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▽レス始

「男三人麻帆良ライフ 第十五話(GS+ネギま!)」

宮本 (2007-02-21 19:39)
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「さて、これで多分木乃香ちゃんは大丈夫だ。数に限りがあるから出来るだけ文珠は使いたくなかったんだけどな」

「ピートさんも雪之丞さんもいませんからね。おそらく生徒達に魔法がばれるような襲い方はして来ないとは思いますが、警戒はしておかないと」

「そんな事にも使えるんだ。やっぱり反則な能力ね」

横島の言葉に刹那と明日菜が答えた。
襲撃も無く修学旅行二日目を終えて今はホテルにいる。

「でもピートの兄さんと雪之丞の兄さんは大丈夫っすかね?二人で乗り込むなんて」

明日菜の頭の上に乗っているカモが心配そうに言う。

「大丈夫だろ。二人ともかなり強いし。むしろあの二人がやられるようなら俺は逃げるぞ」

「「逃げないで下さい!!」」

明日菜と刹那が間髪いれずに言い、横島はナイス突っ込み!とばかりに親指をグッと立ててサムズアップ・・・。

「ところで横島さん達三人は元の世界でGSというのをしていたと言いましたがどれくらいの実力だったんですか?」

刹那が興味深げに聞く。

「う〜ん、妙神山って修行場で修行してさ。俺は文珠を使えるようになったわけだが、雪之丞もかなりパワーアップしたんだ。
その時そこの人にこれ以上の力を持つ人間はほとんどいないって言われたみたいだから・・・戦闘力ではGS業界でもトップクラスだったんじゃないか?」

そして横島はふと思い出した。
魔神アシュタロスと戦った腕利きのGS達はみんな知り合いだったな〜と。
あれだけの戦いに呼ばれる超一流達に純粋な戦闘なら雪之丞はひけをとらないだろう。

「うん。多分日本じゃ雪之丞もピートもかなり高い実力なんだと思うぞ。まあ雪之丞は頭が悪いからGSとしてはまだまだらしいけど」

自分も人のことが言えないくらいGSとしての知識がかけているのだがそんなこと気にせず横島は笑った。

「へ〜。じゃあ横島さんも向こうではすごく強い方なんじゃないんですか?この前ネギがエヴァちゃんと戦った時、横島さん雪之丞さんに勝っていたし」

「あのエヴァンジェリンさんと!?」

明日菜の言葉に刹那が驚く。真祖の吸血鬼であるエヴァンジェリンとネギが戦ったとは。

「まあ隙をついて文珠使ったから楽に終わったんだ。雪之丞は動けないようにされない限り根性で立ち上がって攻撃してくるからな〜」

だからあの熱血野郎とは戦いたくない。格闘じゃ勝てるわけないしと横島はこぼす。
刹那は昨日の横島の動きを見ているので雪之丞はそれ以上の動きをすると知りホッとする。
それならばピートも雪之丞もそう簡単にはやられないだろう。

「それにしても・・・」

横島はちらりとある方向を見た。
つられて見た明日菜、刹那、カモは冷や汗を流す。

「ネギの奴はどうしたんだ?」

首を傾げる横島。
明日菜と刹那はネギは昼にのどかに告白されて智恵熱を出したのだなどと言うのは躊躇われ、横島にどう説明すべきか悩んだ。


           『男三人麻帆良ライフ 第十五話』


一人の人間が古びた日本家屋を双眼鏡で見ていた。
その人間は真っ赤な全身タイツで体を包み、体の各所にプロテクターをつけている。額にはクワガタ虫のはさみを連想させる角・・・。
はっきり言ってかなり怪しい。

今の彼の名は伊達雪之丞ではない。
ダテ・ザ・ヒーロー。それが今の彼の名である。

「よう、遅いぞ」

雪之丞の隣で霧が人型に集まり、一人の男の姿になる。

「仕方がないだろ?木乃香さんの護衛、何事も無かったからよかったけどもし何かあったら大変だ。外での観光の時の方が夜のホテルより襲われやすい」

隠密でついているのには僕が一番向いているしねと男は言う。彼も怪しかった。
牧師服と十字架のネックレス。口元には十字架が書かれたマスクをつけていて頭の上には一枚の皿・・・。

ピエトロ・ド・ブラドー。友人にピートと呼ばれている彼の今の名はザビエル・ピエトロ。

「それに少しあの家の周辺を上空から見てきたんだよ」

「それで?何か異常はあったのか?」

「いや、特に目を見張るようなものは何も・・・。君からの連絡ではあの呪符使いの女らしいのが少し前に家を出て行ったみたいだけど?」

「ああ。まだ帰ってきてねえ。それと今日は俺が見た限りじゃ家に誰も入ってないぞ。まあ中に誰もいないとは言い切れねえけどな」

雪之丞はそう言ってピートを見た。
目はギラギラと輝き、早く行こうと言いたげだ。

「・・・じゃあ、行こうか?ヒーロー。何か見つけれればこっちのものだ」

「望むところだぜザビエル。さっさと行こうぜ」

「あ、その前にこれを」

ピートは思い出したように雪之丞に一つの文珠を渡す。中に浮かんでいる文字は『喚』。

「『喚』?」

「『召喚』の『喚』だよ。もし僕らに何あって連絡が取れなくなったら横島さんが『召』の文珠でよんでくれる。」

「準備がいいな。でも文珠がもったいなくねえか?」

「エヴァンジェリンさんの別荘のおかげでストックは結構あるみたいだよ。それにもったいないと思うなら使わずに済ませればいい。じゃ、行くよ。」

ピートは雪之丞が文珠をしまうのを確認するとバンパイアミストを使い、二人の体を霧に変える。
霧は古びた日本家屋へと向かい、その隙間から内部に入り込んだ。

「ふう、相変わらずいい能力だな。横島が欲しがるはずだぜ。あいつは覗きに使うだろうけどな」

「・・・横島さんがバンパイア・ハーフじゃなくてよかったよ」

実体化した雪之丞の言葉にピートはそうだったらバンパイア・ハーフは覗きの技を持つ一族として有名になってしまうのでさすがにそれは嫌だと苦笑した。

「さて、さっさと調べよう。まずはこの部屋だね」

ピートはぐるりと部屋を見渡す。
書斎なのか本棚がいくつもあり本がつまっている。

「呪術、符術、陰陽道・・・。すげえな。本がいっぱいだ」

「そうだね」

書斎の机を漁っていたピートはいくつかの手紙の内容を確認して目を細くする。

「・・・やはりバックには関西呪術協会の反対派がついているみたいだ。ん?」

引き出しの中に写真立てを見つけ、その綺麗な写真立てを手に取る。
勝手に見るのは気が咎めるが今は少しでも情報が欲しい。

「これは・・・」

「どうしたんだ?」

肩越しに顔を覗かせて雪之丞がピートが見ているものを見る。
写真立てに入った写真には清楚そうな巫女服姿の女性と優しげな男性、そしてその子供らしき少女が写っていた。
幸せそうに笑う家族の写真。
それに写る少女にピートはあの呪符使いの女の面影をみつけた。

「・・・こんな、顔もできるんだね」

「あの女の写真か?」

「おそらく」

この家族に何が起こったのか?
この写真で幸せそうな笑顔を浮かべる少女が何を見て、何を思って今回のような事をしているかなどピートには分からない。
だがピートは出来る事なら彼女も救われるようにと祈る。

「おい、ピート!なんか聞こえるぞ。こっち来るんじゃねえか?」

「・・・やばいね」

ピートはつぶやいて慌てて写真立てを戻し、机の上のものを元に戻してバンパイア・ミストを使って屋根裏へ行く。
そしてバンパイアミストを解除して実体化した。

「おい、なんで霧のままでいないんだ?」

「・・・バンパイア・ミストは魔力の気配をあまり消せないんだよ。探査をされたら見つかりやすい。それより、何か聞けるかもしれない。声を立てちゃダメだよ」

小声で注意するとピートは天井裏にあるほんのわずかな隙間から先程まで自分達がいた部屋を見る。
部屋には思った通り呪符使いの女がいた。

「ほんまイラつくわあの愚物ども。急に腰砕けになりおって」

女はイラついたように机を蹴る。
だが大きく深呼吸して落ち着きを取り戻すと笑った。

「まあええわ。木乃香お嬢様さえ手に入ればアレをつこうて・・・」

そう言って女は部屋に持って入った本に熱心に目を通し始めた。
もっとよく見ようとピートは目を細める。
だがその時部屋のドアがノックされた。

「どうぞ。開いてるえ。・・・なんや、新入りか。何の用事や?」

女の声で誰かが来たのは分かるが角度的に誰かは分からない。

「あなたに用があったんじゃないよ。ちょっと、そこの人達に・・・ね」

落ち着いた少し高目の声と同時にピートと雪之丞がいる天井が壊れ、二人は落下する。
だが二人は慌てない。
舌打ちをするもののすぐに今最善の行動を取るべく空中で体勢を整える。

「くっ、誰や!!」

逆に一番取り乱したのは呪符使いの女。叫んで、符を取り出す。
二枚の符からは猿鬼と熊鬼が現れた。

「あ、この狭い部屋でそんな大きいのは・・・」

つぶやいたのは女に新入りと呼ばれた少年。
白い髪に冷たい瞳をしている。

「うおおおおお!!」

雪之丞が叫び、全身タイツの上につけているプロテクターが弾け飛んだ。

「らあ!!」

神速の踏み込み。
魔装術によって強化されている雪之丞の拳が熊鬼の爪を逆にへし折る。

「な、なんやて!?」

呪符使いの女が叫ぶ中、雪之丞のもう片方の手による貫手が熊鬼を貫き、熊鬼は煙となって消えさる。
猿鬼のほうもピートの一撃で破壊された。

「あの女、戦いなれてねえぞ!このまま!!」

「ひい!?」

雪之丞が叫び、攻撃しようとする。
だが雪之丞の方に何かが飛んできて慌てて雪之丞はそれをキャッチする。
飛んできたのは少年による一撃を受けたピート。
二人はともに本棚にぶつかり、その上に何冊も本が落ちてくる。

「この、クソガキが!」

攻撃をわき腹に受けたらしくわき腹を押さえて咳き込むピートを置いて雪之丞は少年に襲い掛かる。
ピートは急いで息を整え、呪符使いの女の方へ向かった。

素早い身のこなしと踏み込みから雪之丞が放った速度のある拳を少年は避けきれない。
だがそれは少年の目前で障壁によって防がれた。

「すごい、猛獣のような迫力とスピード、それにパワー。僕の障壁でも何発も受けていられないね・・・」

冷静に言う少年に雪之丞は笑う。

「ふんっ、その余裕・・・いつまで続くか試してみるか?」

雪之丞の猛ラッシュを少年は受け、流し、避ける。
だがいつまでもそれは続かず雪之丞のスピードが勝り、拳が少年を障壁の上から殴り飛ばす。
少年は壁にぶつかり、雪之丞は両手の平を少年に向けた。

「おらああああああ!!」

「ダンピールフラッシュ!!」

一点に力を集中した雪之丞の霊波砲が飛ぶ。
狭い室内で術の行使がし辛かったらしい女を気絶させたピートが雪之丞と同時に同じ様に一点に力を集中した霊波砲を放った。

――― ズドンッ!!
激しい音がして部屋の一角、少年がいた辺りが壊れて廊下もかなり破壊された。

「おまえが殴り飛ばされるなんてな。・・・手加減する余裕なんて無かったぜ」

「ええ。とにかくこうなったらそこの女を捕らえて」

つぶやく二人。
だが、二人の霊感がなにかを伝え、二人は同時に振り返った。

「『・・なる眼差しで射よ・・・』」

「雪之丞!!」

かすかに聞こえる力ある声、そして二人の背後で膨れ上がっていく魔力・・・。
それは食らったらまずいと二人の霊感に激しく訴えかけ、ピートは雪之丞に声をかけると二人の体を霧に変化させようとした。

「『石化の邪眼』!!」

そして呪文が完成する。
二人がいた場所を薙ぎ払うようにして光線が放たれた。

「ぐあっ!?」

「くっ!」

霧になった上半身は無事だったものの、霧化しきっていなかった下半身に光線を浴びてしまう。
下半身が石になった二人の上半身が霧からもとに戻り、落下した。


「・・・変な格好しているだけあって魔法抵抗力が高いんだね。でも時間の問題だよ」

少年は冷めた目で石化が進行して石になっていく二人を見た。

そして次の瞬間目を見開く。
牧師服の男の方の首から上が消え、自分の方へ何か霧のようなものが飛んできたからだ。
正体不明のそれに少年は思わずその場から飛びのいた。
気づくと首の無い牧師服の男の腕が少年の方を向いていて、光を放つ。

「しまっ・・・」

――― ドンッ!!
派手な音を立てて拡散するように広範囲に放たれた光は少年がいつも張っている障壁で防がれる。
だが、それは少年の目をくらませて男二人が逃げ出す時間を稼ぐのには有効だった。

「・・・逃げられた?転移が間に合わなかったらまずかったし、かなり強いねあの二人。だけどあの進行速度ならそろそろ完全に石化しているはず。多分近くのどこかに転がっているね」

そう言って少年は女へ近づいてぐいっと背中を押し、目覚めるよう活をいれた。

「くっ、かはっ!・・・はあ、はあ・・・」

苦しげに息を吐く女。
そしてドタドタと廊下を走る音が二人分聞こえた。

「どうしました〜千草はん〜」

「うわっ!?なんやこれ!!えらい事になってるやん!!」

顔を覗かせた二人を確認した少年は口を開く。

「変な二人組みが侵入してきていたんだ。石化の術を使ったけど逃げられた。術は成功してるからたぶん石になって近くに転がってると思うよ。二人とも探してきて」

少年の言葉に二人は割られている窓から出て行った。

「・・・大丈夫?」

「!?」

感情をみせない少年が人を心配するような事を言ったのか?などと女は驚く。
だが少年はスッと床を指差した。

「術について書かれた本だよ。計画の要でしょ?」

「・・・大丈夫や」

相変わらず冷たい声に女は苦笑する。
この新入りが人を心配する事などないか・・・と。

「そう。じゃあ僕もちょっとその辺りを見てくるよ」

少年はそう言って窓から出て行った。

「・・・・・」

無言で女はメチャクチャになった部屋を見回し、机の引き出しを開けてホッとした顔をした。

「壊れてへん・・・。よかった。・・・お父はん、お母はん」

取り出したのは無事だった写真立て。
写っているのは幸せだった日の自分、そして幸せを与えてくれた両親。

「・・・もう少し、もう少しや」

そうつぶやいて女は本を持ち、立ち上がった。


「・・・すげえ逃走術だったなピート」

「でしょ?横島さんほどじゃないけどね」

顔の部分だけ霧にし、霧を少年に向けて飛ばす。
全く意味のない行為だが、訳の分からない事態に少年が警戒するのは当然。その隙にダンピールフラッシュを放ち目くらまし。
そして雪之丞を抱えて窓から脱出。

だが、なんとか逃げだせたのはいいもののすぐに木陰に落下してしまった。
魔装術を使っていた雪之丞、バンパイア・ハーフのピート。二人は魔法抵抗力が普通より高かったようですぐには石化しきらなかった。
二人とも『解』の文珠で石化を治そうとしたのだが・・・。

「『解』一文字だけじゃ石化の進行を一時的に止めるのが精一杯か。こりゃ強力な呪いだな。あのガキあれだけ格闘できて魔法使いか?」

「横島さんに連絡を取ろうにも携帯電話はポケットの中で石化してる。ポケットの中の『喚』の文珠も多分・・・」

二人の手の中では『解』の文珠が明滅している。
魔法への抵抗に霊力を大量に使った上に胸の下で石化は止まっていて、空を飛ぶのは難しい。

「この文珠ももうもたねーぜ」

「うん。ヒビ入っているしね・・・」

地面に横たわっている二人はため息をついた。
そして聞こえてくるワンワンという鳴き声・・・。

「・・・番犬か?」

「かもね。どうする?」

「殺そうとしてきたら、抵抗するさ」

そう言う雪之丞に彼らしいとピートは苦笑した。

「お、そっちになんかおるんやな?」

犬が一際大きくワンッと鳴いた後聞こえてきたのは聞き覚えのある声。
二人は思わず顔を見合わせた。

「へへ〜、おまえらが侵入者か?・・・って、ダテ・ザ・ヒーローにザビエル・ピエトロ!?なんで・・・」

「やあ小太郎君。また会ったね。神のお導きかな?」

ピートは現れた小太郎に声をかける。

小太郎は戸惑ったように、興味深げに雪之丞を見た。
あそこは千草のアジト。侵入者という事はこの二人は自分を雇っている千草の敵なのだろう。
ならば自分を圧倒したこの強い男は絶体絶命の状況で出会った自分に何と声をかけるだろうか・・・。
命乞いだろうか?
負け惜しみだろうか?
どちらにせよ非常に興味がある。

だが、雪之丞が発した言葉はそのどちらでもなかった。

「よう、小太郎。強くなったか?強くなってやるって言っていただろ?」

覆面の上からでも小太郎には分かる。
自分を圧倒した強い男はこの場面でも不敵に、ニヤリと笑っていた。
助けて欲しいなどとは言わない。石にされた言い訳も言わない。
今の状況なども気にすることなく小太郎が前に言っていた事について楽しげにたずねてきた。

「あれから全然時間経っとらんやん。
・・・まだまだや。まだあんたには勝てへん。あんたは・・・ほんま強いわ」

小太郎は誰にも聞こえないような小さい声で心もな、とつぶやいた。

そこに無粋な、のんびりした声が聞こえてきた。

「こたろーさーん。石になった人いましたか〜?」

さすがの二人も目を険しくする。
だが・・・

「こっちにはおらんみたいや〜。次はそっちの方に探しに行くから先行っといてくれ〜」

「は〜い。」

小太郎が叫び、こっちに近づいてくる気配は去って行った。
ふうっと小太郎が息をはく。

「・・・小太郎君、なんで?」

ピートがたずねるが小太郎はそれには答えなかった。

「なあ、顔見せてくれへんか?」

小太郎が言い、ピートはマスクを取り雪之丞は顔を覆う覆面を取った。

「男前だろ?小太郎」

雪之丞がにやりと笑う。
小太郎は覆面の上から見ていた不敵な笑みを直に見て、自分も笑った。

「ああ、男前や。わいだけ名前知らんのずるいで。本当の名前教えてくれや、にーちゃん」

「人呼んで、伊達雪之丞だ。しっかり覚えておけ」

どこか通じるものがあるのか談笑している二人をピートはこんな状況なのにと呆れるように見ている。
手の中で文珠にピシリとヒビが増えた。もう持たない。

「雪之丞。もう持たない」

「みたいだな。・・・石になるか。きっついぜ。メドーサの奴にも石にされずにすんだのによ」

「なんや?このまま石化止まっとるんやないんか?」

「ああ、残念ながらな」

雪之丞は答えた。

「・・・仕事が終わったら、ワイが石化を治せる場所に運んだる」

「いいのかい?小太郎君」

「ああ。ワイはいけすかん西洋魔術師と戦えるって聞いたから仕事を請けただけや」

強い奴がおったら面白いしなと言う小太郎。
そして雪之丞を睨んだ。

「それに雪之丞のにーちゃんには勝ち逃げされたくないしな」

「へっ、十年早ええよ」

雪之丞は再び笑う。
その時、二人の手の中でついに文珠が砕けた。

「に、にーちゃん!」

今までせき止められていた分を取り返すように一気に進行する石化。
驚いて小太郎は声を上げた。

「小太郎、仕事で強い奴がいたら面白いって言ったな?やれるかもしれねーぜ。俺が強いと認めたライバルだ!」

「そ、そいつの名前は!?」

「横島忠夫。俺のダチだ。縁があったら戦ってみ・・・・・・」

最後まで言わずに雪之丞は楽しげな顔のまま完全に石化した。
その隣では苦笑しているピートが完全に石化している。

「・・・横島、忠夫か」

小太郎は狗神を呼び出すと石化した二人を担がせ、自分の秘密の場所に連れて行くために先導して歩いて行った。


「え〜〜〜っ!?ま、魔法がバレた〜〜〜!?しかもあの朝倉に〜〜〜っ!?」

ホテルの休憩所の一角で明日菜が叫ぶ。
隣では刹那が冷や汗を流しており、横島がどうでもよさ気に欠伸をした。

「は、はい」

椅子に座って涙目でうつむくネギ。
どうやら猫を助けた時に魔法を使ったのを麻帆良パパラッチの異名を持つ少女、朝倉和美に見られたらしい。
一通りネギに理由を尋ねた明日菜だったがフーッとため息をついて諦めたように両手を上げた。

「もーダメだ。あんた正体ばれておこじょにされて強制送還だわ」

「そんな〜っ、一緒に弁護して下さいよ明日菜さん、刹那さん〜!!」

もうダメだ、とため息をついた明日菜と刹那にネギがすがりつく。

「横島さん、何とかなりませんか?今妙な事になったりしたら色々と支障が・・・」

刹那は横島ならどうにかできるのではないかとたずねる。

「う〜ん、文珠で記憶消すか?だけどこれからの事もあるし文珠の無駄遣いはちょっと。ネギは記憶消す魔法とか使えないのか?」

「うう・・・。その魔法はちょっと苦手で」

「そうそう。最初に私の記憶を消そうとしてパンツを消したくらいだしね」

じと目でネギを見る明日菜を見て刹那は何が起こったのだろうかと顔を赤くする。
そして横島はぐいっとネギの襟首をつかんだ。

「おうおうネギ。おまえの魔法って何だ?スッポンポンにしたりパンツ消したり。このエロ魔法使いめ。行く末が恐ろしいぜ」

「風の系統の魔法が得意なんですよ〜。だから失敗したら風で色々飛んじゃうんです」

「ならあれか?もしかして火の魔法が得意な奴は服を燃やすことが出来て、水の魔法が得意な奴は服をぬらして下着を透けさせる事ができるのか?
よし!俺も麻帆良に戻ったら魔法を習う!!どちらかというと俺も風の魔法が得意な方が嬉しいぞ!」

「え、ええ!?」

ハッスルする横島にネギは戸惑う。

「・・・魔法を覚えさせたら警備員なのに逮捕よね」

「はい。魔法を覚えるべきでない人というのもいるものなんですよ」

「だから魔法って秘密にされているのね?」

「それは・・・いや、それもあるかも知れませんね」

不穏な事を言う横島とそれに付き合わされているネギを見て明日菜と刹那は魔法使いの秘密の秘匿について曲がった認識を考え始めた。

「でも桜咲さんってすごく心が広いのね〜」

「は?それはどういう・・・「あー、いたいた。おーいネギ先生」」

昨夜ホテルのロビーで横島と刹那が抱き合っていたのを見た明日菜は抱き合っていた相手が服を脱がす魔法を習得しようと考えているのに別に不快そうではない刹那に向けて思わずつぶやき、明日菜が何の事を言っているのかわからない刹那がそれをたずねようとする。
だが刹那の言葉は別の声にさえぎられ、明日菜の勘違いは訂正されることはなかった。

刹那の言葉をさえぎったのは朝倉和美。
朝倉を見てネギが慌て出し、明日菜が困ったような表情をして立ち上がる。

「ちょっと朝倉あんまり子供イジメんじゃないわよ」

「イジメ?何言ってんのよ。てゆーかあんたの方がガキ嫌いじゃなかったっけ?」

「そうそう。このブンヤの姉さんは俺らの味方なんだぜ」

朝倉の切り返しにカモが乗る。
なぜか仲のいい二人の言葉に横島、明日菜、刹那は顔を見合わせ、ネギは首をかしげた。

朝倉の話によるとカモの熱意によりネギの秘密を守るエージェントになったらしい。
実際に朝倉は証拠写真をネギに渡した。
ネギはさっきまでの落ち込みようが嘘だったかのように喜んでいる。

そこに風呂上りらしい3−Aの生徒が数名やって来る。
だが教師の新田が通りかかり、就寝時間だから班部屋に戻れと注意したので全員部屋に戻らざるをえなくなった。

「んー?何あいつ?」

「神楽坂さん、パトロールにでも行きましょう」

「あ、俺も行くぞ」

朝倉がネギの肩に手を置いたままにやりと笑うのを見て明日菜が不審げな顔をするが刹那に促されて歩き出す。それに横島もついて行った。

「刹那ちゃんに借りた身代わりの紙型で雪之丞とピートの身代わり作ったじゃん?」

「ええ。あの二人の身代わりが何かしましたか?」

一応一般客としてピートと雪之丞も泊まっているため、ホテルに二人の偽者を置いて二人は敵のアジトへ向かったのだ。
部屋の鍵を預かっている横島がちょくちょく様子を見ているのだが、何か問題があったのかと刹那は首を傾げる。

「普段どおりの行動しろって指示しといたんだけど・・・あれほんとに普段どおりの行動なのか?」

「そんなアバウトな命令をしたんですか?もう少し細かい指示じゃないと変な行動をしますよ」

「そ、そうか?じゃああの行動はあいつらがいつもしてる行動ってわけじゃないんやな?よかった〜。ちょっと怖くってさ」

横島は冷や汗を拭ってため息をついた。

「・・・どんな行動してたんですか?」

「・・・部屋開けて覗いてみたら、二人の式神が抱き合ってた。思わず部屋のドア閉じて逃げたぜ」

明日菜がたずね、横島が答える。
三人は冷や汗を流した。

「ま、まあちゃんと細かい命令をしてやって下さい」

「了解。あんな悪夢のようなシーンはさすがにちょっとな・・・」

「バ、バラの花は勘弁してよ?」

全員ぶるっと身を震わせる。
抱き合うピートと雪之丞。あまり想像して楽しいものではない。

「よ、よし!特に何も怪しいものはないな。
明日、親書を届ける時こっちが戦力を分けざるをえないから来るとしたらその時じゃないか?みたいな事をピートも言っていたし、今日は二人ともゆっくり風呂にでも入ってのんびりしろよ」

浮かびかかったバラの世界を振り払うように横島は明日は大変だぞ〜っと言う。
明日菜と刹那はそれを聞いてぎこちなくそうですね〜と答える。
そしてとりあえずまずはネギの部屋に行く事にした。


「フフフ、ラブラブキッス大作戦とは仮の姿・・・。その実体は・・・パクティオーカード大量ゲット大作戦さ!」

カモがパクティオーカードを片手に叫ぶ。
朝倉は興味深げにそのカードを見ていてふと気づいた。

「そういえばあんたえらいびくびくしながらエヴァちゃんと話していたみたいだけどどうしたの?結局6班からは参加者なしだし」

「・・・エヴァンジェリンは超強力な魔法使いなんだよ。
6班って刹那の姉さんは今いないからあのザジって子がでたとしてもどうしてもエヴァンジェリンかその従者の茶々丸のどちらかが参加しないといけないだろ?
それでエヴァンジェリンに聞いてみたら俺っち達の計画がばれててさ、横島の師匠を巻き込まないのなら黙認するって言われたんだよ」

師匠を巻き込むようになったら俺っちひねられちまうぜと身を震わせるカモ。

「へえ。エヴァちゃんはなんで横島さんを巻き込みたくないのかな?それが分かれば役割は変えて何かの対象にできるんだけどな〜。
やっぱり血のつながらない兄妹の年の差恋愛説は真実?
修学旅行で一気にクラスの子達に認知された多芸な警備員!一石を投じるにはかなり面白いキャラだと思うんだけど」

「おう。俺っちもなんとか師匠が兄貴と仮契約してくれりゃ嬉しいんだがなあ。
師匠はエヴァンジェリンと仮契約していて従者になっているからそれはエヴァンジェリンの逆鱗に触れちまうんじゃないかって怖くてよ」

残念そうに言う朝倉とため息をつくカモ。

「よし!まあ無理なものは無理で仕方がない。ビデオカメラを設置して、変装してからネギ君に部屋にいるように声をかけて・・・。忙しいねえ」

「おう。あ、そうだ姉さん。木乃香姉さんを映しておくモニターも用意しておいてくれよ。イベント中になんかあったりしたらシャレにならねえ」

「あいよ、了解。任せといて!」

一人と一匹は急いでイベントの仕上げを開始した。


あとがき
今回ついに魔法秘匿の理由が明らかに!!まさかエロに使う人間への警戒心からとは・・・(マテ

二人組み、不意打ちの背後からの石化光線にやられる・・・の巻です。
実は石化って普通にダメージを与える攻撃より厄介だよね?って思うのは私だけではないと・・・。金の針が欲しいところです。
そして小太郎再登場!!男の語らい?をして二人をかくまっちゃいました。
さて、次回はようやくラブラブキッス大作戦・・・です!


感想ありがとうございます!
レス返しです。

>アイクさん
二人のフラグは今回は進みませんでした(汗
っていうか今回はフラグ全然無しで、しかもラブラブキッス大作戦の横島枠がエヴァ師匠によって消え去りました。

マジバトル今回はまともに出ました。
しかも負けちゃったし(笑
ギャグもなしです。

アイクさんの作品GS板の方だったんですね。
ここ最近GSオンリーのSS見てなかったです(汗
お互い頑張りましょう!

>シヴァやんさん
横島フィーバーです。よく考えてみるとあのクラス相手なら結構嫌われる要素ないんじゃね?見たいな短絡思考の宮本です。
キスで契約はやはりカモならばネギとやらせたいと思うでしょうが・・・すでにマスターであるエヴァ師匠はやはり気に食わないようです。

ザジは人外なんですか?彼女の場合はまだまだデータが少なく、どのように書けばいいのかが難しいです。
でも今週のマガジンを読んで大河内アキラが気になった私がいます(笑

>鋼鉄の騎士さん
ひたすら誤解される横島。残りの二人も結構誤解されてる誤解警備員三変人です(笑
ラブラブキッス大作戦では意外な事に!!
刹那参戦は・・・まあ、次回をお楽しみにです。

>趙孤某<チョコボ>さん
GS×ネギま多くなってきましたよね〜。
面白いといっていただけるととても嬉しいですし執筆スピードが上がります(笑
他の面白いSSと被って新鮮さがそこなわれないようにピートと雪之丞には思う存分頑張っていただきたいです。

今回色々動きました!小太郎登場フラグも回収して再登場しましたし。
しかし、ラブラブキッス大作戦は次回です。お楽しみに。

>HOUMEIさん
今は少し更新早めです。
京都編終わったらスピード落ちるかな〜と自分で少し心配ですが・・・。
雪之丞はおそらくバカレッドの要請でポスティングシステムでの移籍が実現するかもしれません(笑
ありがとうございます、頑張ります!

>六彦さん
お久しぶりです。感想ありがとうございます。

横島は財布としてと芸人としての評価、そして年の近い年上の男への興味などなどだと思います。

ユッキーがバカレンジャーの顧問に就任する日も近いかもしれませんね(笑
図書館島探検を一緒にしていたら本棚を破壊しそうです(汗

クライマックスバトルへ向けて!エヴァと刹那のフラグを進めます(マテ

>冬8さん
緩やかで山場が無かったので自分的には少し不満が残っちゃいました(汗
しっかり横島が自分はもてていると自覚したら、逆に大変な事になりそうですね。主に周囲の女性の行動がどうなるか予想できないです。
アナコンダが『独り立ち』>うまい!!って思ったのは私だけじゃないはずです(笑
今回は乳もアナコンダも揺れませんでしたがかわりに雪之丞とピートの命が大きく揺れました。
もうだめってところギリギリまで(汗

>カクさん
はい、警備員組の干渉によってネギの対応が変化し、それで相手があまりなめてかかるのをやめた・・・という感じです。
原作ではやはりなめすぎじゃないか?というところもありましたし。
まあ彼らには介入したからどうなるというのはわからないわけですが、少し困難なものにしました。
ありがとうございます、頑張ります。

>遊鬼さん
原作でも言っていたお決まりの言葉をここでもってきました。
こういう時原作を感じれるので少しホッとします(笑
エヴァフラグも刹那フラグも時に微笑ましく、時にアダルトにで(マテ
ユッキーは特別枠に入る前に危うくやられちまうところでした(汗

>23さん
23さんもですか?私の妄想上の魔力、気、霊気のちょっとした違いをあらわしていきたいです。
例えば霊気は感情でかなり出力が変わる気がしますのでその辺は横島に合っている気がします。
原作の魔鈴さんや神父は神父が精霊や草木から力をわけてもらって・・・なども言っていましたので魔法と似ている気がします。
周囲の力を使って霊力を増幅、それを使って術などを行う・・・というような。
逆に雪之丞は格闘系なので多少の気の行使はあってもいいかなという感じです。
霊能は種類によってはどちらかに属す事もあるというような事にしていきたいです。しかし霊力というエネルギー自体はどちらにも属さないという事で。

キッス大作戦は次回という事で、楽しみにしていて下さい。

>ヴァイゼさん
ピートは意外に根に持つ男です(笑
実は明日菜もありえないくらい成長していますが・・・彼女の過去が気になります。原作が進むのが待ち遠しいです。
便宜上一億にしときましたが、それ以上に値段を上げていくと明日菜がかわいそうなほどあせる事に・・・(汗

南極戦の時の取り合いは逆に横島にとっては怖いですよ(笑

茶々丸個人への普段の普通な絡みシーンが少ないためちょっとそのような面もでてしまいました。反省です。
横島は茶々丸の事はちゃんと個としてみています。もう少し二人の絡みを多くしたいのですが・・・京都編人数多すぎ(爆

>Iwさん
明日菜は面白い子です(笑
ここで焦った涙目の明日菜に少し萌える横島を書きたかったですw
ピートの護衛はやはり必要だと思ったので細かくフォローを。隠れた木乃香に流れ弾が当たったらまずいですしね。

会話文が多すぎたのは反省点です。
難しいですがやはりこういう説明には地の文をもっとうまく使いたいです。

独走するエヴァを止めるのは誰でしょうか?対抗に刹那、大穴にネギで(笑

追伸に追伸 
合体ガチバトルは激熱ですね。・・・私の文章力ではあまり熱く書けそうにありませんが(涙
京都編は最後まで書き終えていますので最終戦はお楽しみに・・・ということで。

>九頭竜さん
ラブラブキッス大作戦エヴァの参戦は否定されました(涙
このイベントではやっておかねばならない事が・・・(邪笑
ゴキザビは活躍しました・・・が、危ないところでした

>米田さま
いつもお世話になっております。

>HAPPYEND至上主義者さん
再書き込みありがとうございます。
エヴァが横島をやりこめるというところを書きたかったのですが結構好評なようで嬉しいです。
回を増すごとに・・・>ありがとうございます。先に進むと色々進展しますから、見所を増やしていきたいです。
これからも頑張ります!!

>MAS-NMRさん
もてる横島に誰もがびっくりでw
しかし照れる横島っていうのはおキヌちゃんや小鳩ちゃんとの絡みで結構あった気がしますので横島は実は照れ屋だと思います。

鳴滝姉妹とエヴァはロリ、しかし、しかし意外に桜子は何がとはいいませんが83らしいです(笑
結構ある!!
でも横島好みのナイスバディからの求愛はないあたりが横島クオリティーで・・・(涙

>テラさん
刹那フラグは横島自身が気づいていません。狙っていたら恐ろしい(笑
わいはロリコンやないんや〜と、なるかどうかは次回をお楽しみにです。
今回は変人危機一髪です。
これからも頑張ります。ありがとうございます。


念仏さん、DOMさんの感想が削除されてしまいましたが感想は読みました。
特に気にならなかったですし感想嬉しかったのですが規約に底触していまったようで・・・。

お二人とも感想ありがとうございました。
これからもよろしくおねがいします。

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