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▽レス始

「Fate/黒き刃を従えし者24(Fate+オリ)」

在処 (2007-03-01 00:14/2007-03-03 00:14)
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「せ、セイバー…………?
 気のせいかも知れないけど、その、なんかえらくお前に似合わない邪悪な笑みをしてるぞ、今?」

……セイバーと私の目が合う。
うん。
私は何も見てないよセイバー。
……ヤッチャエ。
呆れてそう、合図を送るとセイバーもニヤリと笑う。

「気のせいでは在りません。
 私の今の心境は、凛に匹敵するほど邪悪に染まっていますから」
「―――っ!?
 ぞわってきたぞわって!?」

自業自得。
視線で助けを求める士郎を、あえて無視。

「何を慌てているのですかシロウ?
 私はまだ質問に答えていません。
 私の聞き違いでなければ、確かサーヴァントを一撃で倒せる必殺剣を所望とか?」

士郎がセイバーの勢いに押され一歩下がるも、セイバーがそれ以上の距離をずいっとつめる。
士郎、逃げられると思わない方がいいよ?

「―――あ、いやあの、怒ってるだろセイバー?」
「シロウには、私が怒っているように見えるのですか?」

なにやら嘆かわしい、と言った顔で俯くセイバー。
……。

「あ、いやちがう。
 見えません、全然見えません」
「そうですか、残念です。
 私はこんなに怒っているのにシロウには伝わらなかったようだ」

一瞬希望を見出したかのように言い募る士郎だったけど、セイバーの一言で固まる。
にっこりと、そう。
にっこりと地獄に叩き落すセイバーの笑顔。

「ぅ――――落ち着け、落ち着こうセイバー。
 反省してる。
 セイバーが怒った理由だって何と無く判ってる」
「そうですか。ではそこに正座してください。
 シロウにはきちんと説明して差し上げねば気がすみません」

その瞬間、諦めの表情とあせりの表情の入り混じった変な顔でピッと正座をする士郎。
セイバーがすっと息を吸い込む。
私はすっと耳を塞ぐ。
来るよ、嵐が。

「―――ふざけているのですか貴方は!?
 一撃で相手を倒す必殺剣など、そのような不正を欲しがって如何するのです!?」

耳を塞いでいてもこの声量。
虎さんに匹敵するね。
次いで始まる説教。
暫く修行には戻れないだろう。
何せ士郎、今ので足が立たなくなってるっぽいし。

――――その中で一言。

士郎が聞き捨てなら無い言葉を漏らした。

「セイバー俺より強いだろ、だからもしかしたら知ってるかなって思ったんだ。
 素人でも使える必殺剣……そう、アーチャーの『是、射殺す百頭』みたいな?」
「…………あ」

セイバーの顔が凍る。
その失言を、私が聞き逃していない事に気付いたからだろう。
……そう。
士郎、貴方はあの技を素人でも使える必殺剣と認識してたんだ?
まぁ、確かにあの技は□□□□□□が使った技だよ?
でもね、それは□□□ャーの□を移植して身体能力が上がっていたからこその技でもあるの。
其れを持ってしても第一段階がやっとだったのに。
今の貴方にあれが使える、と?

「…………アーチャー、その、手加減してあげてくださいね?」
「……何の事?」

立ち上がって、士郎とセイバーに近寄る。
セイバーが不安そうに私を見てるけど、如何したって言うんだろう?
私はただ、士郎が望むとおりに『是、射殺す百頭』の犠牲、違う、教えてあげようと言うだけなのに。

「……士郎?」
「あ、何だアーチャー?
 俺、もしかしてまた地雷踏んだ?」

……わかってるなら話は早いよね?

「……立って。
 教えてあげる」
「ま、まて。
 その、何だ?
 笑顔でにっこり迫るのはやめてくれ。
 その笑顔なら世界全て悪がはだしで逃げてくぞ?
 ……世界全て悪って何だ?」
「……士郎が言ったんでしょう?
 素人でも使える必殺剣が欲しい、って。
 ……だから『是、射殺す百頭』を教えてあげる。
 ――――――その身体にね」

手にはセイバーから受け取った(奪った)竹刀を。
目の前には道場の壁を背に逃亡も出来ない士郎。
あはは。
そんなに慌てて手を振らなくてもいいよ。
……やめる気なんてまったくないんだから。

「―――じゃあ、教育してあげる。
 本物の英霊の、必殺剣、と言う物を」
「ま、待て待て待て待て待て…………」

もう、遅い。

―――是、射殺す百頭

その神速は、既に貴方の身体を打ち据えているのだから。
さぁ、お休みなさい士郎。

―――どさり

背後で士郎の倒れる音が聞こえる。
……自業自得。
口は災いの元。
その言葉を今日、士郎はいやと言うほど知ることとなっただろう。

「……死して屍、拾う者なし」
「いや、殺してしまうのは流石にまずいのではないですか?」


Fate/黒き刃を従えし者


「……って、いう事があったの」
「そう。それは仕方ないわね……士郎、貴方馬鹿でしょ?」
「うぅ……申し開きもありません」

士郎の身体にできた青痣にシップを貼り付けながらリンに是までの経過を話す。
事の発端は。

『俺でもサーヴァントを一撃で倒せる必殺剣とかないか?
 セイバーが一撃で倒せる様なのがあればなおよし』

なんていう暴言だった。
そこから冒頭へ移り、私の乱行へ繋がる。
……はぁ。
駄目だね。
どうも自分で感情を抑制できてない。

「……ふぅん」
「……リン?」

……もしかして、リンにも見抜かれてる?
これは何とかしないと。
それも是も、全部士郎が悪い。
何であんな……
……言っても仕方ない。
喜べ私。
士郎は超一流の贋作者になれる。
それは喜ぶべき事でしょ?
私だって贋作者なんだから、その弟子が超一流となるなら、喜ばない道理は無い。
……けど、理屈と感情は別物、か。
今は士郎の固有結界は考えないようにしよう。
自分が制御できなくなるなんて魔術師として三流。
言い訳する気も無い。
事実として感情が外に漏れ出してるみたいだし。

「……それでは、剣の修行を再開しましょうか」
「あぁ。頼む」

セイバーと士郎が立ち上がり、向き合う。
セイバーは竹刀を正眼に、士郎は両手に持った竹刀をだらりと下げている。
……そう。
士郎の剣術は、干将・莫耶に残されていた記録を基に前の担い手の技術を模倣した物。
一朝一夕で身につく物ではないはずなのに、士郎はすんなりとその技を模倣した。
まだまだ粗があるとはいえ、セイバーが剣道のみで戦うのなら、それなりについていっている。
…………それが、私が更に苛立つ原因でもある。

「驚いた、士郎って結構強かったのね」

そう、見えるだろう。
少なくとも今の士郎は、何十年とその道のみで生きてきた武術家を相手に対等に戦える技術がある。
それがたとえ、模倣した物であっても。
それを自身の思うとおりに扱う事ができるのなら、それは士郎の技だ。
私が『射殺す百頭』の剣術のみを模倣した『是、射殺す百頭』のように……

「……はっ!」
「――――ぐぅ!?」

セイバーがわざと作った隙に、士郎が思い切り斬りかかり。
案の定返されて窮地に陥る。

「で、貴女は何でそんなに苛々してる訳?」
「……気付いてたの?」
「甘く見ないでよ。
 私は貴女のマスターなの。
 サーヴァントの感情くらい読めなくて如何するのよ」

……参った。
流石はリン、と言った所だろうか?
私の感情の揺れなんて、お見通しだったみたい。
さて……如何しよう?
流石にすべて話すわけには行かないだろう。

「……士郎の魔術がね」
「あぁ、それ気になってたのよ。
 如何なの?
 少しは使えるようになった?」
「…………はぁ」

使えるようになるも何も無い。
初めから使えてたんだから。
ただ気付いてなかっただけで。

「その反応からすると、駄目だった訳ね?」
「……違う。剣に関することなら強化は失敗しないと思う」
「あら?
 じゃあ、今日の魔術講座は上手く行ったの?」
「……うん。そうだね、士郎に魔術を教える、と言う点では上手く行った」

問題は、士郎の魔術だったわけで。
リンは苛々してる理由は士郎に魔術の才能が無かったからと思ってたみたいだけど、違う。
確かに士郎に一般の魔術の素養は無い。
もうはっきり言って同情したくなるくらいに。
自然に干渉する事も出来なければ、傷を癒すことも出来ない。
物を直す事もできないし、何かを操る事もできない。
ただ、士郎はその無才の対価として、物を作る事に関しては他を隔絶する才能を持っていた。
そう、ただそれだけのこと。
……それだけの事、なんだけど。
思い出すとやっぱり納得行かない訳で。

「……士郎の本来の魔術は強化じゃない」
「え? でも士郎、それ以外使えないって言ってなかった?」
「……初めに投影を覚えたらしい。
 それで、前の師匠に『効率が悪いから強化にしなさい』って言われたって言ってた」
「へぇ……まぁ、確かにそうね。
 普通の魔術師ならそうするわ」

そうだろうね。
生憎私は、普通とはかけ離れてる。
私自身が投影を得意としている事もあり、投影魔術を初めに覚えたならそれをそのまま使わせただろう。
事実、あの後私は投影に関するスキルのみを徹底的に鍛えたのだから。

「……問題は」
「問題、って。
 投影魔術が問題なの?」
「……そう。
 士郎の投影、他は全然駄目だけど。
 剣に関して言うのなら、私並」

って言うか私以上。
言わないけど。
流石にそれを言うのは拙いだろう。
リンを信用してないわけじゃない。
けど、基本的に魔術は本人の意思無く洩らして良い物じゃない。

「何よそれ……なんて、反則」

リンが想像してる範囲の反則なら、よかったんだけど。
士郎の投影は、文字通り想像を絶してるから。
気付いた時に如何いう事になるか、怖くて考えたくも無い。

「……詳しくは言わないよ?
 仮にも私は、師匠として教えてる立場だから」
「そうね。弟子の魔術の内容をほいほい他人に洩らすべきではないわ。
 でもまぁ、なら士郎は投影だけなら戦力になるのね?」
「……うん。
 投影した剣をセイバーに使わせれば魔力の節約になると思うし」
「そうね……というか、それ以外使い道がないわね」

まぁ、確かに。
投影が出来るといっても、士郎はあくまで人間。
干将・莫耶の記録から剣術を得ても、サーヴァントを相手にする力は持ち得ない。
……それが、怖い。
なまじ強い力を持つだけに、もし士郎がサーヴァントと対峙する事になったら如何しよう?
サーヴァントに及ぶ物ではないのに、士郎がそれを過信したら?
その先に待つのは、破滅。

――お願い、間違わないでね。

士郎は、戦う者じゃない。
間違わないで。
士郎は造る者なのだから。
間違っても、自分だけで戦おうなんて考えないで……

私の心配なんて知る由も無く、士郎はセイバーに果敢に立ち向かっていた。


後書き
アーチャー、機嫌直らず。
ただ、その不機嫌の理由は単純な嫉妬からじゃなかったんです。
……嫉妬も多分に含まれてたりしますが。

レス返し
<<TXさん
カラドボルグはクー・フーリンの親友フェルグスの所有する『硬い雷』の意味を持つ剣ですね。
エクスカリバーの源流の一つとも言われてます。
『三つの丘の頂を切り落とした』って言う伝承が残ってるから、Fateで使われていたらエクスカリバーと似たような効果になっていたのかも。
……使われたのはぐるぐる捩れた螺旋剣で、しかも矢としてですけど。
あと、カリバーンはエクスカリバーの異名の一つですね。
何でも折れたカリバーンを打ち直したから名前を『Ex(改)・カリバーン』→エクスカリバーになったとか。
詳しくは『エクスカリバー Wiki』で検索してもらえれば。

<<九氏さん
やっぱりアーチャーが改造しちゃったんですかね?
まぁ、普通に考えたらあんな剣矢として以外使い道無いと思いますけど。
突くだけならレイピアのほうが使いやすいだろうし。
でもフラガラックが……

<<九頭竜さん
まだ暴走してません。
固有結界に話が及んだら危ないかも(笑

<<最上さん
今回もまだちょっと拗ねてます。
拗ねた表情で涙目で上目遣いでキッっと……睨まれて見ます?

あー、其の例えいい。
確かに今の士郎の状況はお米の国の全武力を統合した倉庫持ってるのに使えるのが火縄銃だけって感じ。
……多分エクスカリバーとかAランク以上の宝具は核なんだろうなぁ……

フラガラック……アンサラーか……
確かあれって特殊な金属で出来た球体にバゼットの血を染み込ませて特別な製法で一ヶ月寝かせて作るんですよね?
……なんか味噌とか醤油でも作ってるような説明だ。
それは置いといて。
あれも剣なのかなぁ?
少なくとも伝承上だと短剣なんだよね。
……ところで、他の伝承保菌者も似たような製法で作ってるんだろうか?
それとも普通に宝具の担い手になってるのか?

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