。

まさか何らかの障害がある為に介入できない……なんてことはまずあり得ないか。


「もういっそのこと迎えにいっちまおっかなぁ」

「トモアキ、何か足音みたいなのが聞こえない?」


シェリルの言葉に答えの出ない思考を中断させ耳を潜める。
するとほんの僅かながら走るとも歩くとも言い難い微妙な速度の足音が複数聞こえてきた。

俺は何とか予定通り事が進んでくれたことに一息つく。
しかし結局今回の異変の原因もわからないまま、イコール不安要素が抜けていない状態なのだ。
……こんなことで俺の計画は成功するんだろうか?


「…………ま、なるようにしかならないか」


無責任というか適当に聞こえるかもしれないが、これくらいの心意気じゃないと色々持ちそうにない。

情報通のヘルバもいることだし、多少気楽に構えてもバチは当たるまいて。


《side ミミル》


「……ベアに……お前達か」

「BTッ!? それにアンタは確か……」

「クリムだ」


アタシとベア、それに司は“key of the twilight”があるっぽいこの逆さまダンジョンのアイテム神像部屋を目指してひたすら走ってた。
不思議なことに最初のうちは床や壁が壊れたりしていたのに、司が言う“悪意”が無くなってからはあまり普通のダンジョンと変わらない状態になってる。
モンスターも全くいないし、宝箱も見当たらない分かれ道の無い場所で、途中までは何の戸惑いもなく進むことが出来た。

それからしばらくして目の前に広がったのが三方向に分かれた選択肢。
このどれかが正解ってことだろうけど、手がかりは勿論無くて後は勘で決めるしかない。

そんな時にその1つの入り口から出てきたのがBT達だったわけ。


「BT、戻って来たということはその道が間違っているか……」

「……私達の向かった方向に間違いは無かった。
 いや、正解でもなかったというべきか」

「てことはさ、アタシ達BTに先を越されちゃった……って感じの顔じゃない、か」


言葉通り、BTもクリムって奴も目的を達成したようには思えない。
伝説のアイテムを手に入れたにしては難しい顔をしているし、何より何も持っていない。
……でも道は間違っていなかったって言ったよね?

BT達の行った道が合っていて、それでも“key of the twilight”は手に入れてない。
それってつまりさ、この先にそのアイテムが無いってこと?

それじゃあBT達は何でこの道が正解だって分かったんだろ。


「ねえBT、この先に“key of the twilight”はなかったんでしょ?」

「……ああ」

「けどこの道が正解って何で分かるの?」

「俺達が見たのが“key of the twilight”じゃないことだけは確かだ。
 あそこに“居た”のは……うんにゃ、行けば分かることか」


アタシの質問に対して微妙に答えになっていない返事をしてくれたのはBTじゃなくクリムだった。
気のせいかもしれないけど、前に司を紅衣から助け出す時に見たより少し気落ちしているような様子。
ちなみにそれはBTにおいても一緒で戸惑っているような落ち込んでいるような奇妙な雰囲気がPCを通してでもわかる。

それはともかく、今クリムが“居た”って言ったのがちょっと気になる。

アタシとベアがこのエリアに来る鍵となったBBSの書き込みなんだけど、


『“黄昏の眼”開きし時、我が場所へ至る道開かん。
 我と語れかし、かの力に抗せよ。そは全てを覆す“鍵”なればなり』


確かこんなのだったと思う。

“黄昏の眼”がどうこうってのは今は無視。多分このエリアに来る方法の話だから。
問題はその次の文章。クリム曰く“居た”ってことだから多分あっちにはアイテムじゃなくて誰かがいるってことになる。
そして人っぽい描写は“我”だけ……ってことは?

ここまで来たらアタシでも想像がつく。勿論ベアがそれに気づかないわけがなく、


「つまりBT達が出会ったのは“key of the twilight”ではなく、あのメッセージの発信者だったわけだな」

「そういうことだ、後は自分の目で確かめな。
 俺達は先にここから離脱することにした……というかさせられちまったんだが」

「ベア、ミミル……そして司。
 この先に行くならある程度の覚悟を決めたほうがいいぞ」

「どうしたのBT? この先に居る奴ってそんなに凶暴?」


アタシの冗談半分な質問に、いつもなら鼻で笑う筈のBTがその真剣な表情を崩さない。

……ってもしかしてマジでヤバイ相手なの? でも“語れかし”とか言って待ってる奴が何で凶暴?
それにBT達も戦闘したようには見えないし……。


「何度も言わせるな、先に行けば分かる。
 あそこに居るのは3人、1人は発信者と思われるが後の2人は……お前達を待っているようだった。
 ……違うな、状況から見るにお前達を待っているのはほぼ間違いない」

「俺達を?」「アタシ達を?」


あまりにも意外な言葉に似たような台詞を吐くアタシとベア。

その反応に満足したのか、少しだけいつもの調子を戻したBTは、


「奴等はある意味“key of the twilight”以上にわけがわからん……」


溜息交じりにそう呟きながら、クリムと共にアタシ達を横切って消えていった。

あれ? 何で『精霊のオカリナ』を使わないんだろ?


《side ベア》


俺達はBT達と別れた後すぐに最深部への移動を再開した。


「ベア……ちょっと聞いていい?」

「BTが言っていた2人の件か?」

「……あれってさぁ、ど〜〜〜考えても」

「…………ヘレシィ達だろうな」


俺とミミルの言葉に一度しか会っていない筈の司までもが強く頷く。

こんなところに出てくる2人組で思いつくのは彼等ぐらいにしか思いつかない。
特に確証があるわけではないが、別れ際のBTのあの様子は妙に共感出来る部分があった。
あれはおそらくヘレシィ達の奇妙な行動に惑わされての結果だろう。

俺やミミルも同じような経験を司と紅衣のいざこざの際にしているからな。
今更ながら、あの時周りの連中が同じように固まっていてくれて助かったと本心で思っている。

あの時の俺のこける様は…………多分かなり間抜けだったろうから。


「……あの化け物っぽい奴がいるってことはシェリルもいるんだよね?」

「多分な……そういえば司、以前何やら聞きたいことがあったらしいが?」

「あ、うん……起こしたい子がいるんだ」

「それは一体「ベアッ! きっとあの扉よッ!」……分かった」


何かが掴めそうになったところでミミルの妙に意気込んだ声に遮られる。
どうせ後から聞かせて貰えばいいことだから大して気にしていない。

それより気になるのがミミルの力の入れ様だ。
最近、というかヘレシィが先日現れて以来どこか躍起になっているように感じる。
俺も彼等を見つけて色々聞き出したいことはあるが、ミミルの場合はそれ以上に感情的な理由が含まれているような。

……まあ、あの人を無視した2人だけの空間を見れば色々言いたくなるのも分かるが。


やがてミミルの言う通り目の前に巨大な扉が見えてくる。

BTの言葉が正しければ、この先に居るのがメッセージの発信者に……あの2人か。


「ミミル、司……準備はいいか?」

「おうよッ!」

「うん……」


俺の確認にそれぞれの得物を握り締めながら頷く2人。

そして無論同様に準備万端の俺は、巨大な扉に手を当てゆっくりと開いた。


……………………

………………

…………


扉の先に広がったのは真っ白な世界、椅子に座って目を閉じた男。
それ以外には人っ子1人見当たらず、ヘレシィもシェリルという少女の影すらない。


「……アンタがメッセージの発信者か」

“……………………”


発信者らしき男は俯いたまま静かに目を開くも、全くこちらを見ようとしない。
ちらりと見えたその瞳は、何かを見ているようで実際には何も見ていない感じだ。

少なくともそう思える程に虚ろだった。


「抗すべき力とは何だ? 全てを覆す“鍵”とは何だ?」

“……愛してる”

「な、何ですとぉッ!?」


あまりにも場違いな情感の篭った男の言葉に何故か俺とその男を交互に見比べるミミル。
…………何か酷く嫌な勘違いをされているような気がするな。

それはともかくとして、この男は俺の言葉が分からないのか?


“私は……私は、君と私との想いを形にして残したかった。
 君が生きた証。私が君を愛した証……それを形に……”

「君? 愛の証?」

“しかし……どうやら私は過ちを犯してしまったようだ。
 そのことに気づいてすぐにメッセージを発信したんだが……間に合ったのだろうか?”

「ま、まさか“君”ってベアのことじゃないよね?
 つーかこっちの話まるで聞いて無くない?」


ミミルの困惑しつつも少しばかり楽しそうな声は敢えて無視するとして、だ。

俺が思うにこの男、もしかすると所謂再生機能のついたNPCのような存在になっているのかもしれない。
こちらの話を聞いていないのではなく、聞く為の機能がついていないだけ。

となるとこの男の言葉もまた、“key of the twilight”へと導くメッセージなのではないか?


“……済まない、私は父親として失格だったよ”

「……………………」


突然聞こえたその言葉に軽く無い衝撃を受ける。
理由をこの場で語るつもりは無いが、“家庭の事情”とだけ言っておく。

一瞬怯んだがすぐに気を取り直し、続く言葉に集中することに。


“彼女は、私の……私達の希望だ”

「「「彼女?」」」


俺達3人は声を合わせて男の言葉を復唱した。
俺は勿論、おそらくミミルや司にも分かりやすいくらいの手がかりがあったんだろう。

目の前の不可思議な男が“彼女”と呼ぶ少女。
この『The World』で起きている事件の多くに関わっているシステムを超越した存在。
俺が知る限り、そんな少女は1人しか思いつかない。


「……どっちなんだろ?」


ふとそんな司の呟きが聞こえたような気がした。
だが俺は自分の思考に気を取られてしまい、またかなり小さな響きだったのですぐに空耳と片付けてしまう。

未だ続く男のメッセージを聞く必要もあったしな。


“彼女を……頼む。父として駄目な私がここに来てくれた者達にこの思いを託すのはムシが良すぎるとも思う。
 それは理解している……にも関わらず、最早私にはそうすることしか出来ない。
 こんな焦燥感を私は知らなかった。なんと、私の知る世界の狭隘であったことか。
 ……頼む。彼女は君と私の……私が愛した君との想いの結晶なのだから”

「君って誰よ? 彼女ってアンタの娘なわけ?」

“父性を全う出来なかった私を許してくれ……いや、私は許されなくても構わない。
 愚かだった私に許される資格は無い。が、彼女は…………彼女だけは頼む”

「あ〜も〜全然人の話聞いて無いしッ!」

“……愛してる”

「ミミル、無駄だ。この男は多分繋ぎに過ぎない」


俺はここまでと判断して踵を返し、部屋の外へと向かう。
何故結局ヘレシィ達が現れなかったのか、それとも既に待ち切れずに去ったのか。
疑問点は残るものの、1つだけ重要なことがわかっただけでも僥倖だ。

メッセージの発信者のいう“君”“彼女”が誰なのか?
それこそが“key of the twilight”への鍵であり、ログアウト出来ない司を現実へと戻す力になる筈だ。

そして俺達には“彼女”に大きな心当たりがある。


「ベア、“彼女”ってやっぱり……」


出口へと向かう俺に続く形でついて来るミミルの言葉に無言で頷く。

そのまま閉ざされた扉を開け、ダンジョンの暗がりに戻った俺達は……、


「遅すぎやっちゅ〜ねんッ!!」


……“彼女”だと推測した少女を連れた、少々怒り気味のふざけた化け物に道を塞がれる羽目となった。


俺達はその容貌と真逆の言葉に思わず硬直してしまう。

どう反応すればいいのか、何を問いかければいいのか……様々な思考が頭を駆け巡る中、


「んじゃ、とっとと3名様“楽園”へご案内〜」


ヘレシィと思われるふざけた化け物男はそんな掛け声と共に目の前から離脱する。


――――次の瞬間、俺達は奇妙な空間の歪みに巻き込まれていた。


あとがき

司組がハロルドと邂逅&主人公に連れ去られるの巻。
本来ならもっと色々な話を書きたいんだけど、敢えて物語を一気に飛ばしていく予定。
銀漢とかが少々軽い扱いになってしまいますがご了承願います。
ジョヌ夫、いい加減ゲーム編が書きたくて仕方がないのです。
目指せ70話完結ッ!

次回は“楽園”でのそれぞれについて。
あとはまたちょっとだけ主人公の秘密が明らかに。

ということでこれからもよろしくお願いします。


レス返しです。


>totetitoteさん

波紋は少しずつ広がっていくのです。
原作から本格的に外れていくのもこれからになる予定です。

次回もよろしくお願いします。


>明篠さん

幼女と怪物の物語はこれからどんどんエスカレートしていきます。
どうエスカレートしていくかは…………秘密ということで(何。

これからもよろしくお願いします。


>TAMAさん

主人公はもうこれから化け物としてしか生きていけないかも(笑)。
彼の計画って基本的に結構綿密に立てたつもりでも、別の要因で失敗してしまうんですよね。
……最後くらいは成功させてあげたいなぁ。

今回は司達を連れ去るだけ。
本格的な対面は次回とその次になるかと。

いつも感想有難うございます&これからもよろしくお願いします。

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