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「Tales of the Negima! 第十一節(TOA+魔法先生ネギま!)」

ローレ雷 (2007-02-28 22:37)
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 ネギの唇争奪戦が開始されると、ネギは自分の部屋で寒気を感じた。

「ううっ、何だろ? この寒気は……やっぱりパトロール行ってこようっと」

 悪い魔力などは感じられないが、嫌な予感がするのでパトロールに行く事にするネギは、人の形をした紙切れを出す。

「刹那さんからもらったこの人形を身代わりに使おう。これに僕の本名を日本語で筆を使って書くって言ってたな」

 サラッと、筆を執って名前を書く。

「あ、まちがえた」

 が、やはり筆を使うのは慣れてないネギは、何枚も失敗し、丸めてゴミ箱に捨てる。

「よしっ! 書けた!」

 そして、ようやく『ネギ・スプリングフィールド』の名前が書けたので、刹那に習った呪文を唱える。

「お札さん、お札さん。僕の代わりになってください」

 するとお札が光り、ネギの形になった。

「こんにちは、ネギです」
「わースゴイや!! 僕ソックリ! 西洋魔法にはこーゆーのはないなー……ココで僕の代わりに寝ててね」
「ネギです」

 コクリ、と頷く身代わりネギ。

「よーし じゃあパトロール行ってきまーす」

 窓からパトロールに出て行くネギ。身代わりネギはバイバイ、と手を振る。すると、失敗したお札を捨てたゴミ箱が淡い光を発し、その中から更に5人のネギが出て来た。

「こんにちは、ぬぎです」
「みぎです」
「わぎです〜」
「ホギ・ヌプリングフィールドです」


「あの、アリエッタ。やっぱりヤメた方が……」
「イオン様、往生際悪過ぎです。朝倉とカモの陰謀から、皆を守るです」

 アリエッタに押されながらもイオンは反論するが、彼女は聞いていない。こういう荒事にはシンクの方が向いてるのだが、こんなコトに参加するわけないし、素直に出て来てくれる筈も無い。
 まぁイオンとしても何の事情も知らない生徒達を無理やり戦いに巻き込みたくないのは同意なので已む無く参戦する。
 すると、角を曲がった所で、あやかと千雨ペア、そしてまき絵と裕奈ペアにバッタリと出くわしてしまった。

「いいんちょ!? アリちゃん!?」
「まき絵さん、アリエッタさん、勝負ですわ!」
「戦闘開始」

 まき絵があやかを、あやかがアリエッタを、アリエッタがまき絵を同時に枕でぶっ叩いた。

「「「ぶっ!!」」」
「でかした、まき絵! トドメだよ、いいんちょ、アリちゃん!」

 よろめく3人。そこへ、裕奈が真っ先にあやかとアリエッタに枕を振り被った。

「ガキの遊びにムキになんなよ……」
「あたたっ」

 が、呆れて溜息を吐いた千雨に足を引っ掛けられて裕奈は床に倒れる。

「おぉ! エモノたくさん発見アル!」

 更に、階段の上から古と楓ペアがやって来た。古は枕を両手に持ち、更に楓の枕を足の指で挟んだ状態で襲い掛かってくる。

「チャイナピロートリプルアターーック!!」

 二つの枕が裕奈と千雨に、そして足の枕があやかに炸裂する。

「にょほほ」
「ぐぐ、やりましたわね〜〜〜」
「負けない」

 イオンと楓、千雨を除いた5人で枕で叩き合う。その中では武闘派の古が優勢だった。

「ちっ、千雨さん、援護を………っていない!?」

 あやかはパートナーの千雨に姿を求めるが、彼女の姿はドコにも無かった。

「あー、マジかよ、まったく……付き合ってらんねーー。
 私はさっさとズラからせてもらうよ。HPの更新もあるしな………」
「コラ、長谷川何やっとるかーー!」

 下らな過ぎる催しに呆れ果てて帰ろうとした千雨だったが、その途中で新田に見つかってしまった。

「ぎゃぴーーーーー!!!!!」
「!? 今の声は!?」

 千雨の捕まってしまった悲鳴を聞きつけた一同は、一旦、戦闘を中止する。

「やばい! 鬼の新田だ!」
「逃げますわよ! 皆さん!」
「イオン様! 逃げるです!」
「は、はい?」

 一斉に逃げ出す7人。アリエッタがイオンの腕を掴んで真っ先にその場から離脱した。

「お先ー!」
「ぎゃふん!」

 それに続いて古が裕奈を踏み台にして楓と共に逃げて行った。それに目を回す裕奈は、新田に見つかってしまう。

「あっ、コラ! 明石 お前もか! 2人ともロビーで正座」
「「びぇーーん!!」」

 2人の哀れな犠牲者を陰から、コッソリとまき絵とあやかが見る。

「ゆーな、ごめん」
「死して屍拾う者無しですわ。
 しかし、あの体力バカ2人だけでなく、アリエッタさんも案外武闘派ですわ。あの動きは、間違いなく何らかの実践訓練がある筈」

 まぁ伊達にアリエッタも一部隊を率いていた訳ではないし、そんじょそこらの格闘家よりは動ける。

「この3名を何とかしない限り、ネギ先生の唇は100%奪われますわね」
「えぇーーーっ、そんなぁーーー!」
「とにかく! あの3人だけには譲れません。まずは、一時休戦とゆーコトで……」
「OK! 同盟だね。その代わり早い者勝ち。恨みっこ無しだよ」

 戦力が半減したまき絵とあやかは、その場で同盟を結んだ。


<と、とうとう、犠牲者が出ました!! 生活指導、鬼の新田に捕まったのは長谷川、明石の両名!! 3班、4班はオッズ大幅ダウン!!>


「あ、朝まで正座はキツいですね……」

 新田の領域から逃れたイオンとアリエッタは、真っ直ぐネギの部屋を目指す。体力のないイオンは、朝まで正座させられると思うと、顔を青くして恐怖した。

「…………大丈夫です」
「アリエッタ?」
「アリエッタ、イオン様をお守りするです。今夜だけ、イオン様の導師守護役(フォンマスターガーディアン)に復帰するです」
「…………ありがとうございます」

 少し恥ずかしそうに言うアリエッタの言葉に、イオンは微笑んでお礼を言った。
 しかし、それなら最初からこの企画に巻き込まないで欲しかった、と思いつつ。


「ゆ、ゆえ〜〜〜〜」
「何ですか? 急ぎますよ」

 大穴の夕映、のどかペアは意外にも着々とネギの部屋に進んでいた。その方法は、内部からではなく外部から。壁の縁をほふく前進して移動していた。

「何で、ネギ先生のとこ行くのにこんなとこ通ってるの〜〜?」
「私の見立てでは、このルートが最も安全かつ速いのです。
 ネギ先生の部屋は端っこですので、どうやっても必ず敵や新田先生に当たってしまいます……」
「そっか。だから裏手の非常階段から、すぐ中に入れば……で、でも非常口には鍵がかかっているかもー」
「こんなこともあろうかと あらかじめ鍵を開けておいたです」
「ゆ、ゆえ。すごいー!」
「コラ、のどか! お礼は目的を達成した後ですよ」

 2人は屋根を移動し、非常口の扉を開けると、ネギの部屋は目の前だった。

「そこの304がネギ先生の部屋です。さぁ、のどか今の内に」
「う、うん。ありがとう」
「まだ誰も居ない。チャンスだよ」
「あうう、怖いです〜〜〜」
「何とか辿り着きましたね」
「新田先生は長谷川とゆーなの見張り、他は警戒して遠回りしたです」

 その時、吊り梯子が天井から降りて来て、天井裏から風香、史伽ペアが現れる。それと同時に、向こうの廊下からイオンとアリエッタもやって来た。

「ふーちゃん、ふみちゃん!? それにアリちゃんとイオンさんも!?」
「あっ!?」 
「しまった! やるよ史伽!!」
「「鳴滝忍法! 分身の術!!」」

 風香と史伽は、サッと体を交錯させて枕を掲げる。

「別に分身してないです〜〜〜!?」
「僕とシンクでも出来ちゃいそうですね」

 ただ双子だから出来る技なのでのどかがツッコミを入れ、イオンが的外れな意見を述べる。
 風香が枕を手裏剣のように投げようとした所へ夕映が枕を投げつけた。

「甲賀しゅり……もげっ!?」
「アナタ達は私が相手です」
「おのれ、ゆえ吉! ちょこざいな! 我ら、甲賀忍群に敵うと思うてかでござる!!」 
「お、思うかてか! でござる」

 意気込む鳴滝姉妹に向かって夕映は無言で枕でぶっ叩く。

「や、やったねー!?」
「あっ、何か凶器を取り出したです!?」

 夕映は両手に分厚い本を持って鳴滝姉妹に詰め寄る。

「ゆえ吉、本で殴るの反則ーーーッ!」
「枕の上からなら無問題です!!」

 そう言って殴りかかろうとする夕映だったが、鳴滝姉妹の間にアリエッタとイオンが割って入った。

「! アリエッタさん、イオンさん!」
「ゆえ……私、夕映と戦いたくない、です」
「ア、アリエッタさん……」

 やはり仲のイイ友人同士。夕映も辞書の手を止めた。
 アリエッタとの友情を取るか、のどかとの友情を取るか。友情の板挟みに苦しむ夕映。

「風香さん、史伽さん、大丈夫もっ!」

 その間、イオンは振り返って鳴滝姉妹に微笑みかけたが、風香の枕が顔面にぶつかった。

「イオン様!?」
「お、お姉ちゃん、何で!?」
「甘いよ、史伽! これは戦争なんだよ! 隙を見せたら狩られるんだから!」

 その言葉を聞いた瞬間、夕映は背中を向けたアリエッタに向かって辞書を振り下ろした。

「わきゃん!?」
「あ……」
「ゆ、ゆえ……」

 アリエッタは目に涙を浮かべ、振り返る。

「ゆえのバカーーー!」
「今だよ! 史伽!」
「あ、あううー!

 友情を裏切った夕映にアリエッタの怒りが、思わず対応する夕映。そこへ、風香、史伽までもが加わってしまう。

「く……のどか! ココは私が食い止めるです。のどかは早くその扉から中へ………!!」

 もう破れかぶれといった感じで応戦する夕映は、怯えているのどかに向かって叫ぶ。が、目の前の余りにも凄惨(別にそうでもない)な光景に、のどかが戸惑っていると、古と楓ペアもやって来た。

「およっ! 見つけたアルよ!」

 夕映は歯噛みすると、戸惑うのどかの背中を押して無理やりネギの部屋へ入れた。そして、そのまま古とも戦闘に入る。

「ひゃああああああああ!!!!」

 しかし、のどかを部屋に入れて間もなく、突然、彼女の悲鳴が聞こえ、皆は戦闘を中断した。

「「のどか!?」」
「本屋! どーしたアルか!?」

 慌てて部屋に入ると、そこには目を回して気を失っているのどかがいた。窓は開き、カーテンが風に揺らされている。

「しまた! 窓から逃げられたアル!」
「史伽、追うよ!」
「あ、お姉ちゃん!」

 真っ先に窓から飛び降りる鳴滝姉妹。古、楓も後を追った。

「のどか! しっかりするです、のどか!」
「イオン様、ネギ先生はドコに?」

 のどかを夕映に任せ、アリエッタは部屋に見えないネギの行方をイオンに尋ねる。

「ネギ君が気絶したのどかさんを置いてドコかへ行くなんて考えにくいですが……嫌な予感がします。探しましょう」

 イオンの意見にアリエッタは頷き、2人も急いで部屋から出て行った。


<え、えーーーと、5班、宮崎のどかが果敢にもネギ部屋に突入しましたがどうやらキスは失敗した模様。ネギ先生は逃走しました! 各オッズは変わらず>

 ハプニングに対しても、これはこれでナイスだと実況する朝倉に、恐る恐るモニターチェックしていたカモが話しかける。

「ね、姉さん。朝倉の姉さん」
「何よ?」
「何か、俺っちの目の錯覚かなぁ……ネギの兄貴が6人いるように見えるんだけど」
「な……!?」

 各モニターに一人ずつ映っているネギの映像を見て、朝倉は驚愕した。


「ネ、ネギ先生〜。いらっしゃいませんかー?」

 あやかは大広間に入り、ネギを探していた。

「むむむ……304から逃げたとは聞きましたけど……ネギ先生は一体ドコへ……」
「いいんちょさん」
「!?」


「ネギく〜〜〜ん。出ておいでーー。アメあるよー」

 一方のまき絵は、餌でネギを釣ろうとしていた。

「う〜〜〜ん、ネギ君、アメよりもちチョコの方が好きかな? あ、こりゃ美味しい」

 餌である筈のアメを食べるバカピンクことまき絵。

「まき絵さん」
「!」


「くーふぇさん」 
「「?」」


「史伽ちゃん」
「あ! ネギ先生!」


「イオンさん」
「あれ、ネギ君、ココにいたんですか」


 各ペアの前にネギが現れた頃、ネギの部屋では、夕映がのどかを寝かせていた。

「ネギ先生は私がきっと連れてきますから、ココで休んでいるんですよ、のどか」

 と、意気込んでネギを連れて来ようとする夕映だったが、部屋を出ようとした途端、扉が開いてネギが入って来た。

「ネ、ネギ先生!?」
「あ、どうも。夕映さん……」
「丁度良かったです、先生。実はあの……」
「のどかさんは寝てるんですね……それは僕も丁度良かった。
 実は、夕映さんに話があるんです」
「え……な、何ですか?」

 いきなり自分に話があると言われて驚く夕映だが、無視することも出来ず、尋ね返す。すると、ネギは恥ずかしそうに頬を染めて言った。

「あの、突然こんなコト言いにくいんですが……色々と考えて僕やっぱり……ホントは……あの……僕……夕映さんのコトが……」
「!?」
「キス……してもイイですか? 夕映さん」


「え……キ、キキ、キス……ですか?」
「はい……」


「チューしてもイイですか?」
「え……」


「その……お願いがあって……キスを……」
「へ!?」


「今から史伽ちゃんの唇をいただきます」 
「「な゛っ」」


「イオンさん……キスして下さい」
「………………………………………………………………………………はい?」
「………………………………………………………………」


 6人のネギが同時に、5人の少女+1人の男に向かってキスを求めた。


<おおーーーっと!? あ、あれれ? これはどーゆーコトだ!? ネギ先生が6人!? しかも一斉に告白ターーーイム!!>
「おおーー! コレ、ど―ゆ―こと!?」
「ほわ〜〜〜」
「す、すご―――い! 一体どれが本物やの!?」
「まさか影武者とは……」
「スゴーーイ! 大どんでん返し! 盛り上がってますよーー♪」
「ま、まさかホントにイオン君とネギ君が……じゅるり」


 突然の出来事に朝倉は実況を入れるが、各部屋では大盛況だった。


「あーーーわわわ! 大変だ大変だ! 兄貴が6人も〜〜〜!?」
「何なの!? 何なの!? アレは〜〜!? アンタ妖精でしょ! 何とかしなさいよ!」


「イ、イオン様……」
「ちょ、ちょっと待ってください、アリエッタ! ネギ君、どうしたんですか!?」

 信じられないといった感じで見てくるアリエッタに、イオンは慌てた。そりゃ、いきなり同性からキスして下さいなんて言われたら、誰だって驚く。

「イオンさん……」
「ま、待ってください、ネギ君。冷静になってください! な、何で僕にキスして欲しいんですか?」
「イオンさん……キスして欲しいです」
「ちょ、ちょっと……」

 ネギはグッとイオンの両腕を掴んで顔を寄せて、潤んだ瞳で見つめてくる。アリエッタに助けを求めようとしたイオンだが、彼女は顔を真っ赤にして両手で目を隠しながらも、しっかりと指の隙間で見ていた。

「(ドコの誰ですか、彼女に変な知識植え付けたの!?)」


「(イケー! ネギ君! 次の同人は、この系統で行くわよ!)」←変な知識の根源


「イオンさん……」
「ちょ、ちょっと……!」

 10歳の子供の腕力に勝てないイオンの唇にネギの唇が迫る。

「(うう……す、すいません、アニス……)」

 つい心の中で彼が慕っていた少女に謝り、イオンはギュッと目を閉じる。が、突然、ネギの動きが止まった。イオンは、何もないので恐る恐る目を開ける。

「ネ、ネギ君?」
「………………」

 ネギは何やらボーっとしていたが、突然、走り出した。

「ネ、ネギ君、ドコへ!?」
「追うです、イオン様」
「アリエッタ……」

 ちっとも助けてくれなかったのに、いざとなるとネギを追うアリエッタ。イオンは彼女に手を引かれながら、複雑な心境で溜息を吐いた。
 やがて2人はロビーに出ると、そこには、なぜか5人のネギと、残ったメンバー全員が鉢合わせになった。

「え、え〜〜〜!? ネギ先生がいっぱい〜〜〜!」
「気をつけて。恐らく朝倉さんの用意したニセモノです」

 驚く一同に、夕映が告げる。その中で、イオンとアリエッタは、このカラクリに気づきつつあった。

「アリエッタ、これは……」
「ハイ。分かってるです」

 正座させられている裕奈が新田は3階に見回りに行ったと聞いて、皆がそれぞれネギを狙う。

「よーし! とにかく、どれでもいーからチューするアル!」

 古が真っ先に飛び出し、楓にネギを捕まえて貰うと、その頬に口付けした。

「えーと、では任務完了ということで……ミギでした」

 ネギがそう言うと、突然、白い煙を巻き上げて消え去った。

「やっぱり……」
「朝倉のニセモノ……かな?」

 イオンとアリエッタは、これは魔法で作られたニセモノのネギだと判断し、急いで捕まえようとした。

「あっ、コラ! 何だこの煙は!?」
「まずい! みんな新田だよ!!」

 と、そこへ騒ぎを聞きつけた新田がやって来て、煙が立ち込めているので声を上げる。そんな彼に、残りのネギが「ちゅー!」と叫んで向かっていき、膝蹴りをぶちかました。

「ぬごっ」
「あわわわわ、に、新田先生がーーー……」
「こうなってはもはや後戻りはできませんね」

 額から煙を上げる新田を寝かせて、宣告する夕映。

「ええいっ! ヤケですわ! 追いますわよ」

 あやかに続き、皆がそれぞれのネギを追いかける。
 アリエッタは、人形を大きく振り被り、前方に逃げるネギに向かって投げつけた。倒れるネギを押さえ込み、その頬に唇を当てる。

「任務かんりょー。わぎでした」

 すると、ボゥンと白煙を巻き上げ、そのネギも消えた。

「ア、アリエッタ! 大丈夫ですか!?」
「だいじょーぶです……」

 煤焦げたアリエッタが、ケホッと咳込みながら答えるが、イオンからは彼女から並々ならぬ怒りを発しているのを敏感に感じ取った。

「朝倉……シメる、です」
「あぁ〜……アリエッタが本気で怒ってます……」

 すると、あちこちから爆発音が聞こえた。その音は全部で3つ。どうやら残ったのは全てニセモノだったようだ。

「イオン様、行くです」
「は、はい……」

 本気で怒ったアリエッタは、マジで怖いのでイオンはコクコクと激しく首を縦に振った。


「ネギ先生がこんなアホな騒ぎに参加するとは思えません。だから本物は別の場所にいるはずです」
「う、うん」

 その頃、夕映はのどかと共に本物のネギを探していた。その際、夕映は先程の偽ネギとのコトを思い出す。
 いきなり『キスしてもいいか?』と言われ、驚いた夕映は尻餅を突いた。そこへ、偽ネギが押しかかってきて、唇を奪おうとした。その時、彼女は不覚にも胸をときめかせてしまった。
 咄嗟に見たモニターに、ネギが沢山映っていたのでニセモノだと気付いて、成敗した。
 が、ネギにときめいてしまったのは事実だった。

「どうしたの? ゆえ」
「い、いえ! 何でもないですよ!?」

 のどかに尋ねられ、夕映は慌てて何でもないと首を横に振った。

「ただいま〜。あれ? 何か騒がしいような……」

 と、そこへ玄関から本物のネギが入って来た。

「ホラ、のどか……」
「あ……」

 夕映に背中を押され、のどかはネギの前に出る。

「あ、宮崎さん……」
「せ……ネギ先生……」
「あの……お昼のことなんですけど……」

 告白の件だと分かり、のどかは慌てた。

「い、いえー! あのコトはイイんです……聞いてもらえただけで……」
「すみません……宮崎さん……ぼ、僕……まだ、誰かを好きになるとか……良く分からなくて……いえっ……もちろん宮崎さんのコトは好きです で でも僕、クラスの皆のコトが好きだし……アスナさんやこのかさん、いいんちょさんやバカレンジャーの皆さんもそーゆーの好きで……あ、それにあの、やっぱし先生と生徒だし……」
「い、いえ……あの……そんな、先生……」

 余りに初々し過ぎる2人。自然と声も小さくなる。ちなみにロビーには、裕奈や千雨もいて、しっかりと聞き耳を立てている。

「だから僕、宮崎さんにちゃんとしたお返事はできないんですけど……あの、と、友達から……お友達から始めませんか?」

 妥協というか、当然というか、ネギのその言葉にのどかは驚きながらも、笑顔で頷いた。

「はい」

 まぁ10歳じゃ、こんなものだろうと、夕映は思いつつジュースを飲む。

「えーと、じゃあ戻りましょうか」
「は、はい」

 と、2人が部屋に戻ろうとした所で夕映がのどかに足を引っ掛けた。のどかは、勢い良くネギの方へ倒れ込む。

「! マズいです」
「へ?」

 そこへ、戻って来たアリエッタが声を上げると、いきなりイオンの腕を掴んだ。

「あ」

 が、既に遅し。ネギとのどかの唇が重なり合った。驚くネギとのどか。が、次の瞬間、飛んできたイオンがのどかを後ろから吹っ飛ばした。

「え?」
「は?」

 唖然となるネギとイオン。気がついたときには、2人の顔は間近にあり、そのまま勢い良くネギとイオンの唇も重なった。


「「「「「「「「う、うそーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!?」」」」」」」

 旅館内に信じられない結末で大声が轟いた。


「間に合わなかったです……」

 魔力を感じ、ネギとのどかの間に仮契約が交わされてしてしまったので膝を突くアリエッタ。ついでに、イオンとの間にも仮契約が交わされてしまった。
 ネギとイオンは、互いにキスしてしまい真っ白になって燃え尽きる。


「よっしゃーーー! 宮崎のどかとイオンの兄さん、仮契約カード、ゲットだぜーーー!!」
「おおっ! ニセ先生とのキスでもスカカードは出るみたいだね! 計7枚じゃん」

 一方、色々とハプニングはあったものの、しっかりと仮契約カードをゲットしたことに喜ぶカモと朝倉。

「大掛かりだった割には、情けねぇ成果だったが仕方ねぇぜ!」
「よっしゃ! ずらかるよ、カモッち」

 悪徳胴元よろしく、トトカルチョで親の総取りを狙って逃げようとする朝倉とカモだったが、部屋を出た途端、怒りの形相の新田が待っていた。

「……なるほど朝倉、お前が主犯か」
「ぴぎいいい!!」
「全員朝まで正座ーーー!!!!」

 ネギ、イオンを含め、今回の騒動に参加してしまった全員が朝まで正座させられる運命になってしまった。


「……………」(そ〜)

 イオンは恐る恐るシンクの部屋(と言っても火山だが)に繋がる扉を開く。が、惑星預言の書かれた譜石の所にシンクはいないで、その奥の吊り橋の向こうにある穴が巨大な岩で塞がっていた。
 その岩には紙が一枚張られており、『…………しばらく話しかけるな』と書かれていた。

「あははは…………やっぱり怒ってる」

 天岩戸みたいに閉じ篭っちゃったシンクに、イオンは苦笑いを浮かべるしかなかった。


 後書き
 アリエッタではなく、イオンで仮契約でした。彼の仮契約の効果は、近い内に明らかになります。それでは!

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