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▽レス始

「Fate/黒き刃を従えし者26(Fate+オリ)」

在処 (2007-03-04 20:30/2007-03-04 23:25)
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「じゃあ、ここから別行動だから」
「あぁ。気をつけてな、遠坂」
「それはこっちの台詞よ」

私たちは学校に入る。
それぞれマスターとサーヴァントの組。
ただし。

「それではアーチャー、士郎を頼みます」
「……うん。そっちも」

リンとセイバー、士郎と私の組だけど。
理由は単純。
マスターとサーヴァントは念話が出来る。
だから特別な用意をしなくとも、それぞれのパートナーを入れ替えればいつでも連絡が取れる訳。

「ま、危険はないと思うけどね」
「そうだな。呪刻がある部屋にこのナイフ刺してくるだけだもんな」
「しかし用心するに越した事はありません。
 もしかしたらライダーやキャスター、そのマスターによって罠が仕掛けられているかもしれないのですから」
「そうね。でもマスターが何か仕掛けてるって事はないと思うわ。
 ただ、キャスターが何か仕掛けているなら厄介な事になるわね」

リンが何故、マスターが罠を仕掛けている可能性がないといったかというと。
それはリンが学校関係者がマスターになる可能性はない、といった事と繋がる。
つまり学校関係者には魔術師はいないのだ。
間桐慎二も、そしてキャスターのマスターも召喚ではなくなんらかの経緯を経てマスターになった魔術師以外の人間。
魔術師でなくともサーヴァントと契約すればマスターになれるのだから。
……初めにその可能性を見落としてたのはリンのうっかり。
あんな時からうっかりが発動してたのか、と。
少しあきれを通り越して感心した事はリンには秘密。

「……行こう」
「あぁ」
「そうね」
「えぇ、また後で」

全てのナイフを設置し終わったら屋上に集合。
その後は屋上で朝まで経過を見る。
……人払いの結界は完璧。
これなら爆破した所で魔術師やサーヴァント以外には気づかれる事はないだろう。
もっとも、簡単に誘いに乗ってくれるかどうかは判らないが。


Fate/黒き刃を従えし者


「本当に、見えてないんだな」
「……うん」

声はすぐ隣から。
しかしその姿は見えず。
それも当然。
士郎も私も、私の『風王結界』に包まれているからその姿は見えない。

「それにしても便利だよなこれ」
「……そう?」
「あぁ。姿が消せるって言うのは思いのほか凶悪だぞ?
 気付いた時には殺されてたって事にもなりかねないしな」
「……魔力までは消せない」

包まれている物が内包している魔力は外からは感じられなくなるけど、『風王結界』自体魔力の塊だから、結局魔力を測られればばれる。
一般人にとっては脅威でも、魔力を肌で感じられる魔術師やサーヴァントには完全な隠れ蓑にはならない。

「それでも、武器で防具でその上この追加効果っていうのは反則だ」
「……そう?」
「あぁ。反則だと思うぞ?」
「……そうかも」
「そうだろ?」
「……うん」

確かに、ずるい。
かも知れない。
武器としては威力が低いし、開放すれば再び展開しなおさないといけないなど。
弱点も多々あるけど、それを補って余りある性能だろう。

「って言うか、これ一体なんなんだ?
 風属性の魔術だって事は判るんだけど、それだけで宝具になるのか?」
「……ならない。
 『風王結界』は『始源魔術』とか『遺失魔術』とか呼ばれる『魔法から脱落した魔法』の一部」
「え……っと。
 つまり『風魔法と呼ばれていたモノ』が魔術になったのが『風王結界』なのか?」
「……ちょっと違う」

『風王結界』は剣に纏わせて保護しする『鞘』であり、剣本来の力を封印する『結界』である。
それは常に『包み込む』という概念の元発生させられる『始源魔術』『遺失魔術』の一部であり、そのものではない。
そもそも、アーサー王は騎士であり、魔術師じゃない。
あの時代の魔術師でも『始源魔術』を扱えたのは極小数なのに、騎士であるアーサー王がそれを扱う事など出来たはずが無い。
おまけ程度の知識として、今の魔術師に『始源魔術』は扱えない。
故に、失われた魔術という意味を込め『遺失魔術(ロストマテリアル)』と呼ばれる事もある。
それでは何故、アーサー王は『風王結界』を持っているのか。
それは単純に、マーリンが王に与えたからだ。
勿論、『風の始源魔術』を教えたわけじゃない。
マーリンは『風の始源魔術』から『鞘』という定義をつけた一部を『鍵』としてアーサー王に与えた。
その『鍵』は目に見える物じゃないし、手に取れもしない。
『十二の試練』のような概念のみの『鍵』だ。
持ち主の意思でもって発動する『簡易魔術』とでも言えばいいだろうか?
誰でも受け取れる『魔術刻印』といってもいい。
もっとも、その『鍵』を作る魔術自体『遺失魔術』になってしまっているのだけど。
……更に言うと、何故それが宝具扱いされているのかは私にも判らない。
…………案外、『主人公のサーヴァントに初めから持っている宝具がないのは不味いだろう』という作り手の意思が……
まて、何だ今の考えは?

「よっと。これでいいのか?」
「……うん」

そんな事を考えてる間に、士郎が初めの一本を床にさす。
このナイフは私が作った魔弾。
キーワードを開放する事で爆発を起こす『変化』『流動』による限定礼装。
……まぁ、例によって対魔力を持つサーヴァントには効かないし、それでなくともサーヴァントほどの霊に傷をおわせられる物ではない。
しかし部屋ひとつ分くらいなら軽く拭きとぶ。
それを6箇所。
この魔弾の優れた点は、ある程度離れていてもキーワード一つで起動できる点。
それも複数同時に。

「しっかし……まさか俺が学校破壊する事になるなんてな……
 いや、子供の頃に考えた事が無いわけじゃないが、実行する破目になるとは思わなかった」
「……あの結界が発動するよりは、まし」
「判ってる。判ってるさ。
 だからこうして準備してるんだしな」

……まぁ、それでも。
通いなれた学び舎をその手で破壊するのは心理的に辛いのだろう。
それでも人が傷つくよりは、と。
士郎は決行を指示した。
……実はもう一つ手が無かった訳でもない。
それはライダーとそのマスターを強襲する事。
でもそれは危険な賭けだ。
なぜならそのマスターの家は落ちたとは言え、魔術師の家系。
どんな罠があるか判らない。
柳洞寺を攻める事ほどではないだろうけど、それなりに危険が生じる。
もし仕留め損なえば、次の日にでも結界を無理やり起動するかもしれない。
その時に学校の方を手をうとうとしても手遅れになるかもしれない。
……結局。
今打てる手の中で私が考えうる限り最善の策はこれだった。
そういう事。

「……なぁ」
「……何?」
「えっと、いや。
 うーん、そうだ。
 アーチャーが聖杯に願いたい事って何だ?
 聖杯戦争に呼ばれたんだから、何か理由があるんだろ?」

沈黙に耐えかねたから話しかけたのだろう。
その言動は少し慌てた感じがあった。
それで思いついたのがその質問、というわけだろうけど。
でも。

「……判らない」
「判らないって……あ、そうか。
 すまん、忘れてた」

もしかしたら目的があったのかもしれない。
でも、私はその全てを忘れている。
思い出せる事は記憶ではなく、記録。
私の中に存在する、私の主観でないモノ。
自分の考えなどの『記憶』と呼ばれる物は何一つ思い出せない。
――いや、ここまで来るとむしろ――
私はそのくだらない考えを思考のゴミ箱に投げ捨てた。
私はここにいる。
なら、それ以前の私がどうであっても関係ない。

「……平和、って言うのは如何?」
「へ?」
「……願い事。もし、何か叶えてくれるのなら、争いの無い世界が来ればいいと思っただけ」
「あぁ、なるほど」

そう。
リンも士郎も桜もセイバーも大河もイリヤも、誰も失わなくてすむ世界が来ればいい。
……他の人は如何でもいい、とは言わないけど。
私にとって大切な人といえば、この人たちしかいないから。
……私はこの人たちしか知らないから。

「うん、そうだな。
 皆が幸せになれれば、それに越した事は無い」
「……士郎は」
「ん?」
「……士郎は何を望むの?」
「俺か?」

一度聞いてみたかった。
士郎は私たちのように呼ばれた訳でも、リンの様に自分で望んだわけでもない。
やめようと思えばやめられた立場だ。
何でそのまま、この戦争を続けようと思ったのか?

「ん〜……考えた事無かったな……」
「……じゃあ、何で聖杯戦争を続けてるの?」
「ん? あぁ、それは……こんな馬鹿な事やめさせるためだ」
「……?」
「この結界張った奴みたいに、周りの迷惑省みない奴もいるんだろ?
 だから、そういう奴を止める為にマスターでいるんだ」
「……何も望まずに?」
「いや、ほら。
 他の人が幸せそうにしてるの見ると俺も幸せに感じるんだ。
 だから、それを壊そうとする奴は許せない」

……それは、どんな歪んだ生き方だろう?
起きるかどうかわからない悲劇を止める為に、自分が必ず傷つく道を生きる。
普通の人の、普通の感性ではとても耐えられない。
それは……そう。
英雄と呼ばれる人が持つ感性。
悪に義憤し、悲劇を防ぐ。

「昔から皆に笑われるんだけどさ、俺の夢って正義の味方になる事なんだ。
 だから、こういう事は放っておけない」
「……でも、士郎が危険な目に遭う」
「確かにそれは怖いけどな。
 ただ、藤ねえとか桜とか一成とか遠坂とかセイバーとか、アーチャーとかが傷つくのを見るよりよっぽどいい」

……私、も?
私やセイバーもその中に含むのか。

「……私やセイバーは、士郎が護るべきじゃない」
「いや、セイバーもアーチャーも、実力は如何あれ女の子だ。
 護ってやらないといけない」
「……はぁ」
「あ、今呆れたって顔したな」

呆れた、というか。
どうしようもない。
怒る気さえ起きない。

「……士郎」
「む、そんな顔しても駄目だぞ?
 これだけは譲れない」
「……いい。
 でも、覚えておいて」
「な、何を?」
「……今日一日、士郎の鍛錬に付き合ってわかった。
 士郎は戦いには向かない」

そう。
士郎が一人で解決しようとしてもどうしようもないだろう。
干将・莫耶の技術で剣は使えるようになった。
しかしそれは、ただの技術。
駆け引きに関しては素人のそれだ。
故に、士郎の剣では人は救えない。
なら、魔術はどうか?
士郎の魔術は、宝具の投影さえ可能なレベルだ。
それは私に並ぶ程の技術。
十分すぎる戦力、といえる。
ただし、そこで士郎の属性がネックになる。
『剣』属性。
それは剣を投影する事に関してはこの上ない強みであり。
そして、それだけに特化している為、他の物の投影が出来ない。
私なら盾だろうが鎧だろうが銃器だろうが要塞だろうがやろうと思えば作れるけど。
士郎は『剣』以外を作れない。
ある程度なら誤魔化して作れるかも知れないけど。
それでも武具くらいか。
それも今すぐでなく、このまま鍛錬を続ければいずれ、のレベル。
そう。
『剣』の属性は士郎が戦う上では枷にしかならない。
……なぜなら。
私なら、自分で投影した物を自分で使う力がある。
でも……士郎は剣では人は救えない。
士郎に剣の才能は無い。
士郎は接近戦で戦いに望むべきではないのだから。
だから。
『剣』しか投影できない士郎は、士郎だけでは何も救えない。

「そんな事、無い。
 剣だって少しは使えるようになった。
 魔術だって……」
「……無理」
「何でっ!?」
「……士郎は剣で誰かを救えない。
 だから、剣しか投影できない士郎では誰も救えない」
「―――っ!」
「……士郎だって気付いてる。
 でも、認めたくないだけ」

士郎が項垂れる。
この言葉が全て真実だと、知っている為に。

「……だったら、どうすればいいんだよ」
「……それも、知ってるはず。
 だって、彼女は貴方の剣だから」
「……」
「……認めて。
 一緒に戦ってくれる人は、すぐ近くにいるでしょ?」
「……判った。
 でもセイバーだけに押し付けるなんて、俺には出来ない」
「……全部セイバーに任せろ、なんていってない」

それに、それじゃあ意味が無い。
士郎の力をセイバーが有効に使えるように。
セイバーの剣術は、士郎にとってもっとも必要な力なのだから。

「……だから、セイバーを失わないように、掴まえておいて」
「おう」

これで大丈夫だろうか?
……無理だろう。
でも、士郎にもわかるはず。
だから、少しずつ受け入れていけばいい。
今すぐ変わらないといけない訳じゃないし、そう簡単には変われないだろう。
今は、それを伝えられた事だけでいいとしよう。

「……行こう。リン達が待ってる」
「あぁ」

最後のナイフを突きたて、屋上へと上る。
そこには既に、リンとセイバーが待っていた。

「遅いわよ」
「……ごめん」
「何か、あったのですか?」
「いや、特に何も無かったぞ」

短いやり取り。
セイバーの言葉も、実際何かあったと思った言葉ではない。
形だけの心配。
なぜなら、その状態になれば己がマスターから連絡が来ると信じているから。

「……士郎、忘れないで」
「あぁ。判ってる」
「ん〜?
 本当に何も無かったの?」
「「……別に何も」」

士郎が私の口調に合わせてくる。
その後くっくっく、と。
抑えるように笑い出した。

「む、なにやら怪しいですね?
 アーチャーと一体何をしていたんですかシロウ?」
「そうねぇ、私もちょっと気になるわ、士郎?」
「いや、何も無かったって……って言うか、俺だけ?」
「えぇ、何かするとしたら衛宮君のほうでしょうから」
「アーチャー、本当に何もされていませんか?
 体触られたりとか抱きつかれたりとか」
「……無いよ?」

ならいいのですが、と。
何をそこまで心配しているんだろう?

「ふぅん。
 別に士郎が狼になっちゃったとか言うわけじゃないみたいね」
「なっ!?
 何てこと言うんだ遠坂!?」
「べっつにぃ」

あぁ、赤い悪魔降臨。
……まぁ、私が対象じゃないから良いか。

「……リン?」
「判ってるわ」
「……うん」

―――さく。
そう音を立てて最後の一本が屋上の床に突き刺さる。
セイバーが一旦解いていた風王結界で私達を包み込む。

「この後外に出て爆破、で」
「朝までここに確認に来る敵がいないか見張るんだろ?
 判ってる」
「えぇ。じゃあ、急ぎましょう」

私たちはもと来た道を戻り、校舎から出る。
……鍵は私が開けた。
鍵穴から合鍵を投影するくらい朝飯前。

「ここでいいかしら?」
「……うん」
「じゃあ、やっちゃって」

一番二番三番四番五番六番七番、起爆。

―――ズドン

と。
視界を一瞬真っ赤に染めて、学校の七箇所から炎が吹き上がる。
校舎に6つ、体育館に1つ。
体育館は建て直しが必要だろうか。
完全に開けていた為中は焼け爛れているだろう。
全てのガラスが割れていた。
……それでも火事になったりはしない。
あれはそういうものだ。
爆発で傷を負わせても、その後に燃え上がる事は無い。
そう作ったのだから。

『来るかしら?』
『……普通なら、来ない』

リンから念話が送られてくる。
再び二組に分かれたため、私と士郎、リンとセイバーで別の所に隠れている。
因みに風王結界はなし。
魔力でばれるから。
人払いの結界があるから、野次馬は集まらないだろう。
来る、というのは結界を仕掛けたマスターとサーヴァント。
普通なら、来ない。
こんな事をした後なら、普通に考えれば結界を破壊しようとした敵が潜んでいるのだから。
そんな判りきった誘いになんて乗らないだろう。
……だからこそ、休校にする為にここまで大掛かりにやったのだ。
誘き出すだけなら部屋の破壊なんてしない。
七箇所にためられた魔力を霧散させ、結界に衝撃を与えてやればいい。
それも物理的な破壊力を伴わない魔力で、だ。
……その筈だったのに。

「畜生!
 誰だ、せっかく準備した結界を潰してくれやがったのは!?」
「……鮮血神殿は破壊されていません。
 蓄えられた魔力は吹き飛ばされたようですが」
「同じだ!
 また一から集めなきゃいけないじゃないか!」
「…………」

……なんで来るかな?


後書き
うぅ……またやっちゃった。
って言うか、8時に少し寝ようと思っただけなのに気付いたら朝って……
そんなに疲れてたのか私?

―――閑話休題

なんか最近、アーチャーが策士になってるような?
この手を使った理由はこんな所です。
まぁ、間桐邸襲撃事件、とか考えないでもなかったんですが。
……そしてアーチャーの意図に反してやってきた慎二とライダー。
次回、戦闘です。

レス返し
<<最上さん
最近アーチャー頑張ってます。
その分子供っぽい所が減った気が……
うーん、その内休暇でもあげ様かな(違

間桐邸襲撃は上記の理由でやめました。
いっその事、エクスカリバーで吹き飛ばせば後腐れなくてよかったかも知れない。

<<無虚さん
ふむ……剥いた皮がカッターになるとかもいいかも?

<<ハンプトンさん
それに関しては言峰陳腐が全力を持って隠滅するでしょう。
まぁ、精々頑張れって感じですか。
あれに厄介ごとが行くのはむしろ願ったりかなったり?

<<Nikesさん
修理業者……そういえば忘れてましたね。
まぁ、2、30人吸うのと結界発動するのだと、如何考えても結界発動に必要な魔力の方が多いし。
そんな無駄な事しないでしょう。

<<九氏さん
全員で行きました。
しかも家から学校まで風王結界で包まれて。
学校で二手に分かれてそれぞれ風王結界に包まれて。
学校の中では人払いの結界があるから必要ないかもですけどね。

<<九頭竜さん
ばれるでしょうけど、表には出てこないでしょう。
そうじゃなかったら凛ルートのイリヤの所でちょっかいかけてそうですから。
あの後ぎるっちがバーサーカー倒したところ見てたような発言してたし。


背景色に暗色系が欲しいと思う今日この頃。

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