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▽レス始

「Fate/黒き刃を従えし者22(Fate+オリ)」

在処 (2007-02-27 01:14/2007-02-27 01:22)
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「……強化に関する事はもういい」
「は、なんでさ?
 確かに今は成功したけど、まだ完璧じゃないぞ?」
「……それは、一人の時にやって。
 私が見る事じゃない。
 ……忘れないで、今は知識を蓄える時」

魔術の修行は自己鍛錬が殆ど。
魔術は秘匿する物。
それは何も一般人だけに適応されるわけじゃない。
秘術は隠す物。
自己の探求内容は例え師であろうとも見せてはならない。
使い手が増えれば、それだけ神秘は摩耗するのだから。
……まぁ、士郎はまだその段階まで行ってないけどね。
リン曰く、へっぽこだし。

「……判った。
 あぁ、確かにそうだな。
 強化は使える。ならそれの純度を上げるのは自分の仕事だ。
 アーチャーの手を煩わせる事じゃなかった。
 すまん」
「……いい。
 一応アドバイス。
 強化の鍛錬は出来るだけ刃物でやること。
 ……それ以外は、刃物の強化が完璧になってからやったほうがいい」
「判った。
 包丁とかでもいいのか?」
「……うん」

さて、次の段階へ進もうか。
『解析』『強化』に続くこの系統三つ目の魔術『変化』。
『解析』に関しては『投影』に移る前に精度を見せてもらおう。


Fate/黒き刃を従える者


「……取り敢えず、変化について説明する」
「頼む」
「……変化っていうのは、対象が持っていなかった属性を付属させる事。
 一般的には……炎の魔剣とか、そういったものを連想するといいよ。
 へんな使い方すれば、私の場合『剣』の属性を持ったみかんとかも作れる。
 ……だから如何したって聞かれても困るけど」
「えっと。
 アレか、某龍探索の魔法剣みたいなもんか?」

アレは攻撃の時のみ属性が宿ってるからちょっと違うか。
それよりも。

「……ん〜、それより某星海の3の主人公の属性剣の方が近いかな」
「あぁ、なるほど。
 つまり一定時間の間対象に異なる属性を付加させ続けるって事か」
「……ん、そういう事。
 流動と組み合わせれば簡易な魔剣も作れるよ」

私はナイフの一本を手に取り、風の属性を付加させ、含ませた魔力を流転させる。
まぁ、これも含まれた魔力を完全に使いきってしまえば唯のナイフに戻るのだけど。
それでも時間がたって魔力が消える事がなくなるから保存が利く。
それに流動の心得があれば再び魔力を充填する事も可能だし。

「……はい」
「ん?
 えっと、如何すればいいんだ?」
「……発動キーは投擲する事。
 高密度の風を纏いながら直進する刃。
 ……危ないから使うなら外で」

私は士郎を土蔵の外へ連れ出す。
蔵の中から持って来たガラクタの一つを的として置く。

「……投げてみて」
「あぁ……ふっ!」

――ヒュッ
―――
――――パン!

的として置いたガラクタは、気の抜ける音を立てて中心辺りに円形の穴を穿たれた。
ナイフ自体はガラクタに穴を穿った時点で魔力を失い、後ろの松の木に突き立っている。

「……って、なんでさ!?」
「……これが変化」
「いや、危なすぎるだろこれ!?」
「……こんなの牽制にもならない」

そう。
このレベルの魔剣ではサーヴァント相手には子供だましに過ぎないのだから。
いや、傷付ける事自体は可能だろう。
それでも速度が一般人の投擲速度以上にならないというのが致命的。
サーヴァントを相手に戦えるような魔弾を作るには、私をしてそれなりの時間が必要だし。
『変化』『流動』で作った魔弾は『転換』による魔弾に威力と応用力で負ける。
ヘタな小細工をしないですむだけ『転換』の方が魔力を多く込める事ができ、その魔力を思うままに使えるから。
ただし、制御に関しては『変化』『流動』の魔弾のほうが楽。
予め込められたキーワードを解凍するだけなのだから当然といえば当然。
造り手の腕がよければ使用者がどれだけ未熟でも使える。
それに、今のように投擲だけがキーになってるなら、魔術師でないものですら使用可能なのだ。
まぁ、それを防ぐ為に普通は『魔力を込める』というキーを付けるのだけど。

「……じゃあ、実践に移るから、戻ろう」
「あぁ」

残りの24本を士郎に渡し、取り敢えず基本の発火能力付加をやらせてみる。
士郎は属性に火を持たないからたいした威力は出ないと思うけど。
それでも対象が士郎と相性がいいから……何とかなるといいな。

「……私、さっきのガラクタ片付けてくるから、頑張って」
「あぁ」

さっきも言ったけど、こうなってしまうと私はする事が無い。
私が教えているとは言え、結局教えられるのは知識だけ。
まぁ、変化に関しては特に属性を選ばなくても使えるから問題ないと思う。
自分にあった属性であれば効果が高まるけど、そうでなくても使う事はできる。
それに、自分の属性でなくても込める魔力しだいでは威力を補えるし。
その上士郎の属性は剣だ。
なら、ナイフその物にその属性が宿っているから相当変な属性付けない限りは大丈夫……

―――ぽん!

……だといいな。
いきなり魔力暴走させてるけど。
まぁ、士郎がナイフに込めた魔力程度ならマッチ程度の火力しかないはずだから大丈夫でしょ。

「……あれ?」

ふと。
回収したガラクタを見てある事に気づく。
……数が減ってる。
誰かが持ってくわけ無い。
それ以前に、こうしている今も減っていっているのだから。
まるで空気に溶けるように。
これは間違いない。
私がよく見慣れた光景。
私が得意とする魔術の一つ。
でも、ありえない。
如何いう事?
さっきまでこれは確かにガラクタだったけど、確固として存在している物だった。
ありえない。
強化もろくに使えない士郎が其処まで長い時間残らせて置けるはずが無い。

―――じゃあ、今のは何?

決まってる。
目の前で起きた事を否定する事はできない。
それは愚鈍の極み。
否定する言葉は全て思考のゴミ箱に捨てろ。
事実は事実としてのみ存在する。
これは間違いなく。

――投影魔術っ!

「士郎っ!!」
「うわっ!?
 ど、如何したんだそんなに慌てて珍しい!?」
「……っ!」

私は即座に周囲にあるモノを全て『解析』に掛ける。
その結果。
この土蔵に転がるガラクタ、その実に三分の二が投影魔術による作品。
投影魔術としての質は最低。
はっきり言って中身が何も無い。
それ故に、その存在はおかしい。
私だって魔力がないものならばそれなりの時間、約二週間くらいなら持続させる事ができる。
しかしそれは、あくまで細部に亘るまで精密に模倣しきって更に膨大な魔力を注ぎ込む事が前提。
こんな気まぐれに作ったような作品で一週間も二週間も、いや、それ以上、年単位で残す事なんて不可能。
そんな事ができるのは、そう……
この世界とは違う理を得なければ出来ない。
ならば、士郎の魔術は……

「お、おい、如何したんだアーチャー!?」

いや、それより前に。
このガラクタをどうにかしないといけない。

「ちょ、なんでさ!?
 剣なんか具現して何する気だ!?」
「……このガラクタ、壊す」
「ま、待て!
 何がなんだか判らんがとにかく待て!
 落ち着け落ち着こう落ち着くべきだ!!」
「……私は落ち着いてる!
 話は後、これはしないといけない事」

私はセルスクラーフェを振るってガラクタを壊す。
勿論、投影で映し出されたモノのみを、だ。
本当のガラクタまで壊す必要はないし。

―――ガギン、ガシャ、バキャッ!

全てが溶けて消えていく。
その名の由来の如く。
段々薄くなって最後には消える。
それを約100。
その時点になって漸く頭に上った血が降りてきた。

……何やってるんだ、私。

これを壊す為に剣まで持ち出す必要は無かった。
風で一個残らず消し飛ばせば……まだ混乱してる。
落ち着け、私。
とにかく、セルスクラーフェも風王結界も必要ない。
こんな耐久度の低いガラクタ、ただ落とすだけでも潰れるって言うのに。

「……ごめん、落ち着いた」
「あ、あぁ。
 いや、いいんだけどな。
 何でこんな事したんだ?」

士郎はさっぱりとした土蔵を見渡して驚いた目を私に向ける。
……はぁ。
どうかしてる。
ここまで取り乱した私もどうかしてるし何より。
こんなに近くに、それも一緒に住んでいて士郎の魔術の特性に気付かなかった私もどうかしてる。
まぁ、いい。
とにかく今はやるべき事をするだけ。

「……士郎、ここにあったのは、貴方が作ったもの?」

まずは確認。
そう、質問ではなく確認だ。
私はそう確信しているのだから。

「あぁ。って言っても全部ガラクタだけどな。
 どれだけやっても中身が作れなかったんだ」
「……まぁ、それが異常なんだけど」
「は?
 なんでさ?」
「……いい。独り言、気にしないで」

次にやる事も、確認。

「……じゃあ、今ここでやって。
 そうだね、あのナイフにしようか」
「あぁ。
 判った」

私の雰囲気に気おされたように士郎が投影を始める。

「―――投影、開始」

士郎が集中し、その手の内には間違いなく。

「――工程、終了……出来たぞ」

私は士郎からナイフを受け取る。
やっぱり。
精度としては私が作る方が上。
でも、魔力が気化しない。
それどころか、これは間違いなく。

「中スカスカだろ。
 俺にはこんな事しか出来ないんだ」

なんて、恥ずかしそうに言う士郎の頭を思いっきり殴りたくなる。
私では決して届かない場所に居るというのに、それでもまだ納得できないのか、と。
……まぁ、そこにいること自体気付いてない人にっても仕方が無い。
…………それが余計に腹立つのは言うまでもない事だけど。

「……これ」
「ん?」
「……本物と殆ど差は無いよ」
「は、なんでさ?」

士郎はそのナイフを再び手にとって見ている。
そしていろんな角度から見たり、解析してみたりと忙しい。
……そして。

「……なんかしたのかアーチャー?」

なんて見当違いもいいところな質問をしてきた。
先が思いやられる……でも。
まぁ、これなら間違いなく戦う力を得る事はできるだろう。
納得いかないけど。
物凄く納得いかないけど!
まぁ、引き受けた以上師匠として導こう。
それに、弟子に才能が有ったのだから喜ばなくてはいけない。
……物凄く納得いかないけどっ!!


後書き
久しぶりにアーチャーが感情を露にしてます。
まぁ、仕方ないか。
投影使いにとって衛宮士郎の固有結界は反則だしね。
特にアーチャーにとっては複雑でしょう。
なまじ本来の投影の実力が高いだけに。
少し設定変更があります。
アーチャーの投影。
魔術にまったく関係しない道具を投影し、持続させる事が出来る最大時間は約2週間。
これに加え、現代で作成可能レベルの魔術礼装が約1週間。
これは最低値で、レベルが低ければ最大3、4日伸びます。
さらに現代で作成不可ながら、一級品には今一つ及ばないもの。
これが半日から一日。
で、最高級の魔術礼装……まぁ、宝具に準じるものですね。
準じる物とは、宝具になるような活躍はしてないけど、その概念的には宝具並みの物。
セルスクラーフェやセイバーの鎧、メディアの杖なんかです。
それが長くて10分。
宝具に関しては前とかわりません。
一応、これが最終決定です。

レス返し
<<23さん
使えますよ。
ただし、士郎はそれを使えないと割り切ってますから。
切嗣の所為ですけど。
なので士郎主観では実質使えるのは強化と解析だけだったんです。

<<九首竜さん
うん……なんで士郎こんなに観察眼がよくなってるんだろう?
……はっ!?
ま、まさか『解析』したとか!?
……ま、馬鹿な話は置いといて。
アーチャーの反応はこうなりました。
当然といえば当然かな?

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