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▽レス始

「.hack//Dawn 第17話(.hackシリーズ+オリジナル)」

白亜 (2007-03-10 14:13)
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 reverse/アルビレオ

「遅かったか……!?」

 俺がサイリスが送ってきたメールに書かれたフィールドにやってきたが、既に結構な時間が流れている。

 もしかしたら、もうやられている可能性のほうが高い。 だが、まだ粘っている可能性も残っている。

 それにサイリスはスケィスに詳しい筈だ。 ならば勝てはしないが、負けない方法を持っている可能性がある。

「くそっ!」

 妖精のオーブで周りを調べるがなんの反応もない。 誰かが戦闘していると思わしき音もない。

 俺はひとまずダンジョンに向かう。 誰かがいた場合、一番人がいそうな場所だからだ。

 快速のタリスマンを使って移動速度を上げた為、目的の場所へはすぐに行けた。

 しかしそこには、

「っ!? 大丈夫か!?」

 倒れ伏す二人の重斧使い。 昴とカールだ。

 HPは0になっていない為、幽霊にはなっていないが、リアルの方が気を失っているらしい。

 普通ならありえない現象だが、俺はここ最近触れてきた、未知の感覚はそれ程驚く事はなかった。

 いや、『この程度』で済んでくれた事に安堵している可能性だってある。

「二人は無事だが……サイリスは……?」

 肝心のサイリスの姿だけない。

 あのサイリスがそう簡単に負けるとは思えない。 とりあえず周囲を探してみる必要がある。

「おい、起きろ」

「……」

「……」

「駄目か……」

 昴とカールを起こそうとするが、反応がない。 完璧に気を失っているようだ。

 気を失っている二人を放置するのは無理そうだ。 俺は一度FMDを外して、部下を呼び出す。

 あの場所に騎士団を派遣。 念のためエリアを封鎖して、昴とカールを強制ログアウトさせる。 色々と問題はあるだろうが、非常事態だからな。

「お前達はこの辺りのバグを調査してくれ。 俺は人を探してくる」

「わかりました」

 それだけをやってきた碧衣の騎士団の部下に告げると、俺は辺りを捜索する事にした。 部下の数名にも周りの調査をさせてる。

 が、あのスケィス相手では部下達ではどうにもならないだろう。 多分だが俺が持つ彼女からもらった槍が一番効果的のようだ。

「……君はこの事態を知っていてこれを俺に託したのか? リコリス」

 あの赤い少女を思い出して俺はそれだけを呟いた。

 まだ考える事はあったが、目の前に探し人を発見した為、思考をカット。 倒れている人物に声をかける。

「サイリス!」

「……」

「駄目か……」

 サイリスもまた昴やカールと同じように気を失っているらしい。

 しかし、プレイヤーに気を失わさせる事が出来るなんて……。 普通ではありえない。

 いや、もう【スケィス】という存在事態が普通ではないのだから当然と言えば、当然か。

「まずはスケィスをどうにかしなければならないが……」

 対抗手段がまったく思いつかない。 確かに俺の槍ならば、スケィスにダメージを与える事には成功したが、HPを0には出来ないだろう。

 やはり何か知っているらしいサイリスに聞くしかない。

 俺はサイリスも強制ログアウトさせると、騎士団の報告を聞くべく来た道を引き返した。

 reverseout


 .hack//Dawn 第17話 竜堕影幻・騎士敗北


「……ん……」

 ここは何処だ?

 俺が目を覚ますと、まったくもって知らない場所……ではなく見慣れた自室だった。

 はて、何時の間にログアウトしたのだろうか? 俺の記憶だと先程までスケィスと戦っていたような気が……!?

 ってスケィス!? スケィスはどうしたんだ!? っていうか俺、負けたんじゃね? ならデータドレインくらったとか!?

 慌てて、FMDを外して、壁にかけられたシンプルなカレンダーで俺の記憶の日にちを確認。 その後、携帯電話の日時を確認。

「……データドレインを食らったって言う話はなさそうだな」

 日にちはまったく同じだってし。 それによく考えたら、データドレインを受けたら次に目を覚ますのはベッドの上な気がする。

 そう考えれば、自室にいる時点でただの気絶だろう。

 嗚呼……本当に焦った。

 データドレインを受けたら、本気で色々やばいからな。 大学生活にだって問題が出るし、バイト先にだって迷惑をかけちまう。

 本当に助かった。 だけどどうやって俺は助かったんだ?

 間違いなく俺はスケィスに敗れた。 ならば、何故スケィスは俺をデータドレインしなかったのだろう?

 気を失った俺は格好の獲物であるからな。 まぁ、スケィスの被害者が原作では確か……6人だったから、それほどデータドレインをするって訳でもないのかもしれないけど。

 そういえば、データドレインを受けたのって誰だっけ? 楚良はかろうじて覚えてる。 アルフは……いいんだよな、多分。 それに蒼海のオルカ。 後は……覚えてねぇや。

 まぁ、今はそんな問題はどうでもいい。 とりあえず、もう一度、ログインしてみるか。 情報がないときついし。

 時間は……まぁ、大丈夫だろう。

 俺は放置されっぱなしで、スリープ状態に以降していたパソコンを起動させると、すぐにザ・ワールドにログインしなおした。


 ■□■□■


「んー、やっぱりデータドレインを受けた形跡はなし……だな」

 マク・アヌにやってきた俺はステータス画面を開いて呟いた。

 ステータス画面には俺のデータが変わらず表示されている。 レベルが1に戻ったとか、そういう事はないようだ。

 装備、予備武装やアイテムもなくしたものはない。 まぁ、回復アイテムがかなり減ってるけど。 後で調達しなおさないと。

 一度、ホームに行こう。 子アウラがあそこで待ってくれている……筈なんだけど……。

 で、ホームに行ったけど案の定、子アウラはいなかった。

 うーむ、何処に行ったんだろ? まぁ、多分だけど俺達を巻き込みたくなかったから、去ったのかな……。

 なんて健気な……。 まぁ、彼女がここにいたら、そのうちスケィスが襲い掛かってくるのは間違いないもんな。

 それより昴やカール達は無事だったのだろうか? それにアルビレオは来てくれたのか? 意識を失ってからの情報がまったく分からん。

 とりあえず各所にメールを出しておくか。 無事なら返事が返ってくる筈だからな。

 俺は昴やカール、アルビレオにメールを送信。 うむ、こんなもんか。

 多分大丈夫だけど……やっぱり心配だな。 まぁ、だからと言ってやれる事はないんだが……。

 で、俺は……どうするかな……。 スケィスと戦うのは無謀だし、何か出来るかわからんし……。 あー、とりあえずアイテム補給だけしとくかな。

「いた! サイリス!」

「ミミルか?」

 声をかけられたので、後ろを見ると、そこには重剣士のミミルがいた。 お久しぶりだな。

「久しぶり」

「ええ、久しぶりってちがーう! 大変なのよ!」

「何が?」

 ミミルがそんなに焦る程、大変な事って何さ?

 この時期は……もう内容なんて覚えてないけど、多分【.hack//ZERO】だった筈。 ミミルって関わってたっけ?

 まぁ、まったく関係ない可能性もある。

「トライエッジの事よ!」

「トライエッジ……!!」

 この時期に現れる事がない存在にして、イリーガルなイレギュラー。

 勇者カイトと同じ姿をした存在。 その力は多分だけど、今の俺を超えている。 くやしいけどな。

 そのトライエッジはとりあえずアルビレオ達と共闘した時に倒した筈……なのだけど、ダンジョンに奴の残した三爪痕が残っている事からまだ生きてるんだろうな。

 で、そのトライエッジがどうかしたのか?

「うん。 最近、結構ダンジョンで見かける事が多いんだけどね。 今日、物凄く変なやつを見つけたわけよ!」

「変なやつ?」

「そう! マークできる上に転送可能な三爪痕。 初めて見つけたよ、転移出来るやつなんて」

 確かだけど、ゲーム版で三爪痕で転移出来る事があったよな……。 多分だし具体的な内容も覚えてないけど。

 この前、俺とミミルが最初に見つけたやつは転移出来るものじゃなかった。

 ……もしかしたらトライエッジに辿りつけるかもしれない。 行くか……。

「ミミル。 その傷がある場所は?」

「どうして?」

「ああ。 そこにトライエッジがいる可能性がある」

「【トライエッジ】って【三爪痕】をつけた犯人?」

「ああ」

 トライエッジはほっとく訳にはいかない。 それにトライエッジの後ろにいる存在は間違いなく俺の事を知っていた。

 【サイリス】の事ではなく【月白白夜】を、そして【俺】が本来、この世界の人間じゃない事を。

「……分かった。 教えてあげる。 その代わり、あたしも行くわ」

「ミミル……! 駄目だ!」

「なんでよ?」

「トライエッジは強い。 俺のレベルでも勝てるか分からない」

 俺のレベルはザ・ワールドの中でもトップクラスだと自負している。 だけど、ミミルのレベルは正直、俺と比べると低いとしか言えない。

 だから俺一人で行く気なのだが……。

「あたしが見つけたんだし、あたしも行くわよ! そうじゃないと教えてあげない」

「はぁ、分かった。 ただし、最悪の場合はそっちだけでも逃げてくれ」

 ミミルの事だ。 頑固として折れそうにない。

 こうなったら腹を括るか。

「まぁ、一応了承しておいてあげる。 でも後一人メンバーが欲しいわね。 出来れば回復役。 サイリスはあてとかある?」

「残念だけど、呪紋使いの知り合いはいるけど、かなりレベルが低いし、巻き込むのはちょっと……」

 あてとしてはティーファやカズなのだが、レベルはミミルよりも低いし、無関係なやつをこの事件に巻き込むのはどうかと思う。

「サイリスは無関係な人を巻き込みたくなって事ね」

「まぁな」

 それに信じてくれる人がそれ程多いとは思えないしな。

 トライエッジにPKされると、リアルのほうも意識を失う。 これはあくまで俺が【あちら】の世界から持ってきた知識にすぎない。

 今の所、実際にPKされた人はいないようだけど、油断は出来ない。

「なら、あたしの知り合いで巻き込んでも大丈夫な人がいるからその人を呼ぶわ」

「……大丈夫なのか?」

「まぁね。 まっ、この前の事件の関係者だし」

 この前の事件って【司】の事件だよな? 誰だろあの事件の関係者で、呪紋使いな人って?

 で、ミミルがメールで連絡してる間に俺はタウンで消費したアイテムの補給っと。 スケィス戦でかなり使ったからな。

 ホームとかに備蓄しておいたアイテムを出さないと。 金のほうも結構使うし……。

 はぁ、落ち着いたら稼がないとなぁ……。

「おっけ! サイリス、連絡取れたわよ! すぐに来てくれるって」

「そっか。 なら、ほれ」

「ん、これって!? ちょ、いいのこんな高価なアイテムを沢山!?」

 俺がミミルに渡したのは【大剣・コロナブレイド】、【大剣・フォレストソード】、【大剣・プラズマブレード】の3つ。

 前に俺が使っていたやつだが、【大剣・ヴァジュラ】とか手に入れた俺は殆ど使ってない武器だ。

 トライエッジがいるかもしれないのだから、これぐらい当然だ。

 それに、幾つか倉庫で埃をかぶってた防具も渡してやる。

 これなら、今のレベルでもそれなりに戦える筈だ。

「あ、あの本当にいいわけ……こんなにもらって?」

「ああ。 俺はもう使わないし。 それに何があるか分からないからな」

「あ、ありがと。 さっそく使わせてもらうね」

 俺が渡した武器を装備するミミル。 うむ、これならなんとかなるかもしれない。

 で、後はミミルが呼んだ相手がくれば準備完了かな。

「久しぶりだなミミル」

「BT!」

 突然、カオスゲートのほうからやってきたのは、女性の呪紋使いだった。

 うむ、美人だ。 PCだけど。

「久しぶり、悪いね呼び出したりして」

「いや、トライエッジに関しては私も興味があったし、それ以上に【サイリス】に興味があった」

 ミミルと久しぶりの会話をしてると思ったら、突然矛先が俺のほうに向く。 なんでさ?

 なんで俺に興味? 別に放浪AIよろしくザ・ワールドに存在してる訳でも、ずっとログインしてる訳でも、ましてや色々な継ぎ接ぎな化け物でもない俺になんで興味?

 が、ミミルだけは納得している様子。 だからなんでさ?

「あの【昴】を篭絡した男がどれほどの奴か気になっていたが……ふむ」

「……」

 いや、篭絡ってなんでさ? 俺そんな事した覚えないですよ?

 まぁ、知り合いの女性PCの中じゃ一番親しいのは間違いなく昴なんだけど……。

 ……まぁ、PCだけど可愛いけどさ昴。 うーむ、まだリアルの事だって話した事ないのに……。

 …………あぁぁああ!? なんか突然、意識してきた!? 昴が無茶苦茶可愛く見えてきた!? なんか俺やヴぁい!?!?

 ってちげーよ!? 今はそれどころじゃないって!!

「そ、それより! 準備は出来てるのか!?」

「話題を逸らしたな」

「逸らしたわね」

「う、うるさーい!」

 ええい! 昴は後回しだ! それに恋人って訳じゃないっていってるだろ!

「昴のリアルって美人よ〜」

「えっ、マジで……って違っ!?」

「ふふ、純情ねぇ」

 く、くそぉ!? なんか遊ばれてるぞ俺!

 いや、遊ばれてるんだなこれ……。

「ええい! いい加減、行くぞ!」

「じゃあ、行きますか」

「そうだな。 それなりに楽しめたし」


 ■□■□■


【Θ 夢落ちる 悲しみの 堕竜】


 reverse/BT

「ここか」

「そっ。 ここの最下層に転移可能な三爪痕があったの」

 私達3人は、【トライエッジ】と呼ばれる存在がつけたと思われる三爪痕を探しにやってきた訳だ。

 ミミルが言うには、中々のめんどうごとになるらしい。 が、今更と言った感じだろう。 私もまたあの司の事件に関わった一人だからな。

 それにあの【サイリス】にかなり興味があったからな。

「でもBT、本当にいいの? 自分で頼んでおいて言うのもなんだけど」

「気にするな。 【トライエッジ】に興味もあるが、【サイリス】にも興味があったからな」

「サイリスに?」

 そう。 ミミルも知っての通り、あの【昴】を篭絡した男にかなり興味があった。

「昴を篭絡したザ・ワールドのナンバー3のプレイヤー。 興味がないと言ったら嘘だろう」

「ナンバー3? そうな訳?」

「ああ。 まだ口コミ程度だが、ザ・ワールドにおける三強プレイヤーの一人に数えられているらしいぞ」

 これは事実だ。 まだBBSにも上がっていないが、【蒼天のバルムンク】、【蒼海のオルカ】、【サイリス】の3人はザ・ワールドのトッププレイヤーに数えられている。

 まぁ、サイリスの知名度は前の二人に比べれば低いのも事実だがな。

 私はそれをミミルに話してやると、中々関心した様子をみせる。

「さすがね。 うん」

「そろそろ着いたようだな」

「みたいね」

 ダンジョンにおける戦闘は殆どサイリス任せだ。 何せ私達と彼とではレベルが違う。 この程度のエリアの敵ではまったく歯がたたないようだ。

 ミミルが指定した部屋に入ると、その部屋の奥には確かに三爪痕が存在していた。 それが今、禍々しく赤く光っている。

「……本当にここから転移出来るのか?」

「ターゲット出来る。 しかも転移可能みたいだ」

「そうか。 だが何処に転移されるのか?」

 三爪痕を調べていたサイリスがそれを見上げている。 ふむ、何か思いいれでもあるのか?

「で、本当にいいのか?」

「問題ないって!」

「ああ。 面倒ごとにはなれている」

「はぁ……なら行くぞ!」

 その瞬間、私達は転移された。

 そして辿り着いた先は、最果ての門と呼ばれる場所であった。

 reverseout


 ■□■□■


「……ここは?」

 俺達が転移された先は、ダンジョンでもルートタウンでもなかった。

 あえて言うなら、【隠されし 禁断の 聖域】に似ている気がする。

 巨大な門に……これは城砦だろうか? しかしザ・ワールドにこんな場所があるなんて、知らなかった―――

 ―――――――――――――――――――――――っ!?

「モーリー・バロウ城砦……っ!?」

 なんだ今のは……!?

 突然、頭に名前が思い浮かんだぞ? くそっ! 一体どうなってやがる。

「フィールドでもダンジョンでもない場所か……。 ネットスラムみたいなもん?」

「分からないな。 ヘルバあたりに聞けば分かるかもしれないが」

 俺の後ろでミミルとBTが会話しているが、俺は気に止める余裕はない。

 突然頭の中に流れ込んできたこの場所の名前。 そして知識。

 ここはロストグラウンドと呼ばれる場所。 本来ならR:2に登場するエリア。 ただR:1からの名残な為、確かにあってもおかしくはない場所。

 だが、何故知識が? そして何故、この場所に転移されたんだ?

『ふむ。 まさかやってくる者がいるとは思わなかったよ』

「っ! 誰だ!?」

 突然に声が聞こえてくる。

 ミミルとBTも反応している事から空耳って事はないだろう。

『名乗る必要はないし、姿を見せる必要もない。 君達に資格はないだろうしね』

「……」

『だがあえて言うなら、トライエッジを従える者、とだけ言っておこう』

「トライエッジを従えてるだと?」

「貴様、あの時の声主の仲間か?」

『ふむ。 説明してやる必要はないな』

 男の声だが、間違いなくこいつはあの時のやつの仲間だ……!

 理屈も理由もない。 ただ直感的にそれを俺は悟っていた。

『まぁ、正体は見せる事は出来ないが、退屈はさせまい。 それに私も貴様を試してみたかったからな』

「試す……?」

 何か嫌な予感がする。

 トライエッジやスケィス程ではないが、それでも相当嫌な予感がする。

 そんな不確定な予感だが、ミミルもBTも既に戦闘態勢に入っている。 俺も【大剣・ヴァジュラ】を引き抜くと、それを構えた。

『不完全だが、まぁいい。 出でよ! 【ザワン・シン】よ!』

「なっ!?」

 その次の瞬間、崖だと思っていた場所から、巨大なモンスターが現れた。

 ターゲットすると名前は……【ザワン・シン】!?

「【ザワン・シン】だと!?」

 思わず声に出すぐらい驚いた。

 【ザワン・シン】。 ザ・ワールドにおけるたった一つのイベントのボス。

 バルムンクとオルカによって倒された筈のモンスターだ。 だからこそ可笑しい。 こいつはザ・ワールドには一体しかいないモンスターだ。 こんな場所に現れる筈がない。

「【ザワン・シン】とはあれか? フィアナの末裔の!」

「ああ! 間違いない!」

 BTの質問に答えてやる。 俺は見た事はないが、こいつが【ザワン・シン】なのだろう。

 ザワン・シンの狙いは明らかに俺達。 男がこいつを操っているとしたら間違いないだろう。

「なら倒すしかない!」

 俺自身、ザワン・シンについて詳しく知っている訳ではないが、攻略法なら前にオルカから聞いた事がある。

 倒す! 倒してみせる!


 ■□■□■


「障壁か……」

 ザワン・シンの周りに障壁のようなものがあるのを確認出来る。 これをどうにかしなければ、ダメージを与える事は出来ないだろう。

 俺が障壁に攻撃すると、障壁にダメージが入った。 なるほど。 障壁は攻撃する事で破壊可能か……。

「ミミル!」

「分かってる!」

 俺とミミルは重剣士が持つパワーで次々に斬りかかる。 障壁はミシミシと確実に破壊への道を突き進んでるようだ。

 だがザワン・シンとてダメージを受け続けている訳ではない。

 口のようなものから炎のブレスを吐き出したのだ。 回避は不可能。 俺とミミルはガードするしかない。

 俺自身はそれほどダメージは受けなかったが、ミミルはそうもいかないようだ。 レベルが俺ほど高くない為か結構なダメージを受けている。

「BT、回復を!」

「分かっている!」

「ミミル、あまり無理するな! 前衛は俺に任せておけ!」

「くやしいけど頼むわ!」

 BTには回復を、ミミルはあまり得意ではないだろうがサポートを頼む。

 レベルが低い二人では直撃すればどれも致命傷だ。 俺とて直撃を受ければきついものがある。

 俺が直接攻撃。 ミミルは隙を見て攻撃しては離脱のヒット&ウェイを繰り返し、BTは回復に専念してもらう。

 それを繰り返す事数分。 パリンと、音と共に障壁が破壊された。

「今だ!」

 障壁が破壊されればこちらのものだ! コアらしき部分にターゲットがうつる。

 俺はそこに向かってスキル攻撃を叩き込む! ミミルも好機を逃がさんとばかりに大剣でスキルを、BTは呪紋を唱え一気に決める!

 【反隼】、【バクドライブ】、【オラバクローム】

 二つのスキルと1つの呪紋が確実に直撃した。

 が、

「嘘でしょ!? 殆どダメージを受けてない!?」

 まともにダメージを与えたのは俺のスキルだが、それでも殆どHPを削ったようには見えない。

 俺達は再びスキルを叩き込むが、そこまでダメージを受けているようには見えない。

 だがこれで俺は一つ思い出した。 オルカから教えてもらったザワン・シンの最大の特徴であり、最大の弱点を!

「BT! 闇系の呪紋で攻撃してくれ! ミミルは雷系のスキルを使えるようにしてくれ!」

「何を考えているかは分からんが、分かった!」

「了解! リーダーに従うわ!」

 俺も即座に【大剣・ヴァジュラ】から【大剣・スパークブレイド】に変更する。

 純粋な攻撃力は劣るが、今は関係ない!

「行くぞ! 二人とも! 【メアンクルズ】!」

 複数の暗黒球がザワン・シンのコアに襲い掛かる!

 それと同時に、ザワン・シンから暗黒のブレスが反撃として返ってきた。 だが、それこそが俺の狙い!

「今だ! 雷のスキルを!」

 【ライドライブ】、【ライオマキシマ】

 俺とミミルが同時に雷のスキルを発動、それが直撃した。

「! 二人とも、奴のHPが!」

「やった! かなり減った!」

「エレメントヒットだからな!」

 奴の特徴は、通常攻撃ではダメージを与えられない。 最初に攻撃したスキルの属性が奴の属性となる。 ならばその隙にその属性の反属性で攻撃すればダメージは与えられる!

 だからこそ、BTの闇属性の攻撃で闇属性に変化したザワン・シンに俺達の雷属性の攻撃が直撃する事が出来たのだ。

「なるほど、そう言う事か」

「なら、さっきと同じ事を繰り返せば……!」

「こいつを堕せる!」

 その後はそれ程、語る事はない。

 直撃を受けた後、障壁が再び復活したが、繰り返し俺が障壁を破壊してBTが呪紋、その後に俺とミミルがスキルを叩き込む。 それを繰り返したに過ぎない。 

 同じ事を繰り返して数十分。 遂に俺達はザワン・シンを陥落させた。

「や、やった……!」

「倒せるとは……思ってなかったな……」

 なんとか倒せた。 ただ一つ助かったのは、バルムンク達ですら、大ダメージを受けた攻撃をしてこなかった事か。

『見事。 まさか倒されるとは思ってなかったぞ』

「てめぇ……!」

 男の声が再び聞こえてきた。 多分だが、俺達の戦いを見ていたのだろう。

 だが、倒されたと言うのに、男の声は余裕に満ちている。

「あんた一体何が目的なのよ!」

『さて、説明してやる必要はあるまい。 何故ならここで貴様達は敗北するのだからな!』

「ザワン・シン以外にも何かあるのか……?」

 BTの声が世界に満ちた時、突然、目の前が明るくなった。

 いや、曇りだった空から、一筋の光が現れたのだ。

「なんだ……何か……いる?」

 光が差し込む空に何かがいる。 まだ黒い点でしか見えないが、間違いなく何かがいる。

 ミミルもBTも俺と同じように空を見上げている。

 黒い点が少しずつ形になってくる。 それは……なんだ……人……?

 翼のようなものが背に、そしてその手には剣。 俺はその姿で、知り合いの一人を思い出すが、翼の形状が違いすぎる。

 だけど、それはある意味正しくある意味間違っていた。

 突然急降下、剣を振りかぶってくる事から、間違いなく攻撃してくるのだろう。 狙いは……俺か!

「なっ――!?」

 剣での攻撃を防御した俺は、本気で驚いた。 いや、後ろにいるミミルもBTも驚いている筈だ。

 白い鎧、そして背中の翼。 その姿は継ぎ接ぎだらけだが、間違いなく――

「【蒼天のバルムンク】だと……!?」

 現在のザ・ワールドでもトップクラスのPC。 【蒼天のバルムンク】。

 継ぎ接ぎ以外は間違いなく、バルムンクと同じであった。

 間違いなくその姿を見た俺は動揺した。 だからこそ決定的な隙を見せる事になる。

「――っ!?」

「サイリス!」

 衝撃が突き抜ける。 気がつけば、俺はモーリー・バロウ城砦の門に背中から叩きつけられていた。

「く……そ……!」

 即座に体を起こして動揺を打ち消す。 すかさず【大剣・ヴァジュラ】に装備を切り替えるとバルムンクに斬りかかる!

 だが、バルムンクはその一撃をあっさりと受け止めた。 間違いなく強い!

 俺は連続して大剣で斬りかかるが、やはりバルムンクは受け止めていく。

 だが決着はあっさりとついた。

 間合いを取ろうと、俺が後ろに下がろうとした瞬間、見た事もないスキルで俺は倒されていた。

 HPこそ0になっていないものの、トライエッジと同じように【俺】に衝撃が来た為だ。

「ちく……しょう……」

 俺が地に伏せると同時に、ミミルもBTもあっさりとバルムンクの凶刃の前に倒されてしまう。

『殺しはしなさいさ。 君を殺すのはあの方の役目なのだから』

 そんな声が聞こえてくると同時に俺の意識は再び闇に落ちていった。

 俺達は――俺は負けたのだ。


続・あとがきっぽいもの
なんでこんなカオスに?
BT登場。 ザワン・シン復活。 その後、羽男降臨。
そして再び主人公敗北。 またかよおい。
他のオリキャラ物に比べてバトルが多いんだけど、敗北数もダントツ。
大丈夫か主人公?


レス返しだと思う

・ジョヌ夫さん
ハセヲ……強くなれ……! みたいな展開。 意味は全然違うけど!

スケィス&裸男はやっぱり強め。 やっぱりボスクラスだし強くないと。 でも主人公の負け数もダントツ(汗
謎の人物は謎だらこそ謎の人物なのさ!(違っ
主人公組みが勝てる可能性……。 うーむ、負けばっかだから負けるかも(ぉぃ
戦力図に関しては……どうなんでしょ。 三つ巴……なのかなぁ?

またよろしくお願いします。

・SSさん
蒼海はちょっぴり登場。 主人公との遭遇は……何時だろ?
謎の人の行動はおいおい分かるようにしたいです。 というかしないと駄目じゃん。
榊については暫く謎のままで。 色々とあるのですよ。
柴山は腕伝ではなくゲーム編のほうで登場予定。 多分だけど。

・遊恵さん
原作では楚良→アルフ→カール→カズ→オルカ→ジークの順番で意識不明になってます。 Dawnでどうなるかは分かりませんけど。
オルカは……まぁオルカだし(鬼
さくさく更新は無理ですね(苦笑
今は時間があるからそれなりに更新できるけど四月からまた忙しくなりそうだし。 それでも頑張りますのでまた見てやってください。

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