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▽レス始

「男三人麻帆良ライフ 第十四話(GS+ネギま!)」

宮本 (2007-02-19 21:44)
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「さて・・・昨日、襲撃者のアジトを確認しました」

朝の五時、誰もが寝ているような時間にホテルのロビーに数人の人間が集まっていた。
眠そうな者が多いがそれは仕方がない。
そんな中、早速重大発表をとばかりにピートが重々しく言った。
現在の彼は一宿泊客という事であの怪しい服は着ていない。

「よし!殴りこもうぜ!!」

雪之丞が色めき立つ。彼も服は備え付けの浴衣で怪しい格好ではない。
好戦的な笑顔で言う雪之丞だが誰もそれに追従しようとはしない。
むしろそこにいる一人がため息をつく。

「よく考えてから言え馬鹿者。せっかく敵に気づかれずに手に入れたアドバンテージを簡単に使ってどうする」

エヴァンジェリンは茶々丸がいれたコーヒーを飲んで顔をしかめた。
やはりホテルにあるインスタントコーヒーはいつも飲んでいる良質なものには程遠い味だ。

「馬鹿者だ〜?って、おまえがなんでいるんだよ」

「あ〜、雪之丞。エヴァちゃんと茶々丸ちゃんは俺が呼んだんだ」

ソファに座ってコーヒーを飲むエヴァンジェリンに文句を言い始めた雪之丞を横島がなだめる。
どうも雪之丞とエヴァンジェリンはあまり相性がよくないようだ・・・。

「雪之丞、エヴァンジェリンさんの協力が得られたらこっちが出来る事の幅が増える。ただでさえこっちは手が足りないんだから」

「・・・でもエヴァンジェリンはあまり魔力を使えないんだろ?」

「でも横島さんと仮契約しているから横島さんを召喚する事ができる。横島さんの移動が一瞬でできるのは大きいよ。
それに僕らがいない時に茶々丸さんに警戒を頼むにしてもエヴァンジェリンさんがいいと言わないと・・・」

「ぐぐぐ・・・」

ピートに論理的に諭されて雪之丞は悔しげに唸った。

「ふん、ピートは分かっているようじゃないか。そういう事だ。私の機嫌を損ねないようにしろよ?」

「・・・昨日は清水寺で子供みたいにはしゃいでご機嫌だったけどな」

「なんか言ったか横島!!」

顔を赤くして怒鳴るエヴァンジェリンに横島は苦笑して『いや、別に』と言った。

ここにいるのは横島、ピート、雪之丞の警備員組。明日菜、刹那、ネギ、カモの3−Aガーディアンエンジェルス。そして横島に頼まれて寝ぼけ眼でやって来たエヴァンジェリンと茶々丸だ。

「そ、それよりアジトを確認したというのは!?」

まだ文句を続けようとしたエヴァンジェリンが口を開く前に刹那は慌てて聞いた。
ネギと明日菜、カモも興味深々だ。

「昨日ぼくは木乃香さんが拉致された後それを追いかけました。何か怪しい事をされかけたらすぐ止めに入れるように、横島さん達が失敗しても僕が救出できるように」

「え・・・っと、昨日横島さんにも聞いたんですけどなんですぐに助けなかったんですか?」

ネギがピートにたずねる。

「こちらの戦力をなるべく隠しておきたいというのと、それと向こうの事を知るためだよ。
昨日はまだ修学旅行の初日。こちらの戦力をすべてさらけ出してうまく対応されてもいけないし、このままでは防戦一方だから向こうのアジトを見つけておきたいと思ってね。それで撤退するあの呪符使いを尾行したんだ」

だから昨日の戦いも見ていたとピートは言った。

「あ!そうそう、昨日の戦いで思い出したけど何がどうなってたの?木乃香はいきなり現れるし、横島さんの傷はいきなり無くなるし・・・」

明日菜がたずねる。
横島とピート、雪之丞は顔を見合わせ、エヴァンジェリンはどうするんだ?とばかりに横島を睨む。

「あ〜、昨日の夜に雪之丞とピートと話してまあここにいるメンバーには話しておこうって決めたんだけどさ。
・・・実は俺ら三人この世界の人間じゃないんだわ」

「「「「は!?」」」」

頭をかきながらの横島の一言にネギ、明日菜、刹那、カモがぽかんと口を開けた。


             『男三人麻帆良ライフ 第十四話』


「ちょ、ちょっと待って下さい。この世界の人間じゃないって!?」

「平行世界とか異世界っていうんだけど、僕ら三人はこの世界といくつかの違いがある世界の人間なんだ。
とりあえず違うのはここと違ってオカルト、こっちでいう魔法が秘密になってない。それどころかGSっていう退魔師みたいなのがちゃんと資格試験があって職業として成立している。
僕と横島さんは雪之丞とはその資格試験で出会ったしね。雪之丞は卑怯な手を使って僕に勝って、その後の試合で素人同然だった横島さんにやられたってわけさ」

ネギの質問にピートが答える。最後はチラリと雪之丞をじと目で見た。

「な!?ピート、あれはメドーサと勘九郎が勝手にやった事だって知ってるはずだろ!?まだ根に持ってるのか?それに俺は横島には負けてねえ!あれは引き分けだ!!」

「んな事で熱くなるなよ。さっさと説明終わらせた方がいいだろ?」

慌てて反論する雪之丞を試合の勝敗などどうでもいい横島がたしなめる。

「・・・なかなか信じがたい話ですが、横島さん達は三人ともそのGSだったんですね?」

半信半疑な様子で刹那がたずねる。
三人はそれにうなずいた。

「まあ正直嘘くさい話だけど昨日の戦闘の事を話すのも、これからの事を話すのもまずこれが基本になるからそれを前提に聞いてくれ」

そう言って横島は自分の右手に栄光の手を展開させた。
それをピートが指差して口を開く。

「これは一見したらこの世界でいう『気』に見えます。だけどちょっと違っていて、『霊気』というものなんです。気は肉体の力だけど霊気は魂の力。個々の魂によってその人の能力、力が違ってくるんです。これはまあ生まれつきのものですね」

「ちょっとしたアーティファクトみたいなもんっすか?ピートの兄さん。」

「似たようなものだね。道具でなく能力であるという点が違うけど。
例えば横島さんは向こうのGS界でも一番と言っていいほど霊力を収束させる能力がある。これは本当に才能なんだよ。
横島さんが収束したこの霊気の篭手は銃弾も弾くし、真剣でも切れない。そんなのは道具を使わないと並のGSにはなかなかできない。
でももっと凄いのは普通の高校生だった横島さんがGSのところでバイトを始めて一年くらいで一気に能力的には日本のトップGS達に引けを取らないものになったって事だけどね」

ピートが苦笑し、みんなが驚く。
幼い頃から訓練したり勉強したりして強さを身につけた刹那やネギにとっては強さとは時間をかけて手に入れるものだったから特に驚いている

「それで、昨日の戦いの時だけど俺は三回切り札を使った。
この切り札についてはこの世界で知っているのはエヴァちゃん、茶々丸ちゃん、チャチャゼロ、ついでに学園長くらいだからくれぐれも内密に頼む」

「学園長・・・ついでなんだ」

「じいさんはついででいいだろ。エヴァちゃんの呪いの一時解除の時に必要だったから学園長にも教えただけだしな」

明日菜の突っ込みに男はついでで十分だと言い切る横島。

「まずあの猿のねーちゃんがつかったでっかい炎から俺らを『護』るのに使った結界。
次に木乃香ちゃんの側を離れる時に木乃香ちゃんの姿を『隠』すのにも使った。
最後にあの鬼の式神から受けた傷を『治』すのに使った。切り札を使ったのはこの三回だな」

「あの強力な結界と傷跡も残さない治療が同じ切り札?それにお嬢様を隠したって・・・」

刹那が驚く。防御、回復、隠蔽・・・。バリエーションが豊富なのにもほどがある。

「ちなみに隠しといた木乃香ちゃんの護衛は隠れてたピートに任せておいたぞ。
で、これがその切り札・・・」

横島の手の上をスーパーボールくらいの大きさの玉が転がった。
興味深げにネギ達はそれを見る。

「なんなんですか?これ」

「俺の能力で霊力を完全に物質化するまで収束させて作っている文珠っていうアイテムだ。
基本的に一日に1、2個くらいしか作れないけど、『護』っていれたら昨日の結界みたいに護ってくれるし『隠』って文字で木乃香ちゃんを隠したみたいに姿も、気配も隠せる。それに『治』って入れれば結構な傷でも治してくれる。
他にも爆発させたり、凍らせたり、敵の動きを縛ったり・・・。結構応用範囲が広い能力だな」

「結構応用範囲が広いって・・・」

「何でもありじゃないですか」

「すごい」

「何でもありってわけじゃないぞ。仕事中に事故でこっちの世界にきて、すぐ何とか帰ろうと思ったけど『帰』『還』の二文字でも帰れなかったし。
文珠四文字使ってようやくエヴァちゃんの呪いを期間限定、制限ありで何とかできたくらいだ」

横島が言うとエヴァンジェリンはふんっと笑った。

「謙遜しなくていい。世界最高クラスの魔法使いであるナギ・スプリングフィールドが力任せにかけたわけのわからん呪いだぞ?それを限定解除できるだけでも凄いものだ。
しかも文珠の結界は魔法の射手を何十発も集中して撃たないと壊せないほどの強度。それだけのエネルギーを持ち、アイディア次第で様々な事象を引き起こせる。タイミングと使い方さえうまければどんな敵にでも勝てる。
それで、それだけの力を持つアイテムをこいつらに渡すのだろう?」

最後は面白くなさそうにエヴァンジェリンは言う。

「ああ。昨日のお猿のおねーさんが出した炎、こっちが死んでも構わないって感じだったしな。・・・誰かが死んでから後悔しても遅い。
すでに文字は入れている。一人一個ずつ渡しておくから重大な怪我をした時は迷わず使ってくれ」

横島の真剣な表情にネギ達はごくりとつばを飲む。
普通の高校生だった?今の横島の表情を見ているとそのようなものは信じられない。
横島はネギ、明日菜、刹那に一つずつ文珠を配った。
文珠にはすでに『治』の文字が入っている。

「・・・横島はおまえらを信用して秘密を話して文珠を渡したんだからな?文珠の事は誰にも言うんじゃねえぞ」

雪之丞はむすっとして睨む。
それに怪訝な顔をしたネギ達にピートは苦笑した。

「文珠は僕らの世界でも横島さん一人しか作れなかったくらい貴重なものだからね。雪之丞はそれのことが漏れて横島さんが誰かに狙われないか心配なんだよ。だから全部話すのにも反対していた。
こういうアイテムがあるので持っていていざという時は使って下さいって言ってもそのアイテムについて後で調べられてこの世界にそんなものないっていうのが分かっておかしいと思われる。
なら最初から僕たちも正直に全部話しておいたほうがいいって言ったら雪之丞も一応納得してくれたけどね」

だから自分達はこの世界の人間ではないという事も話したのだとピートは言う。
それを言っておかなければこの世界に無いアイテムの事の説明ができない。

「き、貴重って・・・いくらくらいなんですか?」

貴重と聞いて勤労少女である明日菜は思わず値段について聞いた。

「向こうでは精霊石というものがあってそれが一億円とかはしたな。文珠はそれよりも役に立つし貴重だって言っていたから・・・それくらいはするんじゃないか?
まあ売買は禁止されていたから金にはならないけど」

「お、億!?この玉が億?あわわわわ・・・。ダメ、指紋が・・・指紋が取れない!どうしよう横島さん!!」

「いや明日菜ちゃん、どうせ売れないもんなんだから気にすんなよ」

慌ててティッシュで文珠を磨きだした明日菜が涙目で見つめてくるのに苦笑した横島は落ち着けと声をかける。

「まあこれで昨日の戦いの説明は終わったね。それで文珠も渡した。とりあえずこれからどうするかだけど・・・」

ピートがこれからの事を話し出して皆がゴクリとつばを飲む。
なにせ敵のアジトが分かったのだ。

「とりあえず今日の朝から夕方までは離れたところから敵のアジトを監視だね」

「な、何!?ピート、すぐに乗り込むんじゃねえのか!?」

全員驚いているが雪之丞は最も不満そうだ。

「ふん、妥当だな。向こうはこちらの事を大体分かっているというのにこちらは向こうの事を何も知らん。今乗り込んでその呪符使いを捕らえたとしても修学旅行はまだ続く。
逆にもっと強行的な行動をしてくる者がやってくるかも知れない。それならばこちらが向こうのアジトを知っているのを向こうが気づいていないというアドバンテージを利用した方がいい。
それで夜ホテルに戻れば護衛も少なくてすむからその時むこうの隙を見て調査をするというわけだな?」

エヴァンジェリンがつぶやく。
その言葉にピートはうなずき、ネギはなるほどと手を打った。刹那もわかったのか納得したような顔をしている。
確かにせっかく発見したアジトをばれないように監視しておけば逆に向こうの戦力を探れるかもしれないし、アジトに人がいるかどうかの確認もできる。

だが様々な事を一度に察する事ができない雪之丞と明日菜は頭から煙が出るほどになり、目を回していた。

「・・・雪之丞さん、分かります?」

「・・・明日菜の嬢ちゃんこそ」

「ふふっ、バカレンジャーのバカレッドにそんな難しいこと言われても・・・」

明日菜は自分がバカレンジャーである事を再確認してしまい凹む。

「俺もだぜ。頭使うより体使う方が得意だ」

「奇遇ですね。私もです」

フフフと笑い合って二人はがしいっ!!と力強く握手した。

「・・・何やってんだよ」

呆れたように横島が言う。

「てめえ、横島。おまえは分かったっていうのか?」

「そうですよ横島さん。一人だけなにもリアクションなかったですけど」

雪之丞と明日菜。結託した頭の弱い二人は頭が良さそうには見えない横島をじろりと見た。

「俺に分かるわけがないだろ?難しい事考えるのは苦手だからな。どうせ理解できん」

「「「「「「理解しようとしろ(して下さい)!!」」」」」」

なぜか胸を張る横島に全員が突っ込んだ。


「こらうまい!こらうまい!!いや〜、さすがブルジョワが泊まるホテル。うまいもんだしてくれるな〜。朝飯も最高や」

横島はネギの隣でむしゃむしゃとうまそうに朝ごはんを食べている。
二人の正面に座っているのは明日菜と刹那。そして・・・

「せっちゃん、このおかずおいしいえ」

「そ、そうですか?」

刹那の隣に座った木乃香が刹那に一生懸命話しかけている。
それに刹那はぎこちなくとはいえ返事をしていた。
その様子をネギと明日菜は微笑ましそうに見ている。

「木乃香が元気そうでよかったわ」

「そうですね〜」

「ふう、腹いっぱいだ〜」

お椀を置き、腹をなでる横島。それを呆れたように明日菜が見た。

「・・・横島さん、さすがに食べすぎじゃないですか?朝から五回もおかわりして」

「昔の癖でな。食べれる時にがっつり食べる事にしているんだ」

昔?とネギと明日菜は顔を見合わせた。

「昔って今朝言ってたアルバイト?そんなにお給料低かったんですか?」

「・・・時給250円。最終的に300円+出来高」

「「にひゃ・・・!?」」

「まあ、高校卒業したら正社員として雇ってくれるって言ってたけどな。そしたら給料大幅アップだったんだぞ」

「大幅アップっていくらくらいですか?」

物価に差があるのか?それとも横島が特別なのか?と考えつつネギはたずねる。

「上司の母親の取り成し・・・っていうか脅しもあって俺が一人で仕事を終わらせたらその仕事の仲介料を上司に払って残りは俺の取り分っていう事で話はまとまっていたな。
事務所総出でやるような仕事はその仕事の時の役割に応じて給料が違う」

「へ〜、完全歩合制って感じなんですね。事務所の仕事っていくらくらいの仕事なんですか?」

「大体一千万以下の仕事は取らない人だったな。高い時は億とか」

「「え゛!?」」

と、いう事は一千万の仕事をやったとして仲介料を納めたとしても儲けは何百万・・・。
高校卒業したら大金持ちだったんじゃん!と驚き明日菜は横島を見た。そして二度驚く。
横島は滂沱の涙を流していた。

「・・・卒業。もうすぐ卒業だったのに。金持ちやったのに!左団扇やったのに!!卒業間際にこっちにとばされちまったんや・・・」

グッバイ俺の左団扇・・・。と涙を流しながらつぶやく横島。

「げ、元気出して下さいよ!戻れれば大丈夫じゃないですか」

「そうよ!戻ればすぐお金持ちですよ!羨ましいわ!!」

哀れになって元気付ける二人。

「ネギ君今日ウチの班と見学しよー!!」

「わー!!」

その時、ネギにまき絵が突っ込んできた。
どうやら今日の班行動に誘いに来たらしい。
そしてそれがきっかけになり、雪広あやかも参加してネギ争奪戦が始まった。よくみるとのどかもネギに声をかけたそうにしている。

「あ〜あ。ネギも大変ね・・・って、そうだ!横島さん!ネギ争奪戦なんか見たら横島さんの発作が始まって今度こそネギが呪い殺されちゃう!!」

はっ!!と過去の呪いの効果を思い出した明日菜は慌てて辺りを見回し・・・なぜか大きな旗を持ち、歓喜の涙を流している横島を発見した。

「なにをいっている!横島は6班と奈良公園を回ると決まってるんだ!!」

「エヴァちゃんずるいー!」

「そうです!横島さん1班と一緒に回りましょー」

「そうそう、カラオケカラオケー!!」

「桜子あんた修学旅行に来てまでカラオケって・・・」

横島の側では今日の班行動で隠し芸をもっと見せてもらおうと思っている鳴滝姉妹と、カラオケに連れて行こうとしている桜子がエヴァンジェリンと争っていた。

「・・・中学生とはいえ、中学生とはいえ女の子達が俺を争っている!?人類にとっては小さな一歩かもしれんが俺にとっては大きな一歩や!!
ありがとう、神様!唐巣神父、俺今なら神父と一緒に神に感謝の祈りをささげる事ができます・・・」

感涙している横島に明日菜は安堵した。
あの様子ならネギを呪うことなどないだろう・・・と。
その時横島が振り向き、女の子に迫られているネギがその視界に入った。

「え?うそ!?大丈夫なんじゃないの!?」

スタスタとネギに近づく横島。
それを見て明日菜はいざとなったら実力行使しかないかと覚悟を決める。
だがその心配は杞憂だった。

「はっはっは、どうしたネギ〜?モテモテだなこいつ〜」

歯を光らせんばかりのイイ笑顔でわしわしとネギの頭をなでる横島。

「な、なんだろう。なんなんだろうあの笑顔・・・。なぜかすっごい違和感があるわ」

明日菜は悪い事ではないはずなのになにか違和感を感じてブンブンと頭を振った。
そして横島のありえないほどナイスガイな爽やか笑顔にネギに迫っていたまき絵とあやかが少し引く。
その一瞬に己の中の勇気を振り絞った叫びを上げる少女がいた。

「あ・・・あのネギ先生!!よ、よろしければ今日の自由行動・・私達と一緒に回りませんか!?」

ほんのりと頬を染めて、思い切って叫んだのは宮崎のどか・・・。
いつも大人しいのどかの大きな声に一瞬騒がしい3−Aの生徒達が静まる。

ネギは5班のメンバーに木乃香がいるし・・・と考え、決断した。

「わかりました宮崎さん!今日はぼく宮崎さんの5班と回ることにします!」

ネギの返事に生徒達は沸き立ち、「本屋が勝った。」「本屋ちゃんの勝ちだ。」などとざわめいた。
のどかとその友人達の顔が明るくなる。

その時、横島の服のすそがくいくいと引っ張られた。
引っ張っているのは鳴滝姉妹。
うっと横島はうめいた。
女の子に取り合われるのは正直嬉しかったが自分は木乃香と親書のためにも5班、6班と一緒に行かなければならない。
それに・・・・。
ちらりとエヴァンジェリンを見るとすねたようにそっぽを向いた。
しかしその口だけはパクパクと動く。
『あ・と・で・お・ぼ・え・て・い・ろ』
背筋をツツーッと冷や汗が流れるのが分かる。
麻帆良に帰ったら別荘で何をされるか分からない・・・。
しかも修学旅行中の協力をエヴァンジェリンに頼んだ時、班行動で一緒に行動すると約束していたのだ。
約束を破るなど許されないだろう。

「あ〜、風香ちゃん史伽ちゃんすまん。今日はエヴァちゃんと回るって約束してたんだ」

「「えー」」

「そっかー。エバちゃんと兄妹みたいなものって言ってたもんねー」

鳴滝姉妹が不満げな声をあげ、桜子が納得したようにうなずいた。
それを見てエヴァンジェリンが満足げにうなずいたのを見て横島はホッと胸をなでおろす。

・・・だが、安心するのは早かった。


「・・・エヴァちゃんちょっと食べすぎじゃないか?」

「ふん、何を言う。約束していたのに鼻を伸ばしていた罰だ」

ぱくぱくと五種類目の餡蜜を食べていたエヴァンジェリンは一息ついたのかふうっと息をはく。
ここは横島のおごりという事になっているので財布の中身が心配である。
麻帆良に帰ったらエロDVDを見ようと思っていたのに・・・と横島は内心血の涙をながす。

「マスター、口元に餡蜜が・・・」

茶々丸が甲斐甲斐しくエヴァンジェリンの口元をハンカチで拭く。
子供みたいだ・・・などと突っ込もうかとも思った横島だが茶々丸が口元をハンカチで拭くというのもポイントが高いと茶々丸の経験値の事を考え、にやりと笑うだけに留めた。

「アジトの見張りに行った雪之丞が勝手に敵のアジトに踏み込まないといいな」

「さすがのあいつでも夜にピートが行くまで待つだろ・・・多分」

「分からんぞ。奴は馬鹿者だからな」

「・・・エヴァちゃんほんと雪之丞と馬が合わないんだな〜」

なんでそんな嫌うんだ?と苦笑しながらたずねる。

「ん?嫌ってはいないぞ。すぐ頭に血が上るのが面白いからからかっているだけだ。ああいう単純な奴をからかうのは楽しい。
それに私は基本的におまえら三人は気に入っている」

そう言ってエヴァンジェリンは茶を飲んだ。

「雪之丞のあの己が信じたものを貫く愚直さは認めている。
自分の誓い、友情・・・。あいつは自分の誓い、それにおまえらのためなら敵わない相手にでも向かって行くだろうな」

「へ〜。・・・認めてるわりには別荘で雪之丞をボコボコにしてたけど」

横島は修学旅行前にピート、雪之丞と共にエヴァンジェリンの別荘に行ったのを思い出して冷や汗を流した。
当然のように雪之丞はエヴァンジェリンに戦いを挑み、ぼこぼこにやられた。

「当然だ。気を抜いて接近戦に持ち込まれたらこっちが危ない。戦闘タイプが違うんだからな。やられる前にやるさ。
ピートの場合はバンパイア・ハーフが神を信仰しているというのには驚いたが、何を言ってもそれが揺るがん。心が強い。よほどいい出会いがあったのだな。
それに頭がよく、自分の役割を良く知っている。まあだからジジイが奴にお目付け役のようなものを任せたのだろうがな」

「・・・最初はそうでもなかったけどな」

横島はGS試験の時バンパイア・・・というより己のアホな親父と神への信仰の狭間で悩んでいたピートを思い出し冷や汗を流した。
そしてふとピートが別荘で『エヴァンジェリンさんにいじめられましたよ』と苦笑していたのを思いだす。

「あ〜、何を言っても揺るがないって、あの時別荘でエヴァちゃんピートを言葉攻めしてたんか」

「言い方を考えろ!!」

何が言葉攻めか!と突っ込むエヴァンジェリン。

「そしておまえだ横島」

「・・・俺?」

「ああ。おまえの事は三人の中では一番気に入っているぞ」

「幼女に言われてもなあ」

ストレートに言われて横島がやれやれと肩をすくめるが、エヴァンジェリンは幼女と言われても気にせずにやっと笑った。

「照れているな?・・・耳が赤いぞ」

その悪戯っぽい眼差しから顔を背けるように横島はふいっと横を向いた。
確かに耳が赤い・・・。

いつもと違い、一方的にやり込める事に成功したエヴァンジェリンは満足げだ。

「おまえといると退屈せん。15年麻帆良にいてうんざりしていたがおまえが来てからはなかなか楽しいぞ。そうだな・・・手のかかる弟が出来た感じだ」

「・・・見た目幼女の弟か?」

「いやか?」

「う〜ん、いやじゃないな。何だかんだ言ってこっちに来てからエヴァちゃんにはめちゃくちゃ世話になってるし。こっちに来てエヴァちゃんに拉致られてよかったよ」

「喜んでもらえてよかった。こちらも拉致したかいがあったというものだ。なあ、茶々丸」

横島とエヴァンジェリンは笑い合い、楽しげなエヴァンジェリンの言葉に茶々丸がわずかに微笑んだように見えた。


「あわわわ・・・、エヴァンジェリンさんと横島さんってもしかして・・・」

「ラブ臭が!まさか血のつながらない兄妹プレイ!?さすが修学旅行・・・男女は浮き立ち大胆に!!」

「・・・エヴァさんのあんな顔初めて見たです」

エヴァンジェリンに餡蜜をおごらされている横島がいる茶屋を宮崎のどかと早乙女ハルナ、綾瀬夕映の三人が見ていた。
遠すぎるため何を話しているかなど分からないが、横島とエヴァンジェリンが非常にいい雰囲気に見える。茶々丸もいるが彼女はエヴァンジェリンの横に座っているだけで特に会話に参加している様子は無い。

「見た?のどか!?言ったでしょう?修学旅行は男子も女子も浮き立つもの!ここでネギ君に告ってカップルになれば明日の完全自由行動日では二人っきりの私服ラブラブデートも!!」

「そっそそそんな急に私困るです・・・でで、でも・・・」

「ここまで来て何言ってんの!大丈夫、今のあんたならいけるって!!」

「ファイトですのどか!」

恥ずかしがるのどかを二人がかりで盛り上げる。

「よし、まずはネギ君と二人っきりにならなきゃね。行くよ夕映!」

「ラジャです」

「あっ、ちょ・・・」

わいわい騒ぎながら三人は駆け出した。


「それにしても異世界か〜。嘘・・・ついてるようには見えなかったわよね」

「そうですね。僕らを信じて話してくれたんだから他の人には言わないようにしないと」

ネギと明日菜は奈良公園を歩いていた。
道にいる鹿が微笑ましい。
しかしもっと微笑ましいものが二人から少し離れた位置を歩いていた。

「お団子おいしいな〜せっちゃん」

「そ、そうですね・・・」

団子を食べながら歩いている木乃香と刹那。
やはり刹那にはまだまだ硬さが残っているがそれがまた微笑ましく思える。

「でもピートさんって頭良いわよね。うまくいけば今夜にもなんとかなるかもしれないんでしょ?」

「そうですね。傷つけあわなくっても戦いはできるって、ピートさんいい事言いますよね。
もしかしたら親書を届ける前に相手が動けなくなるかも」

「雪之丞さんはちょっと残念そうだったけどね」

明日菜はくすっと笑う。

昼は雪之丞がアジトを見張り、他に仲間がいないかの情報を収集、なにか動きがあったらこちらに連絡。
これでうまくいけば相手の戦力が分かるし、多少は今日の護衛も楽になる。
そして夜にピートと雪之丞でアジトに侵入。相手が何を企んでいるのか?背後にはどんな人物がいるのかを調べる。
大本をつかめば相手も動きづらくなるだろう。もしかしたら尻尾をつかまれた事で今回は諦めるかもしれない。

「だけどまだ安心するのは早いぜ兄貴、姐さん。ピートの兄さんも言っていたけど昨日の最後に出てきた鬼の式神は明らかに猿女の式神よりレベルが上だったんだからよ」

気がかりなのはそれだ。
明らかに呪符使いの女以上の術者が向こうにはいる。

ネギとカモと明日菜の三人はため息をついた。
その三人に砂煙が近づいてくる・・・。

「明日菜、明日菜ー!一緒に大仏見よーよ!!」

ドキャーッ!!とハルナと夕映が明日菜を押し、その場から拉致る。

「あ、明日菜さ〜ん」

一瞬で明日菜もカモもつれさられ、ネギは呆然と立ち尽くす。
そこにやって来たのはのどか。
小刻みに震えるのどかがネギに何かを言う前にネギはのどかに声をかけた。

「なんかみんなどこか行っちゃいましたね。・・・二人で回りましょうか」

「えっ、あ・・はい!喜んで!!」

自分が言う前に望むべき状況になったのどかはドキドキと胸を高鳴らせつつ小さい拳を胸の前でぎゅっと握った。


あとがき
読み返してみると今回は色々無いな〜と凹む宮本です。
バトルがない、進展が無い、ギャグも足りない、しかも萌え要素もない。
あれです、プロ野球で言うとローテーションの谷間みたいな感じです。

とりあえず横島達の事の説明とこれからの方針の説明に終始しました。
でもこういうの話しておかないとダメだよね〜という事です。

そして意外に意気投合するかもしれない明日菜と雪之丞!!
雪之丞のためにバカレンジャーに特別枠が設けられるのは近いかもしれません。


多くの感想ありがとうございます!!嬉しいです。
ではレス返しを・・・

>アイクさん
三人が戦場にそろう時は総力戦ですからね。決戦時には頑張ってくれると思います。
しかしマジバトルでのギャグは書けない自分がいます(涙
木乃香ちゃんを隠していたのは文珠でした。
それを霧になったピートが潜んでいて有事にそなえるといった感じで。

>meoさん
スーパーな野菜の人> 爆笑です。それっぽいセリフ入れても良かったな〜。
自分を知っているから信用できない横島ですが周りの評価も割れていて微妙なところですね。
しかし横島的横島観は変な奴でしょう(笑

>黒覆面(赤)
実は三変人の名付け親はエヴァ師匠だったりします(笑
横島のバトルは『敵の足を引っ張る』ということを主観において行われました。
そして足を引っ張られた敵は横島の仲間が粉砕する・・・と。やはり師匠の影響は小さくないですね。
すみません、今回は敵の本拠地潜入は無しです(涙)
次回は!次回は〜〜〜!!

>毅さん
横島って指揮官スキルや経営者スキルも多少は持ってるんですよね。かなり芸達者。
原作に独自の展開を加えるのは難しいです。特にネギまはまだ連載中ですからいつ新事実がでて京都編に変更加えたのが地雷になるか分かりません(涙
だから大きすぎる変更はできない・・・という悲しさ。
ですが男三人がいるからできるオリジナル展開はこの京都編でも、ヘルマン編でも、学園祭編でも一応考えております。
ご期待下さい!

>HOUMEIさん
横島の戦闘、特に集団戦闘は力でのごり押しってあまりないですよね。
GSの仕事自体結構力のごり押しが多いわけでもないですし美神の弟子?の横島が力に偏らないのは本当に横島ならではです。雪之丞ではこうはいきません(笑
戦闘経験はやたら多い横島、しかも格上相手が多いという充実振り。それを生かして行きたいな〜と思っています。

>シヴァやんさん
横島は巫女さんをゲットできるのか!?それは大問題ですね。巫女さんといい感じになったSSってない(笑

三変人の中で横島が最も濃いのはご愛嬌という事で(汗
あれと比べて俺は濃い!!って言い切れるキャラってそんなに多くない気が・・・w
蝶々の人になったら完全にもう全国指名手配ですね(笑

>九頭竜さん
奇人警備員の意外な人気に驚いています(笑
今回のゴッキーは見張り。また地味な役を・・・。
しかし、しかしこの修学旅行二日目の夜はついに本拠地へ!?そこでなにが起こるのか?ゴキザビの運命はいかに!!
次回、タイトルは『二人はゴキザビ!!』。二人の大活躍がある・・・かもです(汗

>しゅり。さん
更新スピードの秘密は一ヶ月くらいをかけて最初に書き溜めていたのと春休みの気ままさです(笑
文章量は一応一万文字以上を目処にしています。

どうしても明日菜や刹那に突っ込み役をしてもらわないといけない時がありますが、なるべく暴力的にならないようにしてます。
横島が悪かったら別ですが(笑
今回はエヴァちゃんとほんの少し奈良デートです。
もっとエヴァちゃん書きたいですが・・・私は奈良、行った事ないんです(涙
京都・奈良を描写しきれる自信なしです。

>鋼鉄の騎士さん
前回ネギ達の誤解が進み、今回はパル達の誤解が・・・。
いつか勘違いで二股ロリコン男にされてそうな横島が哀れです。
最高の(体の)GSのもとで働いていた横島ですからね。決戦でもやってくれるはずです。
敵の本拠地潜入はおそらく初じゃないかと。しかし、それがショボイ感じで終わったらがっかりだと思うので頑張ります。

>ミーティアさん
続きが気になる>ありがとうございます!続きをお納め下さい(笑
真面目に命の危険があるバトルではいくら横島でも過剰な暴走はさせられないな〜との配慮です。
しかも戦闘メンバーの中で一番年上なわけですから。

究極奇人、合体奇人戦士の名前を考えないといけませんね(笑

>雪龍さん
タイガーにもついに出番を・・・。
しかし、説明一行だけで(涙

>遊鬼さん
横島の戦術、ピートの戦略。今回は参謀ピートがエヴァンジェリンとともに計画を話しました。
裏方に手馴れているピートはGメンの研修を受けたのと、横島達のフォローをしていたってことでなんとか・・・(汗
横島の今回の全体を見ての対応はネギが今後大いにいかせるのでは?みたいに思って書きました。魔法使いですしね。後方支援ってことで。
横島が刹那に耳打ちした言葉は秘密です。しかし近くにいてくれるはずだろ?みたいな感じで誘ってみろというような事を言いました。

>旅芸人さん
お褒めいただきありがとうございます。多くの感想を見るたびに創作意欲がわいてきます!
アナコンダネタはこれからも時折出るかもしれません・・・。
これからもアナコンダ・・・じゃなかった、男三人組を応援して下さい。

>ヴァイゼさん
はたからみたらもう三人とも完全に奇人ですよね。
合体巨大ロボがほしいところですな〜。

横島の戦闘経験は意外に貴重です。
しかも実は機転が利くというなかなかいいキャラですよね。

隠れ蓑術じゃありませんでした(笑
ギャグに落とすんだったらその手段はかなりありですね〜。

>念仏さん
初めまして。感想ありがとうございます。
今までマジバトルがなかったもので、少しギャグにかたよっていました(汗
確かにメリハリがなかったと思います。修学旅行編からやっと敵といえる相手がでてきたのでこれからはシリアスも増えるのでよろしくお願いします。

本当にバランスの取れた三人ですよね。三人がいい感じにかみ合いそうです。
横島は臨機応変な対応をするための機転の速さと、それをいかすための能力がありますよね。
念仏さんが言われるようにフォロワーがかなり向いているキャラだと思います。

>DOMさん
横島大活躍っす。
そしていつのまにか結成されていた変人戦隊!!
略称の奇警人はかなりぴったりです(笑
ピートの騎士は蝙蝠からですか。ピートはなかなか個性が足りな・・・(汗

>スケベビッチ・オンナスキーさん
いぶし銀のピート。今回はユッキーがいぶし銀的に見張り役です(笑
苦労している人、悩みのある人は・・・となると確かに龍宮が!!龍宮が危ない!!
・・・ちなみ今回は逆襲まで行きませんでした。
次回にご期待下さい。

>冬8さん
やはりアナコンダ大人気ですね。これは擬人化を考えねば・・・(マテ
バランスのとれた三人組のうち、横島は乱戦向きです。
栄光の手は伸びるから牽制にぴったりで。
マスター・オブ・奇人!!横島がさらなる流血をするのはいつに日か(笑

>23さん
原作での指揮者は美神でしたが、緊急時はやるかな〜と。
大気圏突入の際のマリアへの指示、メドーサ撃退はかっこよかったです。
ライフルまで撃てる器用な横島はこれからも無駄に器用に頑張ります。

刹那は今木乃香のことでいっぱいいっぱいだろうし簡単に惚れさせるのはちょっと・・・ということで、今は気になる人って感じです。
少しずつ、少しずつフラグを立てて一気に!!といきたいです(笑

PS 原作が今手元にないので今度確認してみます。ありがとうございます。

>HAPPYEND至上主義者さん
無自覚カップル、周囲は公認っていうのはかなり面白そうですね。
意外にありかも(笑

横島って戦闘時意外に余裕ありそうですよね。視野が広いというか・・・。

ピートと雪之丞は本拠地へGOです。
だからキス作戦にはどうかな・・・と。そのへんはお楽しみに(邪笑

ありがとうございます。これからもがんばります。

>諫早長十郎さん
初めまして。
「」の最後はマルで終わるものではないというのは知りませんでした(汗
今後も気になるところがあったらよろしくお願いします。

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