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▽レス始

「Fate/黒き刃を従えし者17(Fate+オリ)」

在処 (2007-02-22 00:41/2007-03-12 21:54)
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「それじゃあ、今日は私たち三人とも休むって、電話してきます」
「えぇ、お願い」
「すまん、桜」

リンが桜に、「私が士郎見てるから学校行け」と言うような事を言ったのだけど、結局こうなった。
まぁ、桜がリンにそういわれて、はいそうですかと頷く訳もない。
この結果は予想通りというか、それ以外想像できなかったんだけど。

「……参ったわね」
「ん、何がだ?」
「桜がいちゃ、落ち着いて話が出来ないでしょ」
「あぁ、そりゃ、そうだな」

そう。それが問題だろう。
桜がいたら迂闊に聖杯戦争の話題を口に乗せる事なんてできない。
いざとなったら記憶を消すくらいしそうだけど、できればそうしたくはない。
それは私達四人共通の考えだった。
だから、今の内に話を終らせる必要がある。

「で、何か言いたい事があるのか?」
「……そうね。聖杯戦争中に風邪引いたような莫迦の事は取り合えず置いといて。
 よく考えたら私、まだあんたがどんな魔術師なのか聞いてないのよね……」

……うん。
確かに。
初めてこの家に来た時は、いきなり食事の話になったからその話題は出てなかった。

「だからどんな事できるのか聞いておこうと思って」
「ん? 一応強化くらいは使えるぞ?」
「はぁ?」
「って言うか、強化くらいしか使えるのが無いな」
「また……なんとも半端なのを使うわね。
 で、それ以外はからっきしって訳?」

じろり、と言う表現がぴったりと合う目つきでリンが士郎を睨む。

「……昨日見た限りだと、強化も碌に使えない」
「え?」

リンが『何であんたがそんな事知ってるのよ?』って顔で私を見る。

「何であんたがそんな事知ってるのよ?」

……実際言ってるし。
まぁ、何でってそんなのは決まってる。

「……昨日……今日か。
 見たから」
「あぁ、ちょっと鍛錬してるところに来てくれてな。
 強化の実演をやってもらったんだ」
「あのねぇ……」

リンが疲れたように溜息を吐く。

「一応言っておくけど、何時か敵になるんだからね?
 それなのになんで士郎のへっぽこ魔術の鍛錬なんかに付き合ってるのよ?」
「……私の魔術と、系統同じだから」
「そういう問題?」
「……うん」
「……そう。そうだったわね貴女は……」

リンが再び、諦めたような溜息をつく。

「……?」
「いや、いいわ。
 もうなんか、士郎と戦うって言うののイメージがわかない。
 それに……なんていえる訳無いじゃない……」

なんだか判らないけど。
本当に何か諦めたようだった。
そこに士郎の言葉がかかる。

「なぁ、遠坂?」
「何よ?」
「出来ればこれからもアーチャーに魔術見てもらいたいんだが……」
「あーどーぞ好きにして頂戴。
 何かいまいち納得いかないけど、もう諦めるわ。
 それに……あんたが強化しか使えないなら確かにアーチャーとの魔術の相性は良いわ」

どっと疲れた、と。
壁に寄りかかりながら片手を振る。

「アーチャーの得意な魔術は『解析』『強化』『変化』『投影』だから、貴方が行く先にある魔術は全部網羅してる。
 と、言っても貴方が今使えるような『強化』とは比べ物にならないからね?」
「あぁ、それは判ってる。昨日見せてもらった『強化』だけでもその違いは一目瞭然だ」
「でしょうね。間違いなくアーチャーは、今の時代で考えればその系統のトップクラスよ。
 アーチャーの時代はどうだったか知らないけどね。
 何せ『投影』でオリジナルに匹敵するような性能持つ物まで作れるんだから」

そう。
何故か私、『投影』で本物と区別が付かないほどそっくりな物を作れる。
私としては設計図通りに作ってるだけなので、何がそんなにおかしいのか判らないのだけど。
まぁ、そっくりといっても宝具クラスの物はホンの一分足らずで消えてしまうのだけど。
普通のナイフくらいなら1ヶ月くらい保たせる事もできる。

「それって凄いのか?」
「まぁ、あんたに言っても判んないだろうけどね。
 アーチャーに魔術見てもらうならその内見る機会もあるでしょ」

と、そんなこんなで私が士郎の鍛錬に付き合う事が決定した。
その話は桜が帰って来た事で終わり、他の……
ある意味切実な問題へと変わる。


Fate/黒き刃を従える者


士郎を寝かしつけて、私達は居間へ降りる。
副作用で眠くなる薬飲ませたから、暫くはおとなしくしてるだろう。
少なくとも魔術の鍛錬とかは始めないと思う。
昨日釘さしておいたし。
さて、そうなると衛宮家における当面の問題は一つ。
食糧不足だ。
買い物に行けばいいのだけど、私とセイバーはどこへ行けばいいか判らない。
と、なると自然と話は寝込んでいる士郎を除く二人。
桜かリンが行くと言う話になる。

「「じゃーんけーん」」

それは夕食を作る権利の争奪戦に代わり。

「「ぽん」」

二人はじゃんけんで勝負している。
……まぁ、結果は読めてたけど。

「勝ちました♪」
「くぅ……じゃんけん弱い私が憎い」

リン……貴女がじゃんけん弱いのは仕方ないよ。
だって、先出しすれば後から出した方が勝つに決まってる。
……幾ら後手に回るのがいやだって言っても、時と場合は考えよう。

「じゃあ、行って来ますね」
「はぁ……仕方ないわね」
「行ってらっしゃい、サクラ」
「……私も行く」

桜が出かけようと仕度を始めた所で私も立ち上がる。

『ちょっと、どういうつもりよ?』

リンから、当たり前と言えば当たり前の質問が来る。
……その視線からは、質問と言うより尋問に感じるけど。
まぁ、あまり気にしないで置こう。

『……今、この家は聖杯戦争のマスターの拠点』
『そうね。それで?』
『……その家から出てきた一般人を、他のマスターやサーヴァントが見たらどう思う?』

そう。
この家に出入りしている以上、警戒はしておいた方が良い。

『――っ! 確かにそうだわ。
 それじゃあ、明日からは来ないように仕向けて……』
『……それは駄目』
『なんでよ?』
『……もし、今すでに見張られてるなら』
『もう目をつけられてる可能性もあるわけか……
 なら、逆にこの家に泊まるように仕向けたら?』
『……うん』

それが一番良い方法だろう。
桜が危険な目に遭うのは避けたい。
なら、この家から出ないように仕向けるのが一番楽な方法。

「桜」
「はい? 何ですか遠坂先輩」
「あなた、今日泊まる?」
「――――え?」

瞬間、硬直。
それはそうだろう。
いきなりそんな事言われれば固まりもする。

「最近この辺りも物騒なので、この家に泊まったら如何かとリン達と話していたのです」
「そうなのよね。ほら、それに貴女も心配なんじゃない?」
「……リン、何か顔が邪」

にしし、といった感じで含み笑いをするリン。
アレは恐らく、獲物をいたぶる猫の瞳。
……というか。
獲物は桜?

「え、えぇ?」
「……士郎が熱出して大変だから、まともに看病出来る人が欲しい」
「あ、そういう理由ならぜひ」

おろおろしてる桜に、私は横から助け舟を出す。
まぁ、実際にはそれほど心配もしていないけど。
リンだって看病で悪化させるような真似はしないだろうし。

「ちょっとアーチャー、今のはどういう意味なのかしら?」
「そうです。訂正を要求します、アーチャー」
「……不器用と赤いあくまだし」
「あ、ああぁぁぁ……そ、そう!
 早い内にお買い物行かないとお昼抜きになっちゃいますね。
 私の家にも寄りたいですし、早速逝きましょうかアーチャーさん!」
「む……それは仕方ありませんね。
 早急に補給に向かってください、アーチャー」
「……ん」

話を切って。
リンは何か言いたそうにしていたけど、それは置いといて。
私と桜は買い物に出る。

「桜ー、アーチャーそのなりで結構力あるから荷物全部持たせちゃっていいからね〜」

……やっぱり赤いあくまだ。
地獄に落ちろますたー。


まぁ、そんなこんなで私は桜と一緒に商店街へ向かう。
何かちらちらと、桜の視線が気になるんだけど?

「……何?」
「えっと、その……アーチャーさん、名前なんていうのかなぁ〜なんて……」
「……それは、朝の説明じゃ、駄目なの?」

正直、困る。
私の名前なんて、明かす明かさない以前に、私が知らない。
聞かれたら答えたい。
名乗られたら名乗りたい。
……でも、そんな事すら私には出来ない。
普通に暮らしてる人には判らないかもしれない。
でも、それは本当に苦しい事。
だから、本音を言えば、私にその話をふってほしくない。

「えっと、家が魔術師の家系だから、
 有るのか無いのかわからない魔術なんかを気にして風習だけが残って、名前は名乗れない、でしたっけ?」
「……そう」
「でもほら、秘密でちょっと……とか。
 ……駄目?」

……駄目、と聞かれても。

「……本当は、私も知らない」
「――――ぇ?」
「……私には、この町に来る前の記憶が無い。
 アーチャーとか呼ばれてるのも、周りがそう呼んでるから。
 ……だから、誰も名前を呼んでくれない私の名前は、無いの」

言ってて何だか鬱になる。
そうだ。
私の名前は、無い。
もし誰か、私の伝承を知ってたとしても、それを私が知らない。
なら、私には語るべき伝承も、誇るべき栄光も、名乗るべき名も……何も無い。
私には現実(いま)しかない。
それを、今になって気付いた……

「っ! ご、ごめんなさい! 私、そんなつもりで言った訳じゃなくて、あの……
 ちょっとでも、仲良くなりたいなって思っただけなんです!」
「……ん。良い」
「え?」

でも。
私には現実(いま)がある。
リンが、士郎が、セイバーが、桜が私を知ってくれた。
なら、何を恐れる事がある?
私がすることは、なら。
現実(いま)が壊れないように戦う事。
だから。

「……うん。私も、桜と仲良くなりたいから」
「あ……はい。よろしく、アーチャーさん」
「……うん。よろしく」

私は桜が差し出して来た手を取る。
うん。
私は現実(いま)が好き。
リンがいて、士郎がいて、セイバーがいて、桜がいる。
これから他の人とも知り合えるかもしれない。
なら、伝承や栄光なんていらない。
私にとって大切なのは今。
だから。
恐れる物は何も無い。
こうやって、手と手を取って歩いていこう。
それが、現実(いま)に私が生きている、何よりの証なのだから。


後書き。
完、とか言って見る?
いや、終りませんが。
なんかそれっぽい終り方になったなぁ、と。
まぁ……内容は相変わらずぐたぐたですが。
今回やるべき事は冒頭のみ。
後は全部話しに影響は無い……かなぁ?
そんな回でした。

レス返し
<<無虚さん
む……えーと。
あぁ、平行世界だからって事で……駄目?

<<ωライスもどきさん
固有結界に関してはどんなのかは言えないけどあります。
……でもまぁ、彼女のある能力と一体化してるから固有結界と呼べるか判りませんが。

魔術は、この系統に関しては現代トップクラス、という事にしました。
その内戦闘でも使い出すかもしれません。

あと、感想もらえると狂喜乱舞するんで出来ればください。
お願いします^^

<<九頭竜さん
士郎がダウンしてるので本当に何も無い回。
桜と出かけてますが……別に戦いになる訳じゃないです。
……実は『地獄に落ちろますたー』が書きたかっただけな罠。

<<水無月さん
ん〜
前世とはちょっと違うかな?
一応、残ってるし。
桜はそのルートの場合士郎が夢を捨てて、
世界と秤に掛ける程に大切な恋人なので。
アーチャーにも多少影響が……

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