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▽レス始

「Go together 第九話(GS+ネギま!)」

らっかー (2007-02-14 18:57/2007-02-17 01:52)
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修学旅行前夜、明日菜の誕生パーティーを終えた横島はエヴァンジェリンに呼ばれていた。

「…なあエヴァンジェリン…」

顔色が赤から青へ、そしてもはや白になって来ている横島の弱弱しい声が聞こえる。

チゥゥー「っと、なんだ横島?」
「…流石に吸い過ぎだと思うんだが…」
「確かに顔色が悪いな。だがこれも私が京都を楽しむ間、元気でいる為だ。師匠の為に血を流すなんて、いい弟子を持って私は幸せだよ」

言っている事とやっている事は別として、遠足前夜の小学生な顔の数百歳の吸血鬼。
ついでに血は流しているのではなく、言っている当人に吸われているのだがつっこんだ所で無駄だろう。

「…なんで俺だけここまで? ネギでもいいではないか…」

一応ネギからも血を吸っているが明らかに量が違う。体格差分以上に横島が吸われている。
腕からとはいえ、せめてアダルトバージョンなら喜んでキスされる、もとい血を吸われるのだがちびバージョンだし不満はつのる。

「あいつは近衛木乃香とも一緒に住んでいるからな。あまり体調がおかしいままだと不審だろ。
その点お前は一人暮らし。多少体調が悪くても不摂生と思われるだけだ」カプッ
「…これは多少じゃないと思う…」

いっその事木乃香に魔法をばらそうかな、などと思ってしまう。
そうすればこの負担がネギにも流せるし、その上刹那との仲も進めやすい。むしろこの点の方が重要か。そんな事を考えながら、

チゥゥー「ぷはぁ、甘露々々。ん、横島? 寝たのか? 旅行前夜だし私も早く寝ないとな」
「いえマスター。横島先生は大量失血による気絶だと思われます」
「そうか、じゃあ別荘に放り込んでおいてやれ。こいつなら一日あれば回復するだろ。その前にもうちょっと…」カプッ

いや、考える途中で意識を失い横島の夜はふけていった。失血死する日も近そうだ…


『Go together 第九話』


修学旅行初日

「おはようございまーす!!」
「おはようネギ先生」「ネギ君おはよー」

大宮駅にネギの元気な声が響く。背中には子供サイズのリュック、杖。他にポシェットと手荷物サイズのバックを持っている。
しずなや早めに来た生徒がネギに答えている。それに続き、

「……おはよう……」
「おいおい、遅いし元気が足りんぞ横島先生。折角の修学旅行にそんな事でどうする」
「横島先生の状態はマスターが原因と思われます。そしてお早うございます横島先生」

普段の快活さを全く感じさせない幽鬼のようなありさまで、いつの間にか横島があらわれている。
血を吸われすぎて回復が追いつかなかったようだ。
珍しく膨らんでいないとはいえ巨大なリュックを背負っているのに、ほとんどの者はその到着にすら気付けていない。

対照的にエヴァンジェリンは元気一杯。

彼女は早朝日の昇らないうちに目が覚めると、身支度を整えログハウスから出発した。
出られる確信は確かに持っていた。
それでも、その小さな心臓をドキドキさせながらまだうす闇の朝の光の中、
緊張感につつまれながら茶々丸とともに学園結界から外への一歩目をふみだした。ぱああっと笑顔が浮かんだ。
駅に来たのも始発で、その上走って集合場所に1番で着いていた。
制服でなければ遠足に行く小学生と言って誰も疑うまい。

「あらあら、横島先生大丈夫ですか? 体調がよろしくないようですが」

横島がしずなの声に反応し素早く彼女の手をとり両手で包む。

「しずな先生っ! あなたの一声があれば元気百倍一千倍、ぼかぁーも゛う゛っ!」パタッ
「っ! 横島先生!!横島先生っ!!」

しずなに一声掛けられ復活したかに見えた横島。しかし煩悩パワーに体が追いつかず倒れる。
彼にも限界はあったようだ。しずなの手を掴んだままなのが最後の意地だろう。

「…流石に吸いすぎたか?」
「はい、マスター。推定値ですが全血液の68%はやりすぎかと」


「それでは京都行きの皆さん。各クラスの班ごとに点呼をとってから、ホームに向かいましょう」

新幹線の乗降口から生徒達が班ごとに分かれて乗ってくる。横島はそこで出席を最終チェックする。

3-A・1班、柿崎、釘宮、椎名、鳴滝(風香)、鳴滝(史伽)

「あっ、横島先生。一昨日たのしかったね♪」
「おう、また一緒にいくか?」
「そうだ先生、自由行動日一緒にまわろうよ♪」
「柿崎…、おごらんぞ」「…っち、ばれたか」

ジト目で見たら目をそらされた。

3-A・2班、春日、古菲、超、長瀬、葉加瀬、四葉

「おっ、顔色悪いアルね。これ喰うとよろしアルよ。力出るネ」
「肉まんか。古、買うからとりあえず30個頼む」
「おおっ、健啖家アルね!」
「肉食わんと血が足らなくてな。あとで追加もたのむ」

なんせ普通全血液の3分の1以上失血すると普通死ぬ。良くぞ生きていると言ってやって欲しい。
蒸篭ごと肉まんを受け取る。横島にしては気前よく肉まんを買う理由は、

3-A・3班、朝倉、那波、長谷川、村上、雪広

「ホホホ。横島先生、例の写真は出来まして?」
「ああ、だがネギと朝倉には絶対見せるなよ。それにデータは処分するからこれっきりだ」
「もちろん。雪広家の家宝として大切にさせていただきますわ」
「約束の報酬は俺の口座に振り込んでくれ」

まるで麻薬の取引のように怪しい空気を纏う二人、他の班員は引いて近寄れないでいる。
こうして「謎の美少女ピチピチボンテージ」の正体が分かる現存する全ての写真は、魔獣イインチョーの手に渡った。
そして横島の懐は暖まった。

3-A・4班、明石、和泉、大河内、佐々木、龍宮

「あー、うー」
「ん? 和泉も体調悪いのか。俺も貧血でな、肉まん食うか? 力出るぞ」「うぷっ」

横島の持つ蒸篭から肉まんを差し出された途端、新幹線のトイレに駆け込む和泉。

「…あれ?」
「横島先生、亜子は肉まんの食べすぎで気持ち悪かったんです」
「それは悪い事したな…。とりあえずこれだけど、大河内食う?」
「…一つだけいただきます」

アキラは、横島の蒸篭を何段も抱えて食べている姿を見るだけでもお腹が一杯になる気がした。

3-A・5班、綾瀬、神楽坂、近衛、早乙女、宮崎

「横島先生、随分顔色悪いですね。今食べてるし朝食抜いたんですか?」
「いや、例の献血の方。流石に限界こえてな、血になるもんくってるとこ」
「それはまた…。献血のやりすぎには気をつけてくださいね」
「やってるんじゃなくてやられてるんでな。どうにもならん」

横島に哀愁がただよう。その青白い顔と合わさって橋の上にいたら自殺直前と思われるような雰囲気。
もちろん献血とはエヴァンジェリンの吸血の事だ。明日菜の目にあわれみが浮かんだ。

3-A・6班、絡繰、桜咲、エヴァンジェリン、ザジ 欠席一命もとい一名、相坂さよ

「横島先生6班は一名欠席。欠席者は…、あっ、あれ?」
「どうした桜咲?」
「いえ、知らない名前なんです。おかしい、誰か書き間違えたのかな? 集まったのは全員だと思ったんですけど…」

刹那の持つ班員の名簿を覗いてみると、

「ん、ああっ、相坂か。帰ったら最前列の窓際の席をよっく視てみろ。桜咲ならそれで多分見える。俺も気合いれんと見えんしな」

そう言って指で目を横に広げピントを合わせるしぐさをする。
気が付けたのは自制術禁止令で神経を張り詰めていたおかげだ。人には言えないが。

「あの、それってまさか」
「ああ、相坂さよか。たしかにあいつは見えにくいな。よく気が付いた、それでこそ私の弟子だ」

エヴァンジェリンが話しに入ってきて刹那も確信したのだろう。驚いた顔をしている。

「弟子っ!! どういう事ですか!?」
「あ、ああ、この間の勝負の賭けでな、他の連中もいるから細かい事はまたな」

驚いたのは違う理由だったようだ。
とりあえず何時までも乗降口で止まっていると不自然なので刹那を座席の方に押しやった。


「おおぉ〜っ!!」

新幹線が発車するとエヴァンジェリンが窓に張り付いて歓声をあげている。
しかも窓に手と顔をぺたっと貼り付けて。隣の茶々丸はやさしげに見ているがこっちの感覚で言えば、

「完っ璧に小学生だな、おい」
「何を言う。このすばらしさがわからんのか、心の貧しい奴め」

こっちの心が貧しいかは兎も角、こういった事で感動できる感性は彼女の心がまだ枯れていない証左だろう。

「まっ、久しぶりの外なんだしたっぷり楽しんでくれ」
「もちろんだ。邪魔をしたら許さん」
「おう、じゃあ俺はお仕事あるから行くな」
「横島」「ん?」
「ありがとう」「どういたしまして」

景色を見るために外を向いたままいうエヴァンジェリンに、その言葉で十分とばかりに返事をしてその場をさった。
仕事もあるし、そろそろ追加の肉まんも出来るころだ。


教員からの挨拶及び注意事項伝達も終わって再び肉まんを食べていると不審な気配を感じ、同時に悲鳴が上がる。

「キャ…キャ――!?」
「カ…カエル〜〜!?」

通路に大量のカエルがあふれている。感じから言って何かの術だろう。数は多いが人に害をなせるほどの力は感じられない。
しずなや保健委員の和泉亜子が失神し、ほとんどの生徒達がパニックに陥っている。3-Aも女の子だ、突然両生類が湧き出れば無理も無い。
状況からみてまずやるべきことは、

「しずな先生ご無事ですかっ!! 今、僕の熱いベーゼで人工呼吸を゛ぉっぅ」ドゴッ
「横島先生っ! 落ち着いてくださいね。しずな先生は驚いてのびちゃっただけですから」
「は、はい……」

少なくともわき腹に明日菜のフックを貰う事ではない。
他の生徒には一見すると慌てた横島を正面から押しとどめるように見せ、カウンター気味に決める。それは見事な一撃だった。

カエルの平気な明日菜などの生徒達やネギにより108匹のカエルが捕らえられている。

皆がその騒ぎに夢中になっているその間に、横島は座席を倒してそっと和泉としずなを寝かせる。

つづいてそのスーツやベストを脱がせる。
――二人のそれぞれに女性らしい体のラインが浮かび上がってくる。

背中側に手を回して服の上からブラのホックをはずし、
――その時しずなの大きな胸がタプンッ、と揺れるが今はそれをおいて先へ進む。

そしてネクタイやリボンを取り、
――襟元がゆるんで白い首筋が目に映える。

スカートのホックをはずし、
――再びしずなは体のボリュームに押されてわずかに揺れる。

ワイシャツのボタンを首から胸元へと順番にはずしてゆき、
――二人のキメの細かい、美しい肌が少しずつあらわになってゆく。

そして、

「こんな時になにエッチな事やってるんですか!!」「ちっ、違うこれはっっ」ドガッ

殴られる。

明日菜に再び一撃もらったが、これは拘束を緩めて体を楽にする措置だ。体を冷やさないように毛布をかけて完了。
当然だがスカートは脱がせてないしワイシャツも胸元まではずした所でストップ。
まあ出来れば女性相手には女性にやらせるべきではあっただろう。

「いや、これは正しい。こんな場合に…」

知っていたらしい龍宮がとりなしてくれているのが聞こえるが、もうちょっと早くいって欲しかった。
あるいは彼女なら任せられたかもしれない。ちゃんと介抱したのにと、ちょっと悲しかった。


ふらつく体を立ち上がらせるとネギがスーツのポケットをチェックしている。
何か落としたのだろうかと思いみていると学園長からの親書をとりだし、

パシッと飛んできたツバメにそれを奪われる。いやあれはツバメではなく下位の式神。

「追うぞっ!!」
「はいっ」

栄光の手ならば届くがこんな人目のあるところでは使えない。こちらが派手な魔法の類は使えないと判断したのであろう大胆な手だ。
ネギも直ぐ後ろをぴたりと付いてくる。

一気に加速して新幹線のドアを駆け抜ける。
そこにいた弁当の売り子を紙一重でかわし、再びドアを抜け、

「悪い、後頼む。バテた」「はぁっ!?」

ダウンした。直ぐ後ろにいたネギが横島の体をかわした途端、その台詞にすっころぶ。
横島の巨大リュックを背負うパワーやエヴァンジェリンの別荘で見せている底なしの体力を見ているのでこうなるが、横島にもわけがある。

貧血の症状の一つ、持久力の極端な低下。その上、大量の肉まんを消化する為に血が内臓に行っている。
現在の血液量を考えれば運動開始と同時にショック死してもおかしくない。当然というよりはなんでこの程度で済んでいるかが疑問な結果だ。

「今は親書優先、急げ!!」
「はっはい!」

多少はこんな場合の優先順位が身についてきたネギが、その言葉に駆け出す。
霊感にくる感じからいって多分これはゴタゴタの前触れだろう。流石にこの体調ではきつい。
せめて京都にいる間はこれ以上血を吸われませんように。
どうせ何も無いよう祈っても無駄だろうと思い、せめてもの願いを今度はサッちゃんに捧げた。


座席間の通路にうずくまっているのも良くないし不審なので、何とか体を乗降口の人のいないスペースまで運び休める。

しばらくすると、ネギが親書を手に小走りで戻ってくる。

「大丈夫ですか横島先生?」

急にダウンしたこちらを心配していたのだろう。やや不安げな顔だ。

「しばらく休めばな。それより親書はしまっとけ。もう無闇に取り出すなよ」
「あっ、はい」

ネギが懐に親書を慌ててしまっている。

「術者はいたか? 親書を回収する気なら乗り込んでるはずだ」

わざわざ持ち去ろうとした以上その可能性は高い。

「いや、怪しいのはいたっスけど確証はなしっス」
「アレ? カモか?」

声はすれども姿は見えず。そういえば一昨日の晩、寮に届けたあと姿を見ていない。
それに気が付いたのか、ネギが持っていたバックを差し出す。中身は、

「ボール?」
「あっ、こっち側に…」

白いバスケットボール位のボールが入っている。ネギがそれをひっくり返す。
そこにカモがいた。

「これはまた…、見事に膨らんだな」
「ううっ…俺っちのしっぽ…」

白いボールに見えたのはぴっちりと包帯に包まれたカモのしっぽだった。寮に届けた時はここまでなっていなかったのだか…
カモのしっぽというよりボールにカモの体がくっついているように見える。
流石にこれでは普段のように肩には乗れまい。

「怪しいのってのは」
「一応、親書の近くにいた奴が一人いるんっスけど、術使ったわけじゃないんで…」

実際にはかなり怪しいとカモは思っていたのだが、横島にとある生徒が怪しいと言って万が一違ったらどうなるかと考え、それを言えないカモ。
今度は体もボールにされた自分が思い浮かんだ。

「まあ術者が見当たらなかったんならもう戻ってエヴァンジェリンの隣に座っとけ。そこならそう簡単に手はだせんだろ」

手を出した場合の報復を考えると相手の方が気の毒になる。今のエヴァンジェリンは封印結界がない。
茶々丸というパートナーもいるし、並どころか一流どころが団体組んで相手にしなければどうにもならないレベルの相手だ。

「横島先生は?」
「もうちょい休む。そろそろ行け、しずな先生も倒れてるしこのままじゃ3-Aの車両が教師不在のまんまだぞ」
「はい、じゃあお先に」


ネギが出て行くと、ほとんど入れ違いで反対側から刹那が入ってくる。

「横島先生っ? どうされたんですかっ」

座り込んでいる横島を見て心配そうな顔で覗き込んでくる。

「ん、俺はただの貧血。心配無用。いや、ちょっと心配してくれた方がうれしいかな。
ネギの持ち物が狙われて、追おうとしたんだけどダウンしちまってな。学園長からきいてない?」

少し考えてから答える。横島なら話して大丈夫だと信じられる。

「確かネギ先生が西への特使になったと…」
「それ。うちの車両で騒ぎを起こされてその隙を狙われた。ああ、木乃香ちゃん含め皆無事だから安心してくれ」

話の途中で刹那の顔色の変わった原因を察し、安心させる言葉をつなげる。やはり木乃香が絡むと反応が凄い。

「そういや桜咲は何か見なかったか?」
「新幹線の端から不審な点がないか確認していた所、術者不明の式神を一体切りました。
麻帆良の印で封がされていた手紙を持っていたので、追ってきたネギ先生の物と確認後渡しました」

キッチリと護衛の仕事をしていたらしい。

「それが学園長の親書。じゃあ取り返してくれたの桜咲だったんだ。ありがと」
「あ、いえ当然の事です」

刹那の頬が少し赤い。買い物の時からそんな気はしていたが、どうもこういった言葉になれていないっぽい。

「しっかし誰が親書なぞ狙ってんだ?」
「おそらく関西呪術協会です」

横島の独り言に近い台詞に刹那が答え、横島がいぶかしげな表情になる。

「友好関係を築くことを快く思わない連中がいる、と?」「はい」

元の世界でもデタントに反対する連中はいた。こちらでも組織が大きければ大きいほど一枚岩とはいくまい。

「問題でてきたけど何とかやるしかないか」
「わたしも余裕があればお手伝いします」
「ありがと、その時は頼むよ」

ここはもう学園外だ、木乃香の事が心配だろうに気を使ってくれる。良い娘だ。

「ところで先生、貧血とはやはりエヴァンジェリンさんの…」

再び心配そうな顔になり聞いてくる。横島の顔色の悪さといい朝の言葉といい、原因はそれ位しか考えられない。
学園から出られないと聞いていたエヴァンジェリンが修学旅行に来ていることも不思議だ。
それも彼の見慣れない技が関わっているのかもしれない。だとしたら、

「ん、まあねちょっと吸われすぎちゃって」
「あの…、弟子になったのはやはりこの間の勝負でですか」
「そ、負けたほうが言う事聞くってなっててな」
「……私のせいでしょうか」

自分が余計な負担を彼にかけなければこうはならなかったかも知れない。そんな思いがのしかかってくる。

「何が?」「えっ? あっあの私があんな勘違いしなければ負けなかったのでは」

だって言うのに。

「ああ、元々地力で大負けしてたんだから、負けて当たり前。全力のエヴァンジェリンなんて普通逃げ方考えた方が良い相手だからな。
むしろ幾らか認めてくれたから弟子入り。ついでに言えば桜咲の勘違いはむしろラッキー」

そんな事を言ってくる。

「ラッキーって」
「おかげで将来楽しみな美少女と仲良くなれたからな」

そう言って立ち上がり刹那の背中の羽が生える辺りをポンと叩く。刹那の顔が一気に熱くなった。

その後、エヴァンジェリンの勝負前後の経緯と横島の術で彼女を修学旅行限定だが連れ出せた事を話し、二人で3-Aの車両に戻る。
直ぐそこなので騒ぎが起これば流石にわかるが、そんな気配は無かった。無事おちついたのだろう。
刹那も気になっていた事が良い形で分かったからかうれしそうだ。


車両に戻りネギの様子を確認に向かうと、へんな状況に出くわす。

「…なあ、茶々丸?」
「何でしょう? 横島先生」
「何でネギをひざに座らせてるんだ」
「ネギ先生がどうしてもマスターの隣に座りたいとおっしゃいましたので」

確かにエヴァンジェリンの隣は茶々丸の指定席と言っていいし、これなら手を出しにくい…なんか違う意味でも。
ネギが茶々丸のひざに座って安らかに寝息を立てているのだ。
朝早かったし親書をとりもどして気が緩んだのだろう。それにしても…

未だにぺたっと窓に張り付いているエヴァンジェリン。カエル騒ぎに気が付いていたかすら怪しい。
脇に食べかけのアイスクリームのカップが有るからずっとではなかったのだろうが。

その隣で茶々丸に抱っこされて寝ているネギ。寝言でおねーちゃん、などと言っている。まるで茶々丸がお姉ちゃんだ。

ここだけどうみたって小学生の遠足だ。そして一番通路側の席で、

「ネギ先生。寝顔も素敵ですわ」

珍しい事にネギが他の女性にくっついていても委員長が暴走せず、なま暖かく見守っている。寝顔ウォッチ優先のようだ。

それらすべてを、

「さて、肉まん食って寝るか」

見なかったことにした。

まあ多少不安もあるがこの状態なら敵さんも手は出しにくかろう。いろんな意味で。


京都清水寺

「京都ぉ――っ!!」
「これが噂の飛び降りるアレ」
「誰かっ!!飛び降りれっ」

清水の舞台で記念撮影が済んだと思ったとたんに大騒ぎだ。

「横島先生なら飛び降りられないかな」
「あのねネギ、何無茶な事を…」「今の体調ではちときついな」
「って、出来るんですか!」「これぐらいの高さならしょっちゅう落ちてたからな」

もちろん覗きでしくじってや美神に突き落とされてだ。
明日菜の額に一筋の汗が浮かんだ。まだまだ横島のことは知らなかったと自覚した。

横島があたりを見渡すと生徒達がはしゃいでいるのが見える。
長瀬が飛び降りてみようとするのを委員長が止めている。
綾瀬が珍しく饒舌にしゃべっている。
さらに遠くを見渡すと京都が一望できる。こことは別の世界。別の京で自分はあの魔王に――

「−んせい、横島先生?」
「んっ、あ、なに明日菜ちゃん?」
「何かボーっとしてましたよ」
「ああ、前に京に来た時の事思い出してな、向こうでだったけど」
「そっちでもこんな感じだったんですか?」
「うんにゃ、平安京だったし、形と掛かってる術式は似てるけど景色や雰囲気はだいぶ違うな」
「は?」「ちょっとタイムスリップしてな」
「…そんなのも出来るんですかまさか」

あっけに取られるが彼の文珠ならひょっとしてと思う。

「俺は無理。向こうの上司と一時いたとこの隊長が出来た」

どっちにしろ、とんでもない。
今度ネギとエヴァンジェリンにこっちの魔法で出来るか聞いてみよう。
できるようなら禁酒法時代のアメリカにいって渋いおじさんに囲まれてみたいな。などと全然まわりに合わない考えが浮かぶ。

「ま、がらにもなく風情に浸るのはこの辺にして行こうか」
「はいっ」

その後ろで、

「美しい… 世界という物はこんなにも美しかったのだな… 何百年も生きてきたというのに改めて感じたよ…」
「マスター、涙が。 今タオルを出します」
「ああっ、すまんな。茶々丸」

もっとどっぷり浸ってる人がいた。


しばらく道を行くと委員長達が恋占いの石に挑戦している。
委員長があと少しという所で、委員長とまき絵が落とし穴に落っこちる。

「あンッ!?」「きゃあ」

「横島先生、これまさかっ!!」
「ああ」

明日菜の驚きの声に答える。こんな事をするのは関西呪術協会の術者に間違いあるまい、

「こんな所に落とし穴掘らないでくださいっ!! 危ないじゃないですか!!」
「ちがーうっ! 俺じゃない」

明日菜の着想が間違っていた。確かに寮にトラップを設置していたが、こんな所に落とし穴を掘る時間は今までなかったのに。
何かおかしいと思い返すと明日菜に関西呪術協会の事を説明していなかった。何も無くても彼女には最低限の事は説明しておくべきだった。
まして新幹線でそれらしい事があったのだからなおさらだ。ちょっと自分のミスに頭が痛くなる。頭にも血が足りていないのかもしれない。

「えっ、でも今ああ、って」
「後で説明するから、とにかく助けよう」

ネギがまき絵を引き上げようとしている。こっちも委員長を引き上げる。
新幹線と同じカエルがいるところからみても同じ連中だろう。

「で、どういうことなんですか?」

委員長達を助けた所で、人ごみから離れ明日菜が聞いてくる。

「ちょい待ち、お〜い桜咲〜」「はっはい」

近くにいた刹那を呼ぶ。例によってまた穏行を使ったまま影から木乃香を見ている。
出て行けばいいのに、もうほとんど習慣なのかもしれない。こっちを向いた刹那の顔が赤い所から見て木乃香に対する照れもあるのだろう。

「これってやっぱ間違いない?」「はい、こちらの術者の物です」
「どういうこと?」

いぶかしげな顔をする明日菜に答え、関西呪術協会とネギが特使となった事について説明していく。

「すまんが多分巻き込む事になる。何もなければよかったんだが」
「なにいってんですか。隠されてるよりよっぽどいいですよ」
「ありがとうございます、神楽坂さん。本来なら私たちのような者の仕事なのですがご迷惑をおかけします」
「桜咲さんもよっ、もうどっぷりつかってんだから今更そんな事言わない」

それでも明日菜はこちら側の危険をまだ分かりきっていない。今はいたずらレベルだがどうなるかはわからない。

「明日菜ちゃん。練習の時も言ったけどいざとなったら、自分を最優先で守れ。逃げられるようならとっとと逃げろ」
「えっ、は、はい」

珍しく強い調子で言う横島に少しあっけに取られている。
まだ理解しきっていないだろうがそう簡単に理解できる事でもない。しばらくはフォローしていくしかないだろう。
こういった事は待ってはくれないのだから。

「んじゃ、ネギにも連絡だ。狙われたばっかだから警戒はしてるだろうが、出来ればエヴァンジェリンのそばに置いたほうがいい」

新幹線での様子を思い出すと一抹の不安もよぎるが、紛れも無い最大戦力だ。
仮契約カードを取り出しネギに念話をつなげるが。

「……相手に先こされた」
「え?」
「なんかまたいたずらしかけられたと、親書は出さず離さずにって伝えたけど、酒がどうとか言ってる」

ネギの元へ急行すると3-A酔っ払い軍団が形成されている。完全に生徒達にも被害が出始めた。
向こうも魔法使いの秘匿は破るまいからたいした事はすまいと、油断があった自分に腹が立つ。

「意識の有る奴には水飲ませろ。ジュース・ドリンク類は飲ませるな。寝かせる時は顔と体を横に向けて、吐くと呼吸がやばいからな」

指示を出して自分も介抱にあたる。色々あった人生経験のおかげで応急処置は一式身に着いてしまっている。
一般人の新田教諭が来るのが見えたのでネギと明日菜を向けて誤魔化させる。
一応魔法がらみだし、被害者の生徒に責を及ばせたくは無い。

時間も集合時間が近いし丁度良い、酔っぱらいをバスに押し込んで旅館に向かわせる事にする。

委員長もダウンしているので自分が代わりに点呼をとり、

「って、エヴァンジェリンはどこ行った」

ネギをそばにつかせようとしたのに居ない。そういえば騒ぎにも出てこなかった。


「いつまでもこうしていられたら幸せなのにな…」
「マスター、下が騒がしいようですが」
「横島がいれば平気だろ。ああ、あいつが原因な事もあるか」

まだ清水の舞台にいた。


キィィィンと光り、『探』の文珠がその役割をおえる。

旅館に早めに着いたので受け入れ状態を確認してくると言ってバスを飛び出し、先に旅館の安全を確認する。
考えもしない物は探知できないが、強い力の物や者、横島の知るトラップ類ならこの位の広さを一気に調べられる。

もう文珠の使用もためらう段階ではない。生徒もきつそうな数名は纏めて不自然でない程度に『癒』した。
将来楽しみな女の子に手を出したのも許せないし、もう彼女達に情もわいてしまっている。
3-Aだけならいっそ修学旅行中止も考えるが、他のクラスも止めさせるには理由がない。
ここまで巻き込んできた以上魔法先生だけいなければ安全とは断言できない、麻帆良学園自体に嫌がらせが来る事もありえる。


それぞれの部屋で酔った生徒達を休ませ、魔法関係の人間を集める。

「やっぱりこの親書が狙いなんですか?」

ネギが自分の懐を指して言う。

「そうだろうけど他にも被害が行ってるからな」
「だったら先にそれだけ届けられないんですか」

明日菜はそれですまないのかと思ったが、

「学園長が自由行動日の3日目にアポ取ってるからな。下手に今から動かすと怪しいって突っついてくる理由になりかねん。
一応早められないか学園長に連絡してみるけど、多分無理」
「西の東に対する反感は根深いですから」

出来たとしてもこういった連中は暴走してくる可能性すらある。

「あ、あの、その姉さんは味方なんっスか?」
「ん、桜咲は仲間だが」
「はい、私は横島先生の味方です」

カモが聞くと刹那がうれしそうに言う。
カモは冷や汗を流す。ぎりぎりセーフ、新幹線でこの人が怪しいって言わなくって良かった。

「刹那の姉さん、名簿に京都ってあるが、こっちの人間なんっスか?」

一応確認はする、それくらいは平気だろう。

「ええ、ただ私はこのかお嬢様を守る為に西を抜け東についた。いわば彼らにとって裏切り者。良くは思われていません」
「ふん、狭量な奴らだ。誇りをもって行動する者の気概も分からんとはな」

エヴァンジェリンは悪く思われようとも信念を持つ刹那に共感を覚えるのかそんな事をいう。

「ともかく一般人まで巻き込むんじゃ流石に許容できん。理事長の話じゃ少なくとも西の長は味方してくれそうだから親書を届けて協力を仰ごう。
それまではキッチリ守る。まずはそれからだ。」
「「「はいっ」」」

明日菜、刹那、ネギが声をそろえて返事をするが、

「私は手伝わんぞ」
「ってエヴァちゃん!!」

あっさり拒否してきたエヴァンジェリンに明日菜が目を吊り上げる。

「折角15年振りに外に出られたんだ。しかも京都、手伝う暇なんぞない」
「だからって…」
「もっとも修学旅行が中止になっても困るし私にまで火の粉が降りかかってきたら払うぐらいはするがな。余計な事までする気はない」
「あんがと、エヴァンジェリン」「え?」

明日菜は友好的に見えないのにエヴァンジェリンに礼をいう横島に疑問符が浮かぶ。

「ネギ、少なくとも三日目までエヴァンジェリンにひっついてろ」
「えっ、は、はい」
「フン、親書を守りたければせいぜい離れるなよ」

そのへんが一部とはいえやっと願いがかなった彼女なりの妥協点なのだろう。
明日菜も気が付いて苦笑する。


一通りの話を終えたあたりで、彼らに声が掛かる。

「横島先生、ネギ先生、教員は早めにお風呂済ませてくださいな」
「あっ、はい」

ネギが返事をし、浴衣すがたのしずなが去ると、

「あれ、横島先生どうされたんですか?」

横島が絶望の表情を浮かべている。彼の様子が気になった刹那が問いかけると、

「…っだったのに」
「は?」

「混浴だったのに見逃しちまった〜! ちくしょ〜!! 折角しずな先生のボッキュッボンなボディを堂々と拝めるチャンスだったというのにーー!」
「えっえ?」

叫んで壁に頭突きをしている。
刹那が横島の豹変にあっけに取られている。横島はここが混浴と知りチャンスを狙っていたのだ。
まあ普通一緒になったら出るかタオルで隠すかするだろうが彼には関係ない。とりあえず、

シュルッ「がっ!!」

横島の動きが何か糸のようなもので縛られて止められ、

「やれっ、神楽坂明日菜」
「ええ、そうね」ドコッ

明日菜の一撃が決まって、横島の意識が刈り取られる。

「あ、あの一体なにが…」
「そっか桜咲さんまだ気が付いてなかったのね」
「まあ今のうちに教えておいた方がましだろう」

明日菜とエヴァンジェリンの口から横島の真実が語られて、

「ええ――っ!!」

刹那の初心なハートに結構強烈なひびが入った。


あとがき

やっと京都着です。
刹那フラグが上下微妙。
エヴァンジェリンを押さえるはずが横島が押さえられてしまいました。
貧血ってなってみると意外ときついんです。

感想ありがとうございます。レス返しです。

>Iwさん
初期にギャグでシリアス入んなくなったんで押さえてきたんですが加減がミスったかな。
もうちょっとバランス調整してみます。

>ポテロさん
今回は新しいフラグはありませんでしたが二日目の夜はきっと色々あります。

>スケベビッチ・オンナスキーさん
ご意見ありがとうございます。ただ横島が隠す理由でもあるので文珠はしばらく現状でいきます。
刹那は今回最後にちょっとショック受けました。フラグたってもばれたら…、まあ横島のいいところに目がいけばきっと平気でしょう。
サブキャラはこっちもうまくやりたいです。ネギまはサブキャラも良いので上手くだしたいです。
くぎみーは今回でなかったけどまただしたいです。

>宮本さん
エヴァンジェリンはとりあえず京都優先、ホントに鎖が付けづらいです。でもおおあばれもしてほしいし難しいです。

>アスナスキーさん
横島プレゼント今は刹那からの小間物入れにしまわれています。またいつかだしたいです。
刹那フラグが伸びてヒビ入りました。
カモこんなんなりました。

>念仏さん
女性相手に押されるのは彼の常ですから…
まあメドーサみたいにちゃんと敵対すれば戦えますし、それ程問題…行動のほうでありますね。
トラップ地獄>きっと泣くような事です。

>HAPPYEND至上主義者さん
頭を悩ませる>本当に悩んでますアイデア浮かぶところはどれ選ぶか悩む位なのに浮かばないところが全然うかびません。
更新速度は初期のストックなくなったのでもう落ち始めちゃってます。
一応話つながりがあるので少しはおいてありますが…。頑張って書きます。

>黒いカエルさん
はい頑張ります。応援されるとやっぱり書く気になります。
修学旅行編まずは前菜あたり、これから盛り上がるイベント、上手くこなしたいです。

>仲神 龍人さん
ネギ少しすれて来ました。でも今回はもろに子供です。
女心に気が付くのは彼でなくても大変です。でもきがついてもロリを否定するのに大変です。
委員長は原作でも暴走するといい感じだったんで暴走させちゃいました。
だれが誰のマスターになるかは色々考えてます。

>ヴァイゼさん
チョーカー>言われて見れば…、鈴をまず決めてストラップじゃ安っぽすぎるし、じゃあって決めたんですが…
私の心の願望の現われでしょうか?
釘宮フラグ>意外と反応あったし幾らか文化祭でキャラクターも分かってきたし上手く入れたいです。
刹那>ばれました、もう結構大ショックです。
カモネギコンビ>本当に何時になるやら…

>九頭竜さん
刹那フラグごらんの通りです。確かに他のフラグも立つと思います。でも龍宮、謎が多くて難しいです。ちょっと考えて見ます。

>黒覆面(赤)さん
ありがとうございます。
黒覆面(赤)さんの作品も面白く楽しみにしています。お互い頑張りましょう。

>瞬身さん
確かに、アクセサリーって結構そういうの多いですよね。指輪も所有の意味を示す場合が有るそうですし。そう考えるとすごいもん送ったもんです。
ルシオラのカードは本当にばれたときカモどうなるんでしょう。
冥福今のうちに祈っておきますか・・・。
!や?は半角ではなく>ですが、今まで半角でやってたせいか直してみたら違和感があって、戻しました。
回りの状態と感覚で少し考えてから決めさせてください。
でもよそみてたら全角ばっかりで、たしかに直したほうが良いかも。
音読確かに聞かれたくない。小声でやります。

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