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「妖使い!?横島の生活! 第十九話〜鬼斬り役の実力と猫たちの憂鬱〜(GS+おまもりひまり)」

ハルにゃん (2007-03-10 06:32)
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緋鞠と地走が向かい合って数時間とも感じられる時がすぎた。
実際には数分とたっていないのだろうが観戦中の横島にはそう感じられた。
緋鞠は眉を逆八の字に釣り上げ、険しい表情を浮かべる。
逆に地走は口元をクイっと歪め、冷たい笑みを浮かべている。
両者とも無言で対峙していたが先に口を開いたのは地走の方だった。

「さすが野井原さんだな…隙が全然ねぇ」

「……友也こそ授業中の非力さは演技だったようじゃな」

「まぁね、霊能科のヒヨっ子相手に加減するのは骨が折れたぜ、気を抜いたら斬りそうになってたからな」

そう言って地走はさも楽しそうに舌舐めずりをする。
それを聞いて何度か地走と対戦した事のある横島が青ざめた。

「友也よ、本当に若殿を殺すつもりか?」

「あ?泣き付いたって許す訳にゃいかないぜ?」

「……人間の法では殺人は重罪のはずじゃ、しかもここは六道学園のど真ん中、言い逃れも隠蔽も不可能じゃろう」

「ご忠告感謝するけど俺のバックにはそれくらい対処できる大物が控えてんだ。それに死んだお前らが発見されなきゃ立件できねぇしな」

どうやら説得は不可能なようだ。
こうなったら叩きのめして警察に突き出すしたないだろう。
数カ月でも友人として過ごした者を本気で叩くのは不本意だな仕方がない。

「さぁ来いよ俺の可愛い子猫ちゃん」

「…言い得て妙じゃがお主に言われると虫ずが走る!野井原の緋剣!いざ参る!!」

妖脈がを使わなくとも緋鞠は強い。
人間の限界を軽く超越した速度で一気に間合いを詰めると神速でじゅうぶんに妖力の通った安綱を抜き去り地走を両断する勢いで凪ぐ。
しかし地走はそれを最小限の動きで青龍刀を動かし柄で受け止める。
止めた勢いをそのままに今度はカウンター気味に緋鞠の肩の辺りを狙っての斬撃。
巨大な青龍刀を手足のように使うその姿は普段の彼からは想像も付かない猛々しさだ。

「はははは、そんなポン刀じゃ俺の方天画戟(ほうてんがげき)の斬撃は受けきれねぇよ!!」

「くっ!」

地走の斬撃の嵐をなんとか受け流す緋鞠だが一撃一撃が重く反撃に転ずる事ができずにいる。
さずが三国志最強を語る武将が愛用したと言われる武器の名を語るだけの事はある…。

「……って全然似てねーじゃん!?どこが方天画戟なんだよ!?」

咄嗟にツッコム横島。確かに全然似ていない……。

「うっせ!好きなんだよ!!名前くらい好きに付けたって良いだろ!?」

という事らしい。やはり所詮友也は友也か…。
だが威力は本物だ。緋鞠はどんどん後退していく。

「くっ、こんな奴に押されるのは屈辱じゃな…」

ホントに悔しそうに呟く緋鞠だが正直もうあとがない。
なんとか打開策を考えるが自慢のスピードもこいつには通じないのでどうする事もできずに受け流しだけを続ける。

「や、やべぇ!緋鞠押されてるぞ!静水久…なんとか出れないか?」

見兼ねた横島は後ろで見ていた静水久に問い掛ける。
地走の地味に軽い態度を見てだいぶ落ち着いたのかもう震えてはいない。
顔色はまだ悪いままだが……。

「…ハルにゃん余計なお世話なの…顔色は…元からなの!」

あぅ…す、すみませんでした静水久さん!それで…あの、加勢の方は大丈夫でしょうか…?

「………まったく、ネコはダメダメなの…早く私に妖脈を使え…なの」

どうやら加勢してくれるらしい。

「よっし!んじゃいくぞ!?妖・脈・全・開!!!」

だいぶ慣れてきたのか横島はスムーズに妖脈に霊力を流し込んだ。

「…んぅ…はぁぁあぁん…!」

流し込まれた静水久は当然悶え始める。

「…あぅ…いつもながら変な気分…なのぉ」

「!!!?よ、横島〜〜!人が必死に闘っとる時に何楽しい事してやがんだゴラァ!?」

「やかましいわい!!これは戦闘前の大事な儀式じゃボケ!!」

「隙ありじゃ!!」

「ぬぉ!?」

静水久の恥態に気を取られた地走の隙を見逃さず緋鞠は一気に斬りかかる。辛うじて受け止めた地走だが緋鞠はなおも追撃をする。
刺突や払い上げなども交えて青龍刀の弱点である重さを上手く利用してあちこちの急所を狙っていく。

「んぎゃぁぁ!」

一転して緋鞠が攻め立てる頃には静水久の霊力供給も終わる。

「あ…あぁん!なのぉ…」

「!!!?静水久ちゃん…イッたのか!?逝ったんだ!?」

それでもなんか余裕のある地走は涙目で脱力しながらハァハァいってる静水久を横目で見ながら叫ぶ。

「……鬼斬り役ってのは変態ばっか…なの?」

「失礼な!変態は友也だけだ!俺は至って真面目な好青年だぞ!?」

説得力がまったくない…。いつも以上にシラーとした静水久の視線を感じるも今はそんな場合じゃないと割り切る。

「よし、あいつに積年の恨みを晴らしてやろう!でも殺しちゃダメだぞ?半殺しくらいなら許す!レッツゴー静・水・久!」

「……恨み晴らさでおくべきかぁ…なのー」

静水久は俯き、前髪で眼を隠しながらユラ〜リと地走の元へ歩いていく。

「こ、怖っ!?普通に怖いよ!?静水久ちゃん!」

ノリはギャグだが恨み云々は半ば本気だ。
友也の先祖に抱いた恨みは冷酷な友也を見た時に友也への恨みと変わった。
こいつに恨みをぶつけるのはお門違いなのではないかという疑問はもうない。純粋に殺す事を愉しむ。
間違いなくあの時の地走家と同じ性質なんだこいつは。

「……屠られた私の一族の痛み…味わうと良い…なの!」

そう言って静水久は氷針を数十本展開すると縦横同数で十文字にして投げ付ける。極端に回避の難しい投擲だ。
しかし地走は避けもせず受けもせずに霊力をフル開放してその霊圧で氷針を弾き飛ばす。

「なんの事か知らねぇけどそんなちんけなつららじゃ俺にはかすり傷一つ付けらんねぇよ!」

「……ほんの挨拶変わり…なの。妖脈でパワーアップしたから負けない…なの!」

「へぇ、あれが横島家の妖脈か。たいした事ねぇんだな!」

そう言いながら地走は静水久に斬りかかる。
避ける間もないほどの斬撃は静水久を一刀両断した。しかし手応えはない。
斬られた静水久はフッと水になって消えると地走の背後に現れ氷針を投げる。普段は水のある所でしかできない変わり水(み)の術だが妖脈によってパワーアップした事により体内の水で代用できるのだ。何度もできる訳ではないが一度見せておけば警戒してやりやすくなる。
静水久は緋鞠の妖脈開放まで時間を稼ぐ事にしたらしい。
投げた氷針は咄嗟に避けたが見事地走の足に命中している。

「ちっ!これはやりにくいぜ」

「……静水久ビームを喰らえ…なのー」

「だぁ!欝陶しいッ!!」

とにかく時間稼ぎとして超強力水鉄砲を乱射する
。体内の水を使い切らないよう水量を調節して牽制だ。
地走はその小技にイラつきながらも近付く事ができずにいる。
その間に横島の所に戻った緋鞠は妖脈開放開始だ。

「大丈夫か緋鞠」

「うむ、大事ない。それよりもあ奴なかなかのてだれじゃ、早く行かねば静水久が危ういやも知れぬ」

「そうだな、んじゃ早いとこイッとくか」

なんだか字が激しく間違ってるような間違ってないような…。
それには触れずに緋鞠はグッと身構える。
思い出すのは先日のコスプレ姿。緋鞠のバニーさんやら静水久のメイド服やらだ。どれもが華々しく横島の脳内で再生されていく。
そしてカッ!と眼を見開き、ネコミミとしっぽを出した今の緋鞠とあの時の裸ブレザー緋鞠が重なった時、一気に霊力を流し込む。

「自裁烈功破ッ!!!!」

「ディープすぎるぞ若殿!!?」

緋鞠が慣れない英語まで駆使して入れたツッコミも無視して無慈悲に膨大な霊力は妖力に変換され緋鞠へと流れ込む。

「……地走…あれを見ろ…なの。お前の大好きなネコがあられもない姿を晒してるの…」

「なに!!?」

振り返った地走が見たのは静水久の言う通り身構えていたにも関わらずあまりにも膨大すぎる妖脈を受けたせいでうずくまり激しく腰を震わせている緋鞠の姿だった。

「生きてて良かった生きてて良かった生きてて良かった!!!!」

「……バカばっか…なの」

これほどわかりやすい隙もないであろうというほど隙だらけの地走に静水久は容赦なく静水久ビームを放つ。今度は水量マックスだ。

「がはッ!!?」

静水久ビームは当然命中して地走はゴム鞠のように吹っ飛んでいく。
なんとか意識を保って駆け付けた緋鞠はあまりのアホらしさに呆然だ。

「というか私をダシにするなみずち!!!」

「……あいつの弱点を的確に突いただけ…なの」

その弱点を完璧に見極める静水久の恐ろしい事恐ろしい事…。敵にはまわしたくないタイプだ。
もしかしてこれで終わりかとも思ったがそうはいかないだろう周りの異空間が解除されていないのが何よりの証拠だ。
だがあれだけの静水久ビームを食らった以上無傷ではないだろう。
思った通りそこそこダメージを負っているようだがまだまだ戦闘続行可能な状態で地走が壊れた壁っぽい所から這い出てくる。どうやら相当お冠の御様子。

「…や、やりやがったな……」

「呆れたタフさじゃな」

「…しぶといの」

「殺すのは横島だけにしてお前らは俺の女にしてやろうと思ってたがやめだ!三人まとめて解体してやるッ!!」

「…お前の女になるくらいなら解体された方がマシ…なの!」

「返り討ちで理事長殿に突き出してくれるわ!!」

そう言って二人同時に突っ込んで行くが地走に近付くと逆に吹っ飛ばされてしまった。
なにやら地走の様子がおかしい。

「……ネコ、なんかやばいの……」

「うむ、霊力が物凄い勢いで集束しておる…」

最初はただ立ち昇っていただけの膨大な霊力が徐々に地走の身体を覆い始める。

「言っとくがこの術はまだ覚えたてでな、自分でもあんまし上手く使えねぇんだ。」

そして地走の身体を覆った霊力が今度は段々と実態化して鎧のような物に変わっていく。

「なっ!?あれは魔装術じゃ!!」

「知ってんのか緋鞠?」

「……まそうじゅつ…なの?」

「若殿も授業でやったじゃろ!?」

そう言われ横島は必死に思い出そうとする……。

「……考えるだけ無駄…なの」

…不本意だが静水久の言う通り結局思い出せず緋鞠に説明を求めた。
魔装術、それは悪魔と契約したものだけが使える禁断の邪法。
霊力を物質化して纏い、防御力はもちろん攻撃力も跳ね上がると言われている。
術者の強固な精神力と霊力が求められ、それがない者は術に呑まれて本物の魔物になってしまうのが邪法たる所以だ。
……そんなの授業でやったっけ?
これは授業をまともに聞いていない横島など構っていられない。
緋鞠はすでに完全に物質化した不格好な鎧を纏った地走に問い掛ける。

「という事は友也!お主の背後には魔族がついておるのか!?」

「さぁな、これから死ぬお前らには関係ねぇ事だろ」

緋鞠の問い掛けを流した地走はいきなり三人まとめて飲み込んでしまいそうなほどの極大霊波砲を放つ。
緋鞠が横島を抱えてなんとか避けたがその威力は当たったら跡形もなく吹っ飛びそうなほどだ。
粉々になった壁っぽい所を見て横島達は顔を見合わせて青ざめる。なんかもう妖脈どうこうでも勝てる気が全くしない…。

「さ〜て、第二ラウンド開始だぜ俺の可愛い子猫ちゃん」


とぅーびーこんてぃにゅー


あとがき
こんにちはハルにゃんです…。
ようやく上がりました19話。
地走の性格はこんな感じに仕上がりました。冷酷さとバカさが混在する感じです。
やはり私にはダーク的性格は書きずらいようです。
ともあれ次回はなんとか決着付けますので楽しみにしていただけると嬉しいです。
ではレス返しです、といきたいところですが本日はひまり本誌の入荷日…。
入荷予定時間まであと30分です。
というわけで私はこれから旅に出ます。レス返しは次回という事でどうかご容赦を…(礼)

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