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▽レス始

「Fate/黒き刃を従えし者12(Fate+オリ)」

在処 (2007-02-16 00:43)
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目が覚めた。
眠っていたのはどのくらいだろう?
それほど長くは無いと思う。
時刻は六時を示していた。
三十分か一時間か……
恐らくはその程度の時間。
それでも、私の体は十分な休養を得たらしい。
身体が軽く感じる。
ともすれば、召喚された時よりも調子が良いのではないか?
……まぁ、それは良い。

「…………ん」

さて、ここは何処なのか?
士郎の家だって事は判ってるけど。
どの部屋なのかはわからない。
私がここに泊まったという事は、リンも泊まってるんだろうけど。
少なくともこの部屋にはいない。
……歩き回るのも面倒だし。

「…………」

私はベッドに手を付いて、目を閉じる。
浮かび上がるのはベッドの設計図。
更に広げる。
部屋の見取り図、離れの見取り図、屋敷全体の見取り図、と。
リンはこの部屋の隣に。
セイバーは本館の二階。
士郎は……もう料理を始めてるのか。
少なくとも一度死に掛けて、眠ったのは早くても三時過ぎだろう。
それなのにもう起きて大丈夫なんだろうか?
少し、心配。
私の方はもうどうも無いし、少し様子を見に行こう。


Fate/黒き刃を従えし者


士郎は台所に立って、料理をしている。
私の事にはまだ気づいていないみたい。

「……おはよ」
「ん? あぁ、おはようアーチャー。
 もう大丈夫なのか?」
「……ん」

それを聞きたいのは私のほう。
正直、大丈夫な訳が無いと思っているけど。

「……手伝う」

私は士郎の横に立ち、何を作っているのか確認する。
ワカメと豆腐の味噌汁、ポテトサラダ……つくねの鍋?

「……士郎?」
「ん? なんだ、判らない事でもあったか?」
「……朝から鍋?」
「へ? あ!」

……良く考えないでメニューを決めたらしい。
朝から鍋物は無いだろう。

「……まだ火にかけてないから、夜にまわそう」
「あぁ、そうだな。すまん」

それはそれで良いとして、何か後一品欲しいところだ。
何にしようか、と冷蔵庫を見てみる。
ふむ。

「……冬瓜が有るから、風呂吹きをつけようか?」
「そうだな。
 じゃあ、そっち頼む」
「……うん」

そこからは特に会話も無く、淡々と料理が始まる。
……不思議な物で、互いに何を望んでいるのか判るようで声一つ掛けずとも望んだ物を渡し、渡される。
なので、予想より早く仕上がりそうだった。
そんな中。

「ごめんな」
「……何?」

突然謝られた。
正直言って訳判らないんだけど。

「アーチャーとセイバーだけに怪我させて、俺はのうのうと生きてる。
 こんな事、許されるはず無いのに……」
「……何で?」

説明されてもよく判らない。
生きてるのがそんなに悪いんだろうか?
私としては、思惑通りに二人が無傷で逃げ延びてくれたのを喜びこそしても、謝られる様な心当りは無い。
正直、そんな事で謝られても困る。

「だって、俺が力も無いくせに聖杯戦争に参加した所為で、二人に怪我させたんだから……
 力の無い俺が、己の力量不足の所為で傷つくのは当然だけど、それで二人が傷つくのは間違ってる」
「……違う。
 戦う力が無いのは士郎の所為じゃない。
 サーヴァントの前では士郎もリンも同じ。
 だから私達はマスターを護る為に戦う」

そう。
マスターはサーヴァントに勝てない。
……中には例外もあるかも知れないから油断は出来ないけど。
少なくとも正当な魔術師であるリンと、半人前以下のへっぽこな士郎は無理。
……むしろ、それが当然。
魔術師としての力量は、戦闘においては意味を成さない。
だからこそサーヴァントの相手はサーヴァントが勤める。
そして魔術師に必要なのは。

「……士郎」
「だからって、二人が傷ついていい事になん「士郎」な、なんだ?」
「……私達が傷ついたのは私のミス。
 でも、それを気遣ってくれるのなら……自分が死なないように気をつけて」
「なんでさ?」
「……そうすれば、私達は戦う事だけに集中できる。
 忘れないで。
 私達の方が士郎達より生き残りやすい」

それは単純な力の差でもあり、絶対的な経験の差でもある。
故にマスターはサーヴァントの戦いに手を出すべきではなく。
自らのみを守る事のみに全力を尽くすべき。

「あぁ。それは判る。
 どう考えてもセイバーより俺の方が短命だ」
「……それが判るなら、自分から戦おうとしないで。
 マスターが生きていれば、如何にかなる事だってある。
 その左手の令呪は何の為?
 本当に危なくなったら、それを使って助けてくれればいい」

あ、と。
士郎の視線が自らの左手の甲に落ちる。
それは決して、サーヴァントを制するためだけのものではない。
確かな信頼を築けるなら、サーヴァントを助ける事だってできるのだから。

「……一人で抱えないで。
 間違えば正してくれる人がいる。
 自分にできる事が判らずに悩むくらいなら……周りに相談してみるといいよ。
 セイバーとかリンなら、きっといい考えを聞かせてくれると思う。
 ……私は、頼りないかも知れないけど」
「……いや、そんな事ないぞ。
 ごめん、確かに身を挺して助けてくれた人にあんな事言うのは失礼だった。
 助けてくれて、ありがとう」
「……うん」

そう。
謝られるくらいなら。
こうやって、感謝される方が気分がいい。
私がした事は無駄じゃなかったんだって思えるから。
さぁ、もう直ぐリンも起きてくる。
早く料理を仕上げないと。

「……同盟」
「あぁ」
「……よろしくね」
「おぅ!」

大丈夫。
不安は有るけど、無茶はしないと思う。
……思いたい。


「おあよぉ……」

……リン。
士郎が固まってるよ?

「なぁ、如何したんだあれ?」
「……気にしないで。
 顔洗えば……治るから」

幽鬼の様な足取りで現れたリンを見た士郎は、小声で私に尋ねる。
本当、リンは朝が弱い。
初めの日だけは普通に起きていたのに、何でだろう?
まぁ、体質だというならしょうがないけど。

「……セイバー起こしてくる」
「あぁ、頼む」

私は階段をあがり、セイバーがいる部屋に入る。

「……セイバー、大丈夫?」
「アーチャー……?
 はい。身体の方は粗方治りました。
 リンのお陰です。感謝を」
「……それはリンに言って」
「そうですね」

私は何もしていない。
むしろ、私の油断の所為でセイバーは怪我を負ったのだから。
責められる要素はあっても、感謝される要素は無い。

「それでも、貴女にも感謝を」
「……どうして?」
「私が倒れた後、バーサーカーを退かせたのは貴女でしょう?
 貴女が居なければ、私はあの場で消えていた」

……だから。
それは元々私の落ち度なのに。
それに……あれは私の力じゃない。

「……でも、あれは私の油断が原因」
「いいえ。それについては私も同罪です。
 河原に近づいて逃げ切ったと思ってしまったのですから。
 恐らく、バーサーカーが私に狙いを定めていれば、投げられていたのは私でした」

何故セイバーは、そういう方向へ話を持っていくのだろう?
私から見れば、あれは私の落ち度以外のなんでもないのだけど。
でも、彼女がそう思っているのであれば。

「……ん。
 なら、感謝されておく」
「えぇ。そうしてください」

その意を汲まないのは失礼だろう。
結果がどうであれ、彼女から見てそうなったのなら、そうなのだから。

「……セイバー、朝御飯」
「行きます」

ここに来た用件を思い出し、切り出す。
……,何秒の世界だった。


ぱくぱくこくこく。
ぱくぱくこくこく。
セイバーの食事は面白い。
昨日初めて使ったとは思えない箸使いでおかずをさらい、ご飯をかきこみ、味噌汁をすする。
それが決して下品ではないのは、セイバーの身のこなしゆえか?
……物凄く無駄な事に能力を発揮してる気がする。

「美味いかセイバー?」
「はい。特にこの、野菜に味噌を塗って食べる物が気に入りました」
「冬瓜の風呂吹きだな」
「素朴な味なのにホクホクとした触感と蕩ける様な舌触りがたまりませんね。
 どうしてシロウの料理はこれほどまでに美味しいのか……」

……うん。
上手に炊き上がってる。
冬瓜の質もよかったから、尚の事美味しく感じる。

「あー……感動してるところ悪いが、それ作ったのはアーチャーだ」
「なんと……アーチャーも料理が作れたのですか……」
「……ただ炊き上げただけ」

そんな会話に参加せず、一人黙々と食べている人が一名。
……あれ、寝てるんじゃない?
時々舟こいでるけど……

「……リン?」
「ぇ? な、何、アーチャー?」
「……疲れてるなら、寝た方がいい」

疲れが取れないのも無理は無いだろう。
普通に考えて、睡眠時間が三時間程度なのは問題なんだ。
私達は本来、睡眠を必要としないから良いにしても、士郎とリンはそうは行かない。
食事が終ったら無理やりでも寝かしつけた方が良い。

「……そうね。
 悪いけど、食事が終ったら寝るわ」
「……士郎も寝た方が良い」
「あぁ、そうする。
 正直一寸眠いしな」

……私は。
食事が終ったら掃除でもしようか?
そんな感じで、聖杯戦争三日目が過ぎて行く。


後書き
どうも調子が出ませんでした。
無駄に時間かかった割には出来が悪い……

レス返し
十話から

<<ファルスさん
でました。
そして早くも退場しました(^^;

<<ハンプトンさん
座右の銘は『日々更新』……嘘ですが。
出来るだけ長くこのペースを保てたらなぁとおも居ます。

アーチャーはどうやら和食の方が得意みたいです。
……単に私の洋食に関する知識が少ないとも言います。

<<renさん
ふふふふふ……やはり予測は無理でしたかw
驚いていただけたようで恐縮です。
しかし残念。
ゲスト出演に近いので、もっきゅもっきゅは再現できないかと。
……と、いうか。
絵心無い人に絵を描けって……

<<樹海さん
黒セイバーと衛宮士郎の混合……うーん。
外れてはいませんが足りないというか。

はい。バーサーカーは理性を残してる事にしました。
それ故に一回死にましたが。
アインツベルン……アンリマユといい切継の事といい、名にやっても裏目に出てますね。
哀れ。

十一話から
<<renさん
謎は出てくるたびに解決への糸口になるわけですが。
何が謎かも判らなければ解決しようも無いんですから。
……と、回りくどい演出をした言い訳をしてみる。

私の話のペースでライダーまで行くわけ無いじゃないですか(威張るな
慎二のことは何も考えてない訳ですが……まぁ、慎二だし……

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