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▽レス始

「霊能生徒 忠お!〜二学期〜(二十一時間目)(ネギま+GS)」

詞連 (2007-02-19 00:30/2007-02-25 16:41)
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 木乃香にとって、その子は世界の全てだった。

「桜咲刹那言います」

 自分以外の子供と言う存在を、初めて知った。広いお屋敷の中には父親の他にいろんな人がいたが、けれども彼らの話す事や見ているものは自分と全く異なり、目の前にいるはずなのに、どこか遠くにいるように思えた。
 屋敷の中で、自分は一人ぼっちだった。自分以外の動体は、自分がつく手毬だけ。
 だから、その竹刀を背負った彼女の存在は、例えば水面に投げ込まれた小石のように、一人でついていた手毬以外の全てが停滞した自分の周囲を動かした。
 世界が色を得て動き出して見えた。だから、世界を色付けし動かした彼女は、幼心に見る狭い世界の全てと等しかった。

 それから10年。自分は少し大きくなった。屋敷と言う箱庭を出て、麻帆良に来た。見える世界は広がり、友達もたくさん出来た。世界は一人きりじゃない。
 だけども、喪失したものもある。
 中学に上がった時に、刹那を見かけた。嬉しかった。声をかけようとした。だが、彼女はこちらを見なかった。親友だった彼女は、自分のことなど知らぬとでもいう風に、こちらに一瞥をくれることもなかった。
 二人の友情は、まるで幼い日の自分と同じように、あの広い――しかし今にしてみれば狭い屋敷の中に置き去りにされてしまったのだろうか?
 本当に忘れられたのかもしれない。何か知らないうちに自分が刹那を傷つけてしまったのかもしれない。
 そのことが悲しくて辛くて、そして怖かった。近づいて拒絶されるのが、伸ばした手を払われるのが怖かった。
だからその最初の接触以降、木乃香は刹那に積極的に近づくことが出来なかった。
心に出来た小さな傷。それはやがてアスナ達を過ごすうちに、楽しい思い出の中に埋もれていった。だが、それでもその傷痕は心の奥底で存在し続け、不意に鈍い痛みを発する。
 忘れる以外の治癒を諦めかけていた古傷。けれども、その傷を癒す機会は、唐突にやってきた。

「お嬢様、お下がりください!」

 それは数週間前、横島と出会ったときだった。
 横島を吸血鬼だと勘違いして逃げる自分と、それを捕まえようとする横島。その間に、刹那が割って入った。
 刹那の背中を見たとき、木乃香は大きな犬に吠え付かれた時のことを思い出した。その時と比べて、随分と大きくなった背中は、しかしどうしようもなく同じ背中だった。

 結局、横島のことが誤解だと分かり、その場は収まった。その後の刹那はいつものように、自分から距離を取りこちらと目をあわせようとしない。
 だけれども、木乃香の心の中には大きな変化が生じた。

 刹那は自分のことを嫌ってない。
 刹那は自分のことを忘れてない。

 どうして刹那が自分と距離をとるのかはわからない。だが、それだけのことが分かれば十分だ。

 刹那は自分に世界をくれた。刹那は護ってくれた。それに対して、自分は何も報いてこなかった。そして、今がその時だと、木乃香は思った。
 自分から近づこう。自分から手を差し伸べよう。
 例え拒絶されても、それがどれほど痛くても、そうしよう。それが友達として、今の自分に出来ることだと、刹那のくれた物に報いることだと信じよう。

 せっちゃんと、もう一度一緒に笑いたい。

 だから、木乃香は行動に出た。


「ふぉれ、甘食」
「ぷっ」

 とりあえず、笑顔を浮かべさせることには成功した。


霊能生徒 忠お!〜二学期〜 二十一時間目 〜ワンドの6(行き違う思い)〜


 隠れると言う行為は、傍から見ると酷く不審かつ目立つものに映ることがある。
 今まさに、朝倉の視線の先にいる三人組はそんな感じだった。

「あら?ハルナさんにさよさんよね?」
「ザジさんもいますわね。どうしたのかしら二人きりで…」

 千鶴達も気付き疑問を覚えたようだが、朝倉はより深刻な疑問を得る。

(桜咲達が…いない?)

 西条から聞いた話では、この三人はネギ、アスナ、刹那、木乃香、そして横島と行動を共にしているはずだ。横島が行方不明、ネギとアスナが親書を届けに総本山というところに行っているとしても、二人足りない。

「とりあえず、近づいて声をかけてみようよ」
「そうですわね」
「えっ!?」
「?どうしたのですか、朝倉さん」
「あ、い、いや。なんでもない。確かに折角見かけたんだしね」

 思わず声を上げてしまった朝倉だが、考え直して頷く。
 確かに魔法関係の近くに千鶴達を近づけるのは避けるべきかもしれないが、もしあの三人がはぐれて、しかも危険な状態にあるなら助けなくてはならない。

(幸い、こっちには西条さんから貰ったこれがあるし)

 袖の中の文珠を握り締めながら、三人に近づく朝倉達。
 特別気配を消しているつもりはないが、しかし三人とも何かに熱中しているのか、こちらに気付く様子がない。
 声をかける程度の距離に近づいた頃、三人の会話が耳にはいる。

「た、ただの仲の良い二人にしか見えませんけど?」
「ふっふっふ、甘いね、さよちゃん。これは間違いないよ、ホント。
 私のセンサーはびんびんに反応中よ」
「…(センサーと聞いてハルナの触覚を見つめるザジ)」

 何のことか、と問う前に答えが視界に入った。
 三人が建物の影に隠れて覗く大通りに、一組のカップル(?)がいた。

(?あ、あれって木乃香と…桜咲さん?)
(あらあら、まあまあ…)
(ど、どういうことですの?)

 小声で会話を交わす千鶴と夏美。ただ一人状況が分かっていないあやかも、自然と声を潜め、千雨は「そんなわけねぇだろ」的な顔をしている。
 一方、朝倉も状況が呑み込めて安堵を覚える。

(ただの出歯亀みたいね)

どうやら木乃香は既に誘拐済みとかそういうことはないらしい。
更に言えば、魔法使い達は人にばれるのを嫌っているらしいから、これだけ人の多いシネマ村で何かを仕掛けてくることもないだろう。
 つまり、今は安全。
 そのように確信した朝倉がすることといえば唯一つ。

「ふっふっふ…。確かに怪しいねぇ、あの二人」

 すなわち、パパラッチの名のごとく、出歯亀に参加することだった。

「きゃっ!あ、朝倉さん!?」
「いいんちょ達も!」
「おいっす。なんか面白そーなことになってんねぇ」

 朝倉の含み笑いに、ようやく三人は気付いて振り返る。

「あんた達もシネマ村に来てたんだ…てか何ガッチリ変装してんのよ」
「ここに来たらやんないとー。アンタもやんなよ」
「とてもお似合いですよ」

緊張がほぐれ、いつものテンションに戻って言う朝倉。
 だがその弛緩も、すぐにまた引き絞られる。

「あ、何か来たよ」

 夏美が指差す方向から、蹄と車輪の音が聞こえてきた。
 見るとそちらの方から、すごい勢いで豪奢な衣装の馬車が走ってきた。馬車には御者の黒子と、そして装飾が多いドレスを着た小柄な女性――自分たちと同じくらいの年頃のメガネをかけた少女が乗っていた。

「きゃっ!」
「!?」

 走ってきた馬車から木乃香を護るようにする刹那。だが馬車は二人の脇を通り過ぎる直前に、まるで ブレーキでもついているかのように急停止する。
 刹那はその暴走馬車を睨み、それに乗っていた人物をみてはっとする。

「お、お前は…!?」
「どうもー、神鳴流ですー」

 険を孕んだ刹那の声に対して、降りてきた女性―――月詠の口調は随分と柔らかかった。


 予想外の遭遇に、刹那は木乃香を背中で庇いながら、夕凪に手をかける。
 だが、抜刀はしない。衆目が多すぎる。

(それは向こうとて同じなはず…)

 だが警戒は解かずに月詠を見る。おととい横島に斬られたはずの腕は、白い手袋に包まれてしっかりと治っていた。

「…っとと、じゃなかった。そこの東の洋館のお金持ちの貴婦人です〜」

 刹那の殺気だった視線の中で、しかし月詠は何が面白いのか、笑いながら台詞を続ける。

「そこな剣士はん。今日こそ借金のカタにお嬢様を貰い受けに来ましたえ〜」
「な、何のつもりだこんな場所で…?」
「せっちゃん、これ、劇や、劇。お芝居やで」

 月詠の言葉の意図が取れずに戸惑う刹那に、木乃香がまるでアトラクションでも見ているように言う。

(アトラクション…そうか。それを利用してお嬢様を白昼堂々…!)

 それならば、いくら人がいても関係ない。
 どうやら、自分は逃げ込んだつもりがまんまと罠にはまってしまったらしい。
 だが、だからと言っておいそれと渡す理由はない。

「そうはさせんぞ!木乃香お嬢様は私が守る!」

 大声で言い放つ刹那。
 その時刹那は忘れていた。自分達の周囲に大きな人垣根が出来ていたことに。
 とたんに、周囲から歓声が上がる。

「いいぞー!」
「カッコいいー!」
「ひゅーひゅー」
「あっ…」

 慣れない状況に赤面する刹那に、木乃香が更に抱きつく。

「きゃー!せっちゃん!格好ええ!」
「わ、いけません、お嬢様…」

 そう言いながら、しかし振り払うわけにも行かずに更に赤くなる刹那。

「くすくす…」

 扇で口元を隠しながら笑う月詠に、刹那は恨みがましい視線を向けるが、だが彼女にとってはどこ吹く風。むしろその視線のプレッシャーを楽しむように言ってくる。

「そーおすか。なら仕方ありませんな…」

 月詠は口調とは裏腹に、ウキウキした様子で左手の手袋を取ると…

「えーーい」
「む?」

 投げられた手袋を反射的に手に取る刹那。
 西洋の流儀などには疎い彼女だが、この意味くらいは知っていた。白い手袋を投げてよこすと言うことは…

「木乃香様をかけて決闘を申し込ませていただきます―――。
 場所は三十分後、シネマ村正門横、日本橋にて…」
「…随分と一方的だな」

 こちらには何の益もない戦いの申し込み。
 否定的な刹那の態度に、月詠はどこか申し訳なさそうに、しかし期待するように、言ってくる。その様子は、まるで好きな相手に思いを告白する乙女のよう―――

「ご迷惑とおもいますけど、ウチ…手合わせさせていただきたいんですー」

 ―――だが、その乙女が求める想いの交流は、剣戟のぶつかり合いのみで果たされるらしい。

「逃げたらあきまへんでー。

 ―――刹那センパイ」

 ほんの一瞬、春を連想させる柔らかい微笑が、耳まで避けるようにつりあがり、眠たげな眼に明確な殺気が生まれた。
 その殺気は、普通のそれが持つするどさはなく、例えていうなれば鈍器か錆びた刀のような、硬質で重苦しく、そして血なまぐさい。
 修羅に堕ちた者の、闘いを肴に血で酔える者の、特有の殺気。
 それを感じたのか、木乃香が背中で身をすくませて自分にしがみついて来る。

(お嬢様…)

 刹那は左手ですがり付いてきた木乃香の手を握る。

「ぁっ…」

 そうすることで、少しだけ木乃香の震えが止まったのを感じた。
 そのことに安堵する一方で、刹那は月詠を睨みつける。
 さっきの一瞬の気配は既に消え、残っているのは一見人畜無害そうなおっとりとした少女。だが、今の殺気は本物であり、それに込められたメッセージも本当だろう。

(おそらく…私達が行かなければ強攻策で来る)

 いつ来るか分からない襲撃を恐れるよりは、こちらからでる方がまだやりやすい。

「わかった…三十分後、日本橋だな?」
「はい〜。受けてもらって嬉しいです〜」

 そう言って、本当に嬉しそうに笑う月詠。
 だが、用事は済んだはずなのに彼女は去ろうとせず、きょろきょろと周囲を見渡す。

「あの〜…そういえば横島さんはおらへんのですかー」
「ああ…」

 隠してもしょうがないだろうと、正直に言う刹那。それは明らかに月詠に有利になる情報だったが、しかし月詠の表情は予想に反して曇った。

「そーですか…。残念やわー」
「横島さんになんの用だ?」
「用ってほどでも…。単に、会いたいって思っただけですー。
 しいて言うなら、パワーアップして生まれ変わったウチを見て欲しというのもありますねん」
「…意趣返し、ということか?」
「そんなんやありまへんてー。私は強い女の子が好きで、だから横島さんも大好きなんですー」

 裏も表も感じさせない、純粋な好意を告げる言葉に刹那は戸惑う。だがそれを知らぬとでもいうように、月詠は続ける。

「ウチ…横島さんの虜になってもーたんですものー。
あの夜、横島さんにめちゃくちゃにされてから、すっかりもうメロメロですわー。
 綺麗で、強くて、しかも上手なんですものー」

人間を、破壊するのが。
 言外に込められた称賛に、流石の刹那も身震いを覚える。目の前の少女は、自己の保全よりも破壊の悦楽を好むと言うのか?
 刹那の戦慄に気付いてか気付かずか、月詠はうっとりとした表情を、今度は少し淋しさを感じさせる笑顔に変える。

「あないにされたの初めてで…。ちょっと血が出ちゃいましたけど…、途中から気持ちよーなって。もう、あの夜のことを思い出すだけで、体が熱ぅなって、いても立ってもいられまへんのですー」
「ふん…外道か…」
「なんとおっしゃってくださっても結構ですよー」

 そういう評価になれているのか、それともそれが気にならないほど壊れているのか、月詠は平気な顔で続ける。

「失礼な話になりますけど、刹那センパイはいわば前菜ですねん。
 美味しくいただいて仕事を果たして、それから横島さんと楽しい時間を過ごさせていただきますー」
「そう簡単にはいかんぞ」

 負けられない理由が増えた。刹那はそう思った。
 先ほどまでの木乃香と過ごせた時間は、横島の提案で実現したものだ。二度と立てないと思っていたお嬢様の隣に、一時とはいえ立てた。
 月詠はおととい惨敗しておいて、しかし挑むと言うのだから、それなりの勝算があるのだろう。横島とて人の子、負担は少ない方がいい。
 ここで少しでも恩を返しておきたい。

「月詠、と言ったな。
 お嬢様は元より、横島さんにも指一本触れさせん。横島さんのもとに行きたいなら、私の屍を越えていくことだな」
「あーん…刹那センパイはずっこいですー。横島さんもお嬢様も独り占めなんて。一人でええから譲って欲しいわー」
「欲しければ奪ってみせろ」
「クスクス…ならそうさせてもらいますー」

 刹那の挑発に微笑み返すと、月詠は馬車に乗った。それと同時に、馬車は来たとき同様の勢いで駆け出した。

「ほな、助けを呼んでもかまいまへんえ〜。横島さんやのうても強くて可愛い女の子なら大歓迎です〜」

 去り際に、そんな言葉を残していく。
 それを見送りながら、刹那は考える。

(ああ言った手前だが…やはり他の人たちと連絡を取るべきか?)

 だがそうなると、他のところの守りが薄くなる。
 現時点でフリーの横島さんは、おそらくこちらに向かっている途中だろう。

「あれ、ハルナ?いいんちょ達まで…」
「えっ?」

 刹那が思案していると、背後で木乃香の声がした。振り向くと、そこには先ほど置いてきたハルナとさよ、それにザジ。更には別行動しているはずの朝倉達までが揃っていた。
 ああ、そういえば置き去りにしてしまったな、と思い出し、刹那は謝っておこうかと声をかけようとして

がしっ!

と、ハルナに肩をつかまれた。一体何事かと問う前に


「ちょっと桜咲さんどいういことよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

 かけようとしていた質問を、逆にハルナにされたのだった。


「あの〜…そういえば横島さんはおらへんのですかー」

 刹那と月詠の会話を、建物の影から彼女達は聞いていた。
 その中に、突然現れた話題。それに真っ先に反応したのはハルナだった。

「よ、横島が何でここに…」
「知り合いなんでしょうか?」

 ハルナの言葉にさよが相槌を打つ。
 メンバーの中で朝倉だけが、横島と言うキーワードにより馬車から降りてきた少女が魔法使い――それも敵側と感づくが、事情を知らない少女達にしてみれば、全くの想定外の展開だ。
 興味津々と、聞き耳を立てる彼女達の耳に、会話が飛び込んでくる。

「横島さんになんの用だ?」
「用ってほどでも…。単に、会いたいって思っただけですー。
 しいて言うなら、パワーアップして生まれ変わったウチを見て欲しというのもありますねん」
「…意趣返し、ということか?」
「そんなんやありまへんてー。私は強い女の子が好きで、だから横島さんも大好きなんですー」
『だっ…!?』

 大好き、そのキーワードに反応したのはハルナとさよ、そして夏美だった。
 横島の話題が来る前の会話で、すでに馬車から降りてきた女の子は『木乃香に横恋慕する第三の女or刹那が京都にいた頃に付き合っていた昔の女』というのが確定(ただし誤情報)している。
 その前提を踏まえると…

「まさか横島、エヴァちゃんだけでは飽き足らず、この旅行中あの子まで毒牙に…!」
「そ、そう言えばエヴァンジェリンさんと出来てるんだっけ、横島さんって」
「おおおおお、落ち着いて!村上さんも早乙女さんも落ち着いてください!
 友達として…そう!友達として好きっていう意味では…!」

 アルビノの肌を真っ赤に染めながらフォローの意見を入れるさよだが、

「ウチ…横島さんの虜になってもーたんですものー。
あの夜、横島さんにめちゃくちゃにされてから、すっかりもうメロメロですわー。
 綺麗で、強くて、しかも上手なんですものー」

「ぐはぁぁっ!」
「さ、早乙女さはぁん!」

 早乙女ハルナ、悶死。
 鼻から血を噴水のように撒き散らしながら、しかしどこか幸せそうな表情で倒れ付す。

「虜ってどういうこと?あの夜って何?めちゃくちゃってどういうこと?上手って何が!?」
「あらあら」
「何ですの?何のことですの?」
「知るかよ…」

 衝撃的な発言内容に赤熱した頬に手を当てる夏美と、若干頬を染めて笑う千鶴。ネギに対しては過剰反応なくせに、こういうことにはからっきしのあやかが隣で頭痛を抑える千雨に問う。
 カオスな状況など全く知らぬ刹那と月詠は会話を続ける。

「あないにされたの初めてで…。ちょっと血が出ちゃいましたけど…、途中から気持ちよーなって。もう、あの夜のことを思い出すだけで、体が熱ぅなって、いても立ってもいられまへんのですー」
「ふん…外道か…」
「なんとおっしゃってくださっても結構ですよー。
失礼な話になりますけど、刹那センパイはいわば前菜ですねん。美味しくいただいて仕事を果たして、それから横島さんと楽しい時間を過ごさせていただきますー」
「そう簡単にはいかんぞ。月詠、と言ったな。
 お嬢様は元より、横島さんにも指一本触れさせん。横島さんのもとに行きたいなら、私の屍を越えていくことだな」
「あーん…刹那センパイはずっこいですー。横島さんもお嬢様も独り占めなんて。一人でええから譲って欲しいわー」
「欲しければ奪ってみせろ

「こっちも大出血中でありまするぅ…」
「あ、朝倉さん!朝倉さん!死んじゃダメですぅ!」
「ああ…もう妄想し疲れたよ、パトラッシュ…」
「逝っちゃダメ!幽霊にもならないで逝っちゃダメぇぇぇっ!」

 痙攣すらしなくなってくるハルナを、さよが必死で揺さぶる。
 夏美も遠い目で「血が出る…初めて…美味しくいただく…略奪愛…ハーレム」と呟いている。

「あらあら、まぁまぁ…」
「だから一体どういうことなのですの!?」
「知らん…知りたくもない…」
「と、とにかく近づいて確認してみない?」
「―――それだ」
「ひゃっ!さ、早乙女さん、大丈夫なんですか?」

 まるでゾンビかキョンシーのように復活したハルナはおぼつかない足取りで歩き出す。
 目指す先は馬車が去って、二人残された刹那と木乃香の方。

「あれ、ハルナ?いいんちょ達まで…」
「えっ?」

 木乃香と刹那がこちらに気付く。
 だが、ハルナは無言のままで刹那に近づき、

がしっ!

と、肩を掴むと絶叫。

「ちょっと桜咲さん一体どういうことよぉぉぉぉぉっ!」
「わっ…」
「ひぅっ!?」

 驚く木乃香と刹那に、ハルナはマシンガン的なトークで質問を続ける。
 それに続く形で千鶴や夏美、そしてさよが寄って来る。

「まあまあ…いいわね、恋って」
「あ、あの桜咲さん。…さっきの人が言ってたの、本当なの?」
「一体何がどうなってんのよ!?あの女の子と桜咲ってどういう関係!?つか二人はいつから付き合ってたの!?って言うよりも横島も含めて妻妾同衾!?どっちが本命!?どっちも本命!?エヴァンジェリンや茶々丸も含めくんずほぐれつインモラルナイト!?」
「おーい、落ち着けパル」

朝倉は未だ暴走しているハルナを刹那から引き剥がし…

(やっぱ魔法関係?)
(!?―――はい)

 近寄りざまに囁かれた言葉に刹那は応える。朝倉は真面目な表情で頷き返すと、いつもの食えない笑顔を浮かべ

「ま、とにかく。二人は付き合ってて、しかも横島含めてただれた関係で、その上であの子が桜咲と木乃香の間を裂こうとしているのは本当っぽいね」
「ちょちょ…ちょっと待って下さい!?何の話をしているんですか!?」
「いやいや、うん。お姉さんは応援するよ?
 あ、記事にするとか、野暮なことは言わないから安心しなって」
「そうですよ。応援します。あ、けれど…横島さんのことは…その…な、なんでもないです!」
「だ、だから一体何のことですか、相坂さんまで!?横島さんの関係って一体…ってザジさんもその握り拳の人差し指と中指の間から親指を突き出すサインの意味は!?」

 続く慣れない状況に、いつもの平静さを失う刹那。それをなだめ透かしつつ、皆に問いかける。

「さあて、こういう状況でクラスメートの私達がするべきことといったらなんだろうね?」
「もちろん!二人の恋を全力で応援するのよ!」
『オーッ!』

 ノリノリで手を突き上げる千雨以外の面々。だが、それに朝倉が待ったをかける。

「ちょっと落ち着いて。応援はいいけど助太刀はなしでいこうよ」
「えっ、どうして?折角のイベントなのに」

 不満げに言うハルナに朝倉はチッチッチと指を振る。

「ここは譲ってやんなよ。
 愛をかけた女同士の戦いよ?ここは黙って見守ってやるのが取るべき態度じゃない?」
「むっ…た、確かに…」
「ま、そういうことで全員応援の準備が出来たら端の近くの喫茶店化何かに集合。邪魔にならないくらいの遠くから桜咲さんの闘いを見守るってことで」
『オオーーッ』

 朝倉の仕切りにまたもや千雨以外の全員が手を突き上げる。
 それを眺めつつ朝倉はちらりと刹那の方を振り向いてから、小声で言う。

(あの…できればまったく関係ない所にいてもらいたいのですが…)
(それは無理っしょ?正直に状況を説明しないでよそに行くように言ったとしても、こいつらのことだから絶対そっち行くし)

 ならばある程度目の届く範囲にいたほうがいい。
 《護》の文珠をちらりと見せる朝倉に、刹那は納得を示す。

「一体何がどうなってますの!?私だけ置いてきぼりでずるいですわ!」
「はいはい。教えてあげるからこっちに来なさい」
「やっぱ私達も仮装する?」
「…(コクコク)」
「いいなぁ…私は幽霊だから着替えれないし…。
 あれ?木乃香さん、どうしました?顔が青いですよ?」
「…えっ…あ、なんでもないよ」

 さよに言われ、月詠の殺気に当てられていた木乃香が我を取り戻す。

「それならいいんですが…」
「ほい、さよちゃん!着替えいくよ!」
「えっ、け、けど私着替えれないし…」
「じゃあ、せめてさよちゃんの意見を聞かせてよ」
「あ、は、はい!それなら喜んで」
「それじゃ、二人は先に橋の方に行っててね。こっちはなるべくゆっくり行くから」

 可能なら刹那の決闘が終わってから到着すると言外に込めて、朝倉達は貸衣装屋へと歩いていった。
 台風一過とでもいう風に、人気がなくなった通りに、刹那と木乃香だけが取り残される。

(…早めに行って、勝負をつけるか)

 神鳴流は魔法ではないにせよ、裏の技。出来ることなら戦う場所も見られたくない。

「お嬢様、行きましょう」
「うん」

 まだ少し元気のない木乃香に声をかけてから、刹那は手を握って歩き出す。

「あっ…」
「どうしました、お嬢様」
「せっちゃん、手…」
「手?……!?も、申し訳ありません!」

 言われて、刹那は自分が自然と木乃香の手を握っていたことに気付いて慌てて手を離す。

「ううん、ええよ。一緒に行こ?」

 握ろうとして…

「っ…!」

だが反射的に刹那は手を避けて逃げた。

「ぁ…」

 小さく声を上げた木乃香だが、既に振り向いていた刹那は前を向いていて、その表情を見ていなかった。
 三歩進んで、刹那は初めて木乃香がついてこないのに気付く。

「どうしました?」

 振り向く刹那の目の前には

「なんでもないよ」

 そこには、いつもと代わらない木乃香の笑顔。
 それを見て刹那は思いを新たにする。

(なんとしても、守らなくてはな…)

 無言で、再び歩き出す刹那と木乃香。だが、刹那は気付けなかった。自分が執らずに避けた木乃香の手が強く握り締められていたことに。


 木乃香にとって刹那はかけがえのない存在だ。
 刹那は自分に世界をくれた。刹那は護ってくれた。それに対して、自分は何も報いてこなかった。そして、今がその時だと、木乃香は思った。
 自分から近づこう。自分から手を差し伸べよう。
 例え拒絶されても、それがどれほど痛くても、そうしよう。それが友達として、今の自分に出来ることだと、刹那のくれた物に報いることだと信じよう。
 例えいくら拒絶されても、それがどれほど辛くても、刹那がくれた暖かさの方が大きかったから。
 それで、刹那と再び笑いあえることが出来るなら、自分は耐えられる。


 その異変に最初に気付いたのは、千雨だった。

(人がいねぇ…)

 ハルナとザジを着替えさせるために戻った貸衣装屋には店員がいなかった。
 まあ、トイレか何かだろうと思い、皆はあーでもないこーでもないと、衣装を物色している。
 千雨も最初はそれに付き合っていたが、五分以上たっても受付に人が現れないのに気付き、流石に不信感を覚えた。

「ちょっとでてくる」
「千雨さん?」

 あやかの声に答えず、千雨は妙に不安になって急ぎ足…と言うよりむしろ駆け足で表に出る。
 何かが…何かが常識から乖離している。
 そんな恐怖に近い衝動に突き動かされながら通りに出る。

「…っはぁ…はぁ…」

 周囲を見渡して―――

「は、ははっ…バカじゃねぇの、私」

 気が抜けたような笑顔を浮かべた。
 通りに出れば、そこはやはり人に溢れていた。
 普通の格好をした者と、忍者や侍などといった仮装をした人々が行きかう非日常な…しかし明らかに日常の延長線上にある世界。

「息切らして…バカみてぇ」

 自嘲する千雨。
 そう、いままで感じた全ては錯覚だ。横島やら相坂さよやら、そんなわけの分からない異常な連中と関わっていたから、自分の堅実な現実感に齟齬が生じただけに過ぎない。
 耳には人々が生む喧騒や、子供の泣き声がする。
 ああ、そうだ。まさかいきなり観光施設から人がいなくなるなんてことありえねぇよな。

「ん?千雨ちゃん、どうしたの?」
「あ、なんでもない」

 背後から眼帯をしたハルナの声がして、千雨は短く答えて戻る。

 テュラテュラテュラテュラテュラテュララ〜♪

 貸衣装屋の扉を入る直前、背中越しに笛の音が聞こえた。
 妙に気になって千雨は笛の音が響いてきた方向を見る。
 道の向こう。通りが交差する十字路にそれはいた。

「……ピエロ?」

 そう、それは斑模様のピエロだった。
 片手にラッパのような笛。もう片方の手で金色のステッキのようなものと、それに風船を括りつけている。風船の数は、ピエロが浮かび上がってしまわないかと不安になるほど。
 その周囲を子供がまとわりながら歩いている。まるで、その笛の音にあわせて踊っているように。

ゾクッッ

 千雨は、再び先ほどと同じ、しかしもっと強い違和感に悪寒が走った。
 違う。アレは違う。
 自分が見ているものに、本能が否定を繰り出す。それは、下手に修正した顔写真や巧妙な騙し絵を見せられた時と同じ反応だった。
 ハイドパイパー。
 不意に、そんな単語が浮かんできた。
 そう、あれはハイドパイパー――ハーメルンの笛吹き。笛の音で最初はネズミを、次は子供を操る、斑の笛吹き…

「――っ!何考えてんだ私は!」

 そこまで考えて、千雨は首を横に振った。
 ありえない。あんなのは御伽噺だ。
悪霊や怨霊は確かに存在する。それを対峙することを生業とするGSだって存在するし、オカルトを取り締まる法律も存在する。

(だが、それはあくまで非常識な世界の話だ!普通で常識人な私の周囲で起こるようなもんじゃねぇ!)

 全国で生じるオカルト関係の事件は、それ程多くない。そもそもGSの数が全国でも二千人足らずであり、それらがどうにか捌ける程度の数の霊障しか起こっていないのだ。
それはネット上の統計でも明らかだし、某巨大掲示板で騒がれるオカルト話の殆どがウソやホラ話だ。それに、現に今までの殆どの人生を麻帆良で殆ど生きてきたが、幽霊やらオカルトやらに遭遇したのは、相坂さよの一件だけだ。そんなものが、そうポンポン起こるはずがない。

「アホらし…」

 千雨は笛を吹くピエロから目を離すと、自分に言い聞かせるように言ってから、貸衣装屋の中に戻った。

 そのことが、彼女を救った。


「ヘイッ!」


 曲を吹き終わったパイパーが最後に一声。
 その瞬間、道行く人々が、爆発を起こした。全員大人だ。
 そして煙が晴れると、そこには子供の姿。服までも見事に子供のものになっている。

「はーはっはっはっはっ!濡れ手に粟って奴だな!」

 上機嫌に笑うパイパー。増えた風船を杖――金の針のレプリカに巻きつける。

「一度に十人単位か…、本物には及ばないが、十分だぜ」

 この針で年齢を集め、力をつけてゆけば、やがては本物の金の針を手に入れることも夢ではない。

「おまけにガキ共を操る力も使える…」

パイパーは悦に浸りながら軽くラッパを吹く。その音色にしたがって、子供達―――自分が子供にした人間達が歩き回る。右に、左に…。

「ハハハハハハッ!愉快だ!実に愉快だぜ!」
「やあ、ちゃんと予定通りに進んでいるかい?」

 耳障りな甲高い声で哄笑を上げるパイパーに、冷水のような冷たい声がかけられる。
 折角気分がいいところを邪魔されたパイパーは、面倒くさそうにそちらを見る。
 そこには、銀髪の小柄な人影があった。

「魔法使いの人形野郎か。何の用だ?」
「…驚いたな、僕が人形だって気付いていたのかい?」

 銀色の子供――その形をとったフェイトと名乗る何かが、悪びれた風もなくパイパーに問い返す。

「魔族はほとんどが気付いてる。ま、お前らが何者でもどうでもいいから口に出して言わないだけだ」
「そうかい。結構自信があったんだけどね。
 まあいいや。それで、準備は?」
「ああ。このシネマ村とかいう場所の奴らはほとんど子供にしてやったぜ。
 残ってるのは、建物の中に隠れている取り残しくらいなもんだ」
「全部頼むよ。それじゃあ、僕は仕上げがあるから。
 ラーク!」

 フェイトはそれだけ言うと、角の折れた悪魔を呼び出し、その肩に乗って中に舞う。

「ふん…言われなくてもやってやるさ!
 おい!お前ら!」

 パイパーの言葉に、周囲を更新していた子供達が一斉にパイパーの方を向く。
 そのことに―――自分が人間を完全に支配し、服従させていることに満足感を覚えながら、パイパーは命令を下す。

「全ての家を探して笛の支配を受けない年齢の人間を連れて来い!一人残らずだ!」

 パイパーの命令に従って、子供達はばらばらに駆け出した。


 非日常を装うシネマ村は、本物の非日常に蹂躙され始めていた。


つづく


 パイパーの口調やら能力がわかんない詞連です。
 どうしてもコミックスの五巻が見つからないです。最近ワイド版が出ているらしいですが、流石に旧コミック一巻を補填するのに買うのはちょっと…。
 暇になったら古本屋を巡ってみます。
 レスを読んだところ、どうやらいきなり長期休業してしまったことでご心配をおかけしたようで…申し訳ありません。
 最後の更新のひとつ前で、クリスマス周辺で一度長期休業に入るって予告していたのでそのままでもいいかな、って思ってしまったんです。
 これからは気をつけます。


>D,氏
 カッコいいです、西条が。彼は美神親子同様、特殊な技能を持たない、しかし強い人ですから。本来あのくらいのレベルのはずなんですよねぇ。


>趙孤某氏
 ええ、エヴァちゃんはこんなもんじゃ終わりませんとも!
 修学旅行が終わるまでには汚名返上名誉挽回幼女最高な展開を用意しております。

>アイギス氏
 二次の設定の一部がコッチャ…わかります。物凄く解ります。

>HOUMEI氏
 道真は強いですが、大丈夫。ネタばれになりはしますがいつか倒します。

>シャーモ氏
 ええ、成長フラグです。幼女真祖は伊達じゃありません。
 今回は刹那側でした。次回あたり道真周りを触れれると思います。

>HAL氏
 初めまして。良い評価をいただけて本当に嬉しいです。
 エヴァちゃんはまだ落ちてません。愛しい相手が行方不明のところにやって来た、どこかその相手と似た感じの別の男。その間で揺れ動く女の心…!って、こう書くと横島って何か間男…。
 兎に角次回も期待に沿えるようにがんばります。

>宮本氏
 初めまして、詞連です。こちらこそ楽しく読ませていただいております。別名で感想も入れさせてもらっています。
 世界観クロスをほめていただけて嬉しいです。皆様が言うとおり穴だらけですが、どうか広い心で容認してください。

>yopi氏
 お待たせしました。
 不定期とは言いつつも、なるべく定期的に遅れるようにがんばります。

>鉄拳28号氏
 誤字報告ありがとうございます。
 西条良い格好しています。
 ちなみに鬼はエピから本編の間の戦闘で減りました。具体的にはアスファルトが耕されるまでの間に。
 ただの人間…ううむ。くどかったですか。気をつけます。ご指摘アリガトウございます。

>高足蟹氏
 申し訳ありませんでした。最終更新の前辺りでクリスマス辺りから長期休業に入ると書いていたので大丈夫だと思っていたのです。
 気遣いがたりず心配をおかけしたようで、申し訳ありません。
 フェンリルに関しては、私も確かにあれは弱いなぁ、って思いますね。けど、ま、所詮ポチが変身した偽者ですから。

>hi氏
 強すぎ…でしょか?一応私の中だと、美神=西条レベルであり、美神なら中級魔族とガチで戦っても勝てそうかな、って思ったんですが…。
 あとエヴァンジェリンの力のある相手の戦闘、というのはここ数百年の事です。そもそも捕まって火達磨にされた=捕まえた連中はオカルト知識のない一般の人間、おそらく群集。ってことなので、ガチで圧倒的な力&不死性を持つ相手と戦う事がほとんどない。と結論しました。
 まあ、これはまだ原作に書いていないことですが、フルパワーを取り戻したのが15年ぶりであったため、自分の力を把握しきれなかった上に、過信していたってのもあります。
 結果として道真とは実質上の力差はそれほどないのに、その僅かな差が決定的になって、一方的にやられた形になった、って形です。
 ちなみに、しっかりエヴァちゃんの活躍の場面は用意しているのでご安心を。

>MAHO氏
 最強キャラは一度は負けないと、というのが哲学の詞連ですので…ご心配なく、見せ場はちゃんと作ってます。
 次回もがんばります。

>JUDO氏
 ご心配をかけたようで申し訳ない。
 ヤマトタケル=リョウメンスクナ!?それは初めて聞きました。
 一応ここのリョウメンスクナは、道真よりは弱いメドーサよりは強い?いや、弱い?って感じです。
 つか、メドーサだってとんでもなく強いはずなんですよね。だって俗界常駐の神としては最強の小竜姫とためを張れる魔族なんですから。
 あ、ヤマトタケルは一応知ってますよ。死んで白鳥になった人ですよね(笑)


以上レス返しです。次回はまた日曜に出来るようにがんばります。

追記:ごめんなさい。3/25更新は無理そうです。可能なら来週中に、最低でも来週こそは更新します。では…。

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