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▽レス始

「Fate/黒き刃を従えし者19(Fate+オリ)」

在処 (2007-02-24 01:13)
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「……おはよう」
「……おはよう?
 ――?
 ―――!?
 ――――っ!!!」

それは驚くべき身のこなしだった。
目を覚ました時こそぼんやりしていたが、私を認識してからの行動は正に魔術師の鏡だろう。
一瞬の内に飛び起き、距離を取りつつ魔力回路を起動させ。
―――病気の身体がそれに耐えられず倒れた。

「あぅ……」
「……風邪引いてるのに無茶するから」

私は倒れたイリヤスフィールを布団に寝かせる。
手を額に当て、熱がどの程度かを見る。

「……熱は大分下がったみたいだけど、体力落ちたままだから」
「何で貴女がここに居るのよ、アーチャー?」
「……私がここに居る事、不思議じゃないと思う」
「っていうか、ここどこよ?」
「……衛宮邸」

ぽかんと、目を大きく開けて呆然とするイリヤスフィール。
それはそうだろう。
気付いたら敵の本拠地でした。
なんていわれたら、誰だってそうなる。

「な、何で私こんな所にいるのっ!?
 ―――――あぅ」

再び飛び起き、眩暈がしたのか倒れこむ。
私はその身体の上に布団を掛ける。

「……公園で、拾った」
「捨て猫か私はっ!」
「……なんであんな所に居たの?
 その体調で」
「――――っ!!
 元はと言えば貴女が私を河に落とした所為でしょうが!」

確かに。
それが風邪を引く原因になった事は想像に難くない。
でもそれは、何故あそこにいたのかの理由にはならない。

「……?」
「むー……」
「……なんであそこにいたの?」
「むーー…………」

言いたくないらしい。
可愛らしく頬を膨らませて睨んでくる。
……まぁ、いいか。

「……ご飯あるけど、食べる?」

元々、ここに来た理由はそれだ。
桜が作った卵雑炊。
起き上がれるようなら少しでも食べさせた方が良い。
ちょうど目が覚めたところだったので都合が良い。
それにこのくらい元気なら食べられるだろう。

「お生憎様。
 敵に食料を恵んでもらうほど落ちぶれては」

くぅ〜。
髪を掻き揚げながらそう言い放つ言葉が終らない内に。
可愛い音が部屋に響く。
……御腹空いてるなら無理しないで言えばいいのに。

「……っ!」

真っ赤になって御腹を押さえながら私を睨む。
私はそんなイリヤに。

「……どうぞ」
「うぅ…………」

レンゲで掬った雑炊に息を吹きかけて冷ましてから差し出す。
イリヤはそのレンゲをじーっみつめ。

「……(ぱく)」

一口。

「美味しい!」
「……そう、よかった」

せっかく桜が作ってくれたのだから。
美味しく食べてもらえるなら嬉しい。
私はもう一度同じ様にレンゲを差し出す。

「(ぱく)」

今度は躊躇い無く一瞬だった。

「あぅぅ……ちょっと熱かったわよ」
「……ごめんね」

もう一度。
今度はさっきよりもよく冷まして。

「(ふーふー、ぱく)」

それでも念のため息を吹きかけてから食べるイリヤ。

「早く早く」
「……うん」

ぱくぱくぱく、と。
その後はどんどん食べ続け。

「ご馳走さまー」

よほど御腹が空いていたのだろう。
あっという間に持ってきた分を食べ終わった。

「……これ」
「何これ?」

私はそんなイリヤに、一包の薬と水を出す。

「……市販の風邪薬」
「えー……苦いの嫌ぁ〜」
「……駄目」
「むーー……」
「……駄目」
「むーーー…………」
「……駄目」
「……はぁ、判ったわよ」
「……うん」

イリヤが渋々薬を飲む。

「……うぇ」

ごくごくと、水を一気に飲み干し、それでも渋い顔。
どうやら味が口の中に残ったらしい。

「……さぁ、寝て」
「ん……変なの」
「……?」
「何で敵を看病してるのよ?」
「……病気で苦しい時は、そうする物」
「ふーん……変なサーヴァント。
 普通のサーヴァントなら迷わず殺してるよ?」

……そうなんだろうね。
でも私には出来なかった。
私自身は、これでいいと思ってる。
けど……

「……駄目?」
「知らない。貴女が何考えて様と私には関係ないもの」
「……そうね」
「でも、いいんじゃない?
 少なくとも私は貴女が気に入ったわ。
 ……でも、手加減なんてしてやらないからね」
「……うん」

それはそうだろう。
する理由が無い。
私がこうしてるのは私がやりたいからであって、イリヤが気に掛ける理由にはならない。
なら、いずれ戦う時、手加減なんてしてもらう理由はないし、して欲しくない。
それに。

「……次は私が勝つから」
「…………言うわね。
 いいわ。あの変なのが居ない貴女が、どれだけヘラクレスに対抗できるか期待しておくわ」
「……うん」

私はイリヤの額を押して布団に倒す。

「……寝て。
 夕食には起こすから」
「……本当に変なサーヴァントね。
 ま、いいわ。
 今日は何もしない。
 バーサーカーも抑えておくから」
「……ありがとう」
「むぅ……それは私の台詞よ?
 ……助けてくれてありがとう、アーチャー」
「……うん」

イリヤが瞳を閉じる。
暫くイリヤの髪をなでていると、暫くして穏やかな寝息が聞こえてくる。
……完全に眠ったのだろう。
私はイリヤから離れ、部屋を出る。
……そこには予想通り、リンが待っていた。


Fate/黒き刃を従えし者


「で?」
「……今、寝た」
「そうじゃないでしょ……
 大丈夫なの?」
「……うん。今日は戦わないって言ってた」
「まぁ、嘘付くような娘じゃ無さそうだし……
 信用してもいいかな」

私はリンと並んで居間に向かう。
桜とセイバーの姿は居間には無い。
恐らく士郎の看病をしているのだろう。
私は台所に立って昼食の食器を洗う。

「変なサーヴァントよね貴女」
「……イリヤにも言われた」
「イリヤ? あぁ、イリヤスフィールだからイリヤね。
 ……敵にまで変って言われるなんて相当変わってるわね」

変なんだろうか?
変なんだろう。
自分自身何か間違ってると感じるときもある。
でも、これが私なんだろう。
助けられる者は助けたい。
助けられない者まで無理に手を伸ばす事はしないけど。
私は私の力で如何にかなる範囲の人たちには笑っていて欲しいから。

「……変かもしれない。
 けど、困っている人を助けるのは、人としては当たり前じゃない?」
「…………そうね。
 そうかもしれないわ。
 ……純粋なのね、貴女」
「……判らないけど、私はただ、私の周りの人には笑顔で居てほしいだけ」

私は特別な事はしないし、望まない。
私が手を出せる範囲なんて限られてる。
なら、私は私の力の及ぶ範囲で助けられる人を助ける。
最優先はリン。
ついで桜と士郎とセイバー。
後はそのときに応じてだろう。
でも。

「……心配しなくてもいいよ、リン」
「え?」
「……敵として現れるなら、戦う」
「……そうね。
 貴女のそういうところ好きよ、私」

敵として私の前に立つなら、リンに害するのなら容赦はしない。
その時は何であろうとも叩き潰して進むだけ。
私にとって一番大切なのはリンなのだから。


リンが魔術の鍛錬(と、言うか魔弾の生成)に部屋に戻った為、私は一人居間に残された。
……さて如何しようか。
と、考えながら。
何故か手はお茶を注いでいる。
身体は既に休暇状態に入っているらしい。
結局私は何もする気が起きず、縁側に座ってボーっとする。
……うん。
やっぱり私はこうしているのが好きだ。
何もせず、何もさせられない。
闘いからも日常からも切り離された空虚な時。
何も生み出す事は無く、何かを壊す事も無い。
ただ時間だけが過ぎて行く。

――
―――
――――

……っと。
何時の間にか寝てしまったのだろうか?
気が付けば、夕暮れまではまだ時間が有るものの、少し冷え込んできた。

「あら、起きたのね?」
「……イリヤ?」
「うん。なんか気持ちよさそうに寝てたから声掛けなかったんだけど」
「……起きて大丈夫?」

柱に寄りかかったまま寝ていた私を覗き込むようにしていたその額に、私はこつんと額を当てる。

「―――っ!?」
「……もう、熱は下がったみたい……何?」
「あんた、誰にでもこんなことしてるの?」
「……?」
「あー……いい。なんか判っちゃったから」

イリヤは何が言いたいんだろう?
何か変な事をしただろうか?
そういえば、私が何かするとこういう反応をする人が、時々居る。
……やっぱり変な事をしてるのかもしれない。

「……何か変?」
「変……って言うか……」
「……?」
「む、無表情なのに頭の上に疑問符が出てるのが見える……
 って言うか、可愛く首傾げるなぁ!」

???

「あー、いい。
 こんな事気にしても仕方がないみたいね。
 あなた、無防備すぎ」
「……無防備?」
「いい、絶対男の前でそれやっちゃ駄目だからね!?
 男は狼なの、襲われるわよ!
 ……いや、襲っても叩き伏せられて終る?」
「……何だか判らないけど、気を付ける」
「そうしなさい」

なんだか判らないけど。
イリヤは私の事を心配してくれているらしい。

「……イリヤ」
「なによ?」
「……ありがとう」
「〜〜〜〜〜っ!
 だ、だからそう言うのを止めなさいって言ってるの!
 萌仕草、禁止っ!」

……モエ?
よく判らない単語が出てきた。
後でリンにでも聞いてみよう。
でも。

「……うん。気を付ける」
「貴女、判ってないでしょ?
 判ってないわよね?」

……正直。
よく判らないけど。

「……うん」
「……いいわ。
 えぇ。
 貴女は貴女のままが一番よ」
「……そう?」
「えぇ。そういう方面はリンとかセイバーとか、他の連中に護らせればいいわ」

……?
リンに護られるのは、本末転倒。
ん〜。
でも結構護られてるかも。
主に精神的な面で。

「ま、いいわ。
 まだ夕食まで時間ありそうだから、少し寝るわね」
「……うん。
 後で起しにいく」
「お願い」

イリヤと別れ、私は夕食を作る為に台所に立つ。
さて、何にしよう?
幸い食材は買い込んだばかりだ。
今なら和食洋食中華なんでも作れる。
お客さんも居る事だし、少し張り切って作ろうか。
……主に胃に優しい献立になるのは否めないが。
それでもそれなりの物を作って見せよう。
アーチャーのクラスにかけて!
……なんか違う?


後書き
ほのぼの進んでます。
それに巻き込まれたのか、話の進み具合までほのぼのです。
つまり全然進まない、と。

ところで、青崎橙子の魔術回路は20本らしいですね。
……士郎、実は結構凄いんじゃ?


レス返し
<<九頭竜さん
士郎は寝てます。
凛は干渉は控えるみたいです。
直接対決は今回はありませんでした。
……それと、『イリアスフィール』でなくて、『イリヤスフィール』ですよ?

<<ωライスもどきさん
えぇ、応援してください。
頑張ってみましょう。
いつまで続くか判りませんが。
と、言い始めて早半月……

<<柿大将(偽)さん
冒頭のは何のネタか判りませんでしたが流します。

アーチャーの投影は実際の投影で、
ただ解析の精度が他の魔術師と次元違いな所為で投影の方も次元違いな物が出来るだけです。
固有結界で無い理由は、そもそも衛宮士郎とアーチャーの心象世界その物が違うからです。
って言うか、固有結界って受け継げるんですかね?
『自身の心象世界(心の中の風景)で世界を侵食する』魔術なのに?
宝具の投影は可能ですし、真名の開放も出来ます。
……時間があれば。
宝具の投影は強力な分世界からの侵食が強く、どれだけ魔力を注ぎ込んでも一分もたいないという設定です。
一分と言うのもランクが低いもので、A以上となると1秒から時間と魔力を多く注いでも5秒って所でしょう。
よってそれのみで戦うなら一太刀使い捨ての剣と言った感じになるかと。
思いっきり魔力の無駄です。
高速詠唱なら真名開放できるかも(笑

どこまで長くなるか判りませんが、できれば最後まで付き合ってください。

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