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▽レス始

「Fate/黒き刃を従えし者13(Fate+オリ)」

在処 (2007-02-17 00:05)
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ぶぃー……
という音を響かせて、掃除機がうなる。
時刻は8時より少し過ぎた所。
まだ士郎とリンは起きてこないだろう。
掃除が終ったら何をしようか……

「アーチャー」
「……ん?」

そんな事を考えていたら、部屋に戻ったはずのセイバーが戻ってきた。

「……何?」
「いえ、剣を返すのを忘れていました」
「……ありがとう」

鞘に収められたセルスクラーフェを受け取る。
どうやら、私と一緒にセイバーが回収してくれていたらしい。
……今の今まで、気付かないのはどうかと思うよ私?
鞘の掛け紐を肩に掛けた時、セイバーが何とも言えない視線を私に向けていた。

「……なに?」
「あ、いえその……」

その事を聞いてみると、セイバーは視線を彷徨わせ。

「その剣を消して置かないのかと思いまして」
「……?」
「宝具に限らず、英霊の武器は主の意思に応じて実体化させることが出来ます。
 ほら、ランサーはその剣を実体化させていたでしょう?
 ですから、そのまま肩に掛けたのが不思議でした」

……ふむ。
確かに英霊の武器なのだから、実体化させたままという訳には行かないのだろう。
何せ英霊はその名の通り霊。
霊体化した時、武器が実体のままでは持ち運ぶ事ができないのだから。
……でも。

「……どうやって?」
「その剣が貴女を担い手と認めているのなら、命じなさい。
 消すも現すも、貴女の思いのままになるはずです」
「……ん」

命じる。
セルスクラーフェに、消えろと。
その瞬間、肩にかかる重みがスッ、と消えた。

「……ん。出来た」
「どうやらその剣は、貴女の事を認めたようですね」
「……うん」

私はもう一度、剣を実体化させる。
ずっしりとした、確かな存在感を、そこに感じる事ができた。


Fate/黒き刃を従えし者


「アーチャー、聞いても良いでしょうか?」
「……何?」

私が掃除を終えるまでまって、セイバーが声をかけてきた。

「バーサーカーの事です。
 私が倒れた後、貴女はアレと一人で戦うことになった。
 ……失礼だとは思うのですが、私には貴女がアレに勝てるとは思えない……」
「……うん。
 私ではバーサーカーに勝てなかった。
 ……私は一度、彼を殺す事ができただけ」

悔しいけど、私があのまま戦っても、二人とも消滅するという運命しか見えない。
バーサーカーを追い返せたのは、あくまでも彼女の力だ。
今の私は……まだ力不足。

「バーサーカーを殺した!?
 いえ、一度……とは」
「……そういえば、朝その話は出てなかった。
 バーサーカーはヘラクレス」
「なっ!?」

セイバーの顔が、驚愕に彩られる。
恐らく、想像以上の化け物が参戦している事に驚いたのだろうけど。

「……彼がバーサーカーでよかった。
 セイバーやアーチャーで呼ばれてたら、手のつけようが無い」
「それは……そうかも知れませんね。
 ですが、それでも十分すぎる脅威です」

うん。
確かに今のバーサーカーでも手に負えない強さを持ってる。
でも、私達二人がかりなら倒せない事も無い。

「……宝具は、十二の命と、Bランク以下を無効化する力を持つ『神の試練』」
「それであの時……」
「……セイバーの宝具が使えれば、倒す事も不可能では無いけど……」
「っ!?」

私の呟いた一言に、セイバーの顔色が変わる。
何故、と。
その顔は物語る。

「私の真名を……知っているのですか?」
「……アーサー王」
「何故? やはり生前、私と関わり合いの有った騎士なのか?」

……もしかして、忘れてる?

「……セイバーは」
「はい」
「会った時に、私とモードレッドを間違えた。
 ……自分に似てる人物と彼――彼女かもしれないけど――を間違える人物は限られてる」
「……それも、そうですね」

セイバーのその時の顔を言葉で表すなら「やっちゃった!」だろう。
リンがよくする顔に似ている。
……感染(うつ)るのか、あのうっかり?

「……私は」
「はい?」
「……ここに呼ばれる前の事を、何も覚えていない。
 初めは宝具すら判らなかった。
 ……今尚、自分の名前をリンに伝えられないでいる」
「え……そ、そうなのですか!?」

そう。
私はまだ自分が誰なのか判らない。
リンに名前を伝える事すらできていない。
宝具も、風王結界以外思い出せない。
自分の力も判らない、情けない半端者。
それが今の私。

「……それでは、貴女は何の為に戦うのですか?
 聖杯を、望んでいる訳ではないんでしょう?」
「リンの為。
 ……私を受け入れてくれたリンの為に戦うと、私はそう誓ったから」

そう。
だから戦う。
騎士が戦うのに、それ以上の理由など必要あるものか。
私は忠誠を誓った主に勝利を齎す為に戦う。
それで良い。

「一つ、聞きたいのですが」
「……何?」
「仮定の話です。
 貴女は、もし自分の所為で国をつぶしてしまったら、如何します?」

……?
質問の意図がよく判らない。
そんな仮定に意味は無いと思う。
事実、私は王ではないんだから。

「……私は王じゃない」
「それでも、答えてくれませんか?」

……ふむ。
この質問に意味があるとは思えないけど。
『もし』そうそうするならば、か。
『もし』って言うのがそもそも気に入らないんだけど?

「……終った事を何時までも嘆いても仕方ない」
「でも、もしかしたら自分より上手に治める事が出来る人が居るかもしれない。
 国を潰した自分より、その人に治めてもらった方がいいと思いませんか?」

セイバーが言ってる事は仮定だらけ。
確実な補償は何処にもない。
ただ夢を追ってるだけ。
そしてそれは、決して手に掴む事はできない。

「……もしかしたら居たかもしれない。
 ……もしかしたら居ないかもしれない。
 私が失敗して国を潰したとしても、その人が失敗しない理由は無い。
 ……なら私は、自分が始めた事の結果を見届ける。
 それが……自分で持つべき責任。
 その上で、私はその後如何するべきかを考える」
「あ……」
「セイバー……アーサー王は。
 ……自分のしてきた事を、無かった事にしたいの?」

それは許されない。
例えどんな茨の道でも、何かを犠牲にして歩いてきたなら。
私達は歩き続けないといけない。
滅びに向かうしかないとしても、滅びを見届け、滅びを受け入れなければならない。
それが自分で進んだ先にあるものならば、決して逃げてはならない。

「……私は」
「貴女に付いた騎士を、国民を。
 貴女が殺した敵を。
 貴女が死なせた味方を。
 その全てを否定するの?」
「っ!?」
「……セイバーが何を望もうと私は知らない。
 でも、覚えておいて。
 逃げてもその先に救いは無いよ」

セイバーが俯いて黙り込む。
私は……そっと部屋を出る。
何処に行くか明確な目的があるわけではなく、一緒に居られる雰囲気じゃないから。
部屋を出ようとする私に、セイバーが呟く。

「……私は、間違っているのでしょうか?」
「……知らない。
 ……私は私の考えを言っただけ。
 それを……貴女に押し付ける気は無い」
「そうですか……貴女は、残酷ですね」

そういって、寂しそうに笑う。
そうかもしれない。
でも、私が人に道を説く事なんてできはしない。
私が、一番私を判っていないのだから。


居間から出て、何処と無く彷徨い歩く。
と、言ってもする事が無く。
結局縁側に出て日に当たる事にした。
……こうなると、お茶でも持って来ればよかったと思うが、今更戻るのも気が引ける。
セイバーはまだ迷ってるんだろうか?
正直に言えば。
セイバーがそう思う事も仕方のない事だと思う。
この身体を見れば、セイバーがどの位の年齢の時に王になったかわかる。
それ以来、感情を殺して王足ろうとして来たのだろう。
……でも。
結局彼女の国は滅んでしまった。
ならば、もし。
そう。
もしかしたら。
そんな希望にすがってしまうのは、悪い事だろうか?
……そうだとは思わない。
ただ不運なのは。
それを実行できかねない力を彼女が持っている事。
……ここの聖杯が、セイバーの願いを叶えるに足る物かは知らない。
でも、もし叶えたとしたら……それこそ悲劇だろう。
セイバーは、自分の国も、自分の部下も、自分の国民も。
その全てを消滅させる。
そして何より、国の為に自らを殺した少女を、王としてすら無い者としてしまう。
……それはどれ程の悲劇か。
不滅など無い。
それは彼女だって知ってるはず。
……私は、だから。
彼女は聖杯を手に入れてはならないと思う。
もしこの戦いで、セイバーが残るのなら……
そして、その願いを叶えるというのなら、私は。

――全身全霊を持って、セイバーを倒す――

それが、私に出来る唯一の事だろう。
……そうならない事を、心から願う。


後書き
本当に不調……全然話が進まない(^^;

<<九頭竜さん
カップリングですか……
アーチャーには恋愛的なカプは無いですけど、主従としてある人物と関わります。
士郎は……セイバーとは主従以上にはならない予定です。
凛と桜でゆれてるんですよね……

まぁ、正直言って変わる可能性のほうが高いのであまり気にしないでください。

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