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▽レス始

「Fate/黒き刃を従えし者29(Fate+オリ)」

在処 (2007-03-07 01:04)
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案の定、と言おうか。
帰って来た時、セイバーの意識は無く、士郎に背負われていた。

「……士郎、セイバーは?」
「セイバーは寝てるだけで大丈夫だ。
 それどころじゃない!
 桜は居るか!?」
「え、えぇ……今は寝てるけど、居るわよ?」

セイバーが寝ているのは、恐らく魔力の消費を抑え、士郎からの供給で体が保てるようになるまで凌ぐ為だろう。
セイバーの事も気になるけど、士郎の様子がおかしいのが今は重要だろう。
一体何があったのか。

「そうか、無事なんだな……」
「如何したのよ? 桜になんかあったの……って、この家にいるんだからそっちで何かある訳……」
「あった」
「へ?」
「間桐臓硯って奴に会ったんだ。
 セイバーがライダーを倒した後に」
「間桐臓硯?
 それって聖杯作った御三家の当時の当主じゃない!
 まだ生きてたって言うの!?」

……なんだろう?
いきなり話においていかれたようなきがする。

「生きてた?
 そんな生易しいもんじゃない。
 アレは、人を喰らって体を作ってるんだ」
「……なんですって?」
「俺の目の前で慎二を食いやがった。
 もう用済みだとか勝手な事抜かしてな。
 ……その、奴が慎二を食ったのは、予め体の中に蟲を仕込んでいたらしい。
 もしかすると、桜にも……」
「―――っ!
 それって本当なの!?」
「こんな嘘付いてどうする!」

……そうか。
桜の体の中の不純物。
アレが『蟲』か。
神経と一体化してて見づらかったけど、確かにそういわれてみれば蟲に……
……あんな蟲いるか?
まぁ、魔術の産物だし形に如何こう言っても始まらないけど。
けど、私が見た限りでは今のところ休眠状態だった。
その気になれば起こす事ができる、という事か?

「……リン」
「何よ?」
「……多分、事実。
 前に気になって解析した事があったけど、その時は休眠してて何だか判らなかった。
 多分、アレが蟲」
「……っ」
「あの爺が言うには桜を食らうつもりは無いってことだけど、信用なんか出来ないしな。
 なぁ、如何にかできないか?」
「綺礼なら、取り除けるかも知れないけど……」
「あの似非神父か……」
「連れて行くまでに気付かれるわね。
 如何しよう?」

如何しよう、と言われても。
ふむ。
つまりは蟲に気付かれず、教会まで運ぶ事ができればいい訳か。

「あーもう!
 面倒くさい、アイツに借り作るのは嫌だけどこの際仕方ない。
 つれてくのが無理ならこっちに呼びつければいいわ!」
「……あぁ」

……確かに。
でも素直に来る様な人なんだろうか?
まぁ、その辺はリンに任せよう。


Fate/黒き刃を従えし者


「と、言うわけ。
 あんたに借り作ると何要求されるかわかんないからあんまり頼りたくないんだけどね……」
『ふん……相変わらず口の減らない弟子だ。
 一体誰に似たのやら……まぁいい。
 それにしても間桐臓硯か。
 あのバグ爺……とうに老衰したかと思っていたが未だ現役とはな。
 その実……既に人を喰らう悪鬼と化している様ではあるが……まぁいい』
「そんな奴如何でもいいわよ。
 で、来るの、来ないの?」
『かまわん。
 出向いてやろう。なに、私としてもあの蛆虫には反吐が出る。
 一泡付加せられると言うのなら喜んで出向こうではないか』
「……珍しいわね、あんたがそんなに嫌悪感を露にするなんて」
『なに、私とて木石で出来ている訳でもない。
 ならば嫌いなものもある、という事だ。
 ……今から向かう。
 衛宮の屋敷だったな』
「えぇ。場所は?」
『心配せずとも、聖杯戦争の参加者の居場所くらいは調べておいた。
 何も問題は無い』
「判ったわ。
 じゃあ、また後で」

……話がついたらしい。
正直、その神父を信じる気にはなれないのだけど。
……一度も会ったことがないはずなのにこの不信感……一体なんなんだろう?
こんな事、今まで一度も無かったのに。
……ランサーに信じるなと言われた事が原因だろうか?

「綺礼に話はつけたわ。
 そんなに時間かからないと思うけど……」

―――ピンポン

「「……まさか」」

リンと士郎が顔を見合わせる。
……まさか、ね。
今の今まで電話で話していた相手がもうここまで来ている、何てことはないだろう。
たとえ全力で走ったとしてもこの距離。
しかも橋が落ちているから遠回りをしなければならない訳で。
そんな訳はないだろう、と。

「ふむ。待たせたな」

そんな訳が在ったらしい。

「き、綺礼?
 何でこんなに早いのよ!?」
「ふむ。聞くが……
 リン、君は何処に電話を掛けたのだね?」
「それは勿論あんたの所よ?」
「いや、そうではなく……あぁ」

神父がリンの答えに面食らった表情をし、ついで納得。

「忘れていたが君は機械に関して原始人も驚くほど疎かったのだな。
 リン、君が電話をかけていたのは教会ではなく私の携帯電話だ」

神父が懐から黒い携帯電話を取り出す。
なるほど、確かにそれならこの短時間でここにたどり着いた理由も判る。

「って、すぐ近くに居たっていう事か?
 何でこんな時間にこんな何も無い場所に……って言うか、それならそうと言えば良かったじゃないか」
「衛宮士郎か。
 聞くが、何故私の行動を貴様に詮索されねばならない?
 そして後の答えだが―――突然現れた方が面白かろう」

……なんだろうこの人?
いろんな意味で規格外。
信用とか信頼とか、そういう言葉は絶対に出てこないけど。
疑い続けると疲れるだけのような気もする。

「まぁ、いい。
 桜を見てくれるんだろ?」
「そのつもりだ。
 どれほどの事ができるかは判らんがな。
 少なくとも貴様よりはまともな治療が出来るだろう」
「むっ」
「はいはい士郎、事実あんたじゃどうにも出来ないでしょ。
 綺礼もわざわざそういう言い回しする必要ないでしょ」
「む」
「ふむ。
 いや、すまないな。
 これは以外にからかい甲斐のある奴なのでな」

……まぁ、いいんだけど。

「それで、患者は何処だ?」
「……こっちよ」

リンが先導し、神父、士郎、私の順でついていく。
桜が眠っている事は私の解析で既に確かめてある。

「……ふむ。
 催眠の魔術が使えるものはいるか?」
「へ?
 なんで?」
「あの家の蟲はついた者の神経に住まう。
 普通の眠りでは微かな反応で蟲が起きてしまうのだ。
 よって気付かれる前に魔術で眠らせることが好ましい」
「そう……って言っても私使えないわよ」
「俺だって」
「初めから貴様には期待していない」
「む」
「喧嘩始めないでよ?」

……どうだろう?
出来る……かな?

「……覆う者よ、汝の中で一時の安らぎを与えよ」

……うん。
大丈夫。

「ほぅ……風を媒介とした催眠か。
 まずらしい術を使うのだな」
「あんた……そんな事も出来たのね」
「……うん」
「では始めるとしようか。
 ここで待っていろ」

神父が桜の部屋に入る。
…………

「待っていろ、と言ったはずだが?」
「…………」
「そんなに私が信用できないかね?
 まぁ、いいだろう。
 邪魔だけはするなよ」
「……ん」

追い出されるかと思ったけど。
そんな事も無く神父は執刀を開始した。

「娘」
「……何?」
「取った蟲を入れるモノを持って来い」
「……接続、現像(コネクト・ロード)
 ……これでいい?」
「……本当に珍しい術を使うな。
 風の催眠の次は投影魔術か」
「……いいの?」
「かまわん。
 強度は大丈夫なのだろうな?」
「……うん」
「ならばそこに置け」

私は作り出したタライを神父の横に置く。
神父はその間も次々と蟲を取り出す。
……正直に言うなら。
その手際に見ほれた。
私には出来ない治療の魔術。
それを鮮やかにこなすこの神父は。
その一点において、確実に尊敬に値する。
……その他の面では知らないけど。
次々と蟲が桜の体から切り離される。
ふと。
手早く動いていた神父の手が止まった。

「……如何したの?」
「心の臓に巣食っている。
 恐らくこれが司令塔だろうが……拙いな。
 この場所では無傷では取り出せぬ。
 娘、治癒の術は使えるか?」
「……無理」
「そうか……ならば仕方がないな。
 この蟲は眠らせておくしかあるまい。
 今取り除こうとすればこの娘を殺すほか無い」
「……判った」
「なに、そう悲観するものでもない。
 間桐に戻さねば再び蟲を植えられる事もあるまい。
 たとえ目覚めたとしても、今は何も出来はせんよ」

……信じていいのだろうか?
少なくとも、この神父は嘘だけは言わない。
直感だけど、それはわかる。
ただ、色々隠し事はするだろう。
しかしこの神父が無理だと言うのならそうなのだろう。

「……判った」
「うむ。
 ではこれで終了だ。
 心の臓に巣食っていたものを除く全てを摘出できた。
 これも貴様の協力があったからだ。
 神に代わって感謝しよう」
「……」

神父の台詞を聞き流し。
私は部屋を出る。

「……終った」
「そう。
 どうだった?
 へんな事はしていなかった?」
「……口の減らぬ弟子だ。
 それほど心配ならば自分でやったらどうなのだ」
「お生憎様。
 これでもあんたの治療魔術の腕は認めてるのよ。
 ……って、綺礼。
 あんた魔術刻印どうしたの!?」
「全て使った。
 それだけの術式だったのだ。
 当然だろう」
「―――っ」

あぁ、そうか。
蟲を取るたびにこの神父の腕から削られていった文字。
アレは魔術刻印か。
なら、本当にこの神父は桜を救おうとしたのか。
……それがどういう理由の元かは知らないけど。

「……ありがとう」
「む?」
「……思惑は知らないけど、桜を救ってくれたのは事実。
 だから、ありがとう」
「ふむ。
 別に感謝されるべき事でもないのだがね。
 私は引き受けた仕事をなしただけだ」
「いえ、そうね。
 ありがとう綺礼。
 一応礼は言っとくわ」
「……ありがとな。
 物凄く言いたくは無いが」
「……ほう。
 これは珍しい言葉を聞いたものだ。
 アーチャーよ。私の方こそ感謝しよう。
 凛と衛宮士郎から感謝されると言う奇跡にも似た事象を起こしてくれたのだからな」

そういって、にやりと嗤う神父。
明らかに善人の笑いじゃない。
絶対にこの人は敵だ。
……でも、何故だろう?
この人とは絶対に相容れない、なのに。
決定的に嫌う事もまた、私は出来ていない。

「それで、この蟲はどうするのだ?
 処分に困るようなら此方で引き受けてもかまわんのだが」
「任せるわ。
 そんなもの残していってもらっても困るもの」
「……そのタライ、一週間くらいで消える」
「そんなものどうしろって言うんだよ?」
「……ふむ。
 ならば私が引き受けよう。
 ではな。
 次はいずれかが脱落した時になるだろうが、頑張るといい」
「えぇ。あんたも気をつけなさいね。
 最近物騒みたいだから」

……まぁ、最近の物騒なのの代名詞は私達サーヴァントなのだけど。
あの神父ならサーヴァント相手でも戦いそうな気がする。
いや、戦えるかどうかは置いといて。
まぁ、これで桜の体は一安心かな。
……一匹残ってるから、完全に安心して良い訳じゃないけど。


後書き
慎二悲惨。
そして麻婆陳腐登場。
いいのか、あれ持ち帰らせて?
あと、心臓の刻印虫に関しては暫く眠っててもらいます。
それでも臓硯は動くけど。
核が寝てるのに体は動く……どういうつくりなんだ臓硯?

レス返し
<<樹海さん
真っ向勝負は無理でしょう。
そもそも戦闘訓練受けてないと思いますし。
まぁ、知名度はかなり高いので(ヘタすればアーサー王より)場合によっては更に強くなるかも?

人格的に言うなら、アーチャーは『アーチャー』です。
士郎でも黒セイバーでも英霊エミヤでもない『アーチャー』なんですよ。
……弓兵だからってギルガメッシュでもないですけど。
そもそも金ぴかは関係ないし。

<<九頭竜さん
うっかりですね。
今回は珍しく自分で回答出してます。
……凛より麻婆陳腐の方が判断が正確なのはご愛嬌。

<<最上さん
取り敢えず退場です。
これはあんまりかなと思わないでもなかったですが。
あっちの戦闘って結局セイバールートのあれと変わらないので。
まぁ、時間が出来たら書きます。
外伝で。
ワカメは……考えうる限り最悪の死に方してます。

アーチャーどうなるでしょうね?
まぁ、衛宮切嗣的正義の味方にならない事だけは確かですが。

<<とおりすがりさん
あ、魔術回路だった。

<<シヴァやんさん
緊張感……うーん確かに。
学校破壊は誰でも考えるでしょうね。
でも何処でも見た事ないのでやっちゃいました。
セイバーの件に関しては完全に創作です。
まぁ、聖杯求めて手に入りそうな所には顔を出すそうですから可能性は低くないと思いますけど。

<<遊恵さん
宝具Cで筋力A相当って言うのが公式ですが。
まぁ、単純に魔力に変えて、DなのでC以上B以下。
数値にするなら35くらいだろうと。
レス返しで長々とすみません。
かなり設定魔なもので如何してもやってしまうんです。
校門の……頑張って考えてください(おい

他の人の視点は後でやろうと思います。
まぁ、話の都合上途中でアーチャー視点終らざるを得ない事ですし。

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