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▽レス始

「男三人麻帆良ライフ 第十六話(GS+ネギま!)」

宮本 (2007-02-24 21:33)
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『修学旅行特別企画!!「くちびる争奪!!修学旅行でネギ先生とラブラブキッス大作戦」〜〜〜〜〜!!』

朝倉和美のアナウンスが部屋に響く。
テレビ画面は六分割されており、各画面に1〜5班の文字が書いてある。右下の画面には映像は映っておらず、『修学旅行特別企画!!くちびる争奪!!修学旅行でネギ先生とラブラブキッス大作戦』と企画名が映っていた。

エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは己の従者と共に班の部屋でそれをボーっと眺めていた。
部屋には班員である桜咲刹那、ザジ・レニーデイの二人はおらず二人だけだ。

「・・・バカが多いな」

エヴァンジェリンはポツリとつぶやく。

まあこの程度のバカ騒ぎは修学旅行ならばあってもいいかと思う。
自分が班の代表で参加する気にはならないが、暇つぶしにはなる。
おこじょ妖精が横島をイベントで何らかの対象にしてもいいか?と聞いてきたがそれは却下しておいたし面倒なことにもならないだろうと思い画面を見る。

「お、始まるか?」

画面では選手の紹介が行われていた。
まずは一番人気の3班。
雪広あやかと長谷川千雨の二人。あやかのネギへの偏愛は周知の事実である。

「ふん、確かにあの執着心は買いだな。だがメンバーのもう一人がやる気無しでは勝てまい」

エヴァンジェリンはつぶやく。
次に紹介されたのは2班。
古菲と長瀬楓だ。体力的には出場選手中最強。

「くっ、こいつらが・・・。本気でやったらこいつらが負けるはずがない!!だが、だがこいつらは目的など忘れるだろう。バカレンジャーだしな!」

頭を抱えて悩みに悩んだ末エヴァンジェリンはにやっと笑った。
そして紹介される4班。
明石裕奈と佐々木まき絵。朝倉のアナウンスで安定感のある二人と紹介される。

「馬鹿め!安定感だと?明石裕奈の目を見るがいい!勝負というシチュエーションで燃えている!!そして佐々木まき絵だ。奴はぼーやを見つけたらなんのためらいもなくやるだろう!!
ふはははは!この勝負、勝つのは私だ!!」

高笑いするエヴァンジェリン。どうやら4班に賭けているらしい。
画面では残りの二つの班、1班の鳴滝風香・史伽姉妹と5班の綾瀬夕映・宮崎のどかペアの紹介をしている。

「基本的な身体能力の低いこのペアでは勝利は不可能!!ははははは!!」

まだ高笑いしている主を見て茶々丸が口を開いた。

「よかった。マスターがとても楽しそう」

二人ともそれなりにこのイベントを楽しんでいるようだ。


            『男三人麻帆良ライフ 第十六話』


「ありゃ?新田先生。寝られないんですか?」

見回りを終えて廊下を歩いていた横島は新田にばったりと出会い、声をかけた。

「横島君こそ。警備員の仕事は大変だろうが明日もあるのだし寝た方がいいと思うぞ。私は少し3−Aを見てくる。
君もよくわかったと思うがあのクラスは非常に騒がしいしね。昨日も騒いでいたし、今夜はちゃんと大人しくしてもらわないとな」

「ひえ〜。3−Aも災難っすね」

厳しい新田に目をつけられている3−Aの生徒達を思い、なんまんだぶなんまんだぶ・・・と心の中で唱える。

「まあ学園広域生活指導員のワシがいる限り好き勝手させるわけにはいかんよ」

「はは・・・」

「しずな先生も瀬流彦先生もネギ先生も優しいし若い。ワシのような口やかましい年寄りがダメなものはダメ、マナー違反はマナー違反だと叱らんで誰が叱ると言うのかね?」

新田のその言葉に横島はいい先生やな〜と感心し、口を開いた。

「うっす。頑張って下さい!」

横島は新田の背に敬礼をして見送る。
するとさっそく「コラ長谷川、何やっとるかー!!」と怒鳴り声が聞こえてきた。

「・・・やっぱり騒いでたんか。さすがというか何と言うか。期待を裏切らんクラスやな〜。・・・って、よう。寝なくていいのか?」

冷や汗を流す横島の前に現れたのは2班の二人組み。
長瀬楓と古菲。
二人はぼそぼそと会話を始め、ときおりチラチラと横島を見ている。
その視線に非常に不穏なものを感じて横島は思わず後ずさった。

「警備員に見つかったらロビーで正座させられるアル。でも目撃者はいないアルよ・・・。この警備員は強いと聞いたあるしし少し力試しを・・・」

「んー。まあ仕方がないでござるか」

古菲と楓が顔を見合わせてつぶやく。
横島はもう一歩下がった。

「行くアルッ!!」

古菲は一気に間合いをつめるべく加速。
だがその距離は縮まらなかった。

「どちくしょー!!あの目はまさに戦闘民族(雪之丞タイプ)の目!なんでワイが襲われなあかんのや!」

「あ、待つアル!!」

戦闘民族なんて、戦闘民族なんて〜っと叫びながら足音を立てずに逃げていく横島。
恐るべきは高位の魔族からすらも逃げ切る横島流・ゴキブリ式逃走術のスピードと逃げの滑らかさだ。

「古、イベント中だという事など忘れているでござるな」

やれやれと言いつつ楓は後を追いかけた。


「くそ!佐々木まき絵、それは式神だという事が分からんのか!!」

「マスター、一般人には分かりません」

エキサイトするエヴァンジェリン。
彼女の目の前の画面ではネギの式神を追って行った佐々木まき絵がネギの式神の頬にキスをして、式神が煙を上げて爆発。
予想が外れたエヴァンジェリンは悔しげに丸めた新聞紙を使ってテレビ画面を引っ叩いた。
画面では雪広あやかも失敗し、爆発と煙にまかれている。

「マスター、横島さんが映っています」

「ん?」

茶々丸の言葉に顔を上げると今度は画面に確かに横島の姿。
そしてそこにはピートと雪之丞の姿もある。

「・・・横島以外は式神?何をやってるんだこいつは。って、ぼーやの式神も来たぞ?」

エヴァンジェリンは首を傾げる。
何が起きているのか想像がつかない。

『その・・お願いがあって・・・キスをしてもいいですか?』

『は?』

画面から声が聞こえる。
ネギの声と戸惑ったような横島の声。そして・・・

『了解だ』

立ち上がった雪之丞の式神の声がした。

『うえ!?』

再び驚く横島。

『雪之丞さん・・・』

『ネギ・・・』

近づいて行く式神二体・・・。

「な、何が起こっているんだ?」

流石のエヴァンジェリンも何が起こっているのか分からない。
画面には映らないがテレビからは横島の声以外に明日菜と刹那の声も聞こえてきている。
そして隣の部屋などからは3−A生徒達のどよめきが・・・。
彼女らも自分達の部屋でこの映像を見て騒いでいるのだろう。

『次は僕の番だね?』

『はい。お願いします』

雪之丞とネギの式神が離れ、次に聞こえてきたのはピートの声。
雪之丞の時と同じように、そういう命令を受けているだろう式神は何の躊躇いもなく口付けをした。
横島、刹那、明日菜の声が聞こえてきて、画面にハリセンを持った明日菜が映る。

『バラは・・・いやああああああああ!!!!』

スッパーンッ!!といい音がしてネギの式神は紙に戻る。
そして画面が切り替わった。

「・・・なんだったんだ一体」

エヴァンジェリンは嫌なものを見たとばかりにつぶやき、額を押さえて頭を振る。
画面には式神ではない本物のネギと宮崎のどかが映っていた。


「あ〜、何だったんだ?美人のねーちゃんに追われるなら喜ぶんだが、戦闘民族に追われるなど・・・」

古菲と長瀬楓から逃げ切った横島はホテルの休憩所に座り、ごくごくとジュースを飲んでいた。
休憩所にはピートと雪之丞も座っている。
いや、正確に言うとピートと雪之丞の姿をした式神だ。

「よーわからんけど目撃者もいないしとかって言っていたからこいつらがいりゃ手え出してこねえだろ。
早く刹那ちゃんと明日菜ちゃん来ないかな〜。そろそろ雪之丞とピートからの定期連絡の時間だし、さっさと連絡聞いて寝たい・・・」

どうやら一人になるのは危険と考えて二人の式神をダミーとして連れてきたようだ。
横島はふ〜っとため息をつき、そして休憩所に近づいてくる人影を発見した。

「・・・ネギ?いや式神か?何でこんなところに」

近づいてくるのはネギの姿をした式神。
ネギが式神を作り、何かを命じたのだろうと思ったが何を命じたのかなど分からない。
横島は首を捻った。

「その・・お願いがあって・・・キスをしてもいいですか?」

「は?」

顔を赤らめ、もじもじしながら上目遣いに言うネギ。いや、ネギの式神。
なんの目的で式神をこのようなアホな使い方をしたのかと思っていると横島の横で立ち上がる者があった。

「了解だ」

「うえ!?」

立ち上がった者の一人は簡潔につぶやくと上目遣いのネギに接近。
そして高さをあわせるように少し膝を曲げた。

「雪之丞さん・・・」

「ネギ・・・」

ネギの式神の願いに応じた雪之丞の式神とネギの式神が一瞬見つめあう。そして・・・

――― ズキューンッ!!
と音が立たんばかりの衝撃。
横島はあまりの光景にガクガクブルブルと震え、その場を逃げ出したくなる。
だが雪之丞とピートが戻る前に二人の式神が消えるのはまずいと思い、身代わりの紙型の術が維持されるよう微弱な霊波を送った。

その時、横島の耳にゴトンッと何かが落ちる音が聞こえてきた。
音源を見ると赤い顔をした少女二人・・・。

「い、嫌!バラの花は嫌って言ったのに!!」

「お、落ち着いて下さい神楽坂さん!両方とも式神です!!だ、だけど横島さん、なぜこんなことに?」

「知らん!急にネギの式神が歩いてきて・・・って、おい!?」

待ち合わせをしていた明日菜と刹那の二人が現れたが混乱は収まらない。
なんとか横島の霊波供給で崩壊を免れたネギの式神と雪之丞の式神は唇を離し、離れる。そして・・・

「次は僕の番だね?」

「はい。お願いします」

確認するように言うピートの式神。
ネギの式神がそれに答え、二人の距離は縮まり、一つになった。

「あわわわわ・・・」

「う、うげ。式神とはいえ男同士はきついもんがある」

「バラは嫌、バラは嫌、バラは嫌、バラは嫌、バラは嫌、バラは嫌・・・・・」

刹那は真っ赤になり、横島と明日菜は真っ青になって三者三様につぶやく。
そして勇者が動いた。
手に己の得物を引っつかみ、跳躍!

「バラは・・・いやああああああああ!!!!」

スッパーンッ!!といい音がして明日菜のハリセンがネギの式神をひっぱたく。
ピートの式神から離れたネギの式神は吹き飛び、紙へと戻って行った。

「・・・ナイスだ明日菜ちゃん。おまえら二人は部屋に戻って大人しく寝ていろ」

「「了解だ(です)」」

恐ろしい悪夢を消し去った明日菜を賞賛した横島はまた何かあっては困るとばかりに残った二人の式神に命令をする。

「ふう・・・何が起こったんですか?」

「さあ。分からん」

刹那の問いに横島が答える。

「そ、そういえば連絡はありました?何か見つかったかも!」

アーティファクトをしまい、先程の事を脳裏から消し去りたい明日菜が出来るだけ明るく声を上げる。

「それがまだ連絡ないんだ。定期連絡の時間を30分過ぎたらこっちから電話する予定だから連絡してみるけど・・・」

そういって横島は携帯電話を取り出し、ピートに電話をしてみる。

「・・・あれ?」

電話から聞こえてきたのは『この電話は電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないため使えません』というお決まりのメッセージ。
ぞくりと横島は肌が粟立つのを感じる。己の霊感に何かが訴えかけ、そこから感じる不安感。

「どうしたんですか?」

「ん?ああ、ピートの奴電話に出れないみたいだ」

湧き上がる不安を隠すようにして横島は答えると雪之丞の電話に電話をかける。
だが・・・。

「・・・雪之丞もだ」

さすがに横島の感じる不安に気づいたのか明日菜と刹那が心配そうな顔をする。
それを見て慌てて横島はポケットから二つの文珠を取り出した。
浮かび上がっている文字は両方とも『召』。

「それは?」

「これは『召喚』の『召』の文字が入った文珠だ。二人には『喚』の文字が入った文珠を持たせている。これを発動させれば二人が『召喚』されるってわけさ」

「へー。準備いいんですね」

「定期連絡がなしで、そのあと電話に出なかったら何かあったとみなして二人を呼び出すって事にしといたんだ」

そう言って横島は目を閉じて文珠に霊力を送り込む。
――― ぱきんっ!!
澄んだ音がして二つの文珠にひびが入り、砕け、そして細かい粉になってサラサラと横島の手の上から零れ落ちる。

「え?あれ、壊れちゃった」

「横島さん、これは・・・?」

明日菜と刹那はたずね、いつになく真剣な表情をした横島を見て驚いた。
二人は何かあったのだと悟り、ごくりと喉を鳴らして横島の言葉を待つ。
だが横島の口から聞こえてきたのは二人が予想したような説明ではなかった。

「あ〜、あいつら何やってんだろうな。召喚拒否されたぜ。はっ!もしかしたら俺を差し置いて祇園に!?」

困ったように頭をかき、次に悔しげに言ってガッデム!!と叫ぶ。

「よ、横島さん?」

「なんだ刹那ちゃん。俺は、俺は置いてけぼりをくったんや!俺も祇園に行きたかったんや!!男の修学旅行の醍醐味が〜〜〜!!!!」

オーノー!!っと叫ぶ横島。
だがひどくわざとらしく、余裕がないように見える。
刹那と明日菜はどうするべきか首を捻るが何が起こっているかがわからない。

「何を馬鹿やっている」

その時、三人に呆れたような声がかけられた。

「おお、エヴァちゃん聞いてくれ!ピートと雪之丞が俺を置いて祇園に!夜の街に繰り出しやがった!!俺は、俺はどうすればいいんや!!」

声の主、エヴァンジェリンに横島が詰め寄る。
だが横島は合気の要領でひょいっと床に転がされた。

「わざとらしいわ馬鹿。何を焦っている?」

「あ、焦ってなんかいないぞ」

「・・・おまえはいい。刹那、何があった?」

「は、はい」

呆れたような表情でエヴァンジェリンは横島を見てから刹那にたずねた。
刹那はエヴァンジェリンに先程起こった一連の出来事を話す。
定期連絡がなかったこと、電話をしてもでなかったこと、横島が文珠で『召喚』しようとしたが文珠が砕けたこと・・・。
話すにつれてエヴァンジェリンの顔が険しくなっていき、刹那と明日菜は不安になってきた。

「・・・横島、それでおまえはそんなに焦っているわけだな?」

「だから焦ってなんか・・・」

「文珠が砕けたという事は奴等二人が持っている受信側の文珠に何かあったという事だろう?もし文字を変更して文珠を使ったとしたらおまえの文珠からは文字が消えて転がるだけだ。砕けはせんだろ?」

エヴァンジェリンの言葉に横島はぷいっとそっぽを向いた。

「どうしたんだい?」

その時四人に聞こえてきた大人の声。
明日菜と刹那は先生に見つかったか?とギョッとする。

「・・・瀬流彦か」

「や、やあエヴァンジェリンさん」

現れたのは教師の瀬流彦。
エヴァンジェリンが瀬流彦を見てにやっと笑う。

「瀬流彦、ぼーやに横島の部屋に来るように行ってくれ。奴は今ロビーで正座をさせられている。新田には明日のことで話しがあるようだとでもいえば開放してくれるだろう」

「ああ。分かった。学園長からは便宜をはかるように言われているからね」

瀬流彦はそう言ってロビーの方へ歩いて行く。

「えっと、エヴァちゃん・・・」

「ああ、瀬流彦は魔法先生だ神楽坂明日菜。それより今は横島だな」

「・・・なんだよ」

「あの二人なら大丈夫だとでも思ったか?」

厳しい目でエヴァンジェリンは横島にたずねる。
横島は答えない。

「こいつらに心配をかけるわけにはいかないと思ったか?」

再びたずねる。だがまたも横島は答えない。

「逆だ馬鹿者。わざとらしすぎて逆に心配になるに決まっている。・・・こいつらが信用できんか?」

「そ、そんな事!」

「同じ事だ。こいつらより年が上だからといって内に溜め込むな。
奴等二人がそう簡単に死ぬようなたまじゃないのはおまえが一番知っているだろう?探しに行ってやれ」

エヴァンジェリンの優しげな言葉に横島はじっと彼女を見る。

「今夜、探してみろ。今夜は茶々丸に警備をさせてやる。探索が明日にずれ込んだとしても親書ごときは奪われようがどうなろうが構わん。近衛木乃香の方には私が近くにいる事にしよう」

「でもエヴァちゃん今大して魔法使えないし・・・」

「ふん、それでもおまえを召喚する事はできる。何かあったらすぐ召喚してやる。それで問題あるまい」

そう言ってエヴァンジェリンは不機嫌そうな顔をしてぐいっと横島を引っ張りしゃがませ、目を合わせる。

「半世紀も生きていない小僧が気を使うな。私はおまえら三人を気に入っていると言っただろう?それにおまえは私の従者だ。マスターのいう事は聞くものだ。
さあ、おまえの部屋に行くぞ。私は手を出すわけにはいかんが助言と召喚くらいはしてやる。ピートがいないから馬鹿ばかりだろう?明日の計画を立てようじゃないか」

にやりと笑ってエヴァンジェリンは歩き出す。
躊躇いつつも少し安心した様子でその後をついて行く横島。刹那と明日菜は慌てて二人の後を追った。


「え、え〜!ピートさんと雪之丞さんが!?」

「ああ。おそらく何か起こった」

横島の部屋に横島、エヴァンジェリン、明日菜、刹那だけでなく追加でネギも来ている。
そのネギが驚き、横島がそれに答えた。

「それで俺は今夜二人を探しに行く。朝には戻るから・・・「戻らんでいい」」

横島の言葉をエヴァンジェリンが遮る。

「戻らんでいい。何かあったらおまえを召喚する。それで一緒にいるのと大して変わらん事になる。そうそう、一晩中探さずに多少は仮眠を取れよ」

「・・・でも」

「でもじゃない。横島、こいつらを少しは信じてやれ。召喚でおまえが行くまでにこいつらがやられるようならそれだけの奴等だったという事だ。
おまえらも・・・少しは根性をみせろ」

エヴァンジェリンに言われ、ネギと明日菜は顔を見合わせる。

「お嬢様は、私が守ります。敵が多数来たとしても横島さんが来るまでくらいは持たせてみせます」

刹那が横島を見据えて言う。
それを聞いて明日菜とネギはうなずき合った。

「じゃあ僕は親書を届けます。親書を届けるチャンスは明日しかないですし、届けてしまえば木乃香さんの護衛に専念できると思います」

「そうね!さっさと親書を届けちゃって終わらせるわよ」

「ぼーやと神楽坂明日菜はどうしてもダメそうな場合は神楽坂明日菜が時間を稼ぎ、ぼーやが空を飛んでその場を離れてから神楽坂明日菜を召喚してやればいい。そうすれば逃げられる。
まずい時は逃げるのも手だ。ピートも言っていたが戦闘は手段にすぎん。貴様らは貴様らの目的を忘れるんじゃない」

エヴァンジェリンに言われてネギと明日菜はコクリとうなずいた。

「刹那と近衛木乃香の方には私が近くにいる事にする。私も敵が多い身だからいざという時のためにも茶々丸は貸せんが、何かあるようなら横島を召喚してやる。
ぼーやと神楽坂明日菜の方で敵に遭遇した場合、二人は逃げられない場合を除いて逃げる。その間に横島はアーティファクトを使って飛んで行ける。
どうだ?どちらで何かあってもおまえは間に合うと思わんか?」

「ああ、そうだな」

「そうだ。だから安心して行って来い。祇園で夜遊びをしている二人に文句を言ってやるのだろう?」

最後は冗談っぽく言ってエヴァンジェリンは横島に微笑んだ。

「・・・サンキューエヴァちゃん。なんか分かったら連絡する」

横島は頭を下げると『アデアット』と言ってアーティファクトを身につけると、窓を開けて京都の夜空へ飛んで行った。

「さて、夜は茶々丸が警戒してくれる。おまえらももう寝ろ。明日は忙しいぞ。・・・どうした?」

伸びをするエヴァンジェリンだが部屋にいる残りの三人が自分に注目しているのに気づき、首を傾げる。

「いや、エヴァちゃんなんか横島さんに優しいなあと思って」

明日菜が言うと残りの二人もうんうんとうなずく。

「言っただろう?あの三人は気に入っているし横島は私の従者だ。それに・・・」

「それに?」

「・・・いや、やっぱりなんでもない」

横島の過去。守れなかった記憶。それを繰り返させたくない。
この世界にともに来た親友二人を見殺しにするような真似などさせるわけにはいかない。
だがわざわざそれを言う必要はないと考え直したエヴァンジェリンは首を振って部屋を出て行った。

「よし!きっとピートさんも雪之丞さんも大丈夫ですよ!明日は頑張りましょう!!」

「そうね!」

ネギと明日菜が気合を入れる。
その側で刹那も気合を入れなおしていた。

雪之丞とピートの二人と手合わせをした事はないし、横島をふくめた三人の実力をちゃんと知っているわけではない。
だがかなりの実力を持っている事は分かる。
横島と同等の実力はあるという二人があの呪符使いの女にやられるとは思えない。
二人に何かが起きたという事はそれだけの使い手が敵にいるという事だ。

「それでも、お嬢様は私が守る」

刹那はつぶやいて己の相棒、夕凪をギュッと握り締めた。


朝日が昇ってくる中、横島は一本の木に登っていた。
目には双眼鏡を当てていて手には一つの文珠。

「・・・あれがピートが言っていたアジトか」

視線の先には聞いていた通りの古びた日本家屋。
チラリと横島は右手の文珠を見た。浮かんでいる文字は『探』。
だがそれはすぐに文字が消え、横島の手の中を転がる。
『探』の文珠で雪之丞とピートを探そうとしたのだが、失敗した。
この場合、何らかの結界か何かで隠されているという可能性が高い。死んでいるのなら結界に隠す必要などない。
横島は捕らえられて結界に入れられているのではないか?と考え、アジトを見ているのだ。

すると日本家屋の前に一台の車が止まり、二人の女性が降りてきた。

「おお、あれはあの時の猿のねーちゃん。それに刹那ちゃんと戦っていた将来有望そうな少女じゃないか」

そう言って『聞』の文字を文珠に込めて発動させる。

『・・・・ほんまになんやったんやろ、あの二人組みは』

呪符使いの女の声が聞こえてくる。
二人組みと聞き横島はごくりとつばを飲んだ。

『小太郎さんと探したけどおりませんでしたえ〜』

『新入りが言うには石化の進行中に逃げたようやし、途中で石になりきってどこかの川か池にでも沈んだんかな?』

『自力で石化を解いたという事はないんですか〜?』

『石化の術は強力な術や。なんの準備もアイテムもなく解くのは難しいやろ。まあ見つからんかったら放っておいてもええわ。今日さっさと木乃香お嬢様を奪ってしまえばそれであんたの仕事も終わりや』

二人は会話をしながら日本家屋へ入って行く。
そして話し声が聞こえなくなって横島は木の幹にもたれて気が抜けたようなホッとしたような表情をした。

「捕まってないみたいだ。死んでもいない。石化なら多分文珠で治せる・・・」

横島は笑う。

「殺しても死なないようなやつらだしな〜」

そう言って横島は木を降りた。

「そのへんの川か池とか探してみるか。その前に連絡しておかないと」

携帯電話を取り出してメールを作成する。
『猿のねーちゃんが話しているのを聞いた。二人は石化させられる途中で逃げ出したらしい。多分どこか逃げた先で石になっていると思う。見つけたら連絡する。何かあったら連絡してくれ』

「よし。・・・川や池か。朝は寒いんじゃないか?全く世話の焼ける・・・」

ぶつぶつ文句を言いつつも笑顔を浮かべ、横島は友人を探すべく歩き出した。


あとがき
え〜、ラブラブキッス大作戦に期待されていた方々、申し訳ありません。
大作戦は今後のための仕込みに使っていたのです・・・。そのためショボイ中身になりました。
そして周りに心配かけまいとする横島を気づかうエヴァちゃん。
マスターお優しいです。

しかし、今回実は話自体は進んでいないという悲しい回です(涙


感想ありがとうございます!
レス返しです。

>アイクさん
漢雪之丞!!そして狙われる横島・・・。男には狙われたくないでしょうが(笑
そして、事故に巻き込まれたのは横島ではなく彼の友人二人・・・の式神でした。

>黒野凛さん
鬼神対魔神殺し!!熱いですね〜。
黒野さんの希望通りに行くかはわかりませんが、面白くなるよう頑張ります。

>九頭竜さん
あった波乱は雪之丞、ピートとネギの疑惑がさらに深まる・・・というよりクラス中に認知される事に(汗
しかもゴッキーの知らない場所で・・・。
石から戻った二人にとっては絶望的な事になっているでしょう(涙

>シヴァやんさん
罠を使う小太郎・・・なんか新鮮ですね〜。
しかし、彼は漢の鏡にメロメロです(笑

ザジどうなんですかね?まだ細かい設定が出ていないキャラは動かしづらいです(汗

>黒覆面(赤)さん
二人退場で、襲撃を受けた千草は決意を新たに・・・。
ラブラブキッス大作戦は、今後のためにもショボかったのです(涙

>ヴァイゼさん
周りの突込みが無ければユッキー、小太郎の二人組みはハードボイルドに決めてくれます。
そして、横島はかなり心配しました。しかし逆に現状のヤバさを理解し、刹那達には心配をかけないようにしようとしましたがエヴァちゃんによって粉砕されました。

ネギの迂闊さや記憶消去の事については難しいですね〜。原作では記憶消去が重視されていない事はばらしたくない事を考えると矛盾ですよね。
横島にトラブルが飛び込んでいきましたが・・・実害を受けたのはユッキーとピート(涙
隣で見張るどころかキティはちゃっかり賭けに参加です。

>meoさん
身代わりの紙型はこんなんばっかなんです〜〜〜(涙
横島の身代わりは18禁突入ですがピート、ユッキーの身代わりは薔薇突入ですw

>念仏さん
修学旅行中の戦線復帰は横島の探索にかかっております(汗

横島の存在を知った小太郎は横島に平穏など与えてはくれないです。

本人がトラブルを避け、やって来たトラブルは・・・薔薇の香りです(涙

>HOUMEIさん
潜入作戦は実は今後を占う大きな一歩です。石にされてしまったのはまあ敵の手の内を知らなかったというのが大きいですね。
あれほどの石化の解呪はやはり二つ無ければ少し難しいですね〜(汗
結局横島は鳥居の方にもシネマ村の方にも現在は行きませんでした。代わりにエヴァちゃんが少し協力で・・・。

>ハイントさん
初めまして、感想ありがとうございます!!
GSキャラ三人の入れどころ、動かしどころは難しいので上手いといってもらえて嬉しいです。
戦闘に関しては霊波砲のむちゃくちゃな撃ちあいとかではなく地味に・・・(笑
各キャラのうち二人は今回で立ち位置が完全に薔薇になってしまわれましたw

小太郎の一人称最初「ワイ」だと勝手に思ってて、後で気づいてヤバイ!!と思って直したんですが・・・前回だけ「ワイ」のままでした(涙
指摘ありがとうございます。気をつけます。

>趙孤某さん
一気に戦況悪化!!しかし、我らが横島は逃げずに探しに行きました。
やはりなんだかんだいって親友ですから!!

横島がありえないハプニングを起こしてくれました(笑
大作戦は雪之丞・ピート×ネギという大穴がきてしまいました・・・(汗

>遊鬼さん
いきなり戦線離脱した二人の式神が実はラブラブキッス大作戦に巻き込まれてしまったというオチで(汗
ネギまメンバーだけで乗り切れるはずですが、実はあれもかなり綱渡り・・・っていうよりやばかったですよね。
雪ピーの出番については・・・内緒です(笑

>鋼鉄の騎士さん
激闘フラグオンしてしまった横島。おそらく小太郎と出会った瞬間がフラグ回収の時です。
カモは、暗躍はしませんでした(汗
ヒーロー、ザビエル脱落で戦力ダウン。しかし!彼らを終わらせるわけにはいかない・・・というわけで横島が探索開始でございます。

>冬8さん
インパクトの低い薔薇っぽいフレーズは今回のスーパー薔薇ワールドへつなげるための布石だったのです!!ww
明日菜のハード突っ込みはネギ式神に対してありましたが、刹那と横島のディープ・・・はありませんでした(涙
早く二人のディープな・・・場面を投稿したいんですがやはり京都編は比較的シリアス気味に進めるという自分で決めた掟が!!(汗
早くシリアスを抜け出しギャグ満載に移行したいです(涙

>23さん
横島が・・・というより彼と彼の友人の式神がやらかしてくれました。
これで薔薇確定でございます・・・(涙

あの二人やられちまいました・・・。
大きな戦いのたびにやられるという事はないと思います・・・多分(汗
でもある意味先兵ですからね。もっとも早く未知の敵に挑んだら危険もある気がします。
事前情報なしに石化魔法くらったらちょっとヤバイきがしますし。

>MAS-NMRさん
ユッキー、ピートはこれからも大活躍していただこうと思っています。
横島がする活躍とはまた違った活躍が彼らには期待できますし。
特に雪之丞は熱く、そして・・・薔薇(笑
二人にはネギフラグが・・・生徒達の中では立ちました(涙

>angieさん
お久しぶりです!
執筆速度が速いのと・・・>>それならば感想のためにも少し更新速度を緩めねば(笑
ピートがやるような役は原作では他にやるキャラがいましたからね〜。この三人で動かすといい感じにピートのよさ?を出せます。
逆に雪之丞は熱血は使いやすく、しかも小太郎がいるとさらに熱パワーを膨らませますね。
エリア51は誰も突っ込んでいないと思います(笑
横島の女の子との絡みは用意しております。しかし本格的なのはもう少し後で・・・。
ありがとうございます。これからも山あり谷ありで頑張りたいと思います。

>yujuさん
二人がやられ、横島少しパニクリました。
エヴァちゃんがいなかったらどうなったか・・・。
しかし、パニックの方向性が違っていますね(汗
心配からパニックというか・・・。
横島は大作戦の全貌を知る前に忙しくなってしまいました。五寸釘、出番なしで(涙

>DOMさん
今回で身代わりはある意味えらい事に。そして石になった二人には追い討ちが・・・(涙
横島クオリティー発揮ならず!!
あの男の頑張りは見れませんでした(汗
が、代わりに式神たちの頑張りがみれたということで・・・w

>HAPPYEND至上主義者さん
刹那は現在木乃香の事でいっぱいいっぱい。しかし木乃香の事が落ち着いたら・・・無自覚カップルから脱皮するかも!?

ゴキザビはまずい事になりましたが小太郎が助けてくれました。・・・劇画調で(笑
雪之丞と小太郎の会話のノリはこれからもこんな感じです。
次回!!ついに鳥居突入!!フェイトがきたら・・・おしまいでしょう(涙

キス大作戦、横島が大して関わらず、それでいて生徒達に悪夢を見せる事になりました(笑
これは美神でも予想できないはず!!

ありがとうございます。これからも頑張ります。

>六彦さん
ヒーローとザビエルは初見の相手であったという事で、しかも石化の事など知らず、狭い室内だというのが災いしました。
情報があったらまだいけそうなんですが(汗

文才がないのでなるべく丁寧に細かく書こうと心がけています。特に動きの多い戦闘シーンは。しかし、戦闘シーンまだまだです。文才が欲しい(涙

ラブラブキッス大作戦・・・こうなりました。いかがでしょうか?(汗

>Iwさん
確かにこれで終わりでしたら二人がいる意味がかなり失われてしまいます。
しかし、エヴァちゃんに後押しされた横島が探索しているのでこれで二人終わり〜という事にはなかなか・・・。

スクナ戦、そしてその直前辺りは盛り上がり最高潮です!!
書いている時は私も結構テンション上がりました。いい感じに書けているかは微妙ですが(汗

ラブラブキッス大作戦はこの作品ではほぼスルーです。
むしろこれはここで今後のための布石に使った方が先のストーリーに色々盛り込めるのでは・・・?という先行投資をしていたのです。
色々考えていたんですが、ちょっとここはパターン通りでは自分的に嫌だな〜と思ったので(汗
しかしいまいち盛り上がらなかった・・・(涙

今から待ちきれないくらい期待しております。>ありがとうございます!期待にこたえられるよう頑張ります。

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