インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

!警告!壊れキャラ有り

「男三人麻帆良ライフ 第十二話(GS+ネギま!)」

宮本 (2007-02-16 16:12)
BACK< >NEXT


「ふー、凄いね。これが露天風呂って言うんだってさ。」

露天風呂に入っているネギは気持ちよさ気に息を吐き、隣にいるカモに話しかける。
ちなみに横島は湯上りしずな先生に逃げられたショックから立ち直ることはなく、ならば覗きををするか?などと不穏な事をつぶやき、直後に自分はロリコンじゃないとつぶやくというループにおちいっていた。

「気持ちいーね。」

「おうよ。これで桜咲刹那の件が無ければなあ。あいついつも木刀みたいのもってるし。魔法使いの兄貴じゃ呪文唱える前に負けちまうよ。」

「う〜ん、魔法使いに剣士は天敵だよ。」

「師匠はどう思います?俺っちは・・・って師匠!!」

カモは横島の意見も聞こうと声をかけるが横島は固まっていて二人の会話を聞いている様子は無い。
つーっと両鼻から流れるのは二筋の鼻血・・・。
そして力なく『オレ、ロリ・・・ナイ』とつぶやいている。

「カ、カモ君・・・。」

ネギは岩陰に隠れてカモに声をかける。
その視線の先には先程まで話題に上っていた桜咲刹那・・・。
混浴を知らず慌てるネギにカモは混浴の事を教えてやる。
かけ湯をしている刹那の透き通るような白い肌にネギは思わず見とれた。

「パートナー無しの接近戦じゃ勝ち目はねえ!ここはいっちょ横島師匠にって・・・」

カモとネギはバッと横島を見るが横島の鼻血は湯船をすでに赤く染めており、致死量ではないかと心配になってしまう。

「・・・なかなかの対応。子供でも魔法使いという事か。しかしまだこれからだ。」

その時聞こえてきた刹那のつぶやき。
それはネギの疑念を煽るのに非常に効果的で、ネギは思わず携帯可能な小型の杖を握り締める。

――― ガシャンッ!!
その音がして露天風呂から光が奪われてからは早かった。
魔法使いは剣士・戦士タイプに弱い。それを裏付けるような十数秒の時間。

「誰だっ!?」

刹那の叫びにネギは音を立てるのも気にせず逃げようとする。
だが、振るわれた野太刀はそれを許さない。
ネギが隠れている岩を切り裂き、切り裂かれた岩が飛ぶ。
岩が飛んだ先にいた横島がやっと我に返って岩を避け、何が起きているのかと貧血気味の頭で考え始めた。

だがその間にも事態は進む。ネギは小声で始動キーと呪文を唱え始め、刹那に武装解除の呪文を放った。
刹那の持っている野太刀は弾き飛ばされ、飛ぶ。だが刹那はひるまず前に出る。
横島はなぜ二人が争っているのかと慌てて二人の前に割り込む。ネギは子供で魔法使い。攻撃されたらダメージは大きい、だが自分なら素手の相手の攻撃くらいある程度は耐えられると思い飛び出したのだ。
だがそれは甘い考えだった。

「はっ!う!?」

「・・・仲間か?二人いたとはな。二人とも動くな。動くと捻りつぶすぞ」

刹那の両手は敵の喉と陰嚢。二ヶ所の急所を握っており、手に力を入れるだけで大ダメージを与えられるだろう。
だが次の瞬間刹那は目を丸くした。目の前にいる二人は自分が知っている二人で、二人ともひどく怯えた表情をしていたからだ。

「・・・ってアレ?よ、横島さんにネギ先生。」

捻られる!?つぶされるの!?と凄惨な未来予想図にガタガタ震えているネギ。そして・・・

「せ、刹那ちゃんもう少し優しく・・・。」

その声を聞いた刹那は今の自分の状態を悟り、次の瞬間真っ赤になって思わず手に力を込めてしまった。
「きゃあっ!!」と声を上げたものの大声ではなかったのは流石と言えよう。だが横島へのダメージは大きかった。

「はうっ!?」

カッと目を見開き、白目になり、そして湯船に沈んだ。

「あわわわわわ・・・横島さん!!横島さんが!!」

「ア、アナコンダー!!俺っちには奴の断末魔がきこえた!!」

ネギとカモが横島に駆け寄り、刹那は条件反射的な勢いで慌てて手を洗った。そして彼女は気づく。
湯が・・・血の色だった。


            『男三人麻帆良ライフ 第十二話』


「せ、刹那ちゃんもう少し優しく・・・。」

その声を聞いて刹那は今の自分の状態を悟った。
自分の右手が握っているのは?人間の急所、喉。
自分の左手が握っているのは?男の急所、陰嚢。
ではその二つの急所の持ち主は・・・?
・・・横島忠夫。

戦闘モードの際の敵を無力化するための論理的思考など完全に霧散し、顔に血が集まるのが分かる。

「きゃあっ!!」

思わず声を上げたが何とかそこまで大きな声を出さずに済ますことが出来た。しかし妙に切ない呻き声が聞こえた。

「はっうっ!?」

目の前にいる横島はこれが限界だとでもいうようにカッと目を見開いた。
そして白目になる。目からも体からも力が失われ、バシャンッと音を立てて横島は湯船に沈んだ。

「あわわわわわ・・・横島さん!!横島さんが!!」

「ア、アナコンダー!!俺っちには奴の断末魔がきこえた!!」

ネギとカモが横島に駆け寄り声を上げる中、刹那は羞恥と困惑、焦りなどの感情で何も考えられなくなっている頭が自分の意思を介さず命ずるままに慌てて手を洗った。
そして刹那は気づいた。
血の匂い。
自分が誰かを切った感触は無かった、ネギも怪我をしている様子はない。
湯をすくってみる。

・・・赤い。

ネギとカモも湯が赤い事に気づいたのかギョッとして刹那を見る。

「い、いえっあのこれはその・・・仕事上急所を狙うのはセオリーで・・・。」

「急所を狙うのがセオリー!?」

ぶわっとカモは涙を浮かべた。

「そ、そんな・・・。どんな仕事なんです!横島さんは、この前もチョンギリマルにちょん切られかけたのに!!」

ネギも涙を浮かべる。

「なんてこった、師匠が、師匠ほどの漢が!男じゃなくなっちまった!!」

くわっと目を見開いて漢字じゃなければ分からない事を叫ぶカモ。

「そんな!片方は無事かも!!」

「いや、兄貴。片方とはいえそれは想像を絶するほどの痛みらしいぜ。それこそ男であることをやめたくなるような・・・。
やい、てめえ桜咲刹那!やっぱりてめえ関西呪術協会のスパイだったんだな!?
狙いはなんだ!今は亡き師匠の玉か!?それとも兄貴の玉か!?」

「ぼ、僕のも!?」

「な、違う!誤解だ。違うんです先生!!」

ヒートアップする三人。
もはや冷静さなど残ってはいない。

「わ、私は敵じゃない!15番桜咲刹那、一応先生の味方です!!」

体にタオルを巻く事に成功した刹那は発見した相棒、夕凪を鞘に収めて言い切った。
きょとんとするネギ。だがカモは収まらない。

「味方がもぎ取るかよ!!師匠!師匠のアナコンダの雄姿は忘れませんぜ!!」

在りし日の雄々しきアナコンダを思い出して目頭を押さえるカモ。

「ひゃああああ〜〜〜っ!!」

その時、聞き覚えのある悲鳴が聞こえてきた。

「こ、この悲鳴は・・・」

「木乃香お嬢様!?」

刹那はいつでも抜けるよう夕凪に手をかけた。

「まさか奴等このかお嬢様に手を出す気か!?」

「え・・?お嬢様・・・?」

「お嬢様!!」

「あ、刹那さんちょっと・・・。」

呼び止めるネギの言葉など聞かずに刹那は脱衣所へ走る。
そして勢いよく扉を開けた。

「大丈夫ですか木乃香さん!?」

続いてやってきたネギが叫び、そしてこける。
目の前で広がるのは明日菜と木乃香が下着を脱がされようとしている光景。

「いやああ〜〜〜ん。」

「ちょっ・・ネギ!?なんかお猿が下着を〜!?」

慌てて悲鳴を上げる木乃香と明日菜。
おかしな光景による混乱から脱したネギは昼間の事の報告を思い出す。
雪之丞の邪魔をしたという小猿・・・。

「あのお猿、もしかしたら報告にあった怪しい女が妨害に使ったっていう式神?」

ぽつりとつぶやくネギ。
その間にも木乃香は下着を取られ、身動き取れない状態になっている。

「あ、せっちゃん、ネギ君!?あ〜ん見んといて〜っ。」

「こ、この小猿ども!!木乃香お嬢様に何をするか〜!!」

刹那が言って夕凪を抜くと明日菜が焦り始める。

「きゃっ!桜咲さん何やってんの!?その剣ホンモノ!?悪さしたからって流石に殺しちゃうのは・・・。」

「大丈夫です明日菜さん、あれは式神って言って昼間の妨害した人が使うものみたいらしいです!」

そんな明日菜をネギが止め、刹那が剣を振るおうとする。
だが剣は振るわれなかった。

「ウキイイイイー!!」

「お、親猿!まさか小猿たちを助けに!?」

突如乱入してきた小猿を大きくしたような猿が叫び、明日菜がうろたえる。

「くっ、式神?しかも前衛用の!?」

刹那は夕凪を振るうために大猿から距離を取る。

「ラもがテもがもが〜〜〜!!」

呪文を唱えようとしたネギは小猿に纏わりつかれ、始動キーを唱えることができない。

「二人とも!木乃香がお猿にさらわれるよ〜!?」

「な!?させるか・・・斬岩剣!!」

明日菜の言葉に木乃香を担いだ小猿が脱衣所から出て行くのを発見した刹那は自由に太刀を振るえる位置で夕凪を振りきった。
先程岩を真っ二つにした技と同じ技が攻撃をかわされて体勢を崩していた大猿を襲う。

「ムギイイイイ!!」

叫び、煙を上げる大猿。だが刹那はそれの脇を通り抜ける。

「お嬢様!!・・・くっ!待ち伏せか!?」

守るべき存在。
そのために露天風呂に低い姿勢で駆け込んだ刹那は真横から聞こえてきた「くま〜っ!!」という叫び声を聞き、その気の動きを感じてガードしようと夕凪を構えた。

「刹那ちゃん!!」

聞こえてきたのは自分を呼ぶ叫び声。
そして伸びてきた光で出来た手のようなものが間近に迫っていた熊の着ぐるみのような姿をした襲撃者をつかむようにして押し、そのまま伸びていき塀に叩きつけた。

「よ、横島さ・・・」

「行け!守るんだろ!!後悔すんな!!」

声の主は右手から光の手を伸ばしたまま、刹那が斬った岩の場所で岩に寄りかかるようにして座っていた。
湯煙ではっきりとは分からないがその目がまっすぐこちらを見ているのはわかった。

刹那は横島の言葉に一瞬先日の原宿での会話を思い出し・・・

「はい!」

力強く返事をして、夕凪を構え・・・駆けた。

――― 神鳴流奥義・百烈桜華斬!!

木乃香を抱きかかえる様にした刹那が円を描くような斬撃を放ち、それは小猿たちを切り裂いて紙へ戻していく。

「木乃香〜。」

「木乃香さん大丈夫ですか!」

明日菜とネギの声が聞こえてくる。そして刹那は誰かが塀の外の木から去って行くのを感じた。
逃がしたかと悔しがる刹那の耳に彼女の心を最も乱す人物の声が聞こえてきた。

「せ、せっちゃん。」

自分の腕の中で戸惑ったような笑顔を浮かべる木乃香。それを見て刹那は己に課している禁を思い出す。だが・・・
『後悔すんな。』
思い出された叫び。それが自分の体を硬直させた。
自分は今お嬢様をさらわれていたら後悔せずにすんだのだろうか・・・と。

「なんかよーわからんけど助けてくれたん?・・・あ、ありがとう。」

そして続いて聞こえてきたのは礼の言葉。
今までそっけない態度を取り続けてきた自分なのに大切な人から真っ先に出たのは何が起こったのかたずねる言葉でなくて感謝の言葉・・・。

「あ・・いや・・・。」

刹那は真っ赤になりうろたえた。
そして手がすべり、抱えていた木乃香を湯船に落とした。バシャッと音が鳴る。
混乱し、どうすればいいか分からなくなった刹那は夕凪の鞘を拾うと脱衣所に向けて走り出した・・・。


「あっせっちゃん。あ・・・。」

「ちょっ、何よー今のは・・・。」

ネギと明日菜は戸惑ったような寂しそうな木乃香の顔を見て首を傾げる。

そしてネギは重要な事を思い出した!

「あ!そうだ、横島さん!!」

「え!?横島さんもいるの?って、あんた達お風呂で三人で何やってたのよ?」

「そ、それが横島さんのがつぶされて・・・」

思わず答えるネギだがそのネギの耳をカモが引っ張った。

「兄貴、姐さん達に見せるにはあまりに忍びねえ。ここは二人には先に行ってもらおうぜ。」

「あわわわ、何でもないです!明日菜さん、木乃香さんと先に出ておいてください。脱衣所を出た場所にある休憩所で落ち合いましょう。」

慌てるネギを訝しげに見ながらもネギの肩で必死に手を合わせるカモに気づきとりあえず木乃香を促して明日菜は脱衣所へ向かった。

「あ、兄貴・・・。師匠は?」

「え〜っと・・・。いた!あそこだ!!」

二人は横島らしき人影を発見し、電灯を壊された薄暗い露天風呂を歩く。
そして・・・

「うっ!これは・・・。」

「ひ、ひでえ。師匠!師匠〜〜〜!!」

思わずネギは口元を押さえて目をそらし、カモはその悲惨な姿に滂沱の涙を流す。

発見した横島は、岩に寄りかかって足を投げ出すようにして座り、顔は天を見上げるように真上を向いていた。
その股間部分には元は真っ白だったと思われるタオルがかけられていてその場所を隠しているが、タオルは真っ赤に染まり、白いところはあまり残っていない。
そしてタオルだけでなく腹にも赤いものがついてる。

「ちょっとネギ、なにがあったの?言っていた厄介な事って・・・きゃあああああ!!」

多少事情を知っているだけに心配だったのだろう。
浴衣に着替えた明日菜が駆け寄ってきて、そして横島の変わり果てた姿を見て叫んだ。

「明日菜さん見ちゃダメです!」

「そうだぜ姐さん!女の見るようなもんじゃねえ。師匠は、師匠は男としての生涯を・・・。」

「ま、まさか横島さん今度こそちょん切れ・・・」

三者三様に真っ青になる。
ネギはこんな凄惨なシーンを女性に見せまいと慌て、カモは男を辞めざるをえないであろう横島を思って泣き、明日菜はあまりの事によろめく。

だが三人にか細い声が聞こえてきた。

「・・・たり・・ない。」

「な、なんっすか師匠!」

「横島さん、何が何個足りないんですか!?」

何個足りないのか?とカモとネギがそのか細い声に答える。もはやネギも滂沱の涙だ。
そんな泣いている一人と一匹につられ、明日菜も思わずもらい泣き・・・。

「血が・・足りねえ。裸の・・・刹那ちゃんを・・至近距離で見て、その後裸の木乃香ちゃんに・・・それを追ってきた裸の刹那ちゃん・・・。
しずな先生相手に煩悩がわき上がった直後やったし、動きも過激だから何も隠さんし。いくら相手が・・中学生とはいえ・・・鼻血が止まらん。」

露天風呂が静まり返る・・・。
どうやら湯船の中の血も、今タオルと腹部を染めている血も、鼻血だったらしい。
そして現在上を向いているのはこれ以上鼻から血が流れないようにする処置・・・。

「・・・ネギ、私先上がってるわ。木乃香も心配だし。なんかどっと疲れたわ。」

明日菜は「つ、つぶれてないんっすか!?」、「うう、もう男の横島さんとは会えないかと・・・」という二人の声を背に脱衣所へ向かって行った。


・・・どうしよう。
刹那の頭の中はごちゃごちゃになっているが、その考えている多くの事柄をまとめるとその一言につきる。

「まさか本当につぶれ!?た、確かにくちゃって・・・。力入れちゃったし・・・お湯に血が・・・。」

青い顔でぶつぶつとつぶやく。
あのおこじょに言われたように自分は男一人の男としての人生を文字通りつぶしてしまったのだ。

「・・・私は、どう償えば。」

しかも麻帆良で剣を習った師、葛葉刀子によれば『死んだ方がましなほどの痛み』らしいのに木乃香を守るための手助けをしてくれた。
『後悔すんな!!』そう言って助けてくれた相手。木乃香の事は後悔せずにすんだがそれを助けてくれた相手の事に関しては後悔でいっぱいだ。

もしあの時、驚いて力を込めなかったら?
もしあの時、無力化のための行動ではなく普通に殴っていたら?
もしあの時、もっと早く気づけていたら?

・・・つぶさずにすんだのではないか?

ズーンと暗い影を背負い、刹那はロビーの椅子に座って思考の迷路で迷っていた。

「よう、刹那ちゃん。ちょっといいか?」

そして背後から聞こえてきた声に思わず椅子から立ち上がって振り返り、そこに自分が考えていた相手の姿があるのを見つけると深々と頭を下げた。

「すみませんでした!!私は・・・私は横島さんの男としてのこれからの人生を台無しに!!」

「へ?」

訳が分からないといった表情をするのは横島。
だが刹那は畳み掛けるように話す。

「もし、もし私でいいのなら私が男になって女になった横島さんを支えます!横島さんが女になるための費用も働いて稼ぎます!!
そんな事で私の罪が消えるとは思いませんがそれでアナコ・・・もがっ!!?」

真っ赤になって、涙すら浮かべて言うどう見てもパニック状態な刹那に驚いた横島だがカモやネギに聞いた話から意味を理解し、これ以上こんなところで叫ばれるのはまずいと刹那の口を押さえた。
さすがに年頃の女の子にそっちの意味でアナコンダなどと言わせるわけには・・・。

そして周りを見渡して人がいないのを確認するとため息をつく。

「もがっ!もが〜。」

「せ、刹那ちゃん落ち着いて!大丈夫、大丈夫だから。つぶれてないから!!」

横島の言葉を理解すると刹那は目を見開き、苦笑する横島を見た。


「は、はあ。そうだったんですか。」

横島と刹那は向かい合って椅子に座っている。

握られて痛みから動けなくなったし声も出せないほどにダメージを受けたがつぶれてはいなかった。
湯を赤く染めたのは刹那の裸を見た事から出た鼻血・・・。

そういう説明を受け、裸を見られた事に対する羞恥心はあったが動けなくなり声も出せなくなるほどのダメージを与えるという失敗をした身としてはそれで怒るわけにもいかない。

「そうなんだよ。ごめんな。ネギに刹那ちゃんの事を伝えていなかったから厄介な事に。
カモが新幹線の中で刹那ちゃんが怪しいんじゃないか?って考えたらしくってさ。俺も二人からそれそれ聞いてなかったから・・・。」

「いえ、私の態度も誤解されるような態度だったとは思いますし、それに私が伝えるべき事だったと思います。
お嬢様を助けるのを手伝ってもらいましたし本当にありがとうございました。」

そう言って刹那は頭を下げた。
それを見て横島はジーンときた。
元の世界では横島が正しかった、誤解だったと分かってもここまで誠実に自分の非を認めて横島に感謝の言葉を言ってくる者など少ない。
・・・まあ横島の普段の態度にかなり問題があったともいえるのだが。

「うう・・・。刹那ちゃんはええ子やな〜。」

「へ?」

「わいは悪くないのに、どつかれた事も結構あったし敵地から逃げ出してようやく戻ったらまともな事を言ったから偽者じゃないかって疑われて釜茹でにもされたからな〜。」

「そ、それは・・・。過酷な人生ですね。」

ちくしょー、わいが何をした!と嘆く横島に刹那は何と言えばいいのだろうと冷や汗を流した。

「それで、今回の修学旅行だけど俺はネギが親書を届けるための手伝いをっていう事でついてきたんだ。だけど木乃香ちゃんが狙われるとはな・・・。
あそこまで段取りを組んで、でかい式神まで使ってきたって事はただのいたずらじゃなく木乃香ちゃんを狙ってきたと考えるのが妥当だろ。
さっきはラッキーやったな〜。俺らがいないところで拉致されたら土地勘もないからまずかった。」

横島の言葉に刹那はハッとした。
今、木乃香はクラスメートが一緒とはいえ部屋にいて、その側に自分はいない・・・。

「今は大丈夫だ。ピートに頼んで離れて護衛してもらっているから何かあったら連絡がある。」

「そうですか・・・。」

「だけどいつまでもこのままじゃいけない。ずっとピートを護衛につけとくわけにもいかないんだ。手が足りないし、離れて護衛していても限界がある。」

ホッとした刹那だがその言葉を聞いてビクッと体を震わせた。
離れての護衛には限界がある。それは原宿での横島との会話でも出てきた事だ。
横島を見る。
いつもと違って真剣な表情・・・。

「刹那ちゃん、今夜はいいけど明日の班行動と明後日の自由行動、木乃香ちゃんの側で護衛をしてくれないか?ここはあいてのホームだし、やれる事をしとかんとまずいんだ。」

そう言って横島は机に頭がつかんばかりに頭を下げた。

「ちょっ、横島さん!顔を上げて下さい!!」

「・・・木乃香ちゃんの事好きなんだけど陰ながらひっそりと護衛をしたいっていうのが刹那ちゃんの希望だろ?今まで二年間守ってきたその希望を曲げてもらいたいんだ。」

顔を上げた横島はこれは自分達のわがままだとでも言うように言った。
いや、本人は本当に自分達の希望を刹那に頼んでいると思っているのだろう。

「でも私の班の班行動は他の班員の希望もありますし・・・。」

「班行動についてはエヴァちゃんと茶々丸ちゃんとザジちゃんにもお願いする。」

「ネギ先生がついていれば・・・。」

「あいつはしっかりしていても十歳だよ。」

「・・・式神に任せてありますからお嬢様の安全は「刹那ちゃん。」!?」

刹那の言葉は途中でさえぎられる。

「式神で、安全が保障できると本当に思うか?」

班行動について、ネギがついていて他に遠くからも護衛すればというのはまだいいが、式神がついているから安全だなどというのは完全に建前だ。

「いいえ。私は剣士。式神は未熟です。・・・分かりました。班行動の場所が同じなのであればお嬢様の側で護衛をします。」

刹那は観念したようにつぶやく。
その言葉に横島はホッとしたように笑顔を見せた。

「よかった〜。ほんとありがとな。俺もできるだけ側にいるようにするからよろしく頼む!」

「いえ、こだわっていてお嬢様に何かあったら後悔しますから。では私は式神返しの結界を張ります。」

いや〜、俺がシリアスするのって似合わないんだよな〜。などと言っている横島が本当に嬉しそうなので刹那は照れくさくなり、数枚の符を手に立ち上がった。

「結界?刹那ちゃんはそんなのもできるのか?」

「ええ。気休め程度ですが。他にも何箇所か作ってあります。」

脚立に乗ってロビーの入り口に符を張る刹那。
それを横島が興味深そうに見る。

「確かに種類は分からんけど何か力が出てるな。」

「え?分かるんですか?」

「おう。俺って魔法使いじゃなくてゴース・・・じゃなかった、どっちかって言うと退魔師だからさ。霊視っていうか霊感っていうかそういう力を見たり感じたりする能力が普通より発達してるんだ。」

こちらの世界の者より向こうの世界の者の方がおそらく霊視、霊感などの力は高い。それは雪之丞、ピートと話し合った末に出た結論だ。
悪霊や浮遊霊などが見れなければ商売にならないGSという商売。自然とその力は磨かれる。

「横島さんは戦士系だとばかり思っていましたが・・・。」

「まあ似合わないけど戦士系っていえば戦士系かな?俺は遊び人系とかの方が似合ってると思うんだけどな・・・。」

「戦ってくださいよ。」

刹那は軽く突っ込んでクスリと笑った。

「ああ、戦うで思い出したんだけど刹那ちゃんさっき風呂で戦った時、普段と少し流れる気が違ってたよな。」

「・・・え?」

「前はピートもいたし、その後エヴァちゃんも来たから気のせいかな?っと思ったんだけど、刹那ちゃんってもしかして何かとのハーフかなんか?」

あまりに自然。
何でもない事のように横島がたずねた言葉。だがそれは刹那にとっては鬼門だった。

「ん?」

横島の頭に刹那が落とした符が数枚落ちる。
そして横島は上を見て、ギョッとなった。
刹那の顔面が蒼白になり体もカタカタと小刻みに震えている。

この場から逃げ出したい・・・。
なぜ自分は・・・。
どうしてこんな・・・。
醜くて・・・。
化け物で・・・。
『友達だ。それに物の怪じゃないぞ。ただのバンパイア・ハーフだ。』
自分で自分を傷つけるマイナスな言葉。
その中に一つ。前に聞いた一言、聞いた時から頭から離れない言葉がよぎる。
それを言った目の前のこの男はひどく自然で、それを聞いたバンパイア・ハーフの青年は自分が言った心無い一言で傷ついた顔を安心と喜びに変えて信頼に満ちた眼差しをこの男に送っていた。
それが・・・ひどく羨ましかった。

その記憶は、もう一度だけ信じてみようという気にさせられ・・・。
刹那は震える唇を開いた。

「烏族・・・です。」

そして反応を待つ。しかし・・・

「・・・なんだそれ?」

帰ってきたのは首を傾げての一言。
緊張で固まっていた刹那は思わず体勢を崩し、脚立から落ちる。

「うお!危ねえ。大丈夫か刹那ちゃん。将来有望な美少女が高いところから落ちたりして傷がついたら大変だぜ。」

「え、あ・・あの・・・。」

落ちきる前に刹那を抱き止めた横島が何事もなかったかのように言って笑うのを見て刹那は反応に困る。
すると横島はぽりぽりと頭をかいてから口を開いた。

「え〜っと、ごめんな。聞かれたくなかったんだろ?俺無神経ってよく言われててさ・・・。刹那ちゃんが言うなって言うなら誰にも言わないから!ほんとごめん!」

「え、いや・・・私を、嫌わないんですか・・・?」

「・・・何で?」

「何でって・・・。私の髪、本当は真っ白で。目も赤いのをカラーコンタクトで・・・。」

「う〜ん、でも刹那ちゃんは将来有望な美少女だろ?ならなんで嫌う理由があるんだ?」

「私は・・・純粋な人間じゃないですし。」

「んな事言ったら俺の前の彼女なんてバリバリ人間じゃないぜ。でもすげーいい女だったぞ。」

「え?」

横島の言葉に刹那は目を丸くする。

「刹那ちゃんは刹那ちゃん・・・だろ?
俺から見た刹那ちゃんはちょっと思い込みが激しいところがあるけど真っ直ぐで、可愛くて、将来有望な女の子だぞ。」

そう言って横島は刹那の頭をなでた。
自分は自分。よく言われる言葉。
だがバンパイア・ハーフにも真祖の吸血鬼にも自然体で、変わない態度の横島の言葉は刹那の心に染み込んでいった。

「うおっ。」

横島に抱きとめられたままだった刹那はそのままその胸に顔を押し当てる。
戸惑ったような顔をする横島だが刹那が横島のTシャツをギュッと握ったのに気づき苦笑した。

そういえばピートもバンパイア・ハーフであるという事で結構苦労したらしい。
刹那も色々あったのだろう。
そして幼馴染である木乃香にも何も告げず、麻帆良で気を張り詰めて生活していた。
だが今、ホッとして少し弱い部分が出てしまったのではないだろうか。
しっかりしていても、剣の腕が凄くても、まだ中学生の女の子なのだ。

横島はそう考えると『俺はロリコンじゃない』と脳内で唱えて自制しつつ刹那の頭を優しくなでた。


騒がしい生徒達に寝るように注意をしたネギは明日菜とカモとともに階段を降りていた。

「横島さんは桜咲さんとちゃんと仲直りできたかしら?」

「う〜ん、大丈夫だと思いますけど・・・。」

「俺っちはつぶされかけてすぐに仲良くは出来ないと思うけどな〜。」

刹那と会うと言って三人より先に刹那を探しに行った横島を思い出して三人はうーむと唸った。
そして階段の踊り場で立ち止まる。

「あ、あそこに・・・って・・・」

「え?あ、あわわわわ。」

「なんてこった。さすが師匠だぜ。」

視界に入ったのは入り口付近で抱き合う横島と刹那。
刹那は横島のTシャツを握り胸に顔を押し当てるようにしていて、横島は優しげな表情で刹那の頭をなでている。

思わず隠れる三人。

「仲直り・・・したみたいね。ちょっと仲良すぎる気がするけど。」

「あわわわ、横島さん僕のクラスの生徒に・・・」

「兄貴、野暮な真似はいけねえ。ここはじっと見守ろうぜ。」

そして三人は二人が離れるまで本当に見守っていた・・・。
小声での議論の末、実際年齢はそこまで離れていないんだから別に悪いことではない。
邪魔せずに二人の恋路を見守ろうという結果に落ち着いたようだ。


あとがき
え〜、流れ出す血にバイオレンス指定にするかどうか迷った宮本です。
石を投げないようよろしくお願いします。
今回のサブタイトルは『アナコンダ危機一髪』で・・・。


感想ありがとうございます!
レス返しです。

>テラさん
実は原作でもユッキーは変質者(濡れ衣ですが)として追われていますよね。
そしてその苦行が横島のトレーニングになっていると勘違いw
横島は風呂場でこんな事をやらかしました・・・。と、いうか珍しくただの被害者です(笑

>シヴァやんさん
横島がいる違和感がまったく無い>ありがとうございます。横島と彼女達にはやはり通じるものが・・・
今回は出ませんでしたがセカンドの完成はぶっ壊れております。
しかも蝶ポジティブで京都府警も探索に困ってます。
スクナ戦では実は××が△△して・・・という感じで、まだ秘密です。

>twilightさん
ユッキーの高みへのぼるまでの道のりはまだまだはじまったばかりなのです。
しかし、その高みにのぼった時には様々なものを失うでしょう・・・弓嬢とか(笑
今回も面白かったでしょうか?(汗
結構デンジャーな展開だったのでビクビクです

>DOMさん
雪之丞がどこへ行くのか?それは本人にも分かりません。
しかし、第二、第三の彼は警察にマークされています(涙
ダークヒーロー雪之丞には結構いい感じの見せ場を用意しております。ハカイダーにはなりませんがw
SSを本編から大きく逸脱させるのが難しいです。大きく逸脱させた設定のSSを思いついて書きたいな〜と思っているんですが、二つ同時書き+同時投稿はかなりきびしくて・・・(涙

>冬8さん
ピートはシルバー、ユッキーは汚れブラックですね。しかし色欲イエローはその色欲の根源を粉砕させられかけました(汗
セカンドになったのは力の源であるカブトムシ型の角を粉砕されたからです(笑
クワガタ虫型の角はまだ壊れてないのでとりあえず現状維持でセカンドで。
これから戦闘が増えていくので力関係のバランスがどうなるか不安ですが頑張ります!

>遊鬼さん
ユッキーに続いて横島が目覚めかけましたw
ピートは参謀的役割の他にバンパイア・ミストとかもありますからね。意外にすごい男です。・・・次回は出番ありなので彼を応援してあげてください。
多芸な横島は意外にもてそうなきがしますよね?最近は芸人がもてている時代ですし。
ありがとうございます。頑張ります!

>黒覆面(赤)さん
横島の動きの描写は難しいです。気を抜くと女性をナンパしようと・・・(笑
こんかいの勘違い君は雪之丞ではなく、ネギ、カモ、刹那でした。
作戦は明らかにされませんでしたがフラグは立ちました(爆

>23さん
フラグ立てを徐々にやっていた横島ですがここで一気にフラグ進行で。
風呂で遭遇からフラグは王道じゃ・・・え?握った場合は違いますか?・・・すみません(笑
三人の戦い方、性格の違いをキッチリ出して進めるのがこの京都修学旅行編の目的の一つです。でも23さんが言われるようにこの三人は違いを出しやすく、書きやすいです。
ピートについては女性と付き合うような事はありませんが、あの顔ですから少し憧れる方が出てくることはあります(今書いているシーンとかで・・・)
ですが妨害者ヨコシマンがいますので(笑
刹那と横島、こんな感じで距離が縮まりました。

>meoさん
スーツは再利用で赤ですw
しかし、セカンドが青いというのはやはり世界の流れからして難しい(爆

>九頭竜さん
カブト、クワガタ・・・ゴキブリですかね?(笑
横島には刺激が強すぎたらしく、壁に頭を叩きつけてはくれませんでした。しかし瀕死(涙
今回風呂を引っ張りきりました。
次回、千草本格登場です!

>ヴァイゼさん
尾崎はやはり歌ったでしょう。原作での鬱憤をはらすような見事な歌いっぷりにバスガイドさんだけドン引きですw
某葛飾区派出所の警察官みたいな事>おお、このネタを分かる方がいるとは・・・。
確かにあの警官を元にした芸です。
芸の数が横島の煩悩に追いつかなければ彼がオールラウンドにモテモテになることは難しいでしょう。しかし、彼の煩悩数を超えるほどの芸なんてありませんよ(涙
・・・握られてしまいましたw
らっかー様があれをかかれた時この話をすでに書き終えていたので「うおっ!?」と思いましたがとりあえずこのまま特攻です。

>つきしろさん
実はピートの力を借りてネギがトラップを破った事が今後少し影響を・・・。縁の下の力持ちピートは今回は出ませんでしたが次回活躍します。
馴染んできた横島は危うく女子校に通えるようになるところでした(汗
馴染みすぎは考えもので・・・。
ギャレン少し意識しました!ついでにセカンドだからやっぱり赤って感じです。

>変なところにつっこむ?さん
すでに第二ですが、ファーストは世間一般に認識されず消えていったのでとりあえず・・・。
それにやはりお決まりの台詞ですので(汗

>鋼鉄の騎士さん
シリアス、バトル要員のはずのユッキーの隣には最初から最強のホモキャラが・・・。
そして彼がライバルと認めた男は誰もが認めるギャグキャラで・・・(涙
彼は登場時から何か間違えてしまいましたねw
PS・原作でも子供にはもてますよね。やはりロリ界の扉を開いたら彼はモテモテに・・・。
PS2・ダテ・ザ・ショタキラーのターゲットは少ないです。ネギ、小太郎、後は学園祭ででたはる樹が・・・(笑

>冬に咲く雪だるまさん
三人とも少しずつギャグも突っ込みもこなすオールマイティーキャラになっていっております。
ピートはどうなんでしょうね?・・・バンパイア・ハーフってはげるんでしょうか?
鳴滝姉妹は落としたいですね(笑
幼女キラー対ショタキラーの戦いには警察が厳戒態勢をしくことは間違いありません。
しかも両方涙ながらに必死で否定するという事に・・・(涙

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭

yVoC[UNLIMIT1~] ECir|C Yahoo yV LINEf[^[z500~`I


z[y[W NWbgJ[h COiq O~yz COsI COze