恐怖のお好み焼き屋”まんぼう2号店”から出た横島達は最後の目的地である婦人服コーナーへと向かっていく。
まんぼうの店員さんにしこたま殴られた横島は最初こそ頭から血を流し、
足を引きずってフラフラしながら歩いていたがエスカレーターに乗る頃には完全回復している。
度重なる激務と緋鞠のしごきが彼を鍛えたのだろう…たぶん。
「くそー!凶器なんか使いやがってあの姉ちゃん!今度会ったら絶対こねくりまわしたるからなーッ!」
「自業自得じゃ!少しは懲りぬか!」
「……これが現代の鬼斬り役の姿…なの?」
綺麗な女を見ると条件反射で飛び掛かる。
その後は情けないほどに殴られ、罵倒され、泣きわめく。
これが静水久の一族を滅ぼした鬼斬り役地走家と同じ十二家の末裔かと思うと怒りを通り越して笑えてくるから不思議だ。
「……まぁ異性に弱い方が扱いやすくて助かる…なのー」
「はっ!若殿が異性に弱いのは確かじゃがお主のようなちんちくりんに劣情を抱くほど倒錯してはおらぬわ!そうじゃな?若殿!」
「そこで俺にフるか!?」
「…ムカ!…なの、それなら確かめてやるの…次の服選び…より横島忠夫をその気にさせるのはどっちか…勝負を申し込んでやる…なの!」
「ちょ、何言ってんだ!?」
静水久はどこから取り出したのか白い手袋をズビシ!っと緋鞠に投げ付ける。英国式とはなかなか知識が豊富なようだ……。
「ほほぅ、この私に勝負を挑むか…良かろう、その勝負受けて立つ!せいぜい自分の無力さを思い知るが良いのじゃ!!」
「待てぃ!勝手に決めんなぁ!」
「……お前こそ真の魅力というものを思い知るが良い…なのー!!」
「だーかーらー、勝手に決めるなぁぁぁ!!」
いつの間にか自分が勝敗を決める重役にされてしまい必死に断ろうとする横島だが、緋鞠と静水久は軽やかに無視して額を擦り合わさんばかりに睨み合うとお互いクククク……。と不気味な笑みを浮かべる。
そんなこんなでやってきました決戦の場所、婦人服コーナー!
両者共に気合いはじゅうぶんな模様。
果たして勝つのは酌熱の猫姫緋鞠か、
はたまた漆黒の水女神静水久か!
この勝負目が放せません!
それでは解説の横島さん、コメントをどうぞ…なのー。
するとカメラ(?)が横島を映す。
「そうですねぇ、緋鞠選手のスタイルは相当審判(俺)の好みに合いますからやや有利かと思われます、しかし静水久選手の攻めは的確に急所をえぐってくるので正直どちらが勝つのか予想も……って何を言わせるんじゃい!ほどけ〜〜!俺は絶対にやらんぞぉ!!」
静水久のアナウンサー風のパスに大阪人の血か、何気に本音な解説を披露する横島だが、我に返ると縄で椅子に縛られている現状を把握して暴れだす。
「若殿は審判役じゃ、そこに座って見ておるだけで良い」
「見てるだけ?」
審判なのに見てるだけで良いとはどういう事だろう?
「……お前の判定なんて顔と霊力を見ればすぐにわかる…なの」
そういう事か……なまじ繋がっている二人には例え妖脈を開放しなくても霊力の変化が伝わるのだろう…これ以上ない判定規準だ。
さらに顔を見れば普通の人でも一目瞭然だろうし…。
「しかーし!俺はそんな甘いもんとちゃうぞ!極限まで耐えて耐えて耐えきってやる!」
ここで緋鞠と静水久に勝敗などつけようものなら明日からお互い気まずいだろう。
こうなったらどちらにも欲情せずに耐えきるしか道は残されていないのだ。
人間に呼吸をするなと言っているくらい無謀に思えるが……。
横島が椅子の上で明鏡止水…明鏡止水…と唸りながら二人が着替えるのを待っているとついにトップバッターが現れる。
最初はどっちだ?どっちにしても初撃は耐え切る自信がある!さぁどっからでもかかってこい!
シャー
「グフッ!!!」
試着室のカーテンが開いた瞬間に横島は吐血した。
どちらかなら耐えられた…だがまさか二人とも一緒に出てくるとは思わなかった…しかも……。
「若殿!この問題を解いてみるのじゃ。なに!?できぬじゃと?放課後個人授業じゃ!たっぷり夜中まで搾り取ってくれる!!」
緋鞠はピシっとしたスーツを着こなし、弾けんばかりの胸の隆起を少し小さめのワイシャツで抑えている、
手にはなんかあの黒板とかを指す棒(?)を持ち、極め付けにメガネ着用だ。
女教師である……搾り取ってくれる…何を?と聞きたいが聞いたらもう戻ってくる事ができなくなりそうなので聞けない…聞けないよ!!!
「……お兄ちゃん…静水久…お兄ちゃんのためならどんな事だって…なの」
こちらは先程の緋鞠とはがらりと変わりプリーツスカートに黄色いリボンを付けて赤っぽいベストを羽織っている。
全体的に見ると小学六年生から中学一年といった感じの雰囲気だ。
それが普段の静水久とも合間って背伸びしたいお年頃感を出している。
なによりさっきのセリフ、一人称:名前はポイント高い!ポイント高いぞぉぉ!ってゆーかどんな事でもって…どんな事でも!?
そんな訳で緋鞠と静水久の初撃は見事横島のハートに的中した。
「ふむ、若殿の反応はだいたい把握できたかのう?」
「……これくらいが平均とする…なの」
どうやら横島の反応を伺うための同時登場だったらしい。つまり、これからが本場だ…。
「も、もう勘弁してください…」
当然横島の意見は却下され、二人はいそいそと服選びに没頭する。
椅子に縛られながら矢吹くんのように真っ白になっている横島はこれ以上醜態は見せられんとばかりに明鏡止水を唱え始めるが、無駄だろう…完全に緋鞠達のペースだ…。
「……横島忠夫、覚悟は良いか?…なの」
しばらくすると閉じられている更衣室のカーテンの向こうからいつだったか横島が言った言葉をそのままに静水久から声がかけられた…。
「一度は不覚をとったがこの横島忠夫!二度も同じ手を食うほど甘くないぜ!どっからでも来い!」
鼻息を荒くしているあたりがすでに明鏡止水ではない…。
しかしそんな事にはお構いなしに静水久はカーテンを開く……。
「ぶはぁッ!!?」
「……お兄ちゃんのワイシャツ大きいの…やっぱり男の人なんだね…なの」
静水久が次に選んだのはワイシャツ、それは良いのだがワイシャツ以外何も身につけていない……。
しかも静水久のサイズよりも一回り…いや二回りほど大きいワイシャツだ。
あまった袖をキュっと握る姿はその手の趣味のお兄さんならお持ち帰り確定であろう。
何も履いていない下の方は静水久の自慢のみずみずしい脚がよく見えている。
ワイシャツが調度スカートのような役目を果たしているので可愛さも抜群だ…。
横島の霊力はギュンギュン増している。
「も…桃…」
ワイシャツを翻して次の服選びに向かっていく静水久の後ろ姿を見た時にめくれたワイシャツの下が一瞬見えた……。
横島が何事か呟いたと同時にさらに霊力が増したりしたが深くは追求しないでおこう…。
だが乙女の闘いは始まったばかり、次は緋鞠の番だ。
緋鞠が入っていた試着室のカーテンがサーっと開かれ、そこにいたのは…。
「さぁ若殿…もとい患者殿、お注射の時間じゃ。横になって腕を出すのじゃ」
緋鞠は薄いピンク色のナース服。
二つほどついている上着のボタンは、はち切れんばかりで緋鞠の魅力ポイントである胸元が生々しく強調されている。普段は和服ばかりの緋鞠だからより新鮮に感じるのは仕方ないだらう…。
スカートは膝上20僂らいだろうか?かなり短い、…この見えそうで見えない感じがまさに…
「……絶・対・領・域!!!!!」
横島は鼻血を吹き出しながら叫ぶ。
もはや明鏡止水だの不動の精神だのといった建前は頭からすっぽり抜け落ちているに違いない。
よく考えたらこのまま決着を付けずにいると二人の喧嘩が終わる事はないんじゃないか?
それならいっそどちらかを勝たせるべきでわ?うん、なんかそんな気がしてきた、いやそうに違いない!
「う…うひゃ〜〜ひゃひゃひゃ!」
「わ、若殿!?」
「……壊れた…なの」
「壊れとらん!こーなったらもーとことん付き合ったるどー!!!次はどっちだ!?」
何かがフッ切れたように椅子に縛られながらも、目を充血させてネクストバッターを呼ぶ横島に緋鞠も静水久も微妙に引いている。
「よ、よくわからぬが若殿もノッてきたようじゃな…」
「……望む所なの…次は私の番…なの」
そう行って静水久は選んできた服を持ち、試着室へと入っていく。
バサー!
しばらくしてカーテンが開けられた。
そこにいたのは青黒く、ところどころヒラヒラのついた所謂ゴスロリ服を身に纏い、オレンジ色の小さな日傘を肩にちょこんと当ててさしている静水久だった。
「……兄や…静水久寂しい…なのー」
「水○奈々〜〜〜〜!!!!!」
横島が謎の人名を叫ぶ。
どうやら静水久はとことん横島をそっちの趣味に目覚めさせるつもりらしい…。
「くっ、おのれこしゃくな!!次は私じゃ!見ておれ若殿!!」
すでに魂が頭の上をうろうろしている横島に向かって緋鞠は啖呵を切ると試着室へ駆け込んでいく。
シャー!
「闘士なんかみんな死ねば良いのじゃ……」
「フゥォォォォ!!!!」
試着室から出てきた緋鞠が着ていたのは茶色系のブレザーにスカート、なんてことはない、普通の制服姿だが特筆すべきはブレザーの下に何も着ていない事だろうか…ご丁寧に下着すら付けてない…新たな時代を切り開くファッション、裸ブレザーだ。厚手のブレザーを押し上げる胸と谷間は全男子の心をわしづかみにする事間違いなし。
これで緑色のカツラでツインテールだったら完璧だろう…。
その後もコスプレ合戦は止まらない。
『……サイキック…超カカト落とし…なのー!』
「女王〜〜〜〜!!!!」
『千紡ぐ夜の果てに廻る命、お主はなにを望み、願うのじゃ…?』
「蘭〜〜〜〜〜!!!ってかぶってる!!それかぶってから!!!」
緋鞠と静水久、それぞれ10種類ほどの服を披露するといよいよ判定の時。
二人は最後に着た服のまま、息も絶え絶えで未だに縛られている横島のところへ、ズンズンと向かっていく。
「さぁ若殿、私とみずち、どっちが良かったか言うのじゃ!!」
緋鞠は自分のイメージである赤を基調とした足首まであるチャイナドレス。
龍の刺繍があしらえてある。
スリットも過激で横島でなくとも生唾ものだ。
「……当然私なの。正直に感じた事を言え…なの」
静水久はスクール水着、しかしただのスク水ではない。
始めて会った時は黒のスク水だったが今回は白!ホワイトなスク水だ。しかもみずちの能力…というか特徴である常にずぶ濡れ状態を上手くコントロールして少し濡れる程度にしている。
白いスク水が濡れるとどうなるか?
聡明な皆様ならもうお分かりだろう。
静水久の桜色の突起がうっすら透けているのだ。これぞ白スク水マジック!!!
「「さぁさぁさぁ、どっちじゃ(なの)!?」」
「あぅあぅ……」
どっちかなんて決められない…どっちも魅力的すぎて…
ってゆーか緋鞠のこの胸はどうだ!?嗚呼、埋まりたい掴みたい挟まりたい……。あの胸を自由にできるなら俺は……。
静水久は静水久でこの絶妙な透け具合!!
これは誘ってるんだろ!?誘ってるんだよな!?
いや待て、俺はロリじゃない!ロリじゃないんだがなんだこの高揚感は!?
いかん〜!これ以上近づかれると理性がッ!
そんな切羽詰まった横島の心の声も二人には届かず、ズンズンと近づいていく。
「……まだ迷ってるのか…なの?」
「男らしくビシっと決めぬか!」
「し……」
「…私なの!」」
「んにゃ!若殿!?」
あわや静水久に確定かと思われたその時、突然緋鞠と静水久の身体に異変が起こる。妙にむず痒いような、くすぐったいようなこの感覚は覚えがある…。
「まっ、まさかこの感覚は!?」
「……妖脈…なの!?」
「辛抱たまら〜〜〜〜〜ん!!!」
横島を縛っていた縄が弾け飛ぶ。
どうやら溜まりに溜まった霊力が妖脈へ漏れだしていたようだ。
そしてそれは横島の理性がぶっ飛んだ瞬間にまるで決壊したダムの水のように二人へ流れ込む。
「にゃぅ…!!」
「……水着なんか着るんじゃなかったの!擦れるのぉ……」
コスプレ大会をやるにあたって、あらかじめ人払いの結界を張っていたのは正解だった。見られたら通報ものだ…。
緋鞠のチャイナドレスは乱れに乱れて肩と下着が出ているし、静水久にいたっては桜色の突起がピンっと立って透けている。
二人とも内股で立っているのがやっとという感じだ。
「若殿、もう止めてくれ…これ以上はさすがに…」
「……前より凄い…なのぉ」
そんな二人の艶姿を見て、ついに横島は今までの人生最大の霊力を放出した。
「ふみゅぁぁ……!」
「………ッ!?」
その瞬間、静水久は激しく肩を震わせて突っ伏し、緋鞠は仰向け状態になり膝だけを上げて背筋を折れそうなくらい反らすと口元から涎れを垂らしてピクンピクンと痙攣しながら二人とも気を失ってしまった……。
その後理性が戻った横島は緋鞠と静水久を起こして無難に今まで静水久が着ていたのと同じようなワンピースと下着の下だけを購入して未だにポヤンとしている二人に渡し、着替えてもらうと、そそくさと家に帰っていった。
こうして乙女の闘いはうやむやのうちに終結した。
フッ…闘いの後はいつも虚しいものさ……。
とぅーびーこんてぃにゅー
あとがき
こんばんはハルにゃんです……石はご勘弁を。
いや〜今回は堕ちましたね私……。なんか疲れてるのかな…?(言い訳
ともあれ次回は学校編です。いい加減あの娘を出さなきゃ。
ではレス返しです。
○February様
レスありがとうございます。
>美少女&美幼女とのデート・・・うらやましい・・・
今回はなんかデートすっ飛ばしてえらいことになっちゃいました…うらやましいですか?私はそろそろ嫉妬の白マスクを買いに行きたい気分です。
ともあれ次回は学校編です、地走共々楽しみにしていただけると嬉しいです。
○Iw様
レスありがとうございます。
>ニヤソな静水久のほうが好きみたい
私もこんな静水久が大好きです静水久を書くのが楽しくて楽しくて。
からかいが本気になった時が楽しみです。
ちなみに静水久は『しずく』と読みます、前回スケベビッチ・オンナスキー様がおっしゃってくれていますが一応私からも。
○スケベビッチ・オンナスキー様
レスありがとうございます。
>徹底して子供向け商品を勧める横島に乾杯
きっと今回のロリロリコスはこれへの意趣返しでしょう…なんかそんな気がしてきました。
やっぱり緋鞠にはあわあわしてるのが似合います、グルグルな目とか。
今回は静水久も暴走したので困りました、私が…
ともあれ次回の学校編、今度こそあの娘を…出せたら良いな〜
○レンジ様
レスありがとうございます。
>「しずく」って読むのか・・・。はじめて知った
そういえば1巻には静水久の名前出てませんでしたからね〜一応初登場時だけはふり仮名ふったんですが配慮が足りなかったです…反省します、どうかこれからもご贔屓にぃ。
店員さんの口説きシーンは構想段階ではなかったのですがどこからか毒電波が…。
○ういっす様
レスありがとうございます。
>おいで〜おいで〜
いや〜〜〜!!私をそっちの道に引きずり込まないで〜〜〜!(イ、肉、果、ハーレムと書かれた空間に引き込まれてしまうハルにゃん)
○シン様
レスありがとうございます。
>(ぺ・・・・・・)より抜粋
そうなんだ!?○月以外にもあるんだ!?(え、ソコ?)
それで肝心な質問なんですが…美味しいんですか…?
○冬様
レスありがとうございます。
>女性の買い物は常に波乱と激動をモタラス
そのとおりです波乱と激動ところにより桃色台風です!
いやもうホントダメですね私…。
>濡れるの必須なんすかね?
一応原作でもこのSSでもコントロールできる事にしています。
緋鞠の人間形態と考え方は一緒です。
>容赦の無いアルバイターさん
この人が気になる場合は『ALMA〜ずっとそばに〜』をやってみると良いですよ?18歳以上に方に限りますが……。
○山の影様
レスありがとうございます。
>横島、幸せの不幸状態
まさにそんな状態ですね〜まぁ今回は緋鞠と静水久がそんな感じでしたけど…。
>まだまだ続く買い物編
続いた先がこんなでした…もうホント大丈夫ですかね私…。
試験まではまだ先です、焦らずじっくり練っていきたいと思います。
○HAPPYEND至上主義者様
レスありがとうございます。
>この三人の掛け合いはなんだかんだで微笑ましい
その微笑みはどんな笑いに変わりましたか?苦笑いでしょうか?ニヤリ笑いでしょうか?(笑
>そこで冷静になれば
そこで冷静になれないところがうちの緋鞠なのです(爆
というわけでこれからも静水久や美神などにいじられ続けてもらいますよ〜〜〜!
>妖脈って魔族相手でも可能ですかね?
これは私も悩みましたが無理という事にしています。
まぁ人間の霊力じゃ神魔族の強化はできないだろうという程度の考えなんですがね?となると幽霊はどうなるのかという問題になるんですがこれも却下しておきました。あくまで妖怪限定です。ですが元人間の幽霊と最初から妖怪の場合チヤクラの構造が違うんじゃないかな〜?という程度の考えですので、
もしも他に良い設定が浮かんだら変えるかもしれません。
期待せず待っていてくれると嬉しいです。
ではレス返し終了です。
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