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▽レス始

「Fate/黒き刃を従えし者18(Fate+オリ)」

在処 (2007-02-23 00:42)
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「……買いすぎ」
「あ、あはは……そ、そうですね。
 ちょっと買いすぎちゃいました」

私の両手には片方3袋ずつのビニール袋に入った食材。
これだけ有れば流石に一週間くらいは持つだろう。
……たぶん。
断言できない辺りがなんとも言えないけど。

「あの、半分持ちましょうか?
 一人でそれだけ持つのは……」
「……大丈夫」
「いえあの……」
「……桜、家から持ってきた荷物がある」
「それは……そうなんですけど」
「……だから、いい」

それに、実際に私にとってこの程度の荷物はそれほど重いわけでもない。
セルスクラーフェの方がこの荷物の倍以上重い。
嵩張るのは仕方ないけど、重量的には片手で持ってもまだ余裕がある。
それに、桜と献立を考えながら買い物をするのは楽しかったから。

「そうですか……」
「……うん」
「それじゃ、少し休憩にしましょうか」
「……?」
「この近くに美味しいたい焼きの屋台があるんです」

……?
たい焼き?
それはどんな物なんだろう?
美味しいって言うから、食べ物なんだろうけど。
それに、鯛って魚だよね?
休憩で食べるような物じゃないと思う。

「あ、たい焼きって言っても判らないか……」
「……うん」
「ん〜……ちょっと買ってきますね。
 むこうの公園で一緒に食べましょう」
「……判った」

桜が『江戸前屋』と書かれた簡易な建物の前に立つ。
なんだろう?
あの建物――たぶん『屋台』なんだろうけど――から甘く香ばしい匂いがする。
比較的短い時間で何かを受け取って桜が戻ってくる。
その手には紙袋が一つ。

「……それ?」
「えぇ。あっちで食べましょう」
「……ん」

私は桜と並んで歩く。

「今日買ったのはたい焼きなんですけど、たこ焼きとどら焼きも売ってるんですよ」
「……何それ?」
「どっちも美味しい食べ物です。
 お値段もお手ごろで、おやつにピッタリなんですよ」

たこ……蛸の事だろうか?
あの異界の邪神。
それを焼いた食べ物?
……想像できないんだけど。
むしろしたくない。
……でも美味しいのか。
試してみたい……かも。
もう一つのどら焼きって言うのはなんだろう?
どらって言うと、思い浮かぶのは銅鑼だけど。
アレは鉄だから焼いても真っ赤になるだけで食べれるはずが無い。
……銅鑼で焼いた何かか、銅鑼の形を模した何か……って言うのが最有力候補かな。
まぁ、何時か試しに食べてみたい。

「とうちゃーく」
「……」

そんな話をしている内に、例の公園に付いた。
私と桜はそれぞれの荷物をベンチの上において、並んで座る。
桜が紙袋の中から魚の形をした何かを取り出した。

「はい、これがたい焼きです」
「……あったかい」

手に持った感じは暖かくて柔らかい。
力を入れたら簡単につぶれそうな物だった。

「はい、たい焼きは暖かい内が一番美味しいんです」
「……どうやって食べるの?」
「直接噛み付くんですよ」

一口。
口の中に甘い味が広がる。
しっかりとした、それでいてくどくない甘さは、恐らく小豆。
さっぱりとした甘さには、何かお茶が欲しくなる。
出来れば熱い緑茶。

「……美味しい」
「うふふ。それはよかったです」
「……ありがとう桜」
「いえいえ、結局荷物全部持ってもらっちゃってるから、お返しです」

二口、三口。
魚の形から、甘い物だとは思ってなかったけど。
本当に美味しい。
結局、それほど時間を掛けずに一つ食べ終わった。

「……ご馳走様」
「お粗末様です。美味しかったですか?」
「……うん」

私の返事に、一瞬驚いた顔を見せて、それから笑顔になる。

「よかったです」
「……?」
「アーチャーさん、朝からあまり笑わなかったから。
 でも、今みたいな笑顔が出来るなら、安心ですね」
「……???」

思わず、笑顔がこぼれたみたいだけど。
でもなんでそれで安心なんだろう?
私が笑うのってそんなに可笑しいのかな?

「さ、帰りましょうか。
 そろそろ帰らないとお昼ご飯作る時間なくなっちゃいます」
「……うん」

私達は荷物を持って立ち上がる。
……と。
何か視線の片隅にあってはならない物が。
違う。
居てはいけない人がいたような。
……それも違う。
彼女が今ここに居るのはある意味必然。
なぜなら、彼女にあったから。
……?
何を言ってるんだろう私。

「……まって」
「え? なんですか?」

私は聞き返す桜に返事を返さず、微かに見えた紺色の衣に近付く。

「……イリヤスフィール」
「? あ! た、大変!!」
「………………」
「アーチャーさん?」

私は荷物を置いて、彼女を背中に背負い、荷物を持ち直す。
その体温が、彼女が体調を著しく損なっている事を教えてきた。
……近くに感じるバーサーカーが実体化しないのもその為だろう。
実体化すれば、己がマスターが死にいたる事を知っているからだ。

「……危害は加えない。心配なら付いてきて」
「?」
「……なんでもない。
 この子、凄い熱だから」
「えぇ。取り合えず連れて帰りましょうか」
「……うん」

バーサーカーが付いてくるのを感じながら、私達は衛宮邸に向かう。
……それにしても予想外だった。
何でイリヤスフィールがこんな所に居るんだろう?
こんな体調で出歩いたら殺してくれと言ってるような物だ。
事実、今私が殺そうと思ったら、この子は死ぬ。
そんな事が判らないとわ思えない。
……でも今は、そんな事はどうでも良い。
幾らなんでも病人を見捨てるなんてしていい訳がないから。


Fate/黒き刃を従える者


桜が雑炊と私達の昼食を作り始め。
私達三人は凛の部屋に集まる。
士郎はまだ寝てるらしく、起こすのを躊躇った為だ。

「で、どういう事よ?」
「……公園で、拾った」

話の内容は予想通りリンとセイバーの問い詰め。
まぁ、仕方ない。
幾らなんでもこの間殺しに来たマスターを助ける道理はどこにも無い。

「風邪引いてる?
 だから何?
 そんな状態で外に出る奴が悪いのよ。
 第一彼女は魔術師でマスター。
 その責任は彼女に帰るべきよ。
 私達が救う必要なんてどこにもないもの」
「……判ってる。
 でも、放っておけなかったから」

自分でもよく判らないんだけど。
私は『イリヤスフィールを殺せない』。
バーサーカーと対峙した時もそう。
バーサーカーが殺せないなら、矛先はイリヤスフィールに向かって然るべき。
なのに。
私はそれをしなかった。
否。
そんな考えさえ浮かばなかった。
恐らく私のどこかに、イリヤスフィールを害する事を拒否する何かが存在してる。
私の意志とは関係なく。
それでも、確たる意思で私がイリヤスフィールを殺そうとすれば殺せるのだろうけど。
今はそんな気は起きない。

「それはいいとしても、バーサーカーまで招き入れるのは如何かと思いますが?」
「……ごめん」
「謝られてもね……まぁ、桜も居たんだしその場で殺せとはいえないけど」
「凛は甘い。もしここでバーサーカーが暴れれば、その桜までも危険な目に遭うのですよ?
 それが判っているのですか?」

それはそうだろう。
多少理性を残しているといっても、戦い始めればそれこそ見境無く暴れる。
桜が危険な目に遭う可能性は、少なからずある。

「大丈夫でしょ。あの子だって魔術師よ。
 一般人を巻き込もう何てしないはずよ」
「……それならば、いいのですが」
「ま、楽観は危険な事は確かよ。
 ……アーチャー、責任持って見張ってなさいね」
「……うん」

確かにそれは、私の責任ですべき事。

「遠坂先輩、セイバーさん、アーチャーさん、ご飯できましたよ」
「判ったわ」

私は如何したいのだろう?
リンが大切。
士郎が大切。
セイバーが大切。
桜が大切。
……なのに、敵であるバーサーカーとイリヤスフィールを家に連れてきた。
大切な人を危険にさらすような行為をしてる。
放って置けばよかったのに。
放っておけば自滅しただろう。
なのになんで私はそれが出来なかったんだろう?
……ただ、『イリヤを死なせてはいけない』と訴えてくる者が居る。
私とイリヤスフィールにどんな関係が有るの?
そして、あなたは誰?
あなたは私の何?
……答えは、出ない。


後書き
イリヤ捕獲。
でも仲間になったりはしませんが。
バーサーカー戦はやりたいので。

<<九頭竜さん
はい、亀のようなスピードで前に進みます><

<<山の影さん
大河は……桜が泊まると聞いて何もしないで居ると思います?
私には無理やり泊り込む姿しか想像できない……

<<おたもんさん
はじめまして。
実生活まで心配してくれてありがとう。
まぁ、大丈夫ですよ?
二時間ちょっとで書き上げて推敲もせずに投稿してるんで誤字とか脱字とか山ほどありますが。

<<ファルスさん
うん。大体辺りです。
少なくとも魂の内容的にはそれ以外は混ざっていません。

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