今日は土曜日、学生達は週に二日の休日を満喫できる尊い日だ。
もちろん横島が通う六道学園とて例外なく休みになる。
普通なら貧乏な横島はアルバイトに励むのだが肝心のバイト先である美神除霊事務所は昨日までの仕事、コンプレックス事件の事後処理やら依頼額引き上げやらで所長が忙しいため今日は休みになった。
突然降って湧いて休日だ、張り切って修行でもするかぁ…なんて殊勝な心は横島にはないので、当然今だにぐっすり眠っている。
なんといっても昨日はさすがに疲れた。
あのあと帰宅した横島達が話し合った結果、静水久は緋鞠の部屋に住む事に決定した。
静水久本人は横島の部屋の方がいろいろ扱いやすいとかなんとか言っていたが倫理的に問題があるので当然却下された。
本人は否定するだろうが最近の横島は危ない趣味に走りそうな気配もあるし……。
ともあれその後なぜか夕食を作りにきてくれたおキヌちゃんも交えて夜中までわいわいやるとさすがに疲れたのか各々自分の部屋に帰るとそのまま寝てしまったというわけだ。そして今に至る……。
「ん〜苦しゅうない苦しゅうない……ZZZ」
一体どんな夢を見ているのやら…いかがわしい寝言を呟きながら横島は寝返りをうつ。
するとなにやら手に奇妙な感触が……。
「……ましゅまろ?」
「ん〜若殿…そこはダメじゃ…」
横島は跳び起きた。
(んげッ!緋鞠!?なんて柔らかいんだ!ずっと揉んでいたいけどバレるとまずい!!間をとってここは事故を装い触れているだけにするべきか!?ってゆーか前にもこんな事やってたなオレ!!」
心の声が口に出ている事にも気付かず横島は叫ぶ、だが、今回は前とは少し違っているようだ……。
(…………下半身、主に前方一部分に水分反応有り!?)
横島は驚きと恐怖のあまり口をあんぐり開けたまま硬直する。
(まさかこの年でおもら…いやそれはない、それならもっと全体に広がっているはずだ!緋鞠が横にいる現状から考えるにこれはもっと別の液体の可能性が高い!?ってゆーかよく考えたらなんで緋鞠がいるんだ!?)
そこまで考えて横島はなにやら布団の中で何かがもぞもぞ動く感覚を覚える。不審に思い思い切って布団をめくってみると…。
「……おはよう…なのー」
全身びしょ濡れ幼女、静水久が登場した。
「ってお前のせいかい!!!」
なぜここに!?とかではなくまずは水気の正体が自分の放ったオタマジャクシじゃなかった事に安堵して静水久にツッコミを入れる。
っとそこで突然、横ですぴょすぴょ寝息を立てていた緋鞠が一瞬で跳ね起きるとどこから取り出したのか愛刀、安綱を抜刀すると静水久に突き立てる。
「夕べから姿が見当たらぬからまさかと思い若殿の寝床を張っていたが本当に寝首をかきに来たか、みずち!」
どうやら緋鞠はそのために横島の部屋に来ていたらしい。
静水久は首筋に安綱を突き付けられながらも余裕な態度を崩さずニヤリと笑う。
「……寝ながら監視できるとは器用な猫…なの」
「「「……………」」」
沈黙が重い…。横島の批難めいた視線が緋鞠に突き刺さる。
「い、いや…若殿の身体が暖かいものでツイ…な?」
こう言っているが本当は静水久が寝首をかきにくるとは思っていなかったのだろう、でなきゃ寝てしまう事などありえない。
なんだかんだいって静水久の事も信用しているのだ、半分くらい…だが。
「それより静水久はなんで俺の布団にいたんだ?まさかホントに寝首かきにきたんじゃねぇよな?」
横島の問い掛けを聞いて静水久はまたもやニヤリと笑う。
「……夜ばいならぬ朝ばいにきた…なのー」
そう言って静水久は薄いタンクトップのような服の胸元をクイクイと引っ張る。
「フッ…この俺がそんな見え透いた挑発に乗るとでも…?」
「なら、その手はなんじゃ若殿……」
ハードボイルドに決めたつもりの横島だがその手はワキワキしながら静水久へと伸びる、ついでに鼻の下も伸びているので言い訳不可能な領域だ…。
「……私の魅力の前には仕方のない事…なの」
見た目、不相応に頬に手を当てポッとしながら言う静水久の言葉を聞くと緋鞠とて黙ってはいられない。
「そのなりで魅力も何もあるか!そんなちんまい胸で”私の”若殿が満足するとでも!?」
そう言って緋鞠は背後から横島の頭を抱え込む。
「ふおぉぉ!緋鞠サン頭になにか乗ってます!!」
「……そんな脂肪の塊ない方がマシなの!見ろなのこの脚線美…なの」
「ぬぉぉッ!そんなきわどいとこに脚絡ませるなぁぁぁ!!」
どこかはわからないがきわどいとこらしい……。
こうして横島はどんどん美少女と美幼女の中に埋まっていく……。
しばらくして二人がなにやら脱ぎだしたところでドアをノックする音が聞こえてきた。
「横島さ〜ん、おはようございま〜す。朝ごはん作りにきましたよ〜入っても良いですかぁ?」
「マズイ!おキヌちゃんだ!お前らとにかく服着てくれ!」
二人が同じ部屋に、しかもベットの上にいるところを見られるだけでも誤解されそうだというのに二人の服はもはや半脱ぎ状態でどこから見てもイケナイ事をしていたように見えてしまう、こんな場面をおキヌちゃんに見られたら横島一生の不覚だ。
せめて服だけは着せなければ!
けれどたぎる青少年の本能はこのまま二人のキャットファイトを観戦したいと囁いてくる。
嗚呼、ホントは二人を止めて服を着せなきゃいけないのに!
そんな横島の葛藤には気付かず二人の言い争いはさらにヒートアップしていく……。
「なにが脚線美じゃ!そんな細っこい脚に魅力などないわ!見よ!若殿は私のような”だいなまいとばでぃー”が好きなのじゃ!」
そう言って緋鞠は寝巻変わりの湯浴み着の胸元をガバッと開く。その際プルンプルン揺れる胸を見た横島の目が揺れる方向を追ったのは罪ではないはずだ、あっ、鼻血が…。
「…そんなただでかいだけのチチでなにがナイスバディーなの!?スレンダーだって立派なナイスバディー…なの!」
負けじと静水久も着ていたワンピースを脱ぐ、下ははいているがその発育途中の胸には何も付けていない、桜色の突起が実になまめかしい……、横島が吐血寸前なのはきっと神の思し召しだろう……。
「横島さぁ〜ん開けますよ〜?」
とうとう審判の時がきた、古めかしい玄関のドアがぎぃーと音を立てて開く……事はなく幽霊のおキヌちゃんはそのままドアを通り抜けてきた。
そして横島とおキヌちゃんの目が合うと……
「おぅ…じぃざす」
「な…何やってるんですか三人とも!?」
以前おキヌちゃんが掃除にきてくれた時にエッチな本を見つかった事もあったがその時は男の子はこういうものに興味を持つものだと寛大な理解を示してくれたが今回は生身だ、しかも二人同時。
いくら幽霊とはいえお年頃な女の子、そんなアブノーマルな関係は許さないだろう。
という訳で三人仲良くお説教された。
「わかりましたか!?女の子はもっと自分を大事にしないといけませんよ!?」
「すまぬ…悪ノリしすぎたのじゃ…」
さすがの緋鞠も普段大人しいおキヌちゃんに怒られたのは応えたのかペタンとネコミミを垂らして沈んでいる。
「……このネコが最初に突っ掛かってきた…なの」
「なっ!?お主が怪しげな行動をとるからじゃろ!!」
「……それでも横島忠夫の布団に潜り込む事なかった…なの!」
「…二人とも、まだお説教が足りないみたいですね……」
背中になにやらおどろおどろしいオーラを背負って前髪で目が見えないおキヌちゃんにそう言われ二人はプルプルと首をふる。
「まぁいーじゃんか…俺も良いもん見せてもらったし……」
「なにか言いましたかぁ?」
最後の方は小さく呟いたつもりだがおキヌちゃんには聞こえたのか、ぷくぅっとほっぺを膨らませて横島を見つめる。
「い、いやナンデモナイデスヨ?それよりおキヌちゃんは何しにきたんだ?」
「あっ、私朝ごはんを作りにきたんですよ。緋鞠さんも三人分作るのは大変でしょうから」
話題を逸らそうと咄嗟に出た質問におキヌちゃんはあっさり乗ってくれた。しかもわざわざ朝飯作りにきてくれるなんて…
これで幽霊でさえなきゃな〜なんて思ってしまうのも当然だろう。
なにやら今度は緋鞠が膨れているような気もするが…なぜだ…?
しかしここには思わぬ伏兵がいた。
「……朝ごはんならもうできてるの、さっきはそれで呼びに行った…なの」
「静水久ちゃんご飯作れるんですか!?」
「液体オンリーなんて事ないよな!?」
「なぜ若殿の布団に入る必要があるのじゃ!!?」
「……お前ら失礼…なの」
約一名関係のない事を言っているのもいるが…いや関係あるか?
とにかくこれは意外だ、見た目小学生な静水久が料理を作れるとは誰も思わなかったのだろう。みんな目を丸くしている。
それでもせっかく静水久が作ってくれた料理だ、食べない訳にもいかず一同はちゃぶ台へと向かう。大丈夫、覚悟は出来ている、何を見ても驚かないぞ!
しかし予想に反してそこにあったのはどれも見事な料理ばかりだった。
ふっくら炊けたご飯にしっかりダシをとったみそ汁、味の染み込んだ煮物に冷や奴、水妖怪だからか魚へのこだわりが伝わってくる見事な焼き魚に大根おろしが添えられている。
「こ…これホントに静水久が?」
「…当たり前なの、いいからとっとと食いやがれ…なのー」
予定とは違う意味で驚いた一同はとりあえず一口頂いてみた。
「う…うめぇ…」
「…私は食べられませんけど料理をする者として見ればわかります、すごいですこのおみそ汁のダシのとりかた!」
「ふ、ふん!まぁまぁじゃな」
緋鞠はまぁまぁとか言っているが焼き魚を見る目が心なし血走っている…
しっぽは波打ち、ネコミミはピンと張ってるところを見ると食いつきたいのを必死に堪えているのだろう、握った拳はもはやプルプルしている……。
なんとか暴走せずに緋鞠的には最後まで優雅に食べ終わる頃にはみんなも食べ終わっていた。
それからおキヌちゃんは何もしてあげる事ができなかったのでせめてと食器を洗ってから美神を起こすために事務所へ急いで戻っていく、ホントにいい娘だ……。
おキヌちゃんがいなくなってしまったのでとりあえず三人はテレビを付けて静水久が煎れてくれたあつ〜い緑茶を啜る。
「しかし静水久が家事得意なんて意外だったな〜」
食事中に話した事だがなんと静水久は朝ごはんだけではなく掃除、洗濯までしてくれたそうだ、意外に家庭的らしい。
「……別に普通なの…地走家に滅ぼされる前は戦闘能力よりも生活能力の方が大事だったの、それ以前に料理洗濯は女の嗜み…なのー」
静水久はそう言ってちらりと緋鞠を見るとニヤリと笑う。
「……なにか言いたそうじゃなみずち…言っておくが私とて出来ぬ訳ではないぞ?」
緋鞠が眉をぴくぴくさせながら答える。
「わかったから興奮すんな緋鞠!静水久も挑発しない!」
横島の仲裁にとりあえず二人とも矛先を納める。
「それより今日はどうする?このまま家でゴロゴロしてんのもアレだしどっか行くか?」
「……私はゴロゴロいちゃいちゃしてるのが良いと思う…なのー」
「誰がいちゃいちゃじゃ!」
「うむ、それも魅力的な意見ではあるが「若殿!?」今日は静水久の生活用品を買いに行こうと思うんだ」
緋鞠の抗議をさらりと流して横島は言い切る。
これはさっきから考えていた事だ、静水久のワンピースはびしょ濡れだし洋服も買った方が良いだろう。
こうして横島と横島ガーディアンズは街のデパートへと繰り出していくのだった。
とぅーびーこんてぃにゅー
あとがき
こんばんはにゃんです。
今回は幕間というか静水久と緋鞠になんとか仲良くなってもらおう話しです……。仲良くなるにはとりあえずスキンシップ!とあまり考えなしにお出かけしてもらう事にしました。これからどうなるかは私にもわからなかったり……。
ともあれ今回は物語を動かすような展開にせずにまったりほのぼの書いていきたいと思います。
ではレス返しです。
○Iw様
レスありがとうございます。
>あ〜どっちもかあいいなぁ〜。
はい、まさに今の私の心境はそれです……どっちが好きか決められないですよぅ…。
今回静水久が誘惑キャラの本性を現しました。気に入っていただけましたか?私はこんな静水久が大好きです!
○February様
レスありがとうございます。
そしてお誕生日おめでとうございます。
そうです2月は節分の季節です歳の数だけ豆食べましょう。バレンタイン?なんですかそれは?緋鞠達からチョコ貰う横島なんて書いてあげないんだから!!(笑)
ともあれ地走家ですが一度本編に出ていたりします。探してみたりするのもいいかも知れませよ?
最後に誤字指摘ありがとうございました、これからは今まで以上に気を付けます……。
○レンジ様
レスありがとうございます。
>話を考えるのも大変そう
いえいえ、おもしろくてたまらないですよ、自分好みの緋鞠達が受け入れられた時の感動は言葉では言い表せません。本当にありがとうございます。
この前謀アニ○イト他に行ったらひまり1巻は既に売り切れ続出でした…まぁ入荷日に買いにいった私は大丈夫でしたが。
ですが今度めでたく重版されたみたいですよ。ファンとしては一安心です。
ではまた次回お会いできる事を祈っています。
○山の影様
レスありがとございます。
>横島は炉に目覚めてしまったのか
彼は頑張ったのです……ですが敵はあまりにも自分の武器を心得ていたのです…(笑)
獣っ子コンビはもう少しお待ちを、今頑張って構想ネリネリしています。
その前にあの娘をそろそろ出さないと……。
>横島の霊力源が煩悩
煩悩パワーのない横島なんて横島じゃないですからね〜
それじゃあ次回も待ってる……なのー
○趙孤某様
レスありがとうございます。
>横島菌に侵されてしまったようです
うふふ、おひとり様ご案内〜こっちの娘(みず)は青〜いぞ〜♪
はてさて地走家とはどんな家なのか!皆様の反応が今から怖いです…。
大まかな構想しかできてませんが受け入れていただけるか今から心配ですよぅ。頑張ります…。
○スケベビッチ・オンナスキー様
レスありがとうございます。
>人前でやると捕まりそうだから
確かに完全に変質者ですもんね……。
前回で少し目覚めてもらおうかとも思っていたのですが静水久に食われました……、こうなったら地走戦あたりでなんとか頑張ってもらいます!
>恋の鞘当てとかあるんでしょうか
そりゃあラブコメですからその辺は必須イベントですよぅ。
>追伸2
麻宮先輩とフルスロットルな妹さんには別途イベントを用意してあったり……いやあの二人は私の中のエターナルヒロインですから……。それでもルシオラが一番好きなんですよね、あの娘は別格だ……。
○HAPPYEND至上主義者様
レスありがとうございます。
あぅ〜乗っけから多分な褒めの言葉ありがとうございますぅ。
私は右も左もわからない素人だったので最初の方は今よりもずっとお見苦しい文だったかと思いますがそう言っていただけると努力してきた甲斐があります。
これからもうちの緋鞠たちをよろしく見守ってあげてくれたら幸いです。
横島にも近々見せ場を作ってあげようと思っているのでそちらのご期待にも添えられたら嬉しいです。
○冬様
レスありがとうございます。
原作知らない方にも楽しんでいただけるよう書いてきたつもりですのでそれが冬様に伝わったとしたらこれほど嬉しい事はないです。
当初よりはだいぶ成長したと思うのですがまだまだ修行不足ですのでこれからも感想やご指摘をいただけると嬉しいです。
レス返し終了です。
BACK< >NEXT