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▽レス始

「Fate/黒き刃を従えし者23(Fate+オリ)」

在処 (2007-02-28 01:33/2007-03-04 16:53)
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「…………」
「…………」

一旦魔術の鍛錬を中断して昼食を取る。
それほど時間をかけた物でもないけど、それなりに美味しい昼食。
でも、味わって食べる気にならないには……
まぁ、仕方ない。
納得行かない。それは今でも変わらない。
それでも何とか折り合いをつける。

「……なぁ」
「……なに?」
「いや、何って……
 なんか怒ってないか?」
「…………はぁ」

なんだか士郎が犬みたいに見える。
耳と尻尾があったらきっと両方垂れ下がってるだろう。

「……怒ってないよ。
 ただ、考え事してるだけだから」
「うっ……
 そ、そうか?
 それならいいんだけど」
「……でも、ごめん。
 食事終ったら話すから、暫くそっとしといて」
「あ、あぁ。
 判った」

そうして二人で会話も無く黙々とご飯を食べる。
正直、少し落ち込んでいるんだろう。
冷静になって考えれば、それは祝福すべき事で。
だから私が落ち込む理由なんてない筈……なんだけど。
今まで魔術の知識を殆ど持っていなかったにも関わらず、才能だけで私より上に行かれると……
流石に落ち込むか。
まぁ、いい。
それに才能が在るといっても『投影』、それも剣に関することだけ。
その投影でさえ使いこなせていない。
それに、士郎の魔術がソレなら、残る26の魔術回路も開かないといけないだろう。
勿論そっちは今すぐというわけじゃない。
今は最低限の投影を行なえるようにできる事を教えよう。


Fate/黒き刃を従える者


昼食を終え、場所は再び土蔵に戻る。

「……」
「えっと……」

私の視線に、士郎が居心地の悪そうな態度を取る。
……落ち着け私。
嫉妬なんてみっともない。

「……いきなり本題から行くけど、いい?」
「あ、あぁ。
 出来ればなんでそんな威圧してくるのかも知りたい、かな」
「……気にしないで」

嫉妬してる、だなんて情けなくて言えないから。
士郎の投影を見て判った事。
士郎の投影は本来の投影とは違う。
私の投影に近いけど、それともまた違う。
本来の投影は設計図から構成素材や製作技術を模倣するもの。
その為材質や形は本物に近くなる。
けどそれだけ。
付加された魔術なんかは再現出来ないし、そんな穴だらけの想像ではすぐ砕け散る。
私の投影は創造理念・基本骨子・構成材質・製作技術・憑依経験・蓄積年月の六節からなる。
よって完璧な、穴の無い設計図を造り、写し出された道具は想定されたとおりの力を発揮する。
……士郎は、ソレを無意識かでやっている。
勿論、無意識の内にやっている以上精度は落ちるし雑にはなる。
けど、それでも投影された物は薄いとは言えその六節をなぞられていた。
……でも、その事すらおまけみたいな物。

「……士郎は、固有結界って言葉を聞いた事は?」
「あぁ、あるぞ。
 『自身の心象世界を世界に上書きする魔術』だったか?」
「……そう。
 士郎に許された魔術は、投影でも強化でも変化でもない。
 それはただ、士郎が本来使える魔術からこぼれ落ちた物に過ぎない」
「は?
 なんでさ、俺それ以外の魔術なんて習ってないぞ?」

そうだろうね。
それは誰かが教えられる事じゃない。
それの使い方は、本人以外に判りようがないから。
……でも、私ならそこから零れ落ちた魔術の方を教える事ができる。

「……習う必要すらない。
 なぜなら、士郎にはそんな選択肢は無かったから」
「え……?」
「士郎は、魔術を扱おうとするなら、そこ以外に進める道なんか無い。
 ……だから、初めに知ったんじゃない?
 士郎が初めて使った魔術、『投影』でしょ?」

これは確認してないけど、間違いないはず。
否、これ以外に道はないのだから。
士郎の魔術の根幹にあるのがアレなら、投影はそこに最も近い魔術。
それ自体を具現できないのなら、そこから一番近い場所に到達するのが道理。
……本来の魔術は具現できないだけで、知ってはいる筈だ。
理解しているかどうかは判らないけど。
そうでなければ投影自体使えないのだから、この衛宮士郎は。

「って、なんで知ってるんだ?
 確かに初めて使えたのは投影だけど。
 それは効率が悪いから強化にしろって」
「……そう、普通ならそう考える。
 でもね。
 ……士郎だけは別。
 士郎にとっては強化や変化より、投影の方が遥かに難易度が低いでしょ?」

私がそれに気付けたのは、事『投影』に関する知識は恐らくこの世界で一番持っているから。
それ故に士郎の投影の異常に気付いたし、それの特性に関しても理解った。
だからこそ、これから教えるべき事もわかる。

「……それも当然。
 だって士郎の本来の魔術は、『物を写し取る事』に特化した魔術だから」
「ん?
 物を写し取るって……投影じゃないのか?
 なんか話の雰囲気から違うみたいだけど」
「……そう。
 それは投影魔術じゃ無い。
 私にすら使えない、士郎だけの魔術。
 決して二人として使い手の存在しない唯一の存在」
「……ちょっと待て、二人としてって……そんな魔術存在するのか?
 魔術であるなら難しいにしてもそれなりその系統の術を使える人が居るんじゃないか?」
「……そうだね。
 同じ名前でくくられた魔術は多くある、けどそれは。
 全てが唯一。
 同名の魔術であっても同じ効果を持つ物は一つとしてない」
「は、なんでさ?」

士郎が訳判らないと首をかしげる。
それはそうだろう。
普通魔術といったら系統別に使える者がそれなりの数いる物だ。
封印指定を受けている魔術師の魔術ですら、それを突き詰めていった物であることが殆ど。
なればこそ、その魔術の特異性は他を逸する。

「……だから。
 士郎の魔術は固有結界。
 それも、投影魔術のように物を写し取る事を専門とした物。
 その特性ゆえに、士郎と同じ魔術を持つ人は誰もいない」
「…………は?」

そしてそれ故、士郎の投影で作られた物は、実質制限時間を持たない。
異なる世界の理の上で作られた物は、例え他の世界へ移ったとしても、その世界の理でしか律する事はできない。
ORTがこの世界の理を受け付けないように。
士郎の投影で作られた物も、士郎の固有結界内の理でのみ律する事ができる。
つまり、この世界の理が幾らその投影された物を消そうとしても、その力はそれにまで及ぶ事が無い。
形を亡くせば魔力に戻るしかないけど、私の投影のように放って置いたからといって消える事などないのだ。
悔しいけど、認めないといけない事。

「……受け入れて。
 全てはそこから。
 其れを知らなければ、何も始まらない。
 今までやっていた事はすべて無駄……とは言わないけど。
 ……其れを知って始めて、士郎は魔術を担う者になる」

無駄、とは言わない。
けど限りなく無駄に近い。
強化? 変化?
そんな物を使っても意味は無い。

「……本当なのか?」
「……嘘は言わない」

士郎にその意思があるのなら、士郎とセイバーのコンビは最も優れたチームになる。
剣を扱う事に関してはサーヴァント随一のセイバーと、剣を精製する事にかけては人類最優の士郎。
これ以上のパートナーが何処にいる?

「なら、俺は如何すればいい?」
「……固有結界を展開する事は、今の士郎には無理。
 だから主力は投影になるよ。
 でも、自分の魔術が固有結界である事を忘れないで。
 ……知ってると言う事はそれだけで意味があることだから」

全ては知る事から始まる。
士郎が固有結界を知るという事は、士郎の魔術の全てを決める事。

「……判った。
 教えてくれ、俺に出来る事を」
「……うん。
 私の知識の及ぶ限り、全てを士郎に教える」

たっぷり悩み、しかし迷い無く。
士郎は己の魔術を受け入れた。
ならば私は、私にしか出来ない手段で士郎に魔術を教えよう。

「……接続、現像(コネクト・ロード)」

手に現したるは、私が知る中でもっともランクの低い宝具。
つまりは、士郎が投影するに当たって最も負担が低いだろう物。
左右一対の黒白の夫婦剣。
その名を、陽剣干将陰剣莫耶と謂う。

「……士郎、これを作って」
「な、何だこれ!?
 物凄い力を感じるぞ?」
「……宝具だから」
「なんでさ!?
 無理無理無理無理!
 って言うか無謀だろ!?」
「……やる気がないならこれで終わり。
 これ以外に私が教える事なんてないから」

生半可な剣ではセイバーの力に耐えられない。
現代で作れる魔剣なんてセイバーにとっては木の枝と変わらないのだから。
今渡した剣が最低ライン。
セルスクラーフェは宝具でこそないものの、この二振りより性能的には上なのだから。

「……判った。
 ―――投影、開始(トレース・オン)
 ぐ……ああああぁぁぁぁっ!!」

士郎の腕を、のた打ち回る様な電光が瞬く。
魔術回路にかかる負荷が、その余剰エネルギーを電力に変えて放出している。
想像を絶する痛みを受けているだろう。
……何処でか解ら無いけど、かつて同じ様な痛みを受けた事があるから、解かる。
その痛みは決して、一般人が耐える事のできる傷みじゃない。
魂を肉体から引き剥がして切り刻むような痛み。
……士郎にとって、永遠に近い一秒が過ぎ。
その手には二振りの刃。

「で……きたぁ」
「……」

確かに、見た目は干将・莫耶そっくりだ。
だけど、中身は酷い物。
私の物とは比べるべくも無い。
例えるなら、私の物が一流の設計士が設計し一流の建築家が建てたビルだとすれば。
士郎の其れは三流の設計士が所々安く上げるために削り、三流の建築家が手抜き工事をしたビル。

「……駄目」
「あぁ……確かに駄目だな」
「……もう一回」
「判った。―――投影、開始っ!!」

其れを、士郎の限界まで繰り返す。
そしていい加減士郎の体力と魔力が尽きてきた頃。

「……及第点、かな」
「そうか?
 アーチャーのと比べるとまだまだな感じが……」
「……そう簡単に追いつこうとしないで」

士郎の投影した干将・莫耶は、私のものと比べればその精度は名刀と竹刀ほど違うが、かなりましになっただろう。
少なくとも士郎が護身に使うには問題ない程度まで力を引き出されてる。
剣の経験を憑依すれば、サーヴァント以外には早々遅れは取らないだろう。
だからと言ってサーヴァントと戦おうと考えるなら即座に死が待っているが。

「……今日はこの位で止めて置こう」
「まだ、まだ大丈夫だぞ?」

はぁはぁ、と。
息を乱しながらそんな事をのたまう。
何処から如何見ても大丈夫じゃない。

「……いいの。
 それに、まだ終ったわけじゃない」
「は、なんでさ?」
「……干将・莫耶だけだと思ったの?
 これから見せる剣をこの場で投影しろとは言わないけど、設計図はその心の世界に刻み込んでおいて」
「お、おう!」

私は再び投影を開始する。

「―――情報、装填(マガジン・セット)
 接続、現像(コネクト・ロード)」

現れたるは伝説に名高き聖剣魔剣。
本物特別出来ぬほどに造り込まれた贋作。
その力は、物によっては真作をも凌駕する幻想。
天に祝福されし絶世の剣(デュランダル)
大地照らし出す太陽の剣(グラム)
雷光纏いし螺旋の剣(カラドボルク)
破滅もたらす血糊の剣(ダインスレフ)
癒されざる鎌剣(ハルペー)
岩山断ち切る強力の剣(ガラティン)
虚ろう焔の剣(フランヴェルジュ)
二股に分れし必勝の剣(ズー・アル・フィカール)
怒り覚えし剣(ベガルタ)
怒り噴出す剣(モラルタ)
龍の心抉りし剣(リディル)
信頼すべき友情の剣(バリサルダ)
等など。
私の知る限りの剣の宝具を投影する。
その全ては1秒程度で消えてしまうが、それでも士郎の固有結界は其れを刻み込むはず。
後は、士郎がその宝具を投影できるほどまで力を蓄えればいい。
……もっとも、私がしてあげられる事は、鍛錬に付き合う事くらいなんだけど。


後書き
ガラガラと作られては落ちてくる宝具……
なんてもったいない!

あと、宝具の日本名は全部私の創作です。
この宝具にはもうこう言う名前が付いてるって言うのあったら教えてください。
……太陽剣と螺旋剣以外。
って言うか、螺旋剣ってアーチャーが改造したアレだけをさしてるんだろうか?

レス返し
<<遊恵さん
はじめまして。
一番おめでとう。
初めから読んでくれてありがとう。
ご苦労様。
これからもこのペースを維持……できたらいいな(笑

<<九首竜さん
持ち帰らないでください、って言うかあげませんよ?
士郎くんは色々な剣をその固有結界内に登録する事になりました。
……使えませんが(爆

<<最上さん
アーチャーまだ拗ねてました。
士郎がゲームしてる所ってあんまり想像できない……けど。
友達の中にはそういうのが好きな人も居るでしょう。
……え?
士郎の一成以外の友達?
……まぁ、其れは置いといて。

士郎の投影は基本的に本編準拠。
アレはナイフで壊れたのが片付けてる時に消えたのです。
……何故そんな時間まで残ってたのか知りませんけど(爆

ちょっと改定

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