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▽レス始

「.hack//intervention 第25話(.hackシリーズ+オリジナル)」

ジョヌ夫 (2007-03-05 00:24)
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「――――というわけで司を紅衣から助け出して欲しいの」

「ふ〜ん、それは別にオッケーなんだけどねぇ〜」

「何よ、アンタだって司に興味あるって言ってたじゃない」


Θサーバーのルートタウン……高山都市ドゥナ・ロリヤック。
その物陰で、とある重剣士と双剣士のやり取りが行われていた。

話題は勿論、紅衣に拘束された司を解放すること。
ミミルはベアと話し合った結果、他はともかく実力という点で楚良の力が必要と考えるようになる。
そこで嫌々ながらも彼をここに呼び出したというわけだ。


「う〜ん、それって今日しなきゃ駄目?」

「とにかく出来る限り早く。
 昴と連絡が取れない以上、アタシ達で何とかしないと」


ミミルはベアとの会合中に何度か昴にメールをしていた。

最近騎士団が昴の手を離れて暴走し始めていることを、ミミルやベアは知っていた。
彼女達は直接会った回数は少ないものの、1年以上前から昴と面識がある。
純粋に『The World』の平穏を望む昴の意向と過剰な程の誇りに侵されている騎士団の現状。
他の者達にも明らかなその差をミミル達は人一倍感じていたのだ。

だからこそ彼女は彼女なりに騎士団の仕事に追われているのかもしれない。
ミミル達はそう結論付けてそれ以上呼び出そうとせずに、他の方法を取ろうとする。

それが楚良を誘うことだった。

しかし何故かこんな時に限って彼は此方の頼みを渋っている。
以前から執拗に誘われていた冒険に出ることを了承してやったのにも関わらず。
更に巷で話題の司関連だから断るわけが無いとミミルは思っていたのだ。


「今日はだぁ〜いじな用事があるんだよねぇ〜」

「それって……リアルで?」

「うんにゃ、勿論こっちッ!」


腕を組み唸りながらピョンピョン飛び跳ねる楚良。
その表情は冗談などではなく本当に悩んでいる様子だ。

……まあ彼にしては、の話だが。


「……やっぱり今日は無理っぽい?」

「う〜ん、ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・なッ!」

「そっちの用事を遅らせることとかは?」


深い意味も持たせずに呟いたミミルの言葉に、楚良はピタリと動きを止める。

奇妙な体勢のまま動きを止めた彼を不審に思ったミミルがその顔を覗き込もうとして、


「おんもしれ〜ッ!!」「どぅわッ!?」


今まで聞いたことも無いような無邪気な喜びの声に、思わず尻餅をついてしまった。

再びあっちこっちを飛び回る楚良。
だが今度は悩むどころか見ている方まで爽快な気分にさせる笑顔だった。
その様子を見れば、ミミルでなくとも問題が解決したものと思うのが当然というもの。

無論、ミミルはそれを自分の願いが聞き届けられたと判断する。


「楚良、協力してくれるってことでいいんだよね?」

「条件聞いてくれるならおっけー」

「……一緒に冒険してあげるっつったじゃんッ!」


正直なところ、あまり楚良と関わりたくないミミル。
彼女からすれば、これ以上他の条件なんて聞きたくもなかったのだろう。

そんなミミルに対して楚良は彼女の想像を遥かに超えた条件を突きつける。


「司くん助けてあげる代わりに、説得しといてよ」

「説得?」

「そ、付いて来て欲しいところがあるからちゃんと待っててって」


楚良の言う場所がどこなのか見当も付かないミミルは、ただただ首を傾げるしかなかった。


.hack//intervention 『第25話 三角関係?』


「ふぅ……今更だけどやっぱり戻ってきたんだよな」


昨日はあの後いきなり現実世界に戻ってしまい、結局あれ以上のことはほとんど聞き出せなかった。
強いて挙げるなら、シェリルが自分自身や俺のPCについてを知ることになった理由。

彼女が言うには、モルガナから施されていたプロテクトが外れた時が切欠だそうだ。
与えられた削除能力の中に多少のモルガナの記憶みたいなものがあって、そこから自分のことやウィルスバグについて調べたらしい。
尤もそれも途切れ途切れでよく分からない部分も多かった為、途中からは独力で調べ上げたそうだが。

……全く、エリア間の移動すら出来なかった昔とは比べ物にならないな。


目が覚めた時、一瞬あれが一夜の夢に過ぎなかったのではと危惧する。
しかしシェリルの物言いから、おそらく大丈夫だろうと思うことにした。
というかそれ以上に、一刻も早く済ませなければならないことがあったのが大きい。

それは…………課題のレポート。

時間は夜の3時。何とか間に合ったものの、結構ギリギリだった。
この世界に来るようになって寝起きの時間が短縮されるようになったおかげかもしれない。
何せ現実でも夢でも精神は“起きて”るんだからな。


「トモアキ、おかえり〜」

「……ああ、ただいま」


現実世界で目を閉じ、再び開けて夢の世界へと誘われる。
その先には、何やらそこら辺のオブジェクトを組み立てているシェリルの姿があった。

このエリアには地面が無いせいか、自由に飛び跳ねたり宙に浮いたり出来る。
単に俺とシェリル限定の特権かもしれないけど、どちらかと言えば重力が限りなく軽い感じ。
止まろうと思えば止まれるし、辺りに浮かぶ物体に足をつけようと思えばつけられる。
自らの意思の通りに動ける、何とも不思議な空間なのだ。


「シェリル……何を作ってるんだ?」

「ん〜、出来てからのお楽しみ〜」


“お楽しみ”……なのか?

シェリルが作っている物が何なのか、俺には判別がつかない。
モンスターの鉤爪っぽい奴やら俺の背中の車輪についてる葉っぱみたいな奴やら。
他にも沢山あるが、とにかく色んな物が大砲みたいな馬鹿でかい筒を囲んでいた。
彼女はうんうん唸りながら、その物体に新しく付け加えたり外したりを繰り返している。

まだ作成中の段階だろうから敢えて聞かないでおいてやるか。
どうせ積み木遊びみたいなもんだろう。

俺は後に出来上がった物に驚愕することも知ることなく、そんな呑気な気分で見過ごすことにした。

それより昨日聞けなかった話や楚良がいつ来るのかを知りたかったしな。


「シェリル、そのままでいいから昨日の続きの話をしたいと思う」

「……うん、アタシも言わなきゃいけないことがあるから」

「言わなきゃいけないこと?
 ……それは俺に怒られるような内容か?」


何となく察した俺の言葉を肯定するかのように、ピクリと肩を揺らすシェリル。
更に彼女は動かしていた手を止め、静かに頷いた。

内容は今から明かされるのだろうが、それ以上に俺にとっては彼女の反応自体に驚かされた。

昔の彼女には明確な善悪の基準がなかった。
出会った当時、言葉も喋れなかったのだから、ある意味当然のことと言える。
俺はシェリルに言葉を教えるだけでなく、お仕置きを使って最低限のそれを学ばせたつもりだ。
……途中から八つ当たり的なものも含まれていた気もするが。

しかし今の彼女からは、そんな子供っぽい印象ではなく寧ろ俺と同年齢のような感じが伺える。
俺のいなかったこの1年が、彼女の精神を思っていた以上に成長させたのかもしれない。

シェリルの成長を見守ることが出来なかったのが少しだけ悲しい。
ま、どちらにしろ見た感じ良い方向へと成長したんだ。素直にそれを喜ぶとしようか。


「余程のことじゃない限り怒らないから安心しろ。
 悪いと思ってるんだったらそれだけで十分だ」

「トモアキ……有難う」

「で、何をしでかしたんだ?」

「えとね、1つ目は――――」


ここから始まる説明のうち、最初の2つは敢えて簡略化させて貰う。
ぶっちゃけ俺以外は知っていることだしな。

俺を助ける為とはいえ、抜け殻に“力”を与えてモンスター狩りや邪魔するPCの削除を行ってしまったこと。
もう1つはそのせいで“黒い幽霊少女と吸魂鬼”と呼ばれ、周りから完全に警戒されるようになってしまったこと。
これらに関してのお仕置きは、とりあえず後回しにする。

…………そう、あくまで“後回し”ね。
本来なら今すぐにでも今日寝る前に思いついたお仕置きを実行したくなってるが、今は我慢だ。
シェリルの懺悔が全て終わってから、まとめての方がいい。


それにまだシリアスモードだから。


「さっき3つあるって言ってたから残りは1つ。
 さあシェリル、さっさと喋っちまいなさい」

「と、トモアキ? やっぱり怒って「イイカラ」あぅ……うん。
 最後は多分1番怒られると思うから言いたくないんだけど……」

「……1番怒られる?」


というか前に挙げた2つを超えることって何だ?
あれらだけでも十分にお仕置きに値すると思うんだが……それ以上?

想像が付かずに首を傾げる俺に対して、シェリルは今まで以上に躊躇っている様子。
何故か彼女は自らの服のスカート部分を掴んだまま、それを微妙に上げ下げしている。

その姿からかなり不味いことをしたのだろうと勝手に察した俺は、静かに彼女が告げるのを待つことにした。

俯きながら腕を震わせ、黙り込むシェリル。
そこら辺のオブジェクトに腰掛けて、彼女の言葉を待つ俺。

元々俺達以外に音を出す者がいないこの空間は、水を打ったような沈黙に包まれる。

10分か、1時間か、はたまた10時間か。

そのどれにも思えるような静寂の中、


「あのね……」


意を決したらしいシェリルがようやく口を開いたその時だった。


「トモア「ばみょんッ!」……楚良?」


まるでそれを邪魔するかのようにして、楚良が姿を現したのは。


「まぁ〜ったく、アイツほんと使えねぇ〜ッ!」

「「……………………」」


誰がどう見ても不躾としか思えない乱入をしてきた、不機嫌そうな表情と口調の楚良。
一方の俺達は大事なところで話を中断させられてしまい、微妙に気まずい雰囲気の中に居た。


(こりゃあもう、頭を切り替えるしかないよなぁ……)


どことなく居心地が悪そうなシェリルを見れば、そう思うのも当然と言うものだ。
やっと決心して告げようとした言葉を第三者に止められてしまったのだから。

まあ楚良が居なくなってから聞けばいいことだな。


「始めまして、になるのかな……楚良。
 俺の名前は「トモアキ、でしょ?」……そうだ」

「幽霊ちゃんから色々聞いてるってば」

「幽霊ちゃんって……ああ、シェリルのことか」


シェリルは俺の言葉に頷く。
どうやら既に頭の切り替えは完了しているようだ。

よし、それじゃこっちも探り合いモードに切り替えなきゃな。

俺が1番に知るべきは、楚良がどの程度“世界”について掴んでいるか。
他にもどうやって俺達の居場所を知ったのか、何の目的で近づいたのか。

それらを上手く聞き出すことで現状をより詳しく知る必要がある。


「楚良、単刀直入に聞く。
 お前がシェリルに接触してきた理由は?」

「……ふ〜ん。アンタ、そっちのタイプなんだ」

「どういうことだ?」

「“お友達”タイプじゃなくて“取引相手”タイプってこと」


自らの双剣を弄くりながら、こっちに目を向けることなく応対する楚良。
言っていることの要領を得ないが、要は奴の中で俺を分類しているということだろう。
これは単なる勘だが、“心”で接するか“頭”で接するか、そういった定義によるものかもしれない。

俺自身、ハッキリ言って問題山積みの現状で奴と“お友達”になるつもりはない。
信用の置けない人間に心を許せる程、俺の心は広くないのだ。

……それだけの理由じゃないかもしれないけど。


「お前の行動についてある程度知っているからな」

「へぇ……やっぱ幽霊ちゃんの言った通りってわ・け」

「……シェリルが?」

「そ、アンタ知ってるんでしょ? ……“未来”を」

「…………何ですと?」 


楚良の言っていることは、ある意味正解である意味間違い。
正確に言えば、俺が知っているのは“未来”じゃなくて“予定”だからな。
尤もそれも1年経った現在ではうろ覚え状態。大まかな流れくらいが関の山だ。

俺は意識を楚良からシェリルへと移す。
視線を向けると同時に何故かビクビクし始める彼女だが、それに構っている余裕は無い。


「……シェリル」

「にゃ、にゃにッ!?」


ゆっくりと近づく俺と何故か震えたまま動こうとしないシェリル。
呂律が上手く回らないだけでなく、今の彼女は涙目で体を縮こまらせている。

まるで何かに恐怖しているかのように。
……って大層な言い回ししなくても原因は誰にでも分かる筈だ。


「楚良、シェリルからどんな話を聞いた?」

「ちょ「トモアキは今から1年後のことを知っているみたいだった、とか」」

「ふむふむ……それ以外には?」

「ま「司って名前をずっと前から知っていた、とかも」」

「はい、ありがとう」


うん、シェリル…………お仕置き強化決定ね。
今は楚良が居るから無理だけど、後でじっくりたっぷりと……な?
そういう気持ちを込めて、ビクついている彼女へ熱い視線を送っておくことにした。

あと何気に協力してくれた楚良にも一応米粒程度には感謝しておいてやろう。
どうせ本人は面白そうだから素直に答えただけだろうが。


さて、震えるシェリルは放置して探り合いを再開することにしようか。


「楚良、話を戻すがどうやってシェリルと接触した?」

「結局アンタは本当に未来を知ってんの?」

「……お前はどう思ってる?」

「そんなんあり得るわけな〜い。
 でも幽霊ちゃんは嘘付けそうにな〜い。
 だから色々試してみよっかなぁ〜」


まあ未来を知っているなんて言われて、そのまま鵜呑みにするような馬鹿じゃないよな。
というかそんな奴いる方が余程珍しい。戯言と切り捨てるのが定石。

一方で、シェリルと普通に話せば、彼女が嘘を付けるような奴でないことも分かる筈だ。
良い言い方をすれば純粋、悪い言い方をすれば単純。
誤魔化そうとする時もあるが、大抵の場合バレバレの仕草をするから丸分かりなのだ。
楚良もそこに気づいたのかもしれない。

どちらにせよ、資料を一度処分してしまった俺が覚えてることなんてたかが知れている。
これからのことを考えると、もう一度買い戻す必要が……必要が…………勿体無かったなぁ。
せっかく無理してまで集めた分も全部売り飛ばしちゃったってのに……。

確か合わせてひい、ふう、みい……あれ、お金に羽根がついちゃうよ?
あは、あはははは…………何だか前が水で霞んできちゃいましたよ?


「楚良……試すのはいいけどしばらく我慢して下さい」

「…………なぁ〜んか近寄りたくない感じ?」

「うん、もう何でもいいから」

「……………………」


楚良が呆れるのも無理ないけどさ、許して貰いたい。
大学生は大人であって大人じゃないんです。その分事情が複雑なんです。
……貧乏がどうとか、もっと働けとかは言わせません。

そしてさっき怖がらせたにも関わらず肩に手を置いて慰めてくれるシェリルよ。
君がこの1年間で悪い方向へ成長しなかったことを俺は素直に嬉しく思うぞ。

でもお仕置きは後でキッチリなッ!


「んじゃ楚良、俺の質問にも答えてくれ」

「幽霊ちゃんと一緒に転移しようとしてたアンタの抜け殻に掴まっただけ」

「……何でシェリルは気づかなかったんだ?」

「え〜と、移動する瞬間のことでどうしようもなかったの……」


よし、これで1つ目の疑問解消……って早ッ!
かといって特に他の人間からの情報を元にしたというわけでもなさそうだし、別にいいか。

あとは楚良がどれだけ“世界”について知っているか。
それと俺達に近づいた目的も聞くべきなんだが……正直今は難しいな。

奴曰く、俺は“取引相手”とのこと。
つまり等価交換が基本、それに多少の上乗せをするくらいでないといけない。
特に裏切る可能性がある楚良においては尚更だ。

しかし今の俺にはその為の情報が無い。
勿論ハッキリと覚えていることも結構あるんだが、それだけではまず足りない。

何せ情報を利用する相手が楚良だけじゃないんだから。


それはさておき、1つ気になってることがあるんだよな。


「ところで楚良、さっき何か怒ってたのは何でだ?」

「ん〜、俺の作戦が考えなしな奴のせいで台無しになっちゃったから」

「……ふ〜ん」


この時期の楚良って何してたっけ?
いやそもそも今って物語的にどこらへんなんだろ?
やっぱり資料集めなおさない限りはどうしようもなさそうな感じだな。

……そして同時に金が飛ぶことも覚悟しないと。


その後程なくして、楚良はゲートアウトしていった。
元々俺がこの世界にやってくるのが夜寝てから、それに対して楚良は寝る前まで。
よって直接会える時間は1時間にも満たない状態らしい。シェリルが教えてくれた。

結局大きな成果はなかったが、顔合わせとしては丁度いいくらいだろう。
奴もまた明日来るとか言っていたし、何も今日にこだわる必要は無い。


「やれやれ、頭使うことばかりで疲れるよ。マジで」

「……トモアキ、1つ聞いていい?」


首を回しながら愚痴をこぼしていた俺に、シェリルがやけに改まった質問をしてきた。

ちなみに首を回すのは別に肉体的な疲労が原因じゃない。
単にそうやっていれば疲れがとれたような気分になるというだけの話だ。


「んぁ〜、何だ?」

「勝手にトモアキを呼び戻したアタシが言うのもおかしいんだけど……」


“勝手に”……か。何か嫌な表現だな。
まるで俺が望んでいなかったような言葉遣いに思える。

そんな俺のちょっとした思惑を他所に、彼女告げられた言葉は色んな意味で思いにもよらないものだった。


「トモアキは何の為にここに居るの?」

「…………へ?」

「だって前は帰る為に頑張ってたんでしょ?
 それなのにアタシが勝手に呼び戻して、またトモアキを困らせてる。
 だからもし嫌なら「シェリル、こっちに来なさい」……うん」


真剣な顔つきで呼び寄せる俺に、何を勘違いしたのかシェリルはしょんぼりした様子で近づいて来る。

俺はやってきたシェリルを左腕の大剣の腹で鼻の先まで引き寄らせる。

そのまま巻き込むようにして腕をまわし肘の内側で彼女の頭を固定して、デコとデコを合わせ……、


「トモア「ふんッ!」あぅあぅあぅあぅ〜」


そのままグリグリ擦りつけてやった。

俺はPCだから痛くないが、彼女は以前と同様に痛がっている。
これぞ今日寝る前に考えたお仕置きの1つ、名前は…………決めてない。

痛さのせいか涙目になってるが知ったことか。


「あのな、シェリル……」

「あぅあぅあぅあぅ〜」

「俺が動く理由? そんなもん決まってるだろうが」

「あぅあぅあぅあぅ〜」


そこで一旦グリグリを止める。

涙目でデコを押さえるシェリルを自分のデコで軽く小突く。

実はこのお仕置き、純粋に怒ってるからやってるわけじゃなかったりする。


「お前と……一緒に居たいからだ」

「…………え?」


こんな台詞、照れ隠し無しで言えるわけがないだろ?


「確かに前は異常事態を回避することが第一目標だった。
 けどさ、いざ解決したと思ったら、今度は残してきたお前のことが気がかりになって仕方がなかった。
 この世界での出来事は所詮夢の一部に過ぎなかったとして片付けることが出来た。
 物語の登場人物達だって何だかんだ言いつつも結局は不思議体験の一部みたいなもんだ。
 だがな、お前だけは……シェリルだけは紛れもなく俺と共に生きてきた存在だ。
 だから忘れようとはしなかった。同時にいつまでも俺の心には置き去りにしてきた蟠りみたいなものもあった。
 そして今、再びこの世界にやってきた。なら俺がすべきことは?」

「トモアキ……」

「ぶっちゃけ、シェリルのおかげで以前みたいな問題が解決したってのも大きいんだけど」


これは隠してもしょうがない事実だ。

シェリルが言うには、俺の滞在時間はウィルスバグの核の侵食速度を利用して操れるらしいし。
つまり現実世界に支障をきたさない程度、大体8時間くらいに合わせて貰えばいいわけ。
そういった問題が解決されているからこそ、俺は何の不自由もなくやっていけるんだ。

もし現実に影響が出る状態だったらどうするかって?
そんときゃそんとき、自分が納得できるようにやるだけのことさ。


「……あり、がとう」

「これからもよろしくなッ!」

「…………うんッ!」


うむうむ、やっぱりシェリルには泣き顔より笑顔の方が似合ってるよ。


…………って泣かしたの俺じゃん。


この時の俺はさっき言われた内容が“1番怒られる”話だと判断していた。

それが間違いであり、本当に彼女の言おうとしていたことを俺が知るのは、ずっと先の話になってしまう。


――――そしてそれを知った時は、もうどうしようもないところにまで物語は進んでしまっていたりする。


あとがき

楚良と主人公の顔合わせとかその他の巻。
う〜ん……物語があんまり進んでないし、内容も薄いような。
次に主人公達が物語の登場人物と関わるのは多分『逆城都市』の話からだけど、あと5話超えそう。

次回も大して物語は進まなそうな感じ。多分主人公の現状把握とか。
というわけで今日はこの辺で。


レス返しです。


>白亜さん

説明幼女シェリル、次に出てくるのは多分ずっと先でしょう。
そして主人公はまだ外の状況をあまり理解していません。
それを知るのはもうじきですが、その時彼は……。

これからもお互い頑張りましょう。


>サイコーさん

シェリルの秘密については大体出てきましたが、主人公についてはまた後に出てきます。
おそらくそれで彼の秘密はほぼ明かされることになるかと。
主人公のシェリルに対する感情は親愛か、それとも……。

次回もよろしくお願いします。


>TAMAさん

主人公はウィルスバグの魂と心を通わせ、感情を爆発させることにより憑神を……ってな展開があったりはしません(笑)。
それはともかく、碑文使いと主人公って確かに共通点多いですよね。
アウラとシェリルについてですが、一応それぞれ“全”と“個”といった感じで成長の仕方が変わるのには理由があります。
これに関しては大分物語が進んだ頃に明かされると思います(といってもそんなに大したことじゃないですが)。
モルガナとシェリルの関係は前回述べられましたが、実はモルガナと主人公にも結構密接な関係があったりします(多分)。

ミミルとベアは意外と物語全編に関わってきそうな感じです。
まあそれでも全部端っこの方でしょうが。

主人公が一々頭を抱えるのはその性分からだとジョヌ夫は勝手に想像しています。
どれもこれも深く考えようとしてしまうあまり、頭がパンク状態になってしまうような。

というわけでこれからもよろしくお願いします。


>フェイクKさん

胃腸薬有難うございます(何。
主人公のこれからを考えれば当然必要になりそうですよね。
物語に本格的に関わるのは(ある意味とっくに関わってしまってますが)もうそろそろになるかと。
主人公が炉に目覚めた時、それはおそらく色んな意味で吹っ切れてしまったときでしょう(笑)。

次回もよろしくお願いします。


>コピーさん

言われてみれば確かにシェリルはツンデレだ!!
シェリルや主人公の秘密に関してはこれからも徐々に出てくる予定です。
どちらかと言えば主人公側が主になるでしょうけど。
更新は少なくともSIGN編が終わるまでは大丈夫かと思われます。
それからはプロットの組み直しや設定の見直しがあるから2日程あいちゃいそうですけど。

これからもよろしくお願いします。

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