地獄の買い物騒動を終えた横島達は次の日の仕事もなんとか終わらせ今日は月曜日、
「…………んぁ?」
目を覚ました横島が最初に見たのはいつもの自分の部屋の天井、鼻をくすぐるみそ汁の香りを感じながらまどろんでいた。
「若殿〜朝餉ができたぞ!早く顔洗って卓につかぬか!」
緋鞠に呼ばれてようやくはっきり目を覚ますと横島は顔を洗いに行く。
今日は学校もあるし、のんびりはしていられない。
「よし!準備万端!今日も一日頑張っていきまっしょい!」
パンっと頬を叩いて気合いを入れた横島は食卓に向かっていった。
「……遅い…なの」
開口一番に文句を言われた……朝の挨拶はおはようだよ静水久さん…?
「わ、わりぃ。」
「まぁ良いではないか、若殿、今日の朝餉は私が作ったのじゃ!心して食すが良い」
見てみると白いご飯にチンジャオロース、たくあん、かまぼこにハンバーグ、イカの刺身と一貫性が全くない。
うん間違いなく緋鞠の料理だ。というかさっきのみそ汁の匂いは気のせいだったのだろうか……。
「……このネコ、料理のセンス皆無…なの」
静水久が冷や汗を垂らしながらポツリと感想を漏らす。
「失礼な奴じゃな!これのどこがダメじゃというのじゃ!?どれも美味そうにできておろう!?」
確かにどれも美味そうだが朝食にするには重いのやら明らかに食い合わせの悪いのやらがいかんともしがたい……。
あれだけ食い合わせについて語ったのに……。
しかし食べない訳にもいかずそれぞれ箸を付ける。なかなか胃にくる朝食を半ばほど食べた頃に横島はフとした疑問を静水久に問う。
「うぷ…そういや今日は学校に行くけど静水久も来るのか?」
基本的に妖脈は術者が対象に霊力を供給、変換するだけで対象の行動を束縛するといった効能はない。
つまり静水久や緋鞠は特別横島と行動を共にする必要はないのだ。
緋鞠は野井原の緋剣として横島を護るために一緒にいるが静水久にそんな気はないだろうと思ったための質問だ。
「……行く…なの」
「え゛?なんで…?」
「……私もお前の側にいる…そう言ったの…」
そういやそんな事言ってたっけ……。
まぁ良いや、あの理事長なら話せばわかってくれるだろう。
「そっか、それじゃ今から行くから準備しろよ、それと学校では問題起こさないでくれ、頼むから」
「……善処する…なのー」
という訳で三人は学校に向かって歩いていく。
「うぃーす」
「おはようなのじゃ」
「おはようございます野井原さん!!今日もまた一段とお美しい!」
横島と緋鞠が教室のドアを開けると友人Aこと、地走友也(ぢばしりともや)が駆け寄ってくる。
「うむ、久しいな」
「おいこら、俺は無視かよ友人A」
「うっせ!誰が友人Aだ、俺は男なんぞに挨拶してやるほど酔狂じゃねーんだよ」
「……横島が二人…なの」
「うぉ!静水久、まだ出てきちゃダメだって!」
毎朝恒例となりつつある二人のやり取りを見て静水久がぽつりと漏らす。
それを見たクラスメイツは驚愕に目を見開いた。
「横島よ……」
「な…なんだよ?」
「「「どこから拉致ってきたてめぇーーーッ!」」」
「俺は無実だーーーッ!!!!静水久は妖怪で俺にくっついてきただけだ!」
「なにが無実だ!野井原さんに続いてこんなロリっ娘まで毒牙にかけようというのか貴様は!うらやまっ……もとい天が許してもこの六道学園男子一同が許さ〜ん!」
横島が男たちの尋問というか拷問に耐えている間に緋鞠が女子生徒たちに静水久について説明してくれた。
「へぇ、それじゃあ静水久さんはみずちですのね?」
「うむ、何を血迷って学校なんぞについてきたかは知らぬがな」
説明を終えた緋鞠がなかなか手厳しい事を言っている頃には静水久は女子達や横島の拷問から抜けてきた一部の男子に囲まれて可愛い〜とか言われていた。
本人はすごーくイヤそうだが律儀に横島との約束を守って大人しくしている。
徐々に横島がただの塊に変わり始める頃には静水久の周りにはクラスのほぼ全員が集結してきてあれやこれやの質問責めにかけ始める。
どこから来たの?とか何が好きなの?といった定番の質問から好みのタイプは?などの突っ込んだ質問も見られ、そろそろ静水久はイラつきだしているようだ。止めないとやばいかもしれない…。
だがここには空気の読めない奴No.1の存在がいた。
「よろしく静水久ちゃん!俺の名前は地走友也!六道霊能科が誇るイケメンボーイさ!」
そのツッコミ所だらけの自己紹介に始めて静水久が顔を上げた。
地走…それは静水久の一族を滅ぼした鬼斬り役の名前と同じだ…。霊能力を有するこんな珍しい名字の奴がそうそういるとは思えない、人違いではないだろう。
初見で取り乱さなかったのはさすがというべきか静水久は冷静にこれからの戦法を考える。
ここでこいつの首を掻き斬りたいのは山々だが静水久は正直に言うと地走家に恐怖感を抱いていた。
あの時の地走家の者の眼は完全に狂気に染まっていた。怖い…ここでこいつに襲い掛かる事はできない…。ならばなんとか油断を誘い、隙を突くしかない。
「……地走…よろしく…なの」
「おぉ!?なんか好感触!良かったら俺が学校を案内するよ!」
静水久の返事に意外な手応えを感じた地走は調子に乗ってさらに押す。
どうやら無表情の奥に含むものには気付いていないようだ…。
「………それは楽しみ…なの」
この段階になってようやく緋鞠も横島も静水久の様子がおかしいのに気付く。
静水久の性格から考えてこうも簡単に男からの誘いを簡単に受けるとは思えない。もちろん地走に静水久が一目惚れ〜なんて可能性は最初から除外だ。
となると何か裏があるに違いない。
そこで横島は考える。
静水久…友也…地走友也…ん?地走友也…?
「あ〜〜〜!!お前地走友也!!!」
「は?今更なに言ってんだ?」
いきなりフルネームを叫ばれた地走は戸惑いの声をあげる。
しかしそれ以上の事は静水久が後ろから横島の口を押さえ付けたため、何も言わせてもらえない。
仕方ないので緋鞠も交えてひそひそ話し開始だ。
『ぷはッ!いきなり何すんだよ静水久!』
『……お前はせっかく私が敵意を出さずに接してたのを無駄にする気…なの!?』
『敵意って…やっぱやる気満々なのか?』
『…当たり前なの!篭絡して油断させたあとに八つ裂きにしてやる…なの』
そう言うと知ってか知らずか静水久から殺意の篭った妖気がうっすらと立ち上る。
『じゃがそんな事をすればお主はすぐにお尋ね者じゃ、最悪私達が退治せざるを得なくなるのじゃぞ?』
人に害を及ぼす怪異を退治するのが現代のGSだ。害のない妖怪には手を出さないが、どんな理由があるにしても人を殺すような妖怪は当然退治の対象になる。それを黙って見過ごすのはGS助手としても友人としても見過ごす事はできない。
『そうだな、それに友也は話しに聞くほど悪い奴じゃないぞ?』
『……そんなの演技かもしれない…なの』
『うむ、一理あるのう。やはりまずは相手を探るのを優先すべきじゃな』
こうして当面の作戦は決定した。
そのあとは騒々しく授業を受けて約束の学校案内をしてもらう昼休みを迎える。
「…野井原さんはともかくなんでお前までついて来るんだよ……」
「静水久を一人でお前のような変態のとこに行かせる訳ねーだろ」
ここにいるのは地走と横島と緋鞠と静水久の四人。当然横島達の目的は地走に探りを入れる事だ。
「誰が変態だ!?まぁ良いやこんな奴は放っといて三人で楽しくいこうね静水久ちゃん、野井原さん」
ちゃん付けで呼ばれ眉がピクっと動いた静水久だがそこはグっと堪えて素直に地走についていく。
「……お前はなんでGSになりたい…なの?」
案内をされつつとりあえず静水久は無難な探りとして質問を投げかける。
「ん〜?うちは代々退魔師の家系だからさ俺にも一応霊能があったんだ。それでだよ」
「へ〜初耳だな、有名な家系なのか?」
「いやそうでもないらしいぞ、俺もあんま知らないんだ」
代々退魔の家系……やはり間違いなさそうだ。
でも友也本人は横島の言う通りそれほど悪い奴ではなさそうだ。
やはり地走家というだけで怨むのは間違いだったのかもしれない…。
静水久がそう思い始めた頃にどうやら案内の最後の場所に到着したようだ。
「なんだここ?」
周りを見渡してみると薄暗いが広く、何もない場所だった。室内なのにまるで外のようで。
こんな所は六道学園にはない…。さっきまで廊下をあるいていたのにいつの間にこんな所に着いたのか…。
驚いて三人が地走の方を向くと今までのやんちゃな高校生的な雰囲気は一変して冷酷な笑みを浮かべた地走が立っていた。
その眼は静水久が知っている地走家の者と同じく狂気に染まっている。
「なんのつもりじゃ、友也」
「俺の特殊能力さ、一つの空間に別の空間を造る、ここに入ったら外からは絶対に干渉できないんだ。まぁごくごく狭い空間にしか造れないんだけどな」
「なぜこんな事をするのかと聞いておるのじゃ」
「…どうも俺の正体がバレちまったようだからな、ここで横島を殺させてもらおうと思って」
「な、なんで俺がお前に殺される事になるんだよ!?」
後ろで震えている静水久を庇いながら横島が問い掛ける。
「あ?お前何も知らないんだな。元々俺はお前を殺すためにこの学校に来たんだぜ?横島家は地走家の邪魔になる家系らしいからさ」
そう言って地走は自分の武器である折りたたみ式の巨大な青龍刀を取り出す。
その青龍刀を見た静水久はさらに怯えて奮えが増す。
「そっちの静水久ちゃんは俺の先祖かなんかを知ってそうだな。俺もその血をばっちり引いてるんだ、たっぷりなぶり殺しにしてやるよ」
「ふむ、どうやら話し通り最低な輩のようじゃな。じゃが若殿に手を出すようなら私が黙っておらぬ!」
そう言って緋鞠もネコミミとしっぽと安綱を出して戦闘体制を整える。
「緋鞠、妖脈は良いのか?」
「あれは少々リスクが高いのでな、まだ温存じゃ」
「そっか…なら怪我しないうちに言ってくれよ」
「承知!」
とぅーびーこんてぃにゅー
あとがき
こんにちはハルにゃんです。
突然ですがついにパソコンを購入しました!!
vistaです!”こあつーでゅお”(よくわかっていない)です!
そんなわけでだいぶ間が空いてしまいましたが18話目、ようやく完成です。
ですがこれは携帯からの投稿です…無線LANのやり方がわからず未だにネットができない…。仕方ないのでゲームやりまくりの2週間でした…。
今回は地走家との対決のさわりの部分です、次回からは戦闘開始。
地走横島と対局の性格なので上手く書けるか心配です…。
ともあれ次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
ではレス返しです。
○スケベビッチ・オンナスキー様
レスありがとうございます。
>一巻で静水久の名前、出てますよ
あ〜そういえば妖怪さんが言ってましたね、私とした事が…。
今回から学校編、なんとか友也の性格とかを上手く出していきたいです。
そしてALMAがおもしろすぎて止まりません…助けてほしいです…。
○Iw様
レスありがとうございます。
>妖脈がどんどん過激に
きっとこれからもっと過激になっていきます。というか私の中で18禁を書きたい衝動がフツフツと…これはやばい兆候です。
私もボンキュッボンが好きなのですがなんか静水久には萌えてしまう…。
これは新たなる世界への目覚めなのか静水久が例外なのか…後者だと信じたいです…。
○ういっす様
レスありがとうございます。
あ〜どんどんそちらの方向に流されていく自分が怖いです…。
○HAPPYEND至上主義者様
レスありがとうございます。
>予想通りの着せ替え対決でしたが、ここまでとは
なんか皆して暴走かましてくれました…。
コスプレのセレクトは完全に自分の趣味でした…全部わかりましたか?。静水久の水○奈々はあまり知らないのですがどんな服が似合うかな〜と職場で考えていた時に友人からメールであの娘の画像が送られてきて”これだ!!”と…
ともあれ次回からは戦闘開始です、応援していただけたら嬉しいです。
○山の影様
レスありがとうございます。
>他にも元幽霊なら犬神とかもありますしね。
なるほど、考えてみたら人間から妖怪化したのも結構ありますからね〜。その辺もう少し考えてみます。
>作中の服って普通のデパートにはありませんって(汗)
きっと店長の趣味に違いありません!!(爆)なんかキルティーちゃんとかあるくらいですからね(きっと知ってる人はあまりいない)…。
次回はもっと早く書けるよう努力しますので応援していただけると嬉しいです。
○レンジ様
レスありがとうございます。
>コスプレキャラ半分位しか分かりませんした!
それで良いのです、裸ブレザーとかわかってしまったらもう戻れない世界なのです…。最近二期が始まったとかは全然ないですじょ?
>ひまり、静水久達と関係を持つ日がくるのか
きっとそう遠くない未来に…。
では次回もがんばりますので応援していただけると嬉しいです。
○シン様
レスありがとうございます。
そっか〜美味しいんだ…今度食べてみます。というか普通にお菓子のベビースターラーメンが入ってるもんだと思っていました…。
それではまた次回にお会いできたら幸いです。
今度は本編の感想なども書いてくださると嬉しいです。
○冬様
レスありがとうございます。
>妖脈を通じて失神しちゃうんなら戦力ならねーんじゃ?
その辺はご都合主義…ゲフンゲフン
あの時は挑発が過ぎたという事ですよきっと!
続き遅れてしまって申し訳ないです。次回はもっと早く書きますのでお見捨てなきようお願いしますです。
ちなみにこの前某アニメショップに行ったらひまりの再入荷版が入っていました。
○February様
レスありがとうございます。
>静水久の活躍(?)を見てつくづく思う・・・
小学生の頃は着替えまで同じ部屋だったりしたんですよね…ホントに惜しい事をしました…(え
>大人の魅力は「ガーターベルト」子供の魅力は「ニーソックス」
なるほどニーソか…コスプレ道、奥が深い…。私的にはプリーツスカートこそが王道だと思ってました。
>旧スク水と新スク水の違い
私はよくわからないのですが友人曰く上と下が繋がってないのが旧スク水だとか…。
最後に誤字指摘ありがとうございました。訂正しておきました。
○hiro様
レスありがとうございます。
>このままだとタイトル変えた方がよくない?
ご指摘ありがとうございます。
一応私は”妖脈によって妖を使役する”というニュアンスでこのタイトルを付けたんですがやっぱり変でしょうか?
あまりにもそういう意見が多いようでしたらタイトル変更も考えてみる事にします。
ではレス返し終了です。
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