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▽レス始

「Fate/黒き刃を従えし者10(Fate+オリ)」

在処 (2007-02-14 00:07)
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橋を落とし、何とかバーサーカーを振り払った私達は。
やはり油断してしまったのだろう。
川辺に到達しようとした時……私は。

「……ぇ!?」

鈍い色の豪腕に足をつかまれ、川縁へと投げ飛ばされた。

「アーチャー!?
 っ!」

全身を土嚢に強かに叩き付け、崩れた土嚢に埋もれながら私はその声を聞く。

「よくも私を河に落としてくれたわね!?
 シロウとリンも見失っちゃうし、もう許さない!
 殺しちゃっていいよ、バーサーカー!!」

叩き付けられた場所が土嚢だった事が幸いし、直ぐ動くに支障はない。
しかし私が叩き付けられ、起き上がるまでの時間は。
致命的なまでに遅すぎた。

「っあああぁぁぁ!?」

セイバーが血飛沫をあげる。
袈裟に斬られた左肩。
左の腕は宙に舞う。
……しかし其れよりも問題は。
右の胸から流れ出る血。
例え斬りおとされてもサーヴァントにとっては致命的な傷で無ければそれほど問題ない。
腕だろうと足だろうと、魔力があれば再構成することが出来るからだ。
しかしあの傷は違う。

「……ランサーの槍を受けてたなんて」

アレは傷の治りを阻害する呪い。
例えサーヴァントであろうと、十分な魔力無しにはおいそれと癒す事はできない。
加えて。
セイバーは士郎から魔力の供給を受けられていない。
ならば。
恐らくセイバーは。

「っ!」

やはり最早意識を保っては居ない。
それでも立ち続けるのは騎士としての誇りと、戦士としての本能だろう。
倒れたら死ぬと、彼女は知っているのだ。
……死なせたくない。
私は、誰かが目の前で死ぬのは見たくない。

「……はぁっ!」

私は全速で持ってセイバーとバーサーカーの間に割って入り、
セイバーを――多少乱暴な手段ではあるが――蹴り飛ばして戦闘域から離脱させる。
その瞬間、驚くべき事にバーサーカーが一瞬逡巡した。
セイバーを追い止めを刺すか、目標を私に切り替えるか。
理性を失ったはずのバーサーカーは。
しかし確かな理性で持って一瞬の隙を作ってしまったのだ。
……それが今回は仇となる。
しっかりと理性が残っていれば、その瞬間とて隙にはなるまい。
まったく理性が無ければ、そもそも逡巡事態が無い。
それは。
このバーサーカーが強力であるが故の隙。
私は、その一瞬に。
己が全力を込めて。
使用しうる最大の技を叩き込んだ。
即ち!

――是、射殺す百頭(ナインライブズ・ブレイドワークス)――

「!!!!!」

一瞬の内に叩き込まれた九つの斬撃が。
その斬撃によって作り出された空間の断層が。
バーサーカーの不滅を約束された肉体を切り刻む!
それこそはギリシャ最大の英雄の生み出せし神域の業!
バーサーカーの目が驚愕に見開かれる。
しかしそれは、決して九つの斬撃によってバラバラにされた己が体に向けられた物ではなく。
何故、と。
何故それをお前が使えるのか、と。
その瞳は語っていた。


Fate/黒き刃を従えし者


「はぁ、はぁ、はぁ……」

既に私は満身創痍と言ってもいい。
はっきり言って、今の勝利は奇跡でしかない。
そして、私一人でも勝てはしなかった。
それはセイバーが居たからであり。
皮肉にも、バーサーカーの素の理性が強すぎた事にも因る。

「……ふぅ」

私は域を整え、信じられない物を見たと言う感じのイリヤスフィールに向き合う。
セイバーは、少なくとも限界が不可能なほどに傷ついては居ない。
少なくとも一日も経てば、戦闘が再び可能な程には回復するだろう。

「……驚いたわ。
 まさか、たった一回とはいえ、私のバーサーカーを殺すなんてね……」

――驚愕に眼を見開く!
その言葉の意味を理解してしまった、私の心眼(真)スキルを心底恨みたい。
つまりその意味は。

「あら、気付いたみたいね。
 そうよ……私のサーヴァントの真名はヘラクレス。
 その宝具は十二の試練を乗り越えたその肉体その物……
 つまり」

イリヤスフィールは心底楽しげに、私に先を促す。

「……十二回殺さないと、本当の死は訪れない」
「正解。
 さぁ、起きなさいバーサーカー!」

切り刻まれた四肢が、勝ち割られた頭部が。
それがまるで無かった事の様につながり、塞がって行く。
そして恐らく……空間ごと斬り裂く『是、射殺す百頭』をもってしてももう殺すことは出来ない。
何せその試練は、もう乗り越えてしまったのだから。
そして……
その体が完全に治ってしまったその時。

「――――――――っ!!!!!!!!」

バーサーカーが吼える。
鼓膜を伝わる振動ではなく、マナを伝わる衝撃と化した雄叫びが響き渡る。
その瞳は怒りに燃えていた。
私の乾坤一擲の一撃は、よりによって最悪の魔物を目覚めさせてしまったらしい。
己が技を不完全ながら模倣された彼は、さっきまでとは違う。
己が妻子を殺し、その罪を抗う為十二の試練を乗り越えた彼にとって、子供殺しは禁忌に当たる。
恐らく、バーサーカーに理性が残っている事を考えれば。
見た目は小娘に過ぎない私やセイバーに対し、無意識のうちにそれが枷になっていたと予想できる。
が。
もう、それは無いだろう。
なぜなら。

――彼は私を確固たる『敵』として認識したのだから――

バーサーカーが雄叫びを止め、その身を僅かに落とす。
瞬間。
爆弾が破裂したかのような轟音を響かせ彼は――
唯の一足で距離をつめ、黒い岩塊の剣を振り下ろす!
魔力放出と、風王結界による乱流を纏わせ、剣を打ち合わせる!
しかしそれでも、正面から打ち合えるほどの力は私には無い。
そんな力の衝突に、悲鳴一つ上げないこの剣の骨子の丈夫さに助けられ、何とか攻撃を逸らす。
並みの剣ではこの時点で私の死は決まっている。
これは、本当にランサーに頭が上がらなくなりそうだ。

「――――――っ!!!!」

バーサーカーが吼える。
その斬撃が、速度威力共に更に引き上げられる!
一合二合と打ち合い――しかし引く等と言う選択肢はある筈も無い。
なぜなら私の剣は護る為の剣。
侵略する為でなく、後ろに護るべき者がいる時こそ真価を発揮する。
そして、今の私には護るべき傷付いた戦友がいる。
ならば、何故ここで引く事などできようか!?

「……あああぁぁっ!」
「――――――――!!!」

打ち合う打ち合う打ち合う打ち合う!!
最早数えるのも億劫なほどの数を打ち合い。
しかしその結果は対照的で。
致命傷こそ貰っていない物の、風王結界を全て攻撃にまわした所為で斧剣が掠めるだけで裂傷を引き起こす私に対し。
バーサーカーは無傷。
剣が体に通らないなんて生温い物じゃない。
反撃する暇すらないのだ。
バーサーカーの剣戟は、唯叩き付けるだけの技とも呼べない物。
しかしその速度が、力が。
私の技を悉く凌駕し、私を追い詰めてくる。
……この上で、『射殺す百頭』等と言う業を持つのだから、その異常性は類を見ない。
この場での僥倖は、その技を扱う知能を失っている事だろう。
だれが考えたのか知らないけど、これは明らかに裏目に出てる。
もしも技を扱えるクラスで呼ばれていたのなら、彼はまさしく最強の名を得ていただろうに。
その技は、狂化による身体能力の向上すら霞むほどの力を見せ付けるだろう。
何せその技は、技を持ってこの力に抗おうとする私よりも、更に上の物の筈なのだから。

「粘るわね、アーチャー」

イリヤスフィールの声が聞こえる。
絶え間なく続く剣戟の音の中、その声は何故かすっと私の耳に入ってくる。
視界に微かに。
イリヤスフィールの顔が映る。
それは楽しそうに……残酷に純粋に。
ただ笑っている。
そして。
致命的な一言を彼女は言い放った。

「良いわ……狂いなさい、バーサーカー!」

なっ!?

「―――――――っ!!!!!!」

この豪腕、この速度を持って尚、まだ余力を残していたなんて。
狂化したバーサーカーは、正に魔神だった。
ゼウスの血を引く者であり、高い神性を持つ彼はしかし。
狂気という名の魔をその身に宿し今、全てを打ち砕く大嵐と化す!
多少の技など、その前には意味をなさない。
私に出来る事はただ、全力を傾けその攻撃を弾く。
反撃の機会など訪れる筈も無い。
たった五合打ち合ったとき。
私は剣を弾かれた。

――死んだ。
―――もうどうしようもない。
――――仕方ないさよく頑張った。
―――――こんな相手に勝つ事なんて無理。

「……リン、ごめん」

リン?
私は……
今何を考えた?
死んだ?
まだ生きてる。
どうしようもない?
ふざけるな。
頑張った?
寝言は寝て言え。
勝つ事なんて無理?
冗談じゃない。
リンに約束した。
聖杯戦争に勝たせると。
そして誓った。

―――この身こそが最強なのだと!

ならば。
私がここで負ける訳にはいかないだろう!

「っアアアアァァァァッ!!!」
「――――――!!!!!?」

止めと放つその剣を、私は拳で真っ向から打ち払う!

「っ!? まだそんな余力を残してたの!?」
「ふざけるな。
 私はまだ立ってる。
 私はまだ生きてる。
 なら、何で倒れる事ができる!?
 私は倒れない。
 なぜなら!」

――――この身こそが最強だ!!!

その瞬間、私の意識が内へと引きずり込まれた。
そしてよく効きなれた声で。

「よく吼えた。
 ならばこの身体の使い方、私が教授するとしよう」

そう呟く。
ただ棒立ちとなった私の体に、今度こそと必殺の一刀が迫る。
セルスクラーフェは後方、5m程の所に突き立っている。
取りに行く時間はない。
―――しかし。
私は。
私の体を操る誰かは。
すっとその右腕を上げ。

―――轟音が響き渡る。
―――土煙が辺りを包む。

「あはっ! やったねバーサーカー」

無邪気な声が聞こえる。
しかしその土煙が晴れた後には。

「―――え?」

信じられない、と。
そのたった一音で表された。
なぜなら。

――掲げられた右腕には漆黒の聖剣――

ドレス姿だった身体は、その上から漆黒の甲冑を纏い。
傷だらけだったはずの身体にその痕は無く、代わり濃い紫色の蒸気が……いや。
抑える事すらできない程の高濃度の魔力が覆う。
微かに赤みが掛かっていた筈の朱金の髪は。
しかし今は色素の薄い金の髪となり。
漆黒だったはずのその瞳は。
髪と同じ黄金の色を湛える。

――顕現れたるは漆黒の王――

迷わず躊躇わず最善をなす殺戮者。
九を救うために一を切り捨てる非情の王。
罪を犯せば誰であろうと処罰し、敵対する者は如何なる存在とて駆逐する無情の存在。
人々の希望や憧れの裏にある、切り捨てられた者に呪われた暗黒面。

――ここに、騎士王(アーサー王)推参――


後書き
と、言うわけで。
実は終って無かったと言う落ちです。
そして黒セイバー降臨。
誰か予想した人いました?
『最強の敵』編は後一寸続きます。

レス返し
<<renさん
豪快に落としました。
暫く通行は不便かもしれません(^^;
キャスターについては考え中。
もしかしたら串刺しにならないかも?

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