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▽レス始

「Fate/黒き刃を従えし者30(Fate+オリ)」

在処 (2007-03-07 23:52)
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「……ぅん」

昨日の夜より、ずっと眠っていたセイバーが目を覚ます。
目を覚ました、という事は。
つまりは消滅の危機は去ったという事。
未だ戦闘は出来ないだろうけど、少なくとも行動するには問題ない程度まで回復したのだろう。

「……おはよう」
「おはようございます、アーチャー」

今起きたばかりだと言うのに、もう頭ははっきりしているようだ。
……その寝起きの良さ、少し凛に分けない?
まぁ、無理な事はこの際どうでもいいとして。

「私は……そうか。
 ライダーと戦って宝具を使ったために」
「……うん」

何故一人で行ったのかとか。
二人とも戦闘に不安がある状態にしてどうするのか、とか。
言いたい事は山ほどある。
けど、それも今は棚の上に上げておこう。

「……倒したの?」
「はい。消滅を確認したわけではありませんが、聖剣の光の中で生きて居られるとは思えません」
「……そう」

確かに、聖剣が直撃したのなら、たとえA+に相当する天馬の疾走であっても消滅は免れないだろう。
……ただし、それは本来の威力を発揮できていれば、だ。

「……ライダーは、魔眼を使った?」
「えぇ。しかし私を石化させるほどではありませんでした」
「……そう」

なら、ライダーが生きている可能性もある訳か。
幾ら聖剣といえど、重圧を掛けられている状態ではB++。
それでも天馬の疾走を上回る事に代わりは無いけど、倒したかどうかは疑問が残る。
実際、差引き同ランクのダメージを私はライダーから受けているのだ。
私が生きている以上、ライダーが生きている可能性も無い訳でもない。
……けど。
ライダーのマスターは死んだ。
まぁ、何事にも想定外の事は起こるし、可能性だけは心に留めておこう。

「シロウはどうしました?」
「……桜を見てる」
「桜を?
 桜がどうかしたのですか?」
「……セイバーは会ってなかったの?」

なるほど、ならば。
間桐臓硯はセイバーが眠った後に士郎に接触した訳か。
何が目的だったのか?
今士郎が生きている以上、その殺害を目的とした訳ではないだろうし。

「……話が見えないのですが?」
「……正直、私もそれほど理解しては居ないけど」

そう前置きして、士郎が帰ってきてからの事をセイバーに伝える。

「……なるほど、そんな事が。
 それで、桜は大丈夫なのですか?」
「……体自体は」

ただ、その精神は少々拙い。
桜はその秘密を士郎にだけは知られたくなかったらしい。
己の体は穢れている、と。
そう桜は泣きながら語った。
……それに関して、私は何かを言える立場じゃない。
私にはそういう経験はないし、そういう経験をした人に対して掛けるべき言葉を私は持たない。
判る、などと。
口が裂けても言えはしない。
それに、私の言葉なんて、桜には届かない。
悔しいけど。
桜に言葉を届かせる事ができるのは、桜が長年想い続けた士郎と。
そして、桜の幸せを願い続けた姉。
リンだけなのだから。
だから、私達は私達の出来る事をするしかない。
……今は。
臓硯を倒し、聖杯戦争を終らせ。
桜や士郎、リンが笑顔で迎えられる明日を作る事。
私達がすべき事は、それだけ。

「……セイバー、起き抜けで悪いけど。
 今後どうするかについて話し合おう」
「判りました。
 シロウと凛はそれ処ではないようですし……」

そう。
やらねばならない事は多いのだ。
戦闘に不安があるのなら、せめて陣地を補強しなくてはならない。
攻め込まれ、何も出来ないまま敗退なんて事になる訳には行かないのだから。


Fate/黒き刃を従えし者


取り敢えず。
現状の確認が最優先だろう。

「……現状の確認。
 サーヴァントから」
「そうですね。
 まずライダーが脱落。
 シロウの話によればマスターも死んだらしいですね」
「……ライダーが死んだかどうかは判らない。
 不確定要素がある以上、可能性としては残すべき」
「……ありえないといいたい所ですが。
 確かに消滅を確認したわけではありませんからね。
 可能性だけは残しておきましょう」

……そういいながらも、セイバーはライダーの消滅を確信しているだろう。
それならそれでいい。
元々あるかもしれない程度なのだから。
それに。
それを言ったら不確定要素ばかりで作戦なんてあった物じゃない。

「……うん。
 ランサーは相変わらずマスター不明。
 あれ以来接触もないね」
「そうですね。
 バーサーカーとイリヤもあれ以来行動を起こしていませんし」
「……キャスターは柳洞寺。
 あそこに拠点を作られたのは痛いね。
 ただ……」
「恐らく出ては来ないでしょう。
 私の今の力を考えると攻め込むのは不可能ですね。
 暫くは魔力の回復に勤める事になるでしょう」

そうだろうね。

「ただ、私達の対魔力は強力です。
 キャスターなど力が戻れば物の数ではない」
「……」

それならいいけど。
今まで魔力を集めるだけで戦闘をしていないみたいだし。
正直な所私はバーサーカーよりキャスターの方が危険じゃないかと思う。
忘れるな。
私はライダーに読み合いで負けた。
キャスターが己の陣地の中で震える事しかできないのなら、それでいい。
その時はセイバーが言うように物の数ではないのだから。
ただ、問題は陣地の中から周囲を探り、何か良からぬ企みをしている場合。
……何をたくらんでいるかは知らないし、企んでいない方がいいに決まっているけど。
それでも可能性がない訳じゃない。
何をしていても対応できるように構えておくべきだろう。

「そしてやはりキャスターもマスター不明。
 学校関係者、という話ですが」
「……休校にしたからそっちから探るのは無理」
「でしょうね。
 そしてアサシンですが」
「……完全に不明。
 マスターとか真名とか以前に、あった事が無い。
 ……いや、話にすら聞いた事がない」
「はい。
 しかしここで迎え撃つのならたいした問題も無いでしょう。
 ここの結界は防御に関しては当てになりませんが、事そのようなモノに対しては強い。
 害意無く暗殺する事は、たとえアサシンとて不可能。
 ならば、忍び込んだところを叩けばいい」

確かに。
アサシンがこの家に忍び込めばすぐにも判るだろう。
しかし遠距離からの狙撃などを仕掛けられると話は変わる。
……なら、そういった物に対する備えがいる、か。

「それで、何か特別に変わった事は有りますか?」
「……柳洞寺には、近い内に行かないといけない」
「そうですね。
 倒せる敵は早い内に潰しておくに限る」

キャスターには引っかかる事もある。
柳洞寺に巣食っている事を、ランサーが知らないとは思えない。
ならば仕掛けるだろうけど、キャスターが敗退したという話は聞かない。
確かに柳洞寺は鉄壁の守りとなるだろうけど。
かといってランサーが中に到達できないとは思えない。
ランサーには強力な対魔力がある。
そしてそれは、リンに情報をもたらしたライダーも同じ。
……ならば、柳洞寺に入れさせないナニカがあるのだろう。
罠かも知れないし、もしくは門番でも立てているのかもしれない。
相手はキャスターだ。
召喚術を使うものであってもおかしくは無い。
……ならば。
最悪竜種が出てきても不思議は無い。
……その為には大量の魔力を必要とするだろうけど、それだけの魔力を溜め込んでいるのだから。

「……敵の事はこれくらいでいい。
 敵を知ったら、次は己」
「孫子ですか。
 敵を知り、己を知れば百戦危うからず、という奴ですね」

……知ってるなら、その突撃癖を如何にかしてほしい。
キャスターだって侮っていい相手じゃないはずなのに。
……とは言っても、それはそれで必要なのだ。
私は慎重になりすぎる。
強引に引っ張っていける人も、やはり必要なのだから。

「……セイバーは暫く戦闘不能。
 どの位かかる?」
「……一週間、は無理でしょう。
 宝具はもう、この戦争中は使えないと思った方がいい」
「……だろうね。
 私は戦闘自体は可能。
 でも『是、射殺す百頭』を使うのは暫く控えたい」

使えないことも無いけど、今の常態で使うと本当に暫く寝込みかねない。
そんな所を敵に襲われたらどうなるか……想像するまでも無い。
それでも、バーサーカーなどと戦うのならば必要なのだけど。

「と、なると防衛戦ですか。
 この屋敷の防御力はどの程度でしょう?」
「……結界は知っての通り。
 屋敷全体に強化を掛けて永続化してあるから、防御力だけならあるけど……
 サーヴァントに何処まで通用するかは判らない」
「……いつの間にそんな事を?」
「……別に今まで遊んでた訳じゃないから」

出来る事はしているんだ。
これでも。
家にいる時は何があってもいい様に『風王結界』で警戒していたし。
今だって『根源の風』で防壁を作っている。

「……あと、『根源の風』で気脈を調整したから、ある程度マナが集まるはず」
「なるほど。予想以上に体調の回復が早いと思ったらそういう事でしたか。
 ……完全に、『始源魔術』を扱えているようですね」
「……なんでか判らないけどね」

そう。
遠坂邸や柳洞寺ほどではないけど。
衛宮邸も霊脈の一つになっている。
とは言っても、地中を這う龍脈や川の流れによる流脈には干渉できないから、大気の流れ、気脈がここを通る様になっただけ。
それだけでもマナの収集は桁違いに増える。
……とは言え、それだけで体を維持できるほどには集まらないけど。
私に対しマナの供給を行うのなら、気脈を操るまでも無く『根源の風』が望めば与えてくれるけど。
今魔力が必要なのはセイバーなのだから、多少面倒でもこの程度の事はしておかなくてはならない。

「……この際、それは気にしないでおきましょう。
 貴女の異常性など今に始まった事ではないのですし」
「……」

異常ですか。
……異常だよね。
自分がサーヴァントの、英霊の枠からはみ出てる事くらい理解してる。
短時間の内に、これだけ変化がある英霊なんていないだろう。
……そもそも、英霊は完成した神秘なのだから。
私のように次々何かを覚えるなんて事、あってはならないはずだ。
……でも、そうなると私はなんだろう?
この体は確かに、エーテルで構成されているし。
今は無いとは言え、宝具も持っていた。
判らない。
ますます自分が判らない。
何かを知ればそれだけ自分から遠ざかっているようなきがする。

―――それを気にする余裕も、今の状況ではないのだけど。

「他に、何か確認すべき事はありますか?」
「……特には。
 屋敷に関してはこれ以上は士郎に確認するしかない」

士郎から許可が出れば。
結界に連動して動く限定礼装に屋敷自体を改造する手もある。
……流石にそれだけやると手間がかかるけど。
全力で改造すればヘタな要塞よりも強力な物にする自信はある。

「……まぁ、許可は出ないだろうけど」
「は?」
「……なんでもない」

それに、そんなものに改造してしまうには、この家は優しすぎる。
来るものを拒まず、出て行くものを祝福する。
ならば、この家のあり方を変えてしまうのは心苦しい。
多少の不安はあるとは言え、『根源の風』で警戒している以上、私には何が入ってきたかは判る。
ならば、襲ってきた敵に対して私のもてる全力で持って抗うしかないか。
……それが、この家に住む人たちを守る為だというのなら、私は喜んでこの力を振るおう。
なぜならここは、私を受け入れてくれた人たちが住む場所なのだから。


後書き
現状確認。
はっきり言って不安しかない状況ですが。
他称最優のサーヴァントと自称最強のサーヴァントがそろって戦闘不能って……
まぁ、防衛戦なら何とかなる程度の戦力は残っていますし。
それにアーチャーは体を動かすのは暫く不安があるけど戦えないわけじゃないし。
……まぁ、防衛戦になんてならないんですが。

……気付いてみればもう30話。
そろそろ大掛かりに話を動かすべきか……

レス返し。
<<シヴァやんさん
イリヤはアーチャーがやられた事知りませんし。
って言うか、無限増殖って?

<<遊恵さん
甘いです。
リンにとって(090)で始まろうと(0120)で始まろうと同じ数字の羅列以外の何者でもありません。
その電話番号が綺礼の連絡先だと知っているだけで、教会なのか携帯なのかは知らないんです。

ワカメを食べて……
んー、斜め下を行ってバグ爺の魔術回路が減少するとかどう?(笑

<<最上さん
あー、やっぱりそう思いました?
私も書いてて『なんかアーチャーみたいだ』とは思ったんです。
アーチャーの反応は士郎の影響です。
詳しくは桜編の最後、士郎対言峰参照。

あと、臓硯動いてますが、影が出てないので大した事はできません。
小次郎も健在で、ハサンはこのSSには不参加です。

<<はっさくさん
凛は治癒魔術使えません。
士郎の心臓治したのは、切り札の宝石の力で強引に作り直したらしいです。
凛の奥の手の10個で出来るかどうかは微妙……
なのでこの話では無理という事にしました。

<<九氏さん
書いてなかったけど、凛が言峰に電話してる時に布団敷いて寝かせてます。
あと、心配してないわけじゃなくて余裕がないんです。
確実に命の危険がある人と、峠を越えてる人の扱いの差かな……
まぁ、確かに淡白だったかも。

<<Nikesさん
お願いします……変な想像させないでください(泣

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