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「Go together 第十話(GS+ネギま!)」

らっかー (2007-02-17 01:32/2007-02-23 00:56)
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修学旅行を楽しむ麻帆良学園3-A、その宿泊する旅館で思わぬ遭遇にその両者は固まっていた。
なんであんな格好でコイツはここにいるんだろう。驚愕が両者をみたした。
両者共、戦いに身を置く事のある身だが流石に動けなかった。


それより幾らか前の時間

日の暮れた道を豪奢な金髪の和服外国人美女とスーツ姿の少年という変わった組み合わせが並んで歩き、その一歩後ろにやはり和服の少女が続く。

「あっあのエヴァンジェリンさん」
「他の連中はいないぞ」
「あっ、はいマスター」

こういう所はしっかりと躾けておかなければいけない。呼び方は意外と意識や立場に関わるのだ。

「で、なんだ?」
「あの、ここは一体?」
「知らんのか。ここは祇園、京都の名所だ。覚えておけ」
「いえ、そうじゃなくてなんで僕がここに?」
「お前のためじゃないか。横島に私から離れないよういわれたろ。ちゃんとついて来い」

確かにそうだが着いてきたというより、突然茶々丸に抱えられて連れ出された。
ちょっと待ってろと部屋の前で待たされていると、和服に着替えた茶々丸に引き込まれて窓から一気にだ。
エヴァンジェリンも和服で、その上大人の姿になっていた。

「で、でもホテルを抜け出すなんて」
「うむ、流石ナギの呪い。
学園からは全然抜け出せなかったのに、授業のサボりはOK、修学旅行で旅館からのエスケープもOK。分かってる奴だ」

何かをかみ締めるようにエヴァンジェリンは答えるが、そういうことを言っているのではない。
まあ修学旅行は想定していなかったのだろうが、確かに結構いい加減な呪いだ。

「ぼ、僕先生なんですけど…」

だから生徒が夜に旅館を抜け出すなんて事をしたら叱らなければいけない。

「私は師匠だ」

反撃が来る。自分と相手の力関係をいろんな意味で考える。無理、逆らえない。せめてもの一言で、

「明日に疲れを残すといけませんし、早めに戻りましょうね」

ひよった。ネギもすれてきたものだ。短い師弟関係だが横島との事もあわせてネギを成長(?)させているようだ。

「それもそうだな。だが今は楽しむぞ。折角茶々丸が一見さんでも入れるいい店を探してくれたんだ」

京都の夜はまだ始まったばかりだ。


『Go together 第十話』


「いい〜湯だな、あははん♪ と」

横島は旅館の露天風呂に一人浸かっていた。他の教員はもう入り終えてしまったのか誰もいない。

横島と一緒にいたネギは、風呂に入る間もなくエヴァンジェリンに連れ出されてしまった。
彼女がいればあっちは平気だし、自分が必要でもカードがあれば呼び出せる。
いざという時にそなえて浴衣も傍らに置いてある。流石にマッパで呼び出されてはたまらないが、急ぎの時もあるからだ。

しずなと一緒に入れなかったのは残念だが、あったまると血のめぐりが良くなって血の足りない体が幾らか楽になる。
洗ってオールバック風に後ろに流した髪に、風が当たって気持ちいい。

カラカラカラ…、と扉の開く音がする。女性側の入り口だが生徒の入浴時間にはまだ早いはずだ。
ひょっとしてしずな先生の二度湯かもと、横島的にだが前向きな考えが浮かぶ。
露天風呂の形のせいで岩に隠れ、このままでは見えない。中に入ってくる気配がするので、立ち上がって岩の向こうを見ると、

「よ、横島先生…」
「桜咲…」

生まれたままの姿の刹那がいる。

刹那の、まるで日に当たった事がないかのように透ける白く美しい肌が、日の暮れかけた露天風呂の薄闇と湯気に映える。
引き締まってすらりと伸びた肢体が、とても彼女のあり方に似合う気がする。
まだ慎ましい膨らみや均整の取れた体つきが、彼女が将来身につけるであろう今以上の美しさを予感させる。

思わぬ遭遇にお互い向かい合ったまま、数秒の硬直された時間と沈黙がながれ、

「って、取り合えずそれを!」「あっはいっ!」

言って慌てて振り返りながら、体を隠せと浴衣を投げる。しずなを想定していたギャップのおかげで飛び掛らずにすんだ。
だからと言って今見た刹那が劣るわけではない。彼女はしずなと別の美しさを持っていた。
しかし横島は何とかその思いを振り切る。心の中でロリコンではないと呪文のように唱える。

「あっあの横島先生?」

ごそごそと浴衣を着ているのであろう衣擦れの音がする。体を隠してすぐ出ると思ったのだが、そうはしないらしい。
中途半端に言ったので着ろと受け取ったのだろか。

「な、なんだっ。ちょ、ちょっとしか見てないかんな」

きっぱり見ていないと言えない所が彼らしい。

「あ、いえ、そうじゃなくて…。あっ、でも私には飛び掛らないんですか?」「ぶぅっっーー!!」

とんでもない事を聞いてくる。気を鎮めるため顔を洗っていた横島が思わず息を吹き出す。

「あ、あああの神楽坂さんが、私なら横島先生は飛び掛ってくると言っていたもので」
「おれはロリコンじゃないっ」

そういいながらもさっきの光景が脳裏に浮かんでしまう。忘れてしまうには印象が強すぎる。
そんな質問をしてしまった刹那の方も湯に入ってもいないのに肌が真っ赤になっている。

「あの、いえ、そっ、そんな事を聞こうとしていたんではなくって」
「何?」

衣擦れの音はもうなくなったので大丈夫だろうと後ろを見ると、刹那は横島のすぐ後ろで横を向いてしゃがんでいる。
すそから見える裸足の足に、少しドキドキしてしまい、心の中でおれはロリコンじゃないと、再びつぶやく。

「横島先生は違う世界からこちらに来たんですよね…」
「ああ、事故だったし、しばらくは戻れんがな」
「そちらでは本当に私のようなものが、気にされることなく普通にいられるのでしょうか?」

あの時やさしく羽にふれてくれた横島の手を思い出すと、心に暖かさと希望が湧く。
さっき見たのと明日菜から聞いたことで驚きもしたが、あの手はなくしたくない。そんな思いで聞きたくなった。
あの手があれば木乃香も彼や明日菜の言っていたように、自分の全てを知っても受け入れてくれると信じられる。

「んーとね、机のつくもがみ…」
「え?」

横島が答えとは思えない事を言い出した。

「パンパイアハーフ、やたらと影の薄いトラに化ける大男…」
「な、何です?」

どうやら人ではない者のことのようだが。

「が、クラスメイトにいた」
「っ!!」

信じられない。そんな存在が普通に受け入れられるとでも言うのか。

「多分うちのクラスの連中は桜咲なら大歓迎。
愛子、っと机のつくもがみの名前な。あいつなんか教師に大人気だったし、うちの男連中可愛い娘に目がないからな」
「そんなバカなっ!! そんな存在が表に出るわけ…」
「俺のいたところ魔法が隠されてなかったから。まあ正確には魔法じゃなくってオカルトがだけど」

そうだ、違う世界ならそんな可能性もありえる。でもこの世界では……、少し気持ちが重くなる。

「この世界だって一緒だぜ。やっぱ気にしない奴は気にしない。明日菜ちゃんなんかまた触りたいってちょっとうずうずしてたぞ」
「えっあっ、ああ、はい」

言いながら軽く拭いた手で背中の羽のはえる所を撫でてくる。やっぱりこの手は暖かい。きっとこの温泉なんて比べ物にならない位に暖かくしてくれる。
さっき重くなった気持ちなんかもう無くなっていた。

「ああ、俺も勿論桜咲だったら大歓迎な」

その言葉に心臓が波打つ。それに続き、

「ただロリコンじゃないから卒業後で」
「……」

これさえなければ良いのに…
ちょっと意地悪したくなった。だから、

チクッ「あ、あのこれはなんでせうか?」

背に触れる手をなくしたくないので横を向いたまま、逆手で夕凪を横島の喉に突きつける。視界の端に入ればこのくらいは出来る。

「そういえばこのかお嬢さまに飛び掛ったという話については、詳しく聞いてませんでしたね?」

身じろぎ一つ出来なくなる横島。刹那の方も言ってみてからちょっと腹が立ってきた。

「ええと…」
「違わんけど違う、でしたね? 傷つけるような事はしていないとのことですが」

少し首を横島の方に向けジロッっと見て、横島の体が目に入って慌てて眼を逸らす。
だけど横島のほうはそれを鋭い目線で一瞥されたととった。嘘を付いたらやばい。本当の事も良くはないが…。

「そ、そのっ、お風呂上りのバスタオル一枚の姿を見てつい勢いで…
途中で明日菜ちゃんに撃墜されたので達成には至っておりません」

プスッ

「イタタッ、イタッ! 刺さってるっ。少し刺さってる」

当たり前だ。ちょっとだけれど刺したんだから。

「ほかに神楽坂さんにも飛び掛ったんでしたね?」
「そ、それも明日菜ちゃんに撃墜されてます」

飛び掛っているには違いない。

プススッ「ふ、深くなってる、ちょちょっとやばいって」

「ほかにうちの生徒に飛び掛った事は?」
「あとは一人だけ! エヴァンジェリンだけ! ほんとそれだけだから抜いてーっ!!」

スッ、と音もなく夕凪を抜く。

「た、たすかった」

いいや助かっていない。

「横島先生はロリコンじゃない、でしたよね?」
「あ、ああ」

驚いた。自分にはこんな低い声がだせたんだ。まるで地獄の底から響く声だ。
夕凪を納刀して立ち上がる。横島の手が離れたのが少し寂しいがしかたない。

「それでエヴァンジェリンさんに飛び掛っても、私に飛び掛らないと」
「エ?」
「つまり私はエヴァンジェリンさん以下だ、…と」

いままでそんな事は気にしなかったが何でか頭に来る。確かに自分は小柄なほうだが少なくともエヴァンジェリンより女はらしい体だと思う。
息を整え、体を半回転させながら、

「あ、あの、なんで構えて…」
“神鳴流奥義 斬岩剣!!”

お湯に一歩踏み込んで、奥義を繰り出す。

「のおおぉーーーっ!!」

ちょっとだけ横島の前髪を切って、ついでに後ろの岩も切ってしまう。
返す刀を横島の頭のすぐ横に付き立て、

「もう生徒に手を出さないで下さいね。横島先生」

見下ろしながら出来るだけニコヤカに告げる。たとえ頭に井桁が浮かんでいてもニコヤカに。なのに、

「……」
「どうしました?」

なんでか彼の目線が自分より下に向いている。

「し、下」

その言葉に思い出す。そういえば浴衣だけ渡され、自分は今下着を着けていなかった。
奥義を繰り出すのに踏み込んで大股開きになっている。横島の目線を追う。
姿勢と段差のせいでホントに横島の目の前に、自分のその部分があった。
横島の息が掛かってくるのもわかる。

再び数秒の時間と沈黙がながれ、

「さっくらざ…」「きっ…」

限界とっぱした横島が飛び掛ろうとし、刹那が悲鳴を上げようと息を吸い込み、

「ひゃあああ〜〜〜っ!」

別の悲鳴に目を見合わせる。この声は、

「「木乃香お嬢さまっ(ちゃん)!!」」

そう、近衛木乃香は東西両協会の幹部に近しく、強大な魔力を秘めた者。狙う理由は十分。

「ちっ!! 狙いは親書だけじゃなかったんだ」
「はいっ! 連中、お嬢様までっ!!」

横島はタオルだけ腰に巻き、刹那はそのまま駆け出す。脱衣所の扉を開ける。

「「木乃香お嬢さまっ(ちゃん)大丈夫ですか(か)!」」

「いやぁぁ〜〜ん」
「なんかおサルが下着をーっ!?」

「「……」」

変な猿モドキの式神が明日菜と木乃香に群がって下着を脱がせようとしている。
予想外すぎる状況に思わず呆然としてしまう。

「あっ、やっ、やーんっ」

その間に木乃香は完全に脱がされてしまう。

「って、いかん。木乃香ちゃん!!」

横島が木乃香を救おうと接近し、

「って、だめーーっ!」ドコッ「ヘブッ!!」

飛び掛るのと勘違いした明日菜が横から蹴り飛ばす。

「あ、明日菜ちゃん今のは違う」「あっ、ご、ごめんなさい、ついっ」
「あ、せッちゃん、横島先生!? あ〜ん見んといて〜〜っ」

パニックになっていた木乃香もようやく二人に気付く。

「っち、先に木乃香ちゃんだ」「あっ」

起き上がった横島がそう言ってサルごと片手で木乃香を抱え込み、サルを振り払う。

「明日菜ちゃん、ハリセン!! 木乃香ちゃん目を閉じてて!!」
「はいっ“来れ”」「えっ?」

まだ半分パニックで指示を聞けない木乃香の目線を体でさえぎり、明日菜が見えないようにする。
サルが暴れる。この程度なら押さえ込めるがサルは振り払っても再び掛かってくる。弱いが数が多い。

「桜咲っ外!! 木乃香ちゃん、目、閉じてっ!!」「はい」「は、はい」

即座に理解した刹那が飛び出し、木乃香も再び言われて目を閉じる。
横島は栄光の手を伸ばして入り口の梁をつかみ、縮める反動と栄光の手のパワーで角度を変えながら温泉上空に飛び上がる。

「たあーっ!!」

他に人のいなくなった脱衣所で、明日菜が“ハマノツルギ”で一閃しサルを消し飛ばす。

「桜咲っ!!」「はいっ!!」
“神鳴流奥義 百烈桜花斬”

斬!!、と空中で振り払った残りのサルに刹那の奥義が決まる。

とんっ、と横島が木乃香に負担をかけないようそっと着地する。

「これで終わり?」

バスタオルを体にまいた明日菜が脱衣所から出てくる。
横島は周囲をぐるりと見回し、

「そこっ!!」

栄光の手を打ち出す。

「ちっ!」

かすかな声がして気配が遠ざかる。

「敵ですか?」
「ああ、流石にこの格好じゃ追えんし、逃がしちまったな」

引き戻した栄光の手が髪を少しだけ掴んでいる。

「もう目をあけていいぞ木乃香ちゃん。俺達で悪いサルは追っ払った」

両手で抱えなおしながら木乃香に言うと、ゆっくりと瞳をひらく。

「せっちゃん、横島先生、助けてくれたん? ありがとう」
「あ… いや…」「なに将来楽しみな女の子のためだ」

刹那が照れて、横島が微笑む。木乃香もにっこり笑う。

「なんかせっちゃんに守られて、横島先生の三本の腕で抱っこされて、うちお姫様みたいや」
「はは、俺の手は二本だよ木乃香ちゃん」「そうですよお嬢様」
「あっそやな〜、間違えてもうた」

木乃香がちょっととぼけた事を言ったので、笑いが広がる。

「さ、桜咲さん…」「え? ど、どうしたんですか神楽坂さん?」

刹那が肩を叩かれ振り返ると、明日菜が真っ赤な顔をしている。
そのまま数歩後ろに引っ張られる。

「前…」

その言葉で再び横島の方を向き、刹那の顔も赤くなる。近すぎて気がつかなかったが横島に三本目の腕があった。
あのおサルにタオルを取られていたが、あっても無駄だろうというサイズになった三本目の腕が木乃香を下から支えている。

夕凪を握る手が震える。顔の赤い原因が羞恥から怒りへとシフトしていく。

「お嬢様、目を閉じてください。サルが一匹残っていました」「あ、うん」
「どこだっ!! 桜咲っ」

木乃香が目を閉じたのを確認し、周囲を見回す横島に、

「そこです」「へっ」

ジャキンッと夕凪を横島の首筋に当てる。ツーと刃をわずかに滑らせる。その冷たさに、

「あれ、横島先生の手が二本なった?」

目を閉じたままの木乃香の言葉で、また羞恥心がでるが取り合えず無視。横島も理由を察した。

「ゆっくりと、お嬢様を神楽坂さんに渡してください」

その言葉で明日菜が進み出て木乃香を受け取る。

「アスナ?」「このか、もう少し目を閉じたままでね」

明日菜が木乃香を抱えて脱衣所へ去っていく。

「さて…」「あ、あの弁解は…」
「出来るのですか?」「……」

横島が首を振りながら目の幅の涙を流す。夕凪を振り上げ、

「死になさいっ!!」
「うぎゃーー!!」

最後のおサルが退治された。


同刻、祇園

「この子かわい〜どすな」
「ほんまに」
「や、止めてください僕先生なんです。こんな事しちゃ駄目なんです」

「マスターよろしいのですか?」
「別に怪しい気配はないし、構うまい」

芸子のお姉さんに色々と可愛がられているネギを、茶々丸が心配そうに見ている。
何か違うお店のようだ。

「お姉さん、お強いどすな〜」
「うむ、これ程良い味だといくらでも飲める」

エヴァンジェリンはゆったりと酒と料理を楽しんでいる。

「あっ、そ、そこは駄目です!!」
「おやおや、こっちはかわいいな〜」
「やりすぎたら、駄目どすよ」「わかっとりますえ」
「いや〜っ」

本来なら芸子はそう言うことはしないそうだが、ネギの魅力に負けたのだろうか…
ネギ、ちょっぴり大人になった夜だった。


ズルッ、ズルッっと何かがはう音がする。

「ぬおお〜、解けやせん。さすが桜咲」

荒縄で雁字搦めにされた横島だった。頭の天辺から足の先までぐるぐる巻き。
現在、刹那に放り込まれた空き部屋の押入れからの脱出中だ。
ボロボロにされ、おまけに腕や指の関節をはずしたまま絡めて縛られ栄光の手で縄が切れないような形にされている。
もはや怒り以外にもなんかの妄執を感じる。

「だが、俺は負けん。しずな先生の所にいってやさしく介抱してもらって、そのままムフフ〜♪」

どうやらこのまましずなの所に夜這いするつもりだ。
天井の板を一枚はずしひっくり返った毛虫のような、気持ちの悪い動きで入っていく。こんなのが来たら、しずなは失神確実だろう。

しかし少し進んだ所で何かの気配を感じる。さっきの式神の気配に似ている。しかたない。

「ええいっ、ちょっとは時間を考えんかーーいっ。しずな先生とのパフパフをど〜してくれる」

絶対ありえない展開を叫びながら今度は板バネみたいな動きではねていく、やっぱり気持ち悪い。
丁度下の廊下にいた生徒が、何か不思議な悪寒を感じた。


なんであんな格好でコイツはここにいるんだろう。驚愕が両者をみたした。

片やおサルの着ぐるみ。片腕に木乃香を抱えているとは言え、二頭身で間抜けさもただよう。
片やもはや顔も見えない縄男。わずかに覗く目と人間とは思えない間接の曲がり方が不気味。

場所は旅館の天井裏、脱出用なのか床(天井)の板がはずされ、そこから照らし出される姿が異様な世界を生み出している。
両者共、戦いに身を置く事のある身だが流石に動けなかった。

異様過ぎる景色だ。

「ん…」「「っ!!」」

木乃香の身じろぎに反応し、時が再び動き出す。

「ほりゃーっ!」

横島が全身のバネを使って飛び上がり、回転しながら浴びせ蹴りを放つ。

「ひぃぃ!!」

蹴りよりもその不気味な動きにおサルが悲鳴を上げながらかわす。

べしゃ「ぐおぅ」

当然横島は落ちる。しかも格好と回転のせいで受身も取れずに。

「な、なんなんやこれっ!!」

変な形でびくびくと震えて、滅茶苦茶気持ち悪い。

「ぐ、さすがにこれでは戦えん」
「しゃ、しゃべりおった!!」

もはや、人間と思われていなかったようだ。

しかし横島から、強力な気が立ち上り警戒を強める。

「今度はなんやっ!!」
『抜』

光りが辺りを満たし、それが消えると。

「さて木乃香ちゃんを返してもらおうか」

縄を『抜』けた横島があらわれる。間接も即座に回復して繋がる。
その姿に首を振りながらおサルが後ずさる。

「い、いやや、いやや」
「ふん、無理にでも返してもらうぜ」

横島が一歩、二歩と迫る。

「いややーっ!! 変態やーーっ!!」
「おサルに言われとうないわ〜っ」

素っ裸のまま縛られた横島。当然縄がなければ素っ裸。
おサルが真っ赤になって悲鳴を上げる。いややの理由が違った。
彼女は初心な訳ではないが、いきなりこんなものが突然目の前に出れば当然だ。

「このっ」「うおっ」

着ぐるみのおサルが式神のおサルを放ち、逃げを打って廊下への穴に飛び込む。
横島もサルを栄光の手で蹴散らしてそれを追う。


飛び降りると、気配に気付いたのか明日菜と刹那がかけてくる。

「二人ともっ!」
「「きゃーーっ!!」」

当然悲鳴が上がり、慌てて横島は天井裏に戻る。二人とも赤い顔を隠しながらも、指の隙間が微妙に開いていた。
というか刹那は縛る時にも見たはずなのだが…。やはりそういう場合はべつなのだろうか。

「今のおさるの着ぐるみが木乃香ちゃんをさらって逃げた。そいつがあの式神の術者だっ!」
「お嬢様がっ!!」

天井からの声に刹那が外に向けてに駆け出す。

「って俺の服は」
「多分脱衣所にそのままです」

言って明日菜も駆け出した。

「…天井裏から行くしかないか」

まあそのまま出歩いて他の生徒に見つかれば、首だけでは済むまい。


服と仮契約カードを回収し、カードで明日菜に状況を聞いて追跡する。
同じくネギにも連絡し、エヴァンジェリンに警戒を促す。

「奴は!!」「あれですっ」

明日菜の指差すほうに巨大な頭のシルエットが駅に入るのが見える。三人も後に続く。

「おかしいわよ、人がいないわ」
「人払いの呪符です。普通の人は近寄れません」
「電車だ!! 急げっ!!」

おサルを追って出発寸前の電車に駆け込む。

「前の車両に追い詰めます」

車内でさらに逃げるおサルを追う。
あと少しで最後尾という所で、そのおサルから霊感に来るものを感じ、

「来るぞっ!!」

警戒の声とともに膨大な水が押し寄せる。

「な なにこの水!?」
「下がって!!」
“斬空閃!!”
「な、なんやて〜!」

横島の声に反応し備えていた刹那が瞬時に奥義を繰り出し、閉じかけていた扉を吹き飛ばす。
遮るもののなくなった水は術者にまで向かっていく。

両者とも水流でしばし動けなくなるが、すぐ駅に着き扉が開く。
おサルは流れ出る水とともに再び逃げ出す。

「くそ、どこまで逃げる気だ」
「ここにも人払いの呪符。これはまちがいなく計画的な犯行です」

だとしたらキツイ。相手の備えがどれほどなのか読みきれない。
刹那も悔しそうだ。彼女の木乃香に対する思いは仕事としてだけではない。

駅を駆けてゆくと階段の上におサルが立っている。優位な場所を取って数に対する気だろうか。

「さっきはよくも変なもんみせてくれはりましたな〜」
「なにがへんなもんだ。おサルに言われる筋合いないし、俺のはりっぱなもんじゃー−!!」
「横島先生…」「た、たしかこの位の…」

明日菜がハリセンで横島の頭を軽く叩き、刹那が何を思い出したのか掌をワキワキやっている。
二人とも横島のセクハラ発言に顔が真っ赤だ。

「ふざけおってからに、それもここまでどすえ」

お札を構える。

「おのれ、させるかっ」

刹那が飛び出すが、向こうが早い。

「喰らいなはれ“三枚符術京都大文字焼き”」

炎が刹那に迫り、

「桜咲っ!!」『冷・凍』

栄光の手ごと火に突っ込んだ“イッショニユコウ”が火を打ち消し冷気すら漂わせる。

「い、今の手はっ!!」
「おまけだ!!」

普通の文珠よりパワーに余裕があるため、冷気をまとわせたままおサルの着ぐるみに一撃を加える。
その間に刹那はおサルの横の木乃香を確保しようとするが突然現れた熊(2頭身)の式神に阻まれさがる。

凍りついたおサルの頭にピシピシとひびが入って割れ、

「……おサルじゃなくておサラ?」
「おまえがやったんやろーーっ!!」

いって横島を指さす。
そう、温泉から逃げる際に栄光の手を辛うじてかわしたとき、その一撃は彼女の頭にきれいにお皿をつくっていたのだ。
だからずっと着ぐるみを着っぱなしだったというのに。あの時は顔を覚える余裕がなかったがあの手に間違いはない。

「まさかあなたは河童のハーフだったのですか? だから今までの不遇を晴らす為にお嬢様の力を?」
「ちゃうわーー!!」

刹那からのあなたの気持ち分かります。でもこんなことは許せません。といった複雑な感じの視線に絶叫をあげる。

「千草はんは河童やったんか?」
「ちゃうゆうとるやろーーっ!! って、月詠っおまえもか!」

いつの間にか現れたお嬢様ルックの少女にも言われて突っ込む。

「ともかく将来楽しみな女の子を誘拐しようなんて許せん。木乃香ちゃんを返してもらうぞ」
「はん、お嬢様はもともと西にあったもんや」
「貴様!!」

その木乃香を物のように扱う言葉に刹那が切れて突っ込む。

「っ!! 続くぞ明日菜ちゃん」「はいっ」

刹那と月詠の刀がぶつかり合う。

「貴様っ神鳴流!?」「はい〜、見たとこあなたは先輩さんみたいですな〜」

刹那は似た太刀筋だが小回りの聞く二刀に手こずらされる。
ここは相性が悪く突破は難しい、しかし。

「このぉーっ!!」「どりゃ〜!」
「なっ、うちの式神を!!」

大物の熊を“ハマノツルギ”が一撃でかき消し、小猿の群れが明日菜に迫る前に変幻自在な栄光の手がなぎ払う。
こっちは相性抜群。式神を突破し千草に迫る。前衛がいない術者は脅威度が一気に下がる。お札を使う隙を与えない。

「ひいっ、い、行けっ!!」

残りのサルを全て横島たちに向け。月詠の後ろに入ろうとする。

「明日菜ちゃんっ」「はいっ」

視線で指示する。

「しもうたっ!!」

横島がサルを食い止め、倒れたままの木乃香を明日菜が確保。
これで木乃香を捕らえるつもりならばだが、火や水の大技を打ちにくくなる。
さらに、

「お前の相手はこっちだ」「横島先生っ!」
「え〜、センパイのほうがええんやけど〜」
「いけ、桜咲!!」「はい!!」

小回りの効く相手には、間合いに自由を効かせ易い横島の方が相性がいい。

「くっ」
「はぁっ!!」

向かってくる式神を刹那が裂帛の気合で打ち捨て、

「ひっ」

“秘剣 百花繚乱!!”

「へぶっ」

千草にその技を叩き込み吹っ飛ばした。

「仲間はやぶれたぞ」「え〜、も少し仕合いましょうや〜」

月詠は勝負を続けようとするが。

「ひくで、月詠!!」

よろめきながらも起き上がった千草が、新しいおサルを召喚しそれに掴まり飛び上がる。

「残念〜、ほなまたなセンパイ〜」

牽制の一撃を放ち、月詠もそれに掴まる。

「二度と来んな河童猿〜!!」ビュッ
コンッ「あたぁっ!!」

横島が靴を投げてどうやら当たったらしいこえが聞こえる。

「河童ちゃうわー!! おぼえてなはれー」

捨て台詞を残して去っていった。おサルは自覚あったのだろうか。


「追わなくていいんですか?」
「深追いは禁物です」

相手の計画的犯行である以上、罠に引き込まれる可能性は否定できない。
それに飛べる者は二人いるが、どちらも秘密が絡む。追跡自体が難しい。
それに、

「それに木乃香ちゃんは取り返したしな」

明日菜の横から木乃香を抱え、刹那に差し出す。

「えっ、あ、あの」
「気を失ってるだけ。今、術で『調』べた。それ以外の危害は受けていないし、もうじき目覚める」

ほっとした刹那が、横島から木乃香をやさしく受け取る。

「このかお嬢さま……」
「……あれ、せっちゃん?」

まるで刹那の呼びかけに答えるように、木乃香がうっすらと目を開く。

「うち、夢見たえ… 変なおサルにさらわれて」
「でもちゃんと桜咲が助けてくれただろ」
「横島先生? …うん。せっちゃんと明日菜と先生が助けてくれた」

とろけそうな顔で木乃香がうれしそうに笑う。

「いったろ桜咲は木乃香ちゃんの事、今も守りたいって思ってるって」「なっ!」
「うん、横島先生の言うた通りや」「おっお嬢様っ」

刹那の顔が真っ赤になって口をパクパクさせている。
木乃香を下ろして立とうとしたので、

ガシッ「えっ」
「木乃香ちゃんを置いていっちゃ駄目だぞ。な」
ガシッ「えっ」
「そうね。それはあなたの役目だわ。桜咲さん」

横島と明日菜が刹那の肩を押さえる。


「…せっちゃん〜♪」

うれしそうな寝顔の木乃香を真っ赤な刹那が抱えて歩いている。
木乃香は寝ている時間にさらわれたせいかすぐ寝てしまった。
横島と明日菜は刹那の両脇をニヤニヤしながら並んで歩く。

「横島先生、さっきのお嬢様のお話は?」

ちょっとむくれたように、でも木乃香を起こさないよう小声で聞いてくる。

「木乃香ちゃんからも桜咲とまた仲良くしたいって聞いてな。
やっぱり木乃香ちゃんも桜咲が大好きだよ」
「……」

さらに赤くなっている。普段は表情を出さないくらいなのに実は分かりやすい娘だ。

「いつか木乃香ちゃんに全部話せたらいいな」
「…はい」

そのときは、きっとこの羽の事も。はじめてそんな気持ちが浮かんだ。


「おお、そっちは大丈夫だったみたいだな」

旅館に帰るとエヴァンジェリンがロビーで待っていた。もうだいぶ遅いので明日菜達は部屋に返す。
本来生徒はもう出歩けないはずなので、何かの術で誤魔化しているのだろう。
感覚にも軽い圧力が掛かってくる。

「もちろんだ。私がいたんだぞ」
「正直こっちに居て欲しかったがな」

そうすればあのおサルの生け捕りも難しくなかっただろう。

「ふん、坊やは守ってやったんだ。それ位自分でやれ」
「そういや、そのネギは?」

もう寝たのだろうか。

「そこだ」
「ん」

すぐ後ろのソファーに寝ている。例によって茶々丸の膝枕で。それはいい、それはいいのだが、

「おい」
「なんだ」
「どういう店にいったんだ」

ネギの顔中に、いや首やワイシャツにまで紅のキスマークが付き、酒の匂いも微かにする。

「そうだな、一言で言うならいい店だ」

酒も料理も上手く、建物も風情があった。

「こ、こんなガキの癖にいい店だと。…くしょう、どちくしょーーっ!!」

横島のイメージとは本来違うが今回のネギに対しては正解になってしまっていた。

「横島先生余り騒がれてはネギ先生が起きてしまいます」
「もう聞こえんだろ」

なんせ泣きながら走り去っていった。とっても沢山の私は不幸オーラを背負っていた。

しかし今夜本当に不幸なのは、

「皆、俺っちを忘れてないっスか… オコジョはさびしいと死んじゃうんっスよ」

それはウサギだが、まあ忘れられることは一つの不幸だろう。
ネギと横島の部屋の中、膨らんだしっぽのせいで動けないカモが一人泣いていた。


あとがき
ネギは幸せだったか不幸だったかちょっと迷う今回です。
やっと一日目終了。修学旅行は先が長いです。

感想ありがとうございます
レス返しです。

>黒覆面(赤)さん
大雑把に言うと横島はケダモノだといわれました。
結果結構のめりこみ始めてたのでこんな対応になりました。

>アスナスキーさん
エヴァンジェリンははしゃいでましたから。
サブキャラフラグ系はやはり二日目が山場になりそうです。
知らない面はお互いまだまだありますからこれからです。
(2007-02-14 20:03)}

>テルさん
むしろ降って固める雨だった気が…
二日目は次回からになります。

>宮本さん
応急処置シーンは狙いましたからむしろ当たってうれしいです。
ラブラブキッス大作戦は、ネギはほほえましそうですね。
刹那、前回で下がってからまた揺れました。
戦闘はまずこんなんなりました。明日菜もうちょっと動かしたかったです。
投稿するペース>確かに今回も投稿前に見てみたら半分被ってますね。
こっちは更新ペース上げられそうにありません。
互い無理せず頑張りましょう。

>仲神 龍人さん
刹那は試練突破しそうです。
血液は普通3分の1でしねますからね。

>ヴァイゼさん
待遇は結構いいんですよ。ちゃんと学園長に便宜はかってるし、教える事ちゃんと教えてるし、ただ今回はちょっとはしゃいじゃったんです


ちょっとだけ。
フラグ、ええ、入ってきました。それ以上言う事ありません。
ネギ>そういえばだんだん進んでる気が…、あれ? 恋愛フラグどこ?

>HAPPYEND至上主義者さん
貧血>普通死んでますからあれは。横島は確かに自分から行動してる時は結構いいスペック出してるんですよね。
常時やってれば父親みたいになれそうなのに…
刹那>はい本領はっきしました。

>街路樹さん
刹那フラグ>こうなりました。
ネギ>おいしかったですよね。男としておいしかったですよねきっと。
68%です。3分の1、残しました。

>月夜さん
誤字指摘ありがとうございます。
表現もたしかにその方がスムーズです。もっと精進してきます。
2班は古です。改定する時ちょっと変えてみます。
横島的致死量、どのくらいなんでしょう私も知りたいです。
前世は少なくとも今の所はないみたいです。でもヒャクメの話からすると横島にも今はあって良さそうですね。

>念仏さん
しずな先生>ええ、やっぱりネギまのなかではしずなが数少ない大人の女性ですから。
横島の人生経験>本当によくいきてると思います。
多面的な描写>性格の改変もあるのでその方面にはいつも不安が残ります。気に入っていただけるとうれしいです。

>趙孤某さん
レスありがとうございます。やはり感想をいただけるとうれしいです。
68%はちょっと多かったかな?でも3分の1で死んでたら彼はやっていけない気が…
エヴァンジェリンとは完全に信頼フラグ方向ですね。
フラグはちゃんとたてます。勿論ネギとだれかのフラグも。

>Ysさん
こうなりました。いかがですか?

>Februaryさん
私は以前食生活が偏りまくって貧血なりました。
もう味わいたくありません…
健康は大事です。
99%は吸うのが大変そうな気が…
エヴァンジェリンは今回はちょっとだけ、でも楽しんでました。

>九頭竜さん
今回不幸なのはきっとカモです。彼に幸せが来るのは何時になるのか…
エヴァは一粒で二ついけますから踏みとどまらずにGoで(笑)
2日目は次回からになります。ラブラブキス大作戦対象が二人いますからどうなるやら…
頑張って書きます。

>黒いカエルさん
ありがとうございます。がんばります。
刹那ちょっぴり攻撃性があがりました。

>スケベビッチ・オンナスキーさん
刹那は乗り越えたかな?
横島は良いところは良いと思います。ここでは女の子の味方やってます。まあここは悪いところもかなり女の敵ですが・・・

>ryoさん
はい、うまくネギま!と絡ませたいです。

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