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▽レス始

「Fate/黒き刃を従えし者20(Fate+オリ)」

在処 (2007-02-25 03:36/2007-02-25 13:45)
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「士郎〜〜〜っ!
 熱出して休んだって聞いたけど如何し……って、また増えてるー!!」

虎、襲来。
病人が二人も居るって言うのに容赦なし。

「今度は何?
 また切嗣さんの娘とか言わないでしょうね!?
 そんな事言っても今度こそ信用しないって言うか!
 風邪引いたなんて嘘付いて一日中いちゃいちゃ!?
 それも遠坂さんと桜ちゃんまで巻き込んで!?
 って言うか血は繋がってなくても兄妹でしょ!!!
 うわぁぁん!
 シロウのケダモノぉぉ!!
 きゅっ!?」

暴走を続ける虎さんを、桜が〆た。
コキッと。
……桜、意外とやるね?

「さぁ、夕御飯ですよ?」
「……な、なぁ、桜?」
「はい、何でしょう先輩?」
「いや、いい。
 なんでもない」
「……桜、あんた意外とやるわね」
「えぇ、何の事ですか遠坂先輩?」
「いいえ、いいわ。
 それより御飯にしましょう」
「えぇ、凛の意見に賛成だ」
「うん。ずっと寝てたけど御腹空いちゃった」

明らかに話をそらしたリンの言葉にセイバーが素で同意。
イリヤは大きな汗が見える辺り、話をそらしたのかも。

「……うん。早く食べないと冷める」
「そうだな。あぁ、全くなんも問題無いな」

……後で虎さんが暴走するかもしれないけど。
一人分は取り分けておいた方が良いかも。
でも、こうして顔を突き合わせても争いらしい事は起きない。
初め、イリヤが桜を見たときの驚いたような顔が気になるけど。
一体なんだったんだろう?
聞いても答えてはもらえないと思うし、聞く事はしない。
でも、それは重要な事なんだろうと、私の中の何かが告げている。
……少し、調べた方がいいかもしれない。
手遅れになる前に。


Fate/黒き刃を従えし者


結局、起きた時虎さんは桜がした事覚えてなくて。
虎さんが何か行動起こす前にリンが言い負かした。

「さ、三人目?
 切嗣さんの浮気者ぉ!」
「ねぇ、三人ってどういう事?」
「……私達も、そう言う事になってるから」
「ふーん……」

『あっはっは、それは強ち冤罪とも言えないかなぁ』なんて幻聴を聞き流し、イリヤの疑問に答える。
虎さんはそのまま走り去って、何処かへ行ってしまったけど。
何気に私が持っていた夕食を奪い取っていった辺り余裕があるのかもしれない。
食べ終わったら出てくるだろう。

「じゃあ、私そろそろ帰るわ」
「ん? なんだ、泊まっていかないのか……
 えっと、イリヤスフィール?」
「イリヤでいいわ。
 アーチャーもそう呼んでるし」
「じゃあ、イリヤで」
「泊まりたいのは山々だけど、セラとリズが心配するから」

聞いた話、セラとリズっていう人はイリヤのメイドさん。
メイドなんて雇えるなんて、お金持ちっぽいってリンが言ったけど。
実際はお金とか関係ないんじゃないかと思う。
イリヤはホムンクルス。
なら、使用人もそうなんじゃないかと思う。

「……じゃ、また遊びに来るわ」
「って、何敵……」
「敵……ってなんですか?」
「あ、いや……なんでもないわよ桜?」
「そうですか?」

……リンのうっかりは治らないらしい。

「あぁ、いつでも来いよ。
 待ってるからさ」
「……うん。
 それじゃまたね、お兄ちゃん、お姉ちゃん」

イリヤはにっこりと満面の笑みで別れを告げる。
けど。

「ぅ!?」
「お兄ちゃんに、お姉ちゃん……ですか?」

そのお姉ちゃんというのは、私とセイバーに向けられたらしい。
その視線が悪戯っぽい光を放っていた。

「あら、私もシロウもアーチャーも貴女もキリツグの子供でしょ?
 間違ってないと思うけど?」
「それは……そうですが」
「……うん。お休み、イリヤ」
「うん。ばいばいお兄ちゃん、お姉ちゃん」

そういって、イリヤは振り返りもせずに屋敷を後にした。


「……いいわ。
 そこまで言うんだったらあなた達を切嗣さんの娘だって認めてあげる。
 って、あれ?
 一人減った?」

イリヤを見送ってすぐ、虎さんが居間に戻ってきた。
手には食べ終えた食器を携えて。

「イリヤちゃんなら帰りましたよ。
 何でもあんまり遅くなると家の人が心配するそうです」
「え?
 なに、また居候が増えるとか、そういう話じゃなかったの?」
「イリヤさんは日本へは観光に来たらしく、宿は取って有ったそうです。
 衛宮君の所へは、ただ挨拶に寄っただけだと聞きましたけど」
「あらら……それは悪いことしちゃったかなぁ」

虎さんはなんだかバツが悪そうに苦笑する。
……それはともかく、何を言いかけていたんだろう?

「ま、それは置いといて」
「置いとくなよ虎」
「私を虎と呼ぶなぁ!!!」
「「「「―――っ!」」」」
「……耳、痛い」

士郎やリン、桜だけでなく、セイバーまで繭をしかめて耳を塞いでいた。
凄い声量だ。
歌手にでもなる気だったんだろうか?
腹式呼吸でのどに優しい発声方法だった。

「もう、それはいいの!
 ともかく、娘さんだってのは認めてあげてもこの家で暮らすことは認めないわ。
 この家で暮らしたいのなら私を倒すことね」
「はぁ……」
「ふっふっふ……」

なにやらよからぬ事を企んでいるみたい。
笑いが底なしに怪しかった。

「ふ、藤ねえ何考えてんだよ?」
「藤村先生、お、落ち着いてください」
「うるさぁーい!
 ともかく、勝負よ!
 皆道場へ移動!!」

と、言われてみんなしてぞろぞろと部屋を出る。
……うん。
従わないほうがなんだか大変なことになりそう。

「「……はぁ」」

士郎、桜、溜息付くと幸せ逃げるよ?
で、道場。
本当に、何考えてるんだろう?

「いい、この衛宮邸に住むにはある一定の力が必要なの。
 切嗣さん然り、士郎然り、この私然り皆剣道の段持ちよ。
 だから、私に負けるようならこの家に住む資格なんてないわ」
「ふ、藤村先生無茶苦茶ですよ!」
「あー」
「……後でこっ酷く落込むのがオチでしょうね」
「そうだろうな、遠坂」

無謀。
この身は曲りなりにも英霊。
それを魔術を修めているでもない人間が、剣で抗おうというのか。

「――――それは、私に剣を取れ、と?」

その誘いに乗ったのは、セイバーの方だった。

「そうよ。私より強ければ許してあげましょう。
 でも、私にまけるようなら素直におうちに帰りなさい!」
「構いませんが。
 それは如何いった理屈でしょうか?」
「今まで士郎を見守ってきた私が住めないのに、後から来た人に簡単に渡せる訳無いでしょうが!!!」
「……あぁ、なるほどね」
「って言うか、藤ねえがここに住めないのは雷画爺さんが禁止したからだぞ?
 来るたびにものぶっ壊しまくるから」
「そうだったんですか……
 なんか藤村先生らしい理由ですね」

……まぁ、八つ当たりらしい。
本人、勝つ気満々な辺りが痛々しい。

「だから、私より弱い奴なんて要らないの!
 私より強ければ用心棒位にはなるでしょうから、住まわせてあげないでもないわよ!」
「は、はぁ……要するに貴女を納得させればいい訳ですね?」

すねた様に竹で出来た模擬刀……竹刀を弄る虎さんに、セイバーが戸惑いながら返す。
……まじめに相手すると疲れるだけだよ、セイバー?

「そうよ、でも」
「あっ!」
「私を納得させるのは大変なんだからねっ!」

ダンッ! と大きく踏み込んで竹刀を振り下ろす。
セイバーは構えるどころか、武器すら持たされていないのだけど。
まぁ、そんな事はハンデにもならない。
……因みに、虎さんを納得させる事が大変な事くらい、この場に居る全員が知っているのだけど。

「うわぁ、藤ねえ滅茶苦茶だ!」
「ふ、藤村先生卑怯ですよ!」

士郎と桜が虎さんを非難する。
リンは溜息をついて状況を見守る。

「――――え?」
「――――――」

虎さんの疑問符。
セイバーは一瞬虚を疲れたような顔をしたが、それも本当に一瞬。
虎さんの胴が打ち出された瞬間に手首を掴み、軽く返してその竹刀を奪い取ってしまった。

「……あれ?」

静寂が支配する道場に、ただ虎さんの戸惑いの声だけが響く。

「あ、ほんと?」

なにがほんとなのか判らないけど。
この覆すなど夢のまた夢な実力差は本物です。
段々と顔色が悪くなる虎さん。
この時点で互いの戦力差が絶望的な事に気付いたらしい。
……やっと、とも言える。

「構えろ、というのなら構えますが。
 そこまでしなければ判らない腕でもないでしょう」
「ぅ――――は、はうぅぅ」

ずずず、と後ずさる虎さん。
その顔色は負けを認め、しかしそれでも認められない心情があるのだろう。
しかしそれも。

「勝負は付きました。
 認めてもらえますか?」
「う……うぅ、ぐす」

肩を落として項垂れる虎さん。
意地だけでは如何にもならない事もある、と学んだ瞬間だった。

「うわああぁん!
 ヘンなのに士郎とられちゃったぁ!」

士郎達が耳を抑えて後ずさる。
と、その時セイバーが手に持っていた竹刀が転がって来た。
恐らく声に驚いたのか、とっさに手放してしまったらしい。
戦闘中であればそのような事はしないだろうが、まぁ、今回は仕方ないだろう。
戯れのようなものだし、そもそもこれは武器というより玩具なのだから。

「…………」

私はそれを拾い、片付けようとして……ふと。
ちょっと考え、その思い付きがそう悪い事でもないように感じる。
……ん。
私は竹刀を片付ける事をやめ、代わりにもう一本手に取る。

「……セイバー」
「はい?」

私は振り返ったセイバーに竹刀を投げ渡す。
その行為に、とっさにセイバーは剣を取る。

「む……アーチャー?」
「……ん」
「ふぅ」

セイバーが私に問いかけ、私は頷く事でそれに答える。
小さく溜息をついてセイバーが構える。

―――その剣の意思に、士郎やリン、桜だけでなく、泣いていたはずの虎さんまでも注視する。

「……ありがとう」
「いえ。正直、私自身興味がありますから」

貴女がどれ程強いのか。
そう、言外に含め、笑う。
それは間違いなく、戦闘に愉悦を覚える戦士の笑い。
単純に技術を競いあう事の楽しみを知るものの笑い。

「…………」

私も構える。
それは、目の前のセイバーと同じ。
そしてあの、私の体を借りて顕現した彼女と同じ構え。
そう。
私は一度、戦わなくてはいけない。
その技術を私のものとするために。

「以外ですね。
 貴女は構えを取らないものと思っていたのですが」
「……試したい事があるから」
「そうですか……では」

――手加減は無用ですね。
言葉でなく、その意思が、踏み込みがそれを伝える。
私はそれに遅れる事無く返しの太刀を打ち込む。
士郎達が息を呑む雰囲気が判る。
しかしそれは、最早邪魔な認識でしかない。
私はそれを消し去り目の前の『敵』に集中する。
決まり事は三つ。
純粋な剣技のみで戦う。
魔力の使用不可。
そして、手加減なんてもっての他。
この三つだけ。

――剣戟が奔る。

相手の隙など待っていられない。
そもそも、隙など待っていても生まれはしない。
隙を突くなんていう事は、このレベルの戦闘では為し得ない。
なぜなら。

――これは技術で持って精霊に迫る、英霊同士の戦いなのだから。

同じ剣筋、同じ動きで持って互いに攻め、防ぐ。
否。
其れは僅かに私が不利か。
なぜならこれは借り物の技。
私の戦い方ではないのだから。
だから、実際に戦闘するまでに是をモノにする必要がある。
だが、今はまだ早い。
今はなれる時だ。

――一合二合……十合二十合と。

剣戟は進む毎に激しさを増す。
最早常人に捕らえられる速度ではない。
士郎達には打ち合った瞬間一瞬速度が落ちたその瞬間だけが捉えられる限界だろう。
私達はその何倍もの数を打ち合い、私が押される。

―――ダンッ!

大きく打ち合った刹那。
セイバーは後ろに飛ぶ。
追撃などしない。
今だ終っては居ないが、仕切りなおすべき時ではある。

「……準備運動はこの位でいいですかアーチャー?
 まさかこの程度ではないでしょう?」
「……うん。
 そろそろ、本気で行こう」

私は構えを解き、無形に型取る。
セイバーは構えを変えず。
否。
変える必要などない。
私と違い、彼女は其れこそが彼女の構えなのだから。

「……行く」

先とは違い、今度は私が仕掛ける。
ただ一刀の下に敵を降す剛剣。
その一撃を、セイバーは難なく躱し反撃の一刀。
弾く。
受け、流し、躱し。
その中でどんどん組み上げられていく私の剣。
だがそれでも、一歩及ばない。
まだ足りないのだ、セイバーと拮抗しうる一手が。

「……ふっ!」
「はっ!」

斬撃の速さはほぼ同等。
僅かに彼女が上か?
膂力で見れば、私のほうが遥かに上。
しかし彼女が私に打ち勝っている理由は。
そう。
技術だ。
今の私はあの時のバーサーカーと変わらない。
いや、バーサーカーと違い技を持ってはいるが。
それでも力で勝っていながら其れを超える業で押されている事実は変わらない。
まだ、私は彼女には勝てない。
そして其れは、この身体の使い方が彼女に劣っているという事。

「くっ!」
「……っ!」

ガンっ!
と。
やはり打ち合いを持って幕が引かれる。
まだまだだ、私は。
せっかく見本を見せてもらったというのに、其れを活かせていない。
それでも、少しはモノに出来た。

「流石ですね。
 これほどとは思いませんでした、アーチャー」
「……まだまだ。
 私はまだセイバーに勝てない」
「そうでしょうか?
 少なくとも護りに関しては、私より貴女の方が上手だ」

そうだろうか?
そうかもしれない。
彼女の剣は攻性の剣。
私の剣は防性の剣。
それであるなら、護りに関して私が負ける訳には行かない。

「なぁ」
「……何?」
「なんでしょう、シロウ?」

士郎からの呼びかけに、私達は振り返る。
そこには、何か決意したような目の士郎が居た。

「俺に剣の稽古をつけてくれないか?」
「何を言ってるのですか?
 貴方が戦う必要など無い」

セイバーが眉を顰めながら否定する。
……如何だろう?
士郎が戦う術を持つ事は、そう悪い事でもない。
あくまで戦う術を持つ事は、だ。
戦う事が出来ても戦うべきではない。

「それでも、俺のところに危険が及ぶ事もあるかもしれないだろ?」
「それは、私とアーチャーが信用できない、と?」
「いや、そう言うんじゃなくてだな……」

セイバーが不機嫌そうに問うと、士郎は困ったように視線を彷徨わせる。
その視線が、私を捉え『何とかしてくれ』と語る。
……ふむ。
しかし実際問題如何だろう?
戦う術を持てば士郎は戦おうとする。
これは間違いない。
しかし術を持たなかったら?
……変わらない。
どうせ戦おうとするに決まってる。
ならば少しでも生存確率を上げるために剣を教える事は無駄ではないはず。

「……うん」
「アーチャー?」
「……教えてもいい。
 でも、自分で戦おうとは考えないで」
「本当かっ!?」
「アーチャー!!」

士郎が目を輝かせ、セイバーが非難の目で私を見る。
私はそのセイバーに口を寄せ、小声で伝える。

「……セイバー、聞いて」
「納得の行く説明をしてくれるのでしょうね?」
「……うん。
 貴方のマスターは少し猪突猛進なところがある」
「はい。ですから尚の事戦う術など教える事は危険でしょう」
「……でも、知らなくても戦おうとする」
「……む」
「……だから、戦いという事が如何いう事か教えた方がいい」
「なるほど」
「……それに、術を持つ事自体は悪い事じゃない。
 魔術の方も未熟だから、身を護る事位は出来る様になって貰った方がいい」
「判りました」

セイバーが納得したように頷いて、士郎に向き直る。
びくっ、と。
なにを言われるのかと身を竦める士郎。

「シロウ」
「な、なんだ?」
「私が稽古を付ける事にしましょう」
「え? い、いいのか?」
「はい。その代わり、手加減はしませんよ?」
「あぁ、是非頼む。
 手加減されても身にならないしな」

いや、どっちにしろ手加減はするんだけど。
手加減しない一撃なんて加えたら其れこそ竹刀で人が斬れるから。
まぁ、其れはともかく。

「……稽古は構わないけど、とりあえず風邪が治ってから」
「そうですね。シロウ、今日はもう寝てください。
 稽古は明日からでいいでしょう?」

そう。
たぶんもう大丈夫だと思うけど。
一応風邪という事になっているし、今日一日は無理をして欲しくない。
ともかく、そういう事になった。
護りの剣なら私が教えた方がいいのかも知れないけど。
まさかセイバーの領域で私がしゃしゃり出る訳にも行かないから。


後書き
な、何でこんな時間に……
かなり難産でした。
たった15k書くのに5時間半かかるなんて……

レス返し
<<されなさん
はじめまして。
頑張らせてもらいます。

<<樹海さん
いや、20なのは橙子のほうですよ?
青子の方も一般的と言われてるのでたぶん同じ位なんでしょうけど。
まぁ、どっちにしろ士郎以下な訳ですが。
青子は根源に辿り『着いちゃった』から魔法使いなんじゃなかったっけ?
魔術師としての腕は魔法には関係ないとか聞いた覚えがある。

<<清和さん
はじめまして。
なるほど、魔術刻印化ですか。
確かにそれなら内面世界ごと刻印に封印出来るかも知れない。
魔法はその物じゃなくてたどり着き方なんじゃないかなと思ったり。
そうじゃなきゃアインツベルンが苦労してないと思う。

<<九頭竜さん
今回少しは進んだかな?
お休みなさい。

<<最上さん
はじめまして。
ほのぼのですねぇ。
進みませんねぇ……
あ、リズか。
確かにキャラ被ってる様な……


ちょっと改定しました。2-25-13:45

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