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「Go together 第八話(GS+ネギま!)」

らっかー (2007-02-11 03:50/2007-02-11 03:50)
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「修学旅行の京都行きが中止…、ですか…」
「うむまだ決定ではないが、向こうにある関西呪術協会という所が魔法先生の同行を嫌がっておっての。
所で大丈夫かね? 顔色が随分青いが…」

朝、横島を呼び出してみればアンデットかと思うような顔色で出てこられれば流石に心配になる。
エヴァンジェリンの弟子になり咸卦法を教わる代わり、血を吸われているとは聞いたが…。本当に精気が感じられない。

血を抜けば少しは精力が減って煩悩も鈍ると、かなりの血を吸われているのだ。しかも何でか感謝しろと言われている。理不尽だ。

「ええ…、なんとか…。ただそれをエヴァンジェリンに伝えたらどうなるかと思うと…」
「だから担当の君を呼んだんじゃが…」

どうやら押し付ける気だったらしい。
しかしエヴァンジェリンが15年ぶりに外に、それも京都行けるとなって喜んでいる様子と、それがもし駄目になった場合の惨劇を考えると、

「…無理です…」

死んだ魚のようにうつろな目で答える。
自分が犠牲になった所で止まるとも思えない。少なくとも責任者たる目の前の老人の命は風前の灯火となるだろう。

「…なんとか先方に納得して貰うしかないかの。幸いネギ君なら特使として充分じゃ」

理事長も彼女の様子を確認しているのだろう。深いため息を付く。
西の長の友であったサウザンドマスター、その息子を公式に使節とすれば向こうも無碍には扱えまい。

こうして修学旅行に合わせ、ネギが特使として送られる事が決定した。


『Go together 第八話』


休日、東京都内某繁華街

「おっ嬢さーん! 僕と一緒にお茶でもいかがですか〜」

こんな声を出すのはもちろん麻帆良学園本校女子中等学校3-A副担任、横島忠夫だ。
前の休日の行動で学園長に学園内でのナンパを禁止されたばかりなので、流石に外に出てきてはいる。しかし、はっきり言って教師の行動ではない。
ちなみに成功率は0%。これで付いて来る女性がいたら美人局を疑った方がいいだろう。しかしそんな彼に、

「あの〜、すいません? ちょっといいですか?」

声を掛ける美少女がいた。それも横島に声を掛けるより前からナンパされ、それを軽くあしらっているなかなかの美少女が、

「はいっ!! ぼく横し…」「あっ、やっぱり横島先生っ!!」「…ま、なんて人物ではゴザイマセン。人違いです」

いたのだが一瞬で目を逸らした。
生徒の釘宮円だったからだ。もちろん気まずさから目を逸らしたのでなくロリコンを否定する為だ。
もし担当が女子校生や女子大生なら生徒でも喜んで声を掛ける。

「おおっ! クギミー大当たりっ!! 違うと思ったのに」
「うわっ、わっかんないっ。髪下ろしてると若っ!! 横島先生って何才だっけ?」
「……椎名に、柿崎もか。確かに釘宮大当たり」

流石にこれは誤魔化せまい。チアリ−ディング3人組に見つかって、今日のナンパはここまでだ。
どうやら髪型や服の印象の違いで横島と気付けたのは釘宮だけだったようだが、もう分かってしまっているだろう。

「でも横島先生もナンパなんてするんですね。結構ストイックな人だと思ってたのに」

釘宮がやや残念そうに言う。彼女は硬派な方が好みなのだ。
生徒が下着で飛び出してきても落ち着いた対応をしたり、変質者から生徒を守ったりで硬派なイメージを持っていたのだ。

「まあ、いい女に声を掛けるのは男の義務だしな」
「んにゃにゃ! じゃあ私たちも声かけられちゃうっ」
「俺はロリコンじゃないから何年後かにな」

この三人のレベルなら普段着ならば問題ない。将来に期待といった所だ。自分のスタイルの良さを主張し続けている椎名桜子を適当にあしらう。
聞けば彼女達は修学旅行のための買い物にここに来たらしい。

「先生はまさか、ナンパするため休日にここまで?」
「まさか、俺も修学旅行の準備。そのついででナンパ。こっちに来たの最近なんで店も知っとこうと思ってな」

一応本当だ。ただナンパの方がメインになってしまっているだけで。

「じゃあ私たちと一緒に行きませんか? いいお店知ってますよ」

横島がいればナンパよけになるし、生徒に対してはちゃんとプライベートと分けて接しているようだし大丈夫だろうと考え、釘宮が提案してくる。
ナンパするような男と知って好感度は少々ダウンなのが残念だが、悪い人だとは思わない。
初期の印象というものは大きく、事実を知らないという事は凄い。このケダモノを平然と誘うのだから。

「そうだな、じゃあ頼む。なるべく安いとこな」
「じゃ、その分おごってくださいね先生っ♪」
「おおっ、ないすアイデア」「おねがいしま〜す」
「…程ほどに頼むな」

麻帆良学園の待遇は美神よりはるかに良いが限度もある。流石にこういった所は女の子の方が上手のようだ。


「――ん?」

幾つかの買い物を終えて歩いていると、今度は柿崎が雑踏のなかに見知った人物を見つけた。
因みに横島の財布の重さは予定に比べ激減している。

「あれ、ネギ君とこのかじゃない!?」
「ホントだー…。こんなところでなにやってんだろ」
「あいつらも買い物か?」

その目線の先で二人は随分仲良く楽しそうにしている。まるで…

「デートじゃないの、あれって!?」
「って、誰かに知られたらマズいよこれ!」
「生徒に手を出すなんて他の先生に知られたら、ネギ君クビだよクビ〜〜」
「俺も一応先生だが…」
「「「あっ…!!」」」
「まあ、下手に知らせてこっちが生徒三人に手を出したなんて言われたら向こう以上だしな」

肩をすくめて目で合図する。まあネギ達のあれはデートではないだろうが言うのも野暮だ。
将来有望そうな女の子が彼氏とラブラブなようだったら、自分の嫉妬センサーが見逃すなどそうそうない。

「おお、先生話せますね」「そうそう、こっちは美人さん三人もひっかけてんだから」「ひみつだよ〜」

上手く息をそろえて言ってくる。これもコンビプレーだろうか。

さらに明日菜に連絡し(無視されたが)、二人を尾行するとか応援するとか三人組は言ったが、横島はまだ買うものがあると言って彼女達と別れた。それは、


「で、桜咲は木乃香ちゃんの護衛かい?」

刹那の視線を感じたから。
オープンカフェで休息している二人、というか木乃香を建物の影から見守っていた。

「はい。麻帆良学園の外はお嬢様にとって危険ですから」
「学園からでただけで木乃香ちゃんが危険?」

それはいくらなんでも過敏ではなかろうかと感じる。

「知らなかったのですか? お嬢様は潜在的に極めて強い魔力をもっています。さらに東西二つの魔法協会幹部の関係者です。
それ故お嬢様を狙う輩がいるのです」
「それで魔法関係の防御がある学園内が安全ってわけか」

魔力を狙うなら相手も魔法関係だろう。それなら相応の防御がある場所はそうないだろう。まして魔法を隠しているこちらでは表立って対応しにくい。

「ん? でも木乃香ちゃん魔法知らないよな?」
「はい、お嬢様のお父上の方針で、お嬢様にはこちら側に関わらせずにおきたいと」

なかなかややっこしいようだ。

「でもわざわざ穏行使ってまで尾行せずとも、出て行けばいいのに」

その方が護衛もやりやすいはずだ。因みに今は横島も刹那に合わせ穏行を使っている。
この状態では片方でも居るのががばれたら意味が無い。

「魔法の事はお嬢様には秘密ですから」

それだけなら誤魔化しようはあるし、護衛の役割を考えればなおの事側に居るべきだ。ならば、

「…羽の事、まだ不安なの?」
「……はい」

うつむいて答える刹那。この間のことで幾らか良くなったと思ったが、まだまだ根は深そうだ。

「じゃ、羽の事は内緒で仲良くしよう!」
「えっ」

言って刹那の物もまとめて穏行を破り、刹那の手首をとって木乃香達の方へ小走りで近づいてゆく。

「よっ、ネギ、木乃香ちゃん」
「あっ横島先生、桜咲さん」
「あっあ、あの、お、おじゃうさま」
「せっちゃん!! 横島先生っ、せっちゃんになにしとるんえっ!」

刹那の手を強く引っ張ってきた横島。刹那が困っているような様子を見て、木乃香が初めて見せるきつい視線を向けてくる。
この分ならこっちも大丈夫だ。

「おっ、まだ掴んじゃってたか。ごめんごめん。さっき桜咲がしつこそうなのに絡まれてたの見つけてな。引っ張って逃げてきた」

手を離して舌先三寸で話を作る。

「えっ、せッちゃん大丈夫だったん?」

今度は一気に心配そうな顔。もう少しで泣きそうな気さえする。

「は、はい。ひ、一人でも大丈夫でしたが、横島先生が助けてくれましたし」

こっちはこっちでガチガチ、手はわたわた、顔も真っ赤だが話しをあわせられる位ならだぶん平気だろう。
木乃香がほうっと息をついて視線を逸らした一瞬に、刹那が半泣きでにらんで来たがそれはむしろ可愛いくらいだ。

「ありがとうな、横島せんせ、うちのともだち何回もたすけてくれて」
「と、ともだち、お嬢さま……」
「なに、俺の生徒だしな、当たり前の事だ」
「そんな事ありませんっ! 横島先生、りっぱですよ!」

何回もとは『桜通りの吸血鬼』の時の事だろう。どっちも嘘なのに木乃香の純真な感謝の目でみられると流石に痛い。
ネギも片方は嘘と知っているだろうに尊敬の視線を向けてきたりしている。
ここ数日エヴァンジェリンの別荘で散々トラップ地獄を味合わせたはずだが、こっちの方面では疑うことが身につかなかったらしい。

こちらも席について話を聞くと、木乃香とネギは明日菜が明日誕生日なので本人に内緒でプレゼントを買いに来たという。やはりデートではなかった。
刹那はやはりガチガチで無口な状態だが、質問の返事くらいはしているし、なんとか間は持っている。うまく話をすすめられればいいのだが…

ゾクリッ

っと霊感に来る物を感じる。
直感に従い右斜め前方に視線を向けると、チアリーディング三人組がなにやらドタバタやっている。
そういやこいつらの事を忘れていた。

「あれ? 横島先生どうかしたんですか?」
「あ、ああ俺も明日菜ちゃんにプレゼント買った方がいいと思ってな。誕生日知らんかったし何か用意しないとな」

ネギに誤魔化して答えながら考える。あの三人だけでは今の悪寒を起こせるとは思えない。何かある。別の何かが…

ゾクリッ

ポケットに入れた携帯の振動と共に再び悪寒が走る。ネギ達三人に断りを入れて携帯を開くと画面に、夜叉が居た。

「横島先生゛、なにお゛なさってい゛るんですの゛」

地獄の底から聞こえてくるような低い声が、耳を右から左に突き抜けて響く。周りはなぜか気付かない。なんでか音漏れを全く起こしていない。
雪広あやかが鬼と化しこちらを睨んでいる。先ほどの悪寒の正体もこれだろう。
自分にこんな悪寒を感じさせるなんて、悪霊なら退治に億単位の報酬がいるレベルだ。

「クラス委員長として命じます…」「あの、俺副担任なはずなんだけど…」
「関係ありません!! ネギ先生とこのかさんの不純異性交遊を断固阻止しなさいっ!!」「いやこれは…」ツーツーツー

返事をする前に切られる。履歴から返信しようとしても通話中になる。

ゾクリッ

三度悪寒を感じ視線を上げると釘宮円が携帯の画面をこちらにかざしている。そこに映るのはもちろん魔獣イインチョーだ。
しかも委員長の後ろにいる明日菜の姿を横島の脅威の視力が捉えていた。プレゼントを秘密にするなら下手に話せない。
これは誤解だろうがなんだろうが二人の仲を阻止せねばなるまい。

それにしても電話越しにこの瘴気。本気で除霊道具持ってきた方がよかったかなー。そんな言葉が脳裏に浮かんだ。

「あの、横島先生。どうかなさったんですか? 顔色が悪いようですが?」
「あっ、ここの所僕と横島先生、残業多くて貧血気味なんですよ!」
「まあ…、そんな所かな…」

そういやこいつ桜咲の事情知らなかった。
木乃香がいるからどちらにしろ正直には話せないが、エヴァンジェリンが原因の貧血と勘違いしたネギが魔法を隠して誤魔化そうとしている。

そんなことよりもこっちだ。とりあえず木乃香とネギが付きあっているように見えるのはまずい。
刹那もそろそろ一休みさせないと話しの間が持たなくなってきている。いったん引き離そう。

「そういえばあっちの店に明日菜ちゃんに似合いそうなのがあったんだ。
趣味に合うかどうかちょっと木乃香ちゃんが見てくれないか? すぐそこだから見てる間に二人は休んでてくれ」
「ええよ〜」「で、ではお嬢様をお願いします」「あっはい」

これでしばらくは持つ。ついでに木乃香からも刹那の話を聞ければ御の字だ。
そしてどうか魔獣イインチョーがこれで鎮まりますように。届くかどうか分からないがキーやんに祈りをささげた。


「これなんか結構似合うと思わないか?」
「ん〜、明日菜にはもっと元気そうな方が似合うんやないかな?」
「明日菜ちゃんなら少し大人っぽくてもいけると思うんだけど」

いくつかの服やアクセサリーを見ながら相談していく。
横島はやや大人っぽいシックな物を中心に、木乃香はやはり明日菜のイメージに合う活動的な雰囲気を感じさせる物を選んでいる。

しばらく本気で明日菜のプレゼントの方に集中していると、気が付けば木乃香がちらちらと横島を見ている。

「どうかした? 木乃香ちゃん?」
「…横島先生はせっちゃんと仲良かったんえ?」
「まあ、悪い方ではないと思う。木乃香ちゃんはちがうの?」

やはり木乃香も刹那の事を気にしていたようだ。幾らか情報を知っているのでいじわるな質問になってしまうが、二人のために聞いておきたい。
すこしうつむいて木乃香は話し始める。

「うち、小さい頃京都に住んどったんや。えらい広くて静かなお屋敷で育ったんやけど…
山奥やから友達一人もいーひんかったんや。せっちゃんはそんな時、うちに出来た初めての友達やってん…」

その後も木乃香の話は続く。怖い犬を追い払ってくれた。危ない時は守ってくれた。
川で溺れそうになった時など一生懸命助けようとして一緒に溺れそうになり、二人して大人に助けられて自分を助けられなかったと泣いていたと。
大事な思い出なのだろう。ひとつひとつ懐かしむように、慈しむように語っていく。

その後、刹那は剣の稽古で急がしくなり会えなくなった。麻帆良に引っ越して中一で再会したときには、もう昔のように話してくれなくなっていたと。
おそらくはその間に刹那は、自分の出自に対するコンプレックスが出来てしまったのだろう。

「…今日久しぶりにせっちゃんと話せてうれしかったん。でもまた話してくれへんよーなったらうち…」

ぽん、と木乃香の頭に手をのせる。見上げてくる目にはもう涙が流れている。

「横島せんせ?」
「大丈夫だよ。桜咲は木乃香ちゃんの事、今も守りたいって思ってる。大事な人だって思ってる。
今は何か事情があって話せないみたいだけど、きっとまた仲良くなれるさ。俺も手伝うよ」
「ありがとうな、横島せんせ」

木乃香が涙をぬぐいながら、今出せる精一杯の元気で微笑えんで来る。

どっちも相手を大事に思っているのに上手くいかないなんて悲しすぎる。
思いの形は違っても自分と彼女の事が重なってしまう。

「さ、じゃあ明日菜ちゃんのプレゼント選んでもどらんとな。二人を待たせちまってるしな」
「そうやな、うちまたせっちゃんと話ししたい」


木乃香の涙が乾くのをまってプレゼントを選んでいると、

「ああ、これは横島先生おひさしぶりです」
「へっ?」
「教育実習の時お世話になった釘男です。ちょっとお話ししたい事が、お嬢さん横島先生をお借りしますぅ!」

学らんの人物が一気にそれだけ話して横島をひっぱり、物陰に連れ込まれる。

「でなんなんだ釘宮…」
「ばれてましたか…。それよりこれを」

釘宮は一瞬で見抜かれたのに少し驚いたようだが、かまわず携帯電話を差し出した。何だか切羽詰っている。出たのはもちろん、

「横島先生、なにをのんびりなさってるんですか!!」「…いやかなり大事な話をしていたんですが…」

魔獣イインチョーだ。さっきより瘴気が増しているから大魔獣にグレードアップしてもいいかもしれない。
キーやんへの祈りは届かなかったようだ。

「なにをおっしゃるんですっ!! あなたの使命はネギ先生を守る事。それをお忘れになって!?」

そんな使命をもった覚えは欠片もない。記憶力には自信があるとは言えないが、それでも断言できる。

「このかさんを引き離しても桜咲さんがネギ先生に手を出してしまっては意味がないではありませんかっ!!」

そんなことはまず無いだろうが彼女相手に否定した所で通じまい。
それにしてもこちらの様子を知っている所から見て、チアリーディング三人組を使ってモニターしていたようだ。
残り二人はおそらくネギの方についているのだろう。

「とっとと戻って使命を果たしてくださいっ!!」ブッ ツーツー……
「…以上です」
「分かった。お前も大変だな釘宮……」
「…お互い様です」

切れた携帯電話を掲げたままの釘宮。その見えないはずの背中が煤けているのが見えた。


「お〜い、またせちまったな」
「ええのあったよ」

急ぎプレゼントを選んでもどるとのんきに紅茶を飲むネギと、なにやら鋭い視線を脇に飛ばす刹那がいる。
視線を追うとその先に、変装というよりは仮装をしている柿崎美砂と椎名桜子。

「横島先生…、先ほどからなにやら不審な輩が周囲をちょろちょろと…」
「いや、それさっきから居た三人組だから…」

近づいてきてささやく刹那に答える。まああんな様子と格好じゃあクラスメイトとは思いたくないだろう。
向こうも近寄れば刹那に睨まれ近づけず、こっちに御鉢が回ってきたのだろう。

「じゃあ残りの買い物に行くか」

四人連れ立って歩き出す。横並びだが刹那、木乃香、横島、ネギの順になる。
刹那と木乃香は互いの隣を取ろうとするし横島は委員長の命令でネギを女の子に近づけないようにした結果だ。

最初はプレゼントだけの予定だったのだが、人数が増えたせいか簡単なパーティーグッズも買ったりケーキも用意しようと話が膨らんでいる。

三人組が後ろから付いてきているのは気配と視線で分かるが、霊感に来るプレッシャーが無くなったところから見て委員長もこの状態ならOKなのだろう。
刹那達も結構いい雰囲気なので店の中でネギをつれて離れた。しばらく二人にしてやった方がいいだろう。

「やっぱクラッカーはないとな」
「横島先生、寮であんまり騒がしくしたら……」
「全然平気だと思う。まああまり騒がしくなりそうなら俺の部屋つかってもいいしな」

横島をいさめようとしたネギの言葉が途中で止まり、少しは様子を知る横島の言葉がそれに続く。
あの寮なら多少の騒ぎは平気だろう。

「おおっ、こんなのもあるぞネギ」
「あっ、駄目ですよ横島先生」

一つのパーティーグッズを手に取り一寸使ってみたその時、

ゾクリッッ…!!

霊感が今までで最大級の警鐘を鳴らす。
ポケットの携帯が震える。しくじったかと思い肝を冷やしながら電話に出る。

「よ・こ・し・ま・せ・ん・せ・い!!」「は、はいっ」

一音一音区切って今までで最大の力を言葉に込めて言って来る。もはや一種の言霊となって力を持っている。
緊張の余り背中を冷たい汗がつたう。やはりこれは失敗だったか。調子に乗りすぎたかもしれない。

「すばらしいですわ! もっとやりなさいっ!!」

横島の目の前には、パーティーグッズの女物のかつらを被った美少女ネギがいた。


「…あんまりです横島先生。うっ、ううぅ」
「すまんなネギ。俺も逆らえんかったんだ…」
「横島先生、ネギ君どーしたんえ?」「なにかあったんですか?」
「聞かないでやってくれ…、武士の情けだ」

あのあと横島は「謎の美少女ピチピチボンテージ」を再び降臨させ、その結果なんでかネギが泣いている。
その上今回は、何でかグッズショップにあった麻帆良学園本校女子中等学校制服バージョンもオプションにつけた。
最後に見た携帯画面の委員長は、至福の笑みを浮かべていた。
タイトルをつけるなら「大魔獣イインチョー、ピチピチボンテージの美に倒れる」といった所か。
ゾクリと来る悪寒はなくなったが、瘴気は倍増していた。


一通りの買い物が終わった頃、太陽も降りてきて空が夕焼けに染まり始めている。

「ネギ君フラフラしとるえ。座って休みい」
「は、はい――」
「横島先生もお疲れのようですが、大丈夫ですか?」
「ああ、修学旅行が近いから残業が多くてな」

残業が多いのは本当だが美神除霊事務所のハードスケジュールに比べればなんでもない。
実際はエヴァンジェリンが原因の貧血と、雪広あやかが原因の気疲れだ。

三人組が正面の生垣に隠れているのが分かるが、こちらの気配もやや疲れを見せている。
本当にご苦労様、と言ってあげたい。

コクッコクッ
「おっとっ」

ネギが階段に座ったまま眠ってしまい木乃香の方に倒れそうになるのを肩を掴んで支える。
油断してネギを木乃香の隣に座らせてしまっていた。うっかりすればまたあの魔獣が現れかねない。

「ネギ君寝てしもーたん?」
「流石に疲れきったみたいだな」
「ヒザ枕したげよーか?」
「いやいや、木乃香ちゃんのヒザはもったいない。やるんだったら卒業後、俺に頼む。木乃香ちゃんなら大歓迎だ」
「ふふっ、いややわ横島先生、じょうずやわ〜」
「横島先生、生徒に手を出さないでくださいね」「おう、だから卒業後」

刹那がちょっぴり本気で睨んでくる。でもどこか幸せそうだ。木乃香も笑っている。
二人と話しながら遠くの夕日を見る。

「コラ〜〜ッ! お待ちなさい〜〜ッ!!」

声の方を向くと委員長と明日菜が走ってくる。電話で指示を出すだけかと思っていたがこちらに向かっていたらしい。

「ハァハァ、どうやら横島先生は使命を果たしたようですわね」

横島とネギの様子を見ながら委員長が息を整えている。カモもいたようで明日菜の肩から降りてネギに走りよる。

「使命?」
「あ、こっちの話だ気にしないでくれ」
「あれ? 桜咲さんもいたんだ」
「あ、買い物の途中で会いまして」

しかし明日菜が来てしまったのは良くない。流石にこんなパーティーグッズだのいかにもプレゼントな箱だのを持っていたらばれる。
三人組も委員長が来たからか出てきた。

「あちゃー、もしかしてバレてたんか?」
「いや、でも多分もうばれちゃうだろ」
「ん――」
「おっ起きたかネギ」
「あっはい、あ、あれ明日菜さん? 皆さんも?」

周囲の様子に気が付いたネギが横島の手を離れわたわたと立ち上がり、

「あっ―」
「ネギ君っ!!」

寝起きでふらついたのか、階段を踏み外し倒れる。

「っって、おいっ」

止めようとした横島があるものを目に入れて、とっさに行動を切り替える。

閃光と爆音が響き渡った。

「ったた、すいませんこのかさん」
「ううん平気やよ。ネギ君こそ大丈夫」

ネギが横に倒れたのでとっさに下になった木乃香だが、無事だったようだ。

「ご無事ですかネギ先生。それにしてもなんですの今の光と音」
「ああ、悪い、とっさにネギの手とろうとしてクラッカーと踏んじまったみたいだ」

他の女の子達も今の音と光に驚いている。今の光の半分と音はサイキック猫だましによるもの。
とっさで音も光も全力に程遠いがそれでも常人相手に目くらましにはなる。
皆があっけに取られている間にクラッカーの袋も軽く踏んで潰してある。証拠作りだが普通これ位では暴発しない。
そして光の残り半分は、

横島の視線の先に、何かのカードを持ってネギの後ろに隠れたオコジョが映った。

「あっ!」
「どうしたんですのこのかさん」
「いまのでネギ君のほっぺにチューしてもうた」

のほほんという木乃香に委員長が怒髪天をついて突っかかっている。私がしたいなどと叫んでいる。
他の何人かも巻き込んで騒いでいるが今は他に考える事がある。明日菜が寄ってくる。

「このかは大丈夫みたいですね」
「ああ、それよりも今の気が付いた?」
「なんとか」「練習の時も思ってたけど、目もいいみたいだね」

今の一瞬の出来事を見れたなら大した物だ。

「あのオコジョ、本気でネギをオコジョにする気か」
「まったくですね」

脅威の速度で魔方陣を描き、仮契約を行ったと思われるあのオコジョ、危ないまねをしてくれる。

「そういえば何でクラッカーなんか…」

明日菜が横島の足元に目を向ける。

「あっ、もうバレバレだなこりゃ。おいネギ、木乃香ちゃん、桜咲、もうこれは隠せんだろ」
「あっそうやな〜」
「ええっ〜〜驚かそうと思ってたのに」
「まあ、これでは仕方ありませんね」

「えっ?」

すぐ気が付きそうだが、まだ気が付いていなかったようだ。まあ多少でも驚いてくれればよしとしよう。プレゼントの箱を差し出す。

「はい明日菜ちゃん、明日のお誕生日おめでとう♪」

横島からは小さな金のベルがついた黒のチョーカー。トレードマークの鈴に合わせて、でもそれと逆のフォーマル向きなのを選んだ。

「これは、僕とこのかさんからです」

二人からはオルゴール。明日菜の好きな曲のオルゴールで結構良いものだったので二人であわせて買った。

「わたしも、この間ご迷惑おかけしたお詫びもかねまして」

刹那からは小間物入れ。和風の物で刹那らしい、センスのよい落ち着いた品。

「えっ、ええっ」

結構驚いた顔をしている。失敗したと思ったが、思ったより成功といって良いだろう。
他の面子もしばらくあっけにとられていたが、三人組は横島に買わせたものの中から良さそうな物を選んで渡している。

「横島先生っ、これはどういうことですのっ」
「いや、電話で雪広と一緒に明日菜ちゃん写ってたからへたに伝えられなくって、結局ばれたけどな」

なんで言わなかったのかと言った感じで委員長が詰め寄ってくるが、それより今は明日菜が主役だ。

「あ…ありがとう……
このか、横島先生、ネギ、桜咲さん。それに皆も…
こんないきなり……
わ、私…… 私、嬉しいよっ」

うひゃーっ、と幸せでいっぱいな笑顔を浮かべている。感極まったのか涙も浮かべている。

「パーティーの用意もしてたんだけどそれは明日な」
「はいっ!」

ここまで喜ばれるとこっちもうれしい。
それにこっちまで幸せになれるような笑顔で明日菜は答えてくれる。

いや、本当に皆も幸せな気分になった。


一通り騒いだ後、

「よし、じゃあ今日はこの辺で帰れ。明後日旅行なんだからそろそろちゃんと準備しないとな」
「え〜折角だしこのままカラオケ行こうよ」
「そーよ、誕生日の前祝でさ」

三人組はそんな事をいってくるが遠出しているのだし遅くなる前にと納得させる。

「俺とネギはもうちょっと用あるから残るけどちゃんと帰れよ〜」

先生だけずるい〜、と叫ぶ数名を追いたて、自分もといわれキョトンとしているネギをひっぱって物陰に入る。
ようがあるのはその肩にいるイタチ科の小動物だ。

「どうしたの横島先生?」
「さて、貴様何を考えている」

ネギを無視し、頭をやや傾けニターっと笑いながらオコジョに問いかける。
カモも理由は分かっているのだろう。ガタガタ震えている。

「ひっ!! いっいや、チャンスだったんでつい体が動いちまって」
「それで魔法を知らない木乃香ちゃんを巻き込んで仮契約した…と」
「い、いやほっぺだったんでスカカードっスよ」
「えっあっ、あのときに!!」

ネギが気付いていないとは思わなかったが寝ぼけていたせいだろうか。あるいは弱いが至近距離のサイキック猫だましに感覚をやられたか。
まあ今はそんな事はどうでもいいと、カモの尾を掴み持ち上げる。

「ああ、そうだ。それとネギももう帰って良いぞ」
「で、でも」
「もう帰って良いぞ。もちろんオコジョはおいてな」

やたらダークな雰囲気を漂わせて繰り返す。口調もなんかおかしい。許可形だが命令形に聞こえる。

「は、はい。じゃ、じゃあまた明日」
「あ、兄貴ぃぃっ!!」

何かを感じてネギは全速力で立ち去る。カモが絶望の叫びを上げる。

「くくくっ、いっくらでもわめいて良いぞ。ここに掛けた『遮・音』術は完璧だ。俺にしか聞こえん」
「ひ、ひいい〜」

日が落ちた世界、その遮音結界の中だけカモの悲鳴が響き続けていた。


あとがき
色々あって今回すごい真夜中の更新になりました。眠いです。
とりあえず投稿して寝て起きたら修学旅行編書きます。
明日というか今日こそ上手く進めたいです。

感想ありがとうございます。レス返しです。

>アスナスキーさん
そうですね。ただ明日菜は現在タカミチが好きです。
それに横島はフラグ幾つか立てるでしょうからこれからが大変です。
>時守 暦さん
いえいえ、ネギ君は立派な紳士ですよ。
パンツ一丁でサキソフォン>さすが時守暦さんアイデア斬新です。
一応没アイデアにはネギが某英国対吸血鬼機関のあの人と化してエヴァンジェリンを震え上がらせるようなのもあったんですが、そう言うアイデアはありませんでした。
そのセンスが欲しいです。
ネギま!の女性確かに脱ぐ人おおいですね。個人的には源しずな教諭にぜひ脱いで欲しいです。
>仲神 龍人さん
乱文>確かに自分でも今一まとまりきってないと感じるところ有ります。精進して直して行きたいです。
状況説明は無いと話は伝わりにくくなってしまったので入れたのですが上手く流せなかったみたいでやっぱり技量が欲しいです。
アニメ版は見てないんですが、なにやら設定結構違うみたいなので。
時々壊れますが原作設定で行きますのでよろしくお願いします。でもアニメ…見たらちょっとネタ取り込むかも。
>ミクロさん
ちょっとは近づくと思います。でも横島もそろそろ他のフラグ立て始めちゃいます。これからどうなるやら。
>念仏さん
ルシオラ>ええ、その当たりが性格変化の元になっています。
ネギは確かに横島相手には下手したら援護より被害の方が多くいってますから。
文珠は乱用は気をつけてます。本当に使いどころがむずいです。
>黒いカエルさん
自分でも気が付いてから横島×明日菜探してみたんですが見当たりませんでした。
合うと思ったんですが何で? やっぱりタカミチがいたせいですかね?
路線は…、一寸これからフラグふえそうです…
ネギはこれからに期待です。
>宮本さん
次回でとうとう京都入り、実際にやってみるとエヴァンジェリン大変です。
偽名フェイト君すら逃げ出す始末ですから…。修学旅行編進まない原因の一つです。進まない原因最大の理由は私の書く能力のせいですが…
そして刹那、やっぱりネギは知りません。明日菜や横島は秘密ちゃんと守ってますから、口が軽くありません。
>ヴァイゼさん
道具>だからこそ利息です。もともともう損害出てますから只じゃあすまないでしょう。
エヴァフラグ>秘密を明かされたり、自勢力に囲い込んだりで信頼フラグは成長してます。恋愛フラグは…すいません。
ネギはスルー>迷ったんですが、流れから言ってばらす方がここじゃ崩れそうでこうしました。
文珠の弱点はそうですね。原作は最初横島のイメージでハエふっ飛ばしましたから彼は込められそうですけど他の人はあやしいですね。
そういえば今回文珠ギャグの一回のみ、使いたい所あってもここって秘密にしてるから人が多いとなかなか使えません。
>柿の種さん
大人の皆さんも崩れる時は崩れるんですがやっぱりしっかりしてる所はないと話がうまく流せないのでこうなってます。
ご期待ありがとうございます頑張ります。
>九頭竜さん
ロリコン>横島なりの一応のボーダーラインはあります。スタイルや格好、とっさの勢いで結構かわっちゃいますが…
明日菜は、確かに平和は彼女の双肩にかかりました。
>315さん
明日菜は、これからタカミチどうしましょう。先が長いので場所によって考えがあったりなかったりです。
ネギは一応危なくない呪文を唱えたのですが…、価値観は人によって変わるといったところです。
ネギには成長して欲しいので上手く書きたいです。
>T城
一応美人は飛び掛るようにしてます。色々邪魔をいれていますが…
流れは自信がなかったのでそう言っていただけてうれしいです。まだちぐはぐ感出てしまうので、直したいです。
質問の答えですが、ネギと横島でカードが共有になってしまってるみたいです。事故でチェックがうまく作動しなかったのでしょう。
どっちか死んだらカード死ぬのかな? 原作でその辺の設定に矛盾でないか不安な日々です。
>ポテロ
はい、性格面の相性はかなり良い二人だと思っています。
それぞれの事情もあるし、特に明日菜はまだ謎がおおいので上手く消化したいです。
>シャーモ
出来ないことはないと思いますが文珠をかなり食いますし、
ここの横島だと他の文珠使う余裕を削られるので使い所がよほど限定的になりますね。
>MAS-NMR
一応スペースを空けて文珠の話をしたと入れてその辺を含めたつもりだったのですが上手く伝わらず申し訳ありません。
容赦のなさは誤魔化すためにペースを握るのも兼ねているのであんな感じになります。
横島は…、そういえばルシオラも体と実年齢違ったし、3-A相手にもどれるんでしょうか? 私も疑問です。

>ミクロさん、黒いカエルさん、同名で2件づつありましたが、同じ方と判断しまとめさせていただきました。

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