「修行・・って先生!私達が今ちょっと修行した所でたかが知れてるわよ!相手は写輪眼のカカシ先生が苦戦するほどの忍者なのよ!?」
カカシのいきなりの言葉にサクラは激昂した。その背後に額に内マーク(肉に非ず)のあるもう1人のサクラが見えた気がしたが放っておこう。
「サクラ・・・その苦戦している俺を救ったのは誰だった?お前達は急激に成長している。サスケは本人の希望で前から稽古はつけてやってたから分かってたが、ナルトも俺の予想以上に成長してきているぞ。」
「へへっ、俺もサスケに色々と教えてもらってるってば。」
褒められて謙遜しつつも、嬉しそうに笑うナルト。
一方サクラの方はナルトを見、次に黙って話を聞いているサスケの方を見てから、内心で溜息をついた。
(そういえば私・・・・今回も何の役にも立ってない)
さっきのナルト達と再不斬の激戦を思い出して憂鬱になる。
形の上ではタズナを守る役目だった。とはいえ水分身や再不斬本体を退けたのはナルト達であって、自分は何の役にも立ってない。手裏剣やりクナイやり投げつけたりして、少しは援護の真似事ぐらいやれた筈。
それじゃあ何でやらなかった?
――――怖かったから。
相手を傷つけるのが。相手が自分に向かってくるかもしれないのが。
相手が自分の放った攻撃で死んでしまうかもしれないのが。自分が死んでしまうのが。
――――自分は、戦うのが怖いのだ。
そんなサクラの心情を知ってか知らずか、カカシは続ける。
「とは言っても、俺が回復するまでの間の修行だ。まあ、お前らだけじゃ勝てない相手に違いは無いからな。それに一旦仮死状態になった人間が元通りの体になるまで結構な時間がかかる事は間違いない。」
「その間に修行ってわけだな!面白くなってきたってばよ!!」
「・・・・面白くなんかないよ。」
「ああ!?誰だお前ー!?」
幼い割りに何処か諦めきった雰囲気を纏った声がした。声のした方を一同が見てみると、9〜10歳ぐらいの帽子を目深にかぶった子供が靴を脱いで上がってくる。その顔はこれくらいの子供と比べてかなり陰気である。
少年の名はイナリ。ツナミの1人息子でタズナの孫だ。
「おおイナリ、どこへ行ってたんじゃ!」
「お帰り・・・じいちゃん・・・・・」
「イナリ、ちゃんと挨拶なさい!おじいちゃんを護衛してくれた忍者さん達だよ!」
「・・・・・・・・・・・」
黙ってナルト、サスケ、サクラ達を見る。
次にイナリが発した言葉は、その場の空気を凍らせるだけの冷たさを持っていた。
「母ちゃん・・・・こいつら死ぬよ。」
「!!?」
「何だと―――ぉ!!このガキってばよおぉ―――――――っ!!!」
ナルトはさっき以上に頭に血を上らせて激昂し、さっきまで陰鬱な表情を浮かべていたサクラも思わず立ち上がる。タズナとツナミは暗い表情で、顔色を変えていないのはカカシとサスケだけだ。
「ガトー達に歯向かって勝てる訳ないんだよ・・・・・」
「こンの・・・・・・!!!」
ついに我慢の限界に達したらしい。年下のイナリに向かって年長者の立場もへったくれも無しに手を上げようとするナルトを、我を取り戻したサクラが慌てて襟を掴んで止める。
「ちょっとナルト!なに子供相手にムキになってんのよバカ!」
ちなみに2人も年齢的には思いっきり子供なのは置いとこう(サスケは・・・中身がアレですから)。
「よく聞け!!俺は将来火影という凄い忍者になるスーパーヒーローだ!!ガトーだかショコラだかマロンだかなんだか知らねーが!そんなん全然目じゃないってばよ!!!」
イナリに向けて堂々と言い放つナルト。だがイナリの方は。
「・・・・ヒーローなんてばっかみたい!そんなのいるわけないじゃん!!」
と、再び冷たく言い放つ。
「死にたくなったら早く帰った方が良いよ・・・・」
そう告げてから、イナリは自分の部屋へと行ってしまった。後を追って殴ってやろうともがくナルトとそれを押さえ込もうとするサクラ、そして一部始終を黙って聞いていたサスケやカカシ達を残して・・・・・・
なんともイヤ〜な雰囲気だったイナリとの初顔合わせの後、俺達はタズナの家のそばの林の中に居た。カカシの言ってた修行を行う為だ。
ちなみにその前に改めてナルトがイナリになんか言ってやろうと血気盛んに言ったはいいが、すぐに哀しそうな顔をして戻ってきた、なんて事があった。たぶん原作通りにイナリの泣き声を聞いたんだと思う。
「んじゃまず修行を始める前に・・・お前らの忍びとしての能力であるチャクラについて話そう。」
「チャクラって、俺やサスケが忍具や術とかで使ってるアレだってば?」
「そう、それだ。今回はそれのコントロールの修行をしようと思うんだが・・・・ナルト、お前手を使わずに木を登れるか?」
「は?何言ってるの先生、手を使わないで木なんて登れる訳・・・・」
「登れるってばよ?サスケに教えてもらったってば。サスケの方はカカシ先生に教えてもらったって言ってたってばよ。」
サクラがカカシの言葉に当たり前の事を聞くな、といった感じで言ったが、ナルトがあっさり出来ると言ってしまったお陰で尻切れトンボになってしまった。
「やっぱりな。あの時水面に立ってたからそうとは思ってたが・・・」
「水の上に立つのは俺も何とか出来るってば。けど、そうやったまま術とか使おうとするとすぐ沈んじゃうってばよ・・・・」
「コイツ、1つの事を覚えるのは早いんだが、2つの事を同時にやろうとするとすぐ失敗するんだ。」
俺は途中で説明してやった。原作での螺旋丸の修行の時もそうだったけど、どうやらコイツは術関係で1人で1度に複数の術の動作を行うのが苦手らしい。影分身やりなんやりで分担してやるのは大丈夫みたいだが。
「なるほど、ある程度は使えるがまだまだって事か・・・・・よし、サスケ。お前はサクラにチャクラを使って木を登るやり方を教えて見てやってくれ。やり方は忘れていないだろうな?
ナルトは俺について来い。特別に俺が複数のチャクラコントロールのやり方を教えてやる。」
「えっ!?(つまり・・・私、サスケ君と2人っきり!!?しゃーんなろー!!メルヘンGETー!!!)」
うおっ!?何だかピンクな寒気が!?(どんなんだ)
「いよっしゃー!やってやるってばよー!!」
何だか背筋にイヤ〜な感覚を感じる俺と、何だかピンク色っぽい炎をバックに背負ったサクラを置いて、ナルトとカカシは行ってしまうのだった。
「・・・・・・・・・・」
ま、まさかこんな事になるとは・・・・・俺はただ、早めにナルトに教えておけばその分ナルトの苦手なチャクラコントロールが改善されるだろうと思って教えてやっただけだったんだが。
ちなみに俺がカカシから教えてもらったのは、弟子入りしてから結構最初の方だ。一通り教えてもらった後は、チャクラで木の枝から逆さでぶら下がった状態で重りを付けて腹筋、といった感じで体力を消費してもチャクラコントロールを乱れさせたりしないようそこん所を鍛えたりしている。
湖の水面の上でひたすらマラソンてのもやった。重り付だわ水深は深いわで一度チャクラコントロールを失ったら最後、ズブズブ沈む羽目になったのも1度や2度じゃない。あん時は危うくドザエモンになる所だったぜ・・・・
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・カカシせんせー。沈黙が何だか痛いです。ついでにピンクの視線も送られてるんですけど?
よくよく考えてみると、女の子と2人きりって状況にあんまりなった事無いんだよなー。
ヒナタはナルトとセットだったし。アカデミーとかでも女の子から呼び出されて告白されてもすぐに、かつ丁寧に断りを入れて(当たり前だ。見かけは子供でも中身は20超えてんだから子供に興味は無い・・・・筈だ。多分)さっさと逃げてたし。
1番最近に2人きりになったのは・・・・数ヶ月前、サクラの病室に足引きずって見舞いに行った時ぐらいだ。
「・・・・・始めるとするか。」
内心の動揺を押さえ込んで、俺は始めてサクラ相手に1対1の指導をする羽目になったのだった。
あとがき:ナルトの1人で1度に複数の術の動作〜は自分の勝手な考えですので間違っていたらすいません。
次回はサスサクの回になるのかな?ギャグというよりシリアス寄りになるかもしれません。
>yuju様
>nameless様
お互い、自分の心に素直になった方が楽でしょうね(笑)
果てさてこのまま2人が延々と悩み続けるのか、それとも開き直るのか、はたまたそれより先に相手の方が我慢の限界に来て受けに回ってしまうのか(何)はまだ分かりません。
>ブック様
序盤最強の台詞とは何でしょうかね?自分は思いつかないんですが。
白女の子化がここまで反響を得るとは思いませんでした。ちなみにスタイルは着痩せするタイプで脱ぐとアンコ並だったりします(笑)
我が家のサスケと再不斬が仲良く飲む様になったら・・・多分、何とも言えない親近感を感じること請け合いです。
>sk様
こちらこそ初めまして。これからもお付き合い頂ければとても幸いであります。
今日はこれで失礼。
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