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▽レス始

「Fate/黒き刃を従えし者11(Fate+オリ)」

在処 (2007-02-15 00:14/2007-02-15 00:43)
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刃が翻り、岩盤が爆ぜる。
打ち合う衝撃は大地を砕き、空を裂く。
豪腕強力疾風怒濤!
天よ叫べ地を割れよと。
バーサーカーと私の体を使う騎士王の闘いは続く。
否。
それは闘いですら無い。

「ふっ!」
「――――――!!!」

雅にして力強く、豪快にして優雅。
相反する印象を、その剣に宿し振るわれる技は、正に王道。
力強いだけのバーサーカーの剣を完全に殺し、その身に傷を増やす。
しかしどれだけ斬ろうと殺さない。
そう。
バーサーカーは今、『生かされている』
その戦い方を私に見せる為だけの生贄。
バーサーカーはそれが判っていようと如何する事もできず。
ただ騎士王の思うがままに踊らさせられている。

「――――――!!!」

バーサーカーが吼える。
その力は既に、私が如何こう出来るレベルを遥かにすぎているしかし。

「はっ!」

それすらも今の騎士王には及ばない。
天性の才能で持って正道の剣術を学び、それを戦の中で磨き上げて行った天才の剣。
ヘラクレスと同じく、圧倒的な力を持ちながらそれを活かす術を知り尽くした者の剣。
故に。
ただ力だけの存在となった今のヘラクレスが敵う筈も無い。
騎士王に傷一つ与えられず、その身を削り取られ続ける。
振るう岩盤は騎士王に触れる事すらかなわず、虚しく空を裂き、地を砕く。
正に――

「はぁっ!」

――圧倒的。
ほんの一分程度のその戦闘は。
河原を荒地にした以上の意味は無い。
少なくとも二人にとっては。
バーサーカーにその程度の傷をつけたところで意味は無く。
騎士王にいたっては傷一つ負っていない。
その気になればこの場で殺しつくすことのできるだろう騎士王は。
結局一度も殺さぬまま。

「戻りなさいバーサーカー!」

戦闘は終了した。

「不利を悟って尻尾を巻くのは負け犬ではなかったか?」

騎士王が見下したような顔で嗤う。

「ふん。バーサーカーは負けてないもん。
 ただこんな格好だと風引いちゃうから、今日は帰ってあげる」

びしょ濡れの格好で、頬を軽く膨らませすねたようにイリヤスフィールは反論する。

「じゃあね、セイバーとアーチャー。
 次ぎ会った時は絶対殺すから」

バーサーカーに抱き上げられて夜の闇に消えていく。
それを追う事も無く。

「っ!」

騎士王は膝を突く。
何処か怪我を負った訳ではない。
それならば感覚を共有してる私が気付く。
これは……そう。
時間切れだ。
元々私の中に在った彼女の残滓は。
それほど長い時間持つ程在ったわけではない。
戦闘に耐えられるほど余裕があった訳じゃない。
それでも彼女は出てきた。
ただ、私に教える為だけに。

「聞こえているな?」

――聞こえてる。

「私はもう、消える。
 闘い方は、この身体の使い方は覚えたな?」

――うん。
――次はもっと上手くやれる。

「ならばいい。
 去らば。我が□よ」

意識が消える。
私の中に彼女が溶け込んでくる。
役目は終えたのだと、その魂が伝える。
そして……
私は闇に意識を委ねた。


Fate/黒き刃を従えし者。


――彼は英雄だった――

英雄になりたいと望んだ訳ではない。
彼が望んだ事はただ一つ。
愛する人の幸せ。
彼はその為に、夢も、未来も、自らの命さえも捨てて戦った。

――彼は英雄になった――

なぜなら彼の愛する人は。
その身を暗き呪いに侵されていたから。
愛する人を救うため。
愛する人に幸せになってもらう為。

――彼は結果的に英雄たる道を選んだ――

繰り返そう。
彼は英雄になりたかった訳ではない。
ただ、愛する人に幸せになってほしかっただけだ。
結果。
世界全ての人を殺す呪いは彼の手によって消滅した。

――彼は英雄になった――

望む望まないに関わらず。
彼は英雄になる。
なぜなら世界は。
英雄たる存在を見逃さないのだから。
その身に取り込み、力となす為に。

……しかし。

彼にはそんな力は残されていなかった。
愛する人を救った彼に残されたのは何も無かった。
否。
他の全てと引き換えに、己を失った。
死ならば、世界は彼を英雄と祭り上げ、英霊と成しただろう。
しかし。
決定的なまでに、その魂が死に掛けていた。
魂を司る物は世界ではない。
仮初の身体を与え、そこに魂の欠片を入れる事は、世界にはできる。
魂の欠片は大源を吸い、魂その物と同じ質量にまで膨れ上がる。
それが、英霊の身体。
守護者として、サーヴァントとして召喚される者である。
死すれば本体に記憶と魂の欠片を返還し、消滅する者である。
世界は魂を作り出す事も癒す事もできない。
故にそのような手順を取り、英霊が消滅しない為に手を尽くす。
その為の、座。
魂の本体を収める為の座敷牢。
しかし。
座に納めるべきその魂は傷つき、消滅しかけている。
故に。
世界は見逃した。
その魂を修復可能とする反則の意思を。
その意思が、如何なる手段を使おうとしているかも知らずに。


そんな、夢を見た。


ボーっとする。
目を開けても現実味が無く、ただ天井を見上げる。
ここは何処だろう?
私は何をしていた?
さまざまな疑問が頭の中を駆け巡り、答えがでない。
すっと、小さな音を立てて襖が開けられる。

「……リン?」
「あぁ、起きたのね。
 ……よかった」

……ぁ。
そうだ。
私はバーサーカーと戦って……
彼女が出てきたんだ。
はっきり判る。
アレは私の一部。
私の基。
この身体の本来の持ち主。

「心配したわ。
 セイバーに背負われて戻ってきた時なんかもう、心臓が止まるかと思うくらい」
「……ごめん。
 セイバーは?」

思い出す。
致命傷ではないとは言え、彼女は片腕を失うほどの怪我をしている。
大丈夫だったのだろうか?

「大丈夫。
 私の宝石飲ませたから殆どの傷は塞がってるわ」
「……そう」

よかった。
私のミスで彼女に怪我を負わせてしまったのだから。
それに……
傷ついて欲しくない。
彼女は私の□□と同じ人物なのだから。

……□□?

また、変な物が出てきた。
考えないようにして置く。
結局また。
私は何時もと同じ疑問を持つくらいな物だから。

「……よかった」
「それで、アーチャーが寝てる間に勝手に士郎と同盟結んじゃったけど、構わないわよね?」
「……リンが、それでいいのなら」

私に反対する理由は無い。
士郎の事も嫌いではないのだし。
それに、セイバーとは出来れば戦いたくは無い。
……やれと言われればやるが、積極的に戦う気は起きない。
ならば。
この提案は私にとっても都合がいい。

「アーチャーが倒れた原因は魔力不足みたいだったけど、一体何したの?」
「……バーサーカーと闘った」
「いや、それは判るけど」

……他に言いようが無い。
『彼女』の事をいう気は起きないし。
『彼女』はもういない。
あてにされても困る。

「って、一寸待って」
「……何?」
「セイバーが倒れてたって事は……貴女一人で闘ったの?
 アレと?」
「……うん」

リンは信じられないと言った顔を向ける。
失礼な……と、思ったけど。
実際アレと対等に戦うなんて私には無理だ。
『今の』私なら何とか張り合うくらいは出来るかもしれないけど。

「……そうだ」

言わなきゃいけない事があった。
セイバーも知らない事。
私だけが聞いた、脅威的な事実。

「何?
 まだ何か有ったの?」
「……バーサーカーの真名はヘラクレス。
 宝具は……己が超えた神の試練。
 Bランク以下の攻撃を無効化し、12の命を持つその肉体」
「……嘘?
 そんなのにどうやって勝てって言うのよ……」

確かに脅威だけど。
実は絶望には遠い。
私とセイバーが完全な状態で戦う事が出来れば、倒す事は出来る……かも。
どれ程の犠牲が出るかは判らないけど。
なぜなら彼は、技を使えないのだから。

「……まぁ良いわ。
 今は寝なさい。
 明日からまた働いてもらうから」
「……ん」

私の意識は再び暗闇に落ちる。
今度は、一体どんな物を見るのだろう?


おまけ

「うぅぅ……頭いたぁい」
「イリヤさま、お薬です」

イリヤはしっかり風邪を引いていた。
セラが薬を飲まそうとする。

「苦いからいやぁ」
「我儘をおっしゃらないでください」
「だって……」
「それでは何時までたっても風邪が治りませんよ。
 それでは困るでしょう?」

イリヤも、それは判ってる。
何時までも寝込んでいる場合ではない。
聖杯戦争は始まった。
何時敵が来るとも知れないのだから。
ばたん、と。
勢いよく部屋の扉が開かれる。

「リズ、もう少し静に扉は開けなさいと……あら?
 それは?」
「……葱。
 お尻に刺せば熱が下がるって」

リズは手に持った長葱を掲げながら、不吉な事をのたまう。

「い、いやぁっ!!!」
「や、やめなさいリーゼリット!
 その手のブツを下ろしなさい!!」

イリヤが布団に包まったまま後退りし、セラがそれを護るように前に立つ。
二人とも必死だった。
そんな物を突き立てられたら、もうお嫁さんにいけない。
そんな事をさせたら、主を人前に出せない。
必死でセラはリズを抑える。

「……何で?
 風邪がよくなるのに」
「迷信ですデマです出鱈目です!
 いいからそれをおろしなさい!!!」
「いや」

アインツベルン城戦役はまだ始まったばかり。
とりあえず。

「それもこれも、全部セイバーとアーチャーの所為なんだからぁっ!
 次ぎ会ったら、覚えときなさいよぉ!
 くっちゅん!」


後書き。
駄目。
頭痛い。
と、言うわけで寝ます。
レス返しは次回一緒にやります。

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