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「ガンダムSEED Destiny――シン君の目指せ主人公奮闘記!!第X2話 ハッピーバレンタイン? (SEED運命+色々)」

ANDY (2007-02-14 23:32)
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注意事項
 今回の話は本編とは一切関係ない、いわゆるパラレルものです。
 表記にあるとおり、色々と壊れていたりしますし、短期間でかいたものです。それが許せるというかたのみ読み、感想をどうぞ。
 いいですね?私は注意をしましたよ?
 では、お楽しみください。


 バレンタイン。
 それは、C.Eの世界では二つの意味を持つ。
 一つは、地球連合軍がコーディネイターが住む農業プラントユニウスセブンを核攻撃した事件。
 一つは、269年にローマ皇帝の迫害下で殉教した聖ヴァレンティヌスに由来する記念日であり、それを偲んで愛を語り合う日でもある。
 このような日が、戦時下の今と言う状況でも迫っており、それをナチュラル、コーディネイターの違いがなく祝おうとしている。
 だが、そのような日の影に暗躍するものが存在するのを知っているだろうか。
 その者たちは、溢れ返るある一つの激情を身にまとい、あるものたちを粛清する集団である。
 その激情とは「嫉妬」、そして粛清対象は「もてる男」「カップル」。
 そのものたちの名前は―


「さて、諸君。ようこそここに集まってくれた」
 薄暗い一室に男の声が響き渡った。
 ここはミネルバにある某所。
 そこは照明が絞られている為か、薄暗く、誰がいるのかわからないようになっているが、聞こえてくる息遣いからかなりの数がいることが予想された。
「ここに集まってくれた諸君は、われわれの思いに賛同してもらえた同士と思うが、相違はないな?」
『……』
 その部屋に設けられた台の上で、二人の男が交互に言葉を紡いでいた。
「よろしい。沈黙は肯定ととろう。さて、諸君も知っている通りに、ついに忌々しいあの日が迫っている。そう。決して忘れることの出来ない2月14日という日が。諸君も覚えているだろう。この日が一体何なのか」
 それを聞き、その場にいるものたちの頭の中にはあることが思い浮かんだ。それは―
「そう。バレンタインという破廉恥極まりない悪しき習慣がだ!!」
『おーーー!!』
「諸君。C.Eになりもう七十年が過ぎたと言うのに、なぜこのような悪習を我々コーディネイターが守らなくては成らないと言うんだ!これは間違っているのではないだろうか!!」
『そうだそうだ!!』
「しかも、本来祝うべき数千年前の偉人の偉業を称えるべきその日に、どこで狂ったのかチョコレートを渡し愛を囁くなどという悪しきその行為を容認してよいのだろうか!!」
『よくない!!』
「そう!我々は今こそ立ち上がらなくてはならない!!コーディネイターの未来を守るために!!諸君、我々と共に修羅の道を歩んでくれるか!!」
『おーーーー!!』
「ありがとう!では、諸君に同士の証としてこれを授けよう」
 その言葉と共に証明の一部がライトのようになり、それを暗闇から浮かび上がらせた。
『こ、これは……』
「さあ、諸君。いまこそ歴史を動かそうではないか!!」
『おおおーーーー!!!』
 そこに浮かび上がったものは、炎のように赤く輝く、蝶いかしたマスクであった。
「ふふふふ。今日こそ、今日こそ俺はやるぜ」
「ああ。やるぞ、ヨ○ラン」
「ああ。ヴ○―ノ」
「「はははははは。しっとの心は父心!押せば命の泉湧く!見よ!しっと魂は暑苦しいまでに燃えている!!もてる野郎に人誅を!!」」
 そう叫ぶ二人の手には、炎がマーキングされたマスクが握られていた。
 声高に叫ぶこの男達の正体は一体誰なのだろうか?
 そのような謎を残し、無常にも時計の針はその日を指し示すのだった。
 後に、あまりにもなしょうがなさゆえに歴史の影に消えた事件がその日起こった。
 その事件の名は「しっとのバレンタイン」


 その日、シンはミネルバに漂う異様な空気に首をかしげていた。
 なんというか、空気に変な粘着性を感じているのだった。
「いくら今日が『血のバレンタイン』だからってこうも粘着性をもつものか?」
 シンはこの空気を、死んでしまった人たちを思う感情が伝播したものだと思っていた。
 悲しみが空気に乗りそのために変な気分なのだろう、と。
 そう自己完結しながら、シンは愛機を調整するために格納庫へと向かった。
 だが、後にシンは後悔する。
 来るんじゃなかった、と。

「……なぜに照明がこうも絞ってある?」
 格納庫へと入ったシンがまず口にした言葉はそれだった。
 普段この時間ならば明るいはずの格納庫が、なぜか薄暗いことに首をかしげながらシンが格納庫の中に入ったその瞬間、どこかで聞きなれた声が木霊した。
「ハハハハ!よく来たな、シン・アスカ!!」
「飛んで火に入る夏の虫、とはまさにお前のことよ!!」
「今日こそお前に天誅を食らわせてやる!!」
「この、独占禁止法違反男め!!うらやましくなんかないんだからな!!」
「………色々と突っ込みたいことはあるんだが、これだけまず言うぞ。なにやってるんだ、ヨウランにヴィーノ」
「「………」」
「………」
「「チガウヨ。ボクタチ、ソンナカッコイイオトコノコジャナイヨ?」」
「いやいや。そんな変なマスク被って、片言で言っても……って、マスク?……あれ?」
 それぞれ赤い炎と青い炎のマーキングが施されているマスクを被っている、なぜかプロレスラーのようなパンツ姿の友人(?)二人に呆れながら突っ込みを入れようとしたシンの脳裏に、何かが触れた。
「………マスク……炎のマーキング……2月14日……ま、まさか?!」
 シンの脳裏に、かつて読んだ漫画のあるキャラたちのことが思い浮かんだ。
 え?そんな、こんなところにまで侵食しているの?、とシンが愕然としている様子をどう捉えたのか、目の前にいる二人は胸を張って声を張り上げた。
「ふふふ、そう!我が名はしっとメビウス!!決して陽気なヴィーノ・デュプレなんていい男じゃないぜ!!」
「その通り!!我が名はしっとヒカリ!!決してキザでニヒルなヨウラン・ケントなんてすごい男じゃないぜ!!」
「………また、関係各所から苦情が来そうな名前を…というか、やっぱりしっと団かよ」
 ポーズをとりながら叫ぶ二人を尻目に、シンは異常に痛くなる頭を押さえながらこのノリをどうかわそうかと考えた。
 というか、神はやっぱり俺にけんかを売っているのか?と意味もない悩みを考えたが、すぐに忘我の領域にその疑問を送った。考えるだけで自分の神経が涅槃のかなたに行きそうなので。
「あ〜、一応聞くけど、それどうやって手に入れたんだ?」
 痛む頭を押さえながら尋ねるシンに、二人は誇らしげにそのことを語りだした。
「ふ!良くぞ聞いた!!」
「あれは、今から遡ること数ヶ月前!!」
「我々が言われなき暴力で生死の境をさまよっているときだった!!」


「う、う〜ん。いててて。くそ〜、シンのやつ。あそこまでしなくてもいいじゃないか」
「グフォ。な、内臓が、内臓が……」
 シンからガイアの件での制裁を何とか乗り切った二人は、痛む体を支えながら何とか回復に専念していた。
「ヨ、ヨウラン。生きてるか?」
「あ、ああ。一応な」
「それにしても、シンのやつ。なんであんなにかわいい娘と縁があるんだよ!!」
「あ、それ俺も思った。なんか、シンだけずるいよな」
「があ、こう、しっとの炎がめらめらと燃え上がるぜ!!」
「俺もだ!!」
 今はいないシンに、二人は胸のうちに沸いていた愚痴をこぼしているとき、その声が響いた。
『その炎、気に入った!!』
 突如聴いたことのない男の声が耳に入ってきたため、驚きながら周りを見回す二人の前にそれは現れた。
「だ、誰だ?!」
「って……」
『はははは。我が名は宇宙のどこかにある「しっとの星」に住むしっとの父。君達のしっとの炎を感じここに参上した』
 突如空中に現れた、二本の角をつけたマスクをしたパンツ一丁のマントを羽織った男を見て二人は声をそろえて感想を口にした。
「「うわ〜、変態だ〜」」
『変態ではないわ〜!!』

   しっとビーム!!

「ぎゃーー!!」
「うそだろー!!」
 突如目から飛び出た怪光線に吹き飛ばされた二人に、しっとの父は何事もなかったかのように近づき、唯一身に纏っている衣服の中から二つのブレスレットを取り出した。……その際ほのかに湯気を上げていたのは気のせいだろう。
『さて、私もここにいるには色々と制限があるのでちゃっちゃと仕事を済ませよう。君達のしっとの炎に私は感動して。よってこれをやるので後はがんばれ』
「「って、短いしなにがなんだかわかんないぞ!!」」
『え〜?空気読めよ〜』
「「そっちが読め!!」」
『しかたがない。かくかくじかじか』
「「ほうほう〜。って、わかるか〜!!」」
 その後、しっとの父からブレスレットの使い方と使命を教わった二人は笑った。腹の底から思いっきり。
「「ははははは!!ついに俺達の時代が!!」」
『うむ。後は任せたぞ。私は今回の協力者であるキー○ンとサ○ちゃん主催の合コンに参加しないといけないのでな。では、さらばだ!』
 馬鹿笑いをする二人を残して、しっとの父はいそいそとある場所に香水を振りかけながら消えたのだった。


「というわけだ!!」
「わかったか!!」
「………うわ〜い。あん時止めさしておくべきだったわ」
 指を挿し胸を張りながらそう説明した二人に、シンは過去の自分の行動に反省をしながら痛む頭を押さえながら自問した。それと同時に、今回の首謀者である存在に呪詛を送るのを忘れずにいたが。
「で?お前ら一体目的は何なんだ?」
 投げやりに尋ねるシンに、しっとメビウスとしっとヒカリはビシっと指を突きつけて叫んだ。
「知れたこと!今日という今日こそ、お前の野望を挫く!!」
「お前に今日は一個たりともチョコは食えないぜ。なぜなら、今日ここで、お前は死ぬからだー!!」
「「天誅!!」」
 ブレスレットから原理不明な光の剣を出しながら斬りかかって来きた。
「理不尽なこと叫ぶなーー!!」
 当人達にとっては正当な、言われた方には理不尽な言葉を叫びながら襲いかっかって来るバカ二人をいなしながら、シンは全速で格納庫から逃げ出した。
「戦略的撤退!!」
 そんなシンを見送り、ヴィー、いや、しっとメビウスは無線機を取り出し指示を送った。
「こちらメビウス。的は飛び出た。各自、打ち落とせ。今日は鴨狩りだ」
「ふふふふ。安心しろ、シン。お前の相棒も一緒に襲ってやるからさびしくないぞ」
「「ハハハハハ」」
 二人の邪悪な笑い声が格納庫の中に響きわたった。


「ん?なんだ?いま、不快な感じがしたんだが……」
 通路を歩いているレイの脳裏に、何か引っかかるものが一瞬走った。が、それが何なのかわからずに首をかしげながら再び歩みを始めた。
 その腕の中には数個の小箱が抱えられた。
「それにしても、俺は甘いものはそう得意な方ではなのだがな」
 腕の中の小箱を眺めながら、レイはどこかげんなりした声でそう呟いた。どうもその小箱はチョコのようだが、多くの男を敵に回す台詞だとは気づいていないようだ。
 実際、アカデミー時代にレイはもらったチョコを口につけずにそのままゴミ箱に捨てようとした経歴を持つので、この日はチョコをもらえるかどうかに一喜一憂することが出来ないのだった。
 その際、同室であったシンに思いっきり蹴られ、最低でも一口だけでも食べて渡してきた相手に味の感想とお礼を後日言うべきだと懇々と説教されたのだが。なお、その後のお礼のときの喋りが良かったためか、アカデミー内にレイのファンが増殖したのは予想外だったのだが。
 ちなみに、レイの残したチョコはその後シンを筆頭の悪友達のこっそりと持ち込んだ酒のつまみに使われおいしく食べられたのだった。なお、もらえなかった男が涙を流しながら食べていたとかいなかったとか。
 今回も一口だけ食べた後にシンに頼もうと思いながら、自室に戻ったレイを睨み付けるように監視している存在がいた。
「こちらしっとパピー1。目標は自室に入った」
『こちらしっとメビウス。目標は一体いくつ持っていた』
「こちらしっとパピー1。目算で十数個だ」
『な?!ゆ、許せん!!五分後に部屋に突入して天誅をくらわせろ!!』
「了解!!」
 報告用の無線機を壊れんばかりに握り締めながら報告を終えると、蝶のマスクをつけた一団はどこからか取り出した重火器を構えて秒読みを開始した。
「ふふふふ。レイ・ザ・バレル。君は良い同僚だったよ。恨むならばその女受けする容姿を恨むんだな」
 どこかで誰かがくしゃみをするような台詞を口にしながら、しっとパピー部隊は今か今かと待ち構えていた。
 そして、時は来た。
「時間だ。いくぞ!天誅!!」
『おーーーー!!』
 それぞれの手に重火器を持ちながらしっとパピー部隊は部屋へとなだれ込んだ。
 そして―


「ぬおーー!!今回はすごく命がピンチで大変だぞ!!」
「待てー!!」
「撃て撃て撃て!!」
 所かまわず現れる蝶のマスクをつけた集団の攻撃をかわしながらシンはこの理不尽さに叫んだ。
「というか、どうせ見てるんだろ!!このヒマ神ども!!なんか言ってみろ!!」
(現在電波のつながらないところにいるか、電源が入っていないためにつながりません。ので、私たちは見てもいませんしあなたのその逃げっぷりを見ながら笑ってもいませんよ♪)
(あかんやん。キー○ン、自分白状しとるで)
(おや?私としたことが)
「やっぱりかーーーーー!!!滅びろ、この素敵に無敵な一神教のトップがーーー!!!」
 そこかやばい内容のことを叫びながら、シンは某神に苦情をつけながら通路の角を曲がり、目に付いた一室に飛び込んだ。
 そこはトレーニングルームで、それなりの広さを持つ部屋であり、武器になりそうなものがある場所でもあった。
 バーベル何何なりを武器にしようと思い飛び込んだシンの目に映ったのは、対戦車砲を構えた数人の蝶マスクとその後ろでふんぞり返っているしっとメビウスとしっとヒカリだった。
「はははは。ロックンロール・ファイアー!!」
「さらばだ!!」
「しゃれにならねー!!」
 二人の声が響くのと同時に方向転換し離脱しようとするも、そんなシンを嘲笑うかのように放たれた砲弾は回避を許さず着弾した。

   ドカーーーーーーン!!!

「ははは!!悪は滅びた!!」
「やったぞ!!」
 人一人を過剰な重火器で吹き飛ばしたと言うのに、そのことに一切の後悔もなく小躍りするような声で自分達の成果を喜ぶ一団がそこにはいた。というか、人としてどうよ?
「正しいに決まっているだろう!!」
「モテル男が悪いんだー!!」
 天の声に魂の叫びを上げる二人だった。


 さて、ここで尋ねたいことがある。
 皆さんは、チョコレートの中にお酒を使われているものがあるのをご存知だろうか?
 そう、ウィスキーボンボンというものがあるのだ。
 これは、まあ大雑把に言えば、水あめで固めたお酒をチョコレートでコーティングしたものだ。
 人の好みにより受けは違うが、多くの場合は食べた瞬間その豊穣なアルコールの香りに驚くものだ。
 このようなお菓子をアルコールに耐性がない者が食べたらどうなるかご存知だろうか。
 作者の知り合いに、ビール一杯で顔が赤くなる人物がいるのだが、その人物が意中の相手からもらったチョコレートをうれしそうに口にし飲み込んだ瞬間、顔を赤くして倒れてしまったことがあった。もうお分かりだと思うが、そのチョコはボンボンだったのだ。しかもコニャックの上等なものだったらしく、良いが一瞬で回ってしまったようだった。作者は初めてチョコで急性アル中になり救急車で運ばれる人間を見たのだった。
 何が言いたいか、と言うと、アルコールが弱い人にボンボン系のチョコは送ってはだめだ、と言うことだ。
 もし送ってしまったら、良くて酔っ払い、悪くて急性アル中になるのだから。
 前置きが長くなってしまった。
 結局何が言いたかったか、と言うと、ここにいるレイ・ザ・バレルは、残念ながらアルコール類が苦手な人間だ、と言うことだ。
 だが、彼はそのようなことを公言しているわけではないので、それを知らない女性がレイにボンボンを送っても仕方がないのだ。
 そして、たまたま味を見るために口にしたチョコがボンボンで、中に入っているアルコールが通常のものより強かったのはただただ不幸な事故でしかなく、それを食べた瞬間酔ってしまうのは仕方がないことなのだ。
 酔ってキャラが壊れることは良くあることだ。たとえそれが、普段クールな人間でも。


「レイ・ザ・バレル!!天誅!!」
 叫びながら部屋に飛び込んだしっとパピーたちが目にしたのは、見たことのないレイだった。
「あん?なんだ?お前ら」
 なぜか髪が逆立っており、目も血のように赤く輝いた上着を脱いだレイがそこにはいた。
「………あれ?」
「お、おい。なんか、おかしくないか?」
「お前ら、その手にあるもの……そうか。お前らが楽しませてくれんのか。いいぜ。そういうのは大好きだぜ」
 どこか狂った笑みを浮かべながらレイは、傍らにあった椅子を叩き壊すとその一部をナイフのように構えて宣言した。
「言っておくが、俺様は最初からクライマックスだぜ!!」
「「「ぎゃーーーーーーー!!」」」
 どこか逝った笑みを浮かべるレイに、しっとパピーたちは上げさせるはずだった恐怖の叫び声を自らがあげてしまうのだった。


「ははは。さて、そろそろもう一人の怨敵、レイ・ザ・バレルのほうへ行くか」
「そうだな」
 すがすがしい笑みを浮かべながらそう語り合うしっと団の耳に、聞こえてはならない声が耳に入ってきた。
「うちのじいちゃんが言っていた。『友とはいえ、人の道を踏み外しているのを見つけたならば容赦なく殴ってでも道を正してやるべきだ』と。お前達は人の道を踏み外し、畜生道にも劣る道を歩んでいる。友としてその道を正してやろう」
「な?!」
「ば、ばかな?!」
「何で生きている!シン・アスカ!!」
 爆煙のむこうから五体満足な格好で現れたシンに、しっと団は驚愕の表情を浮かべながら慄いた。
 そんなしっと団を前にし、シンは手を掲げる。すると、突如何もない空中から赤い弾丸のようなものが飛び出しシンの手に収まった。
 それは、機械仕掛けのカブトムシの形をしていた。
 それを静かに掲げながら、シンはある言葉を呟いた。
「変身」
『HENSIN』
 機械のカブトムシをいつの間にか腰に巻いていた銀のベルトに装着すると、機会音が響くと同時にシンの体を銀の装甲が覆った。
「って、まてーー!!なんでお前もそんなことができるんだ!!」
「そうだそうだ!!謝罪と賠償を請求するぞ!!」
 シンの現実離れした行動に抗議の声を上げる一団に、シンは米神に血管を浮かばせていると容易に想像できる声音で答えた。
「ふ。あまいな。今日は壊れ表示があるんだぞ。これぐらいの奇跡の一つや二つ起こらないと思っていたのか?」
「「………神様のあほーーーーーー!!!」」
「その点にだけは同意してやるよ。キャストオフ」
『Cast Off 』
 その声と同時に銀の装甲は飛び散り、現れたのは―
『Change Beetle』
―赤い装甲を纏うカブトムシを髣髴とさせる戦士だった。
「さて、そろそろ逝け♪」
 朗らかにそういう言葉に戦慄を覚えたしっとメビウスとしっとヒカリは、部下のしっとパピーたちに命令を下した。
「う、撃て撃て撃て!!」
 慌てて銃口を向けるが、機械音が響いたと思った瞬間全てのしっとパピーたちは壁にめり込んでいた。
 その機械音は『Clock UP』だった。
「な?!」
「う、うそだろ……」
「さて。トイレへは行ってきたか?神様にお祈りは?部屋の隅でがたがた震えて命乞いをする心の準備はOK?」
 呆然としている二人の背後から地の底から響くような声がかけられた。
 振り返った二人が見たのは、紫電の輝きが頭頂部にある角から右足に伝わりきった場面であり、それを見た瞬間二人はこう思った。
「あ、もうだめぽ」と。
「いっぺん………反省しろーーーーーーーー!!!」
 叫びと共に振り抜かれた上段回し蹴りをくらい、二人はマスクをちぎられるのを感じながら意識を失った。
 そんな二人を見送った後、シンは左手を掲げた。
「ふふふ。あんたらがこんな運命を俺に与えようとするのならば、俺はそれに逆らってやる。運命は俺が掴んでやる!!」
 その言葉と同時に左手に現れた銀のカブトムシを左腰に装着させ、角を下ろした。
『Hyper Cast Off』
 そして、銀色のカブトムシになったシンは羽を羽ばたかせ飛び立った。
『Hyper Clock Up』
 元凶を倒すために。


 その日、しっとの父はご機嫌な気分で異相空間を移動していた。
 ある日、自分の前に現れた自分とほぼ同等の力を持つ二人から溢れんばかりの前途ある若者を紹介され、それだけではなく他にも色々と便宜を図るだけで天使や淫魔との合コンをセッティングしてくれるというのだから。
 もう、しっとの父の心はうはうはだった。
「ふふふ。頼まれた二人をしっとマスクにすれば、桃源郷が私を待っている!いそぐんだ私!がんばれ私!!」
「ほ〜。そういうわけか」
 自身を鼓舞するしっとの父の耳に、聞きなれない声が入ってきた。そのありえない声に慌てて声の方を向くとそこには銀色の人型サイズのカブトムシがいた。
「む?!な、なんだちみは?!」
「………あんたのせいでひどい目にあいかけたものだ」
「なんだと?!」
 わけがわからないと首をかしげたしっとの父の目に、なぜか死を連想させる蒼い輝きを仮面越しに感じさせながら、その人物は低い声で言った。
「とりあえず………極彩に散れ!!」
「ぎゃーーーーーーーー!!!!」
 異相空間にしっとの父の断末魔の声が響くと同時に、あまり精神衛生上よくない音が響いた。具体的には肉を叩く音とか、何かを切り裂き溢れる音などだった。


 こうして、人知れず起こった戦いは終結したのだった。
 だが、忘れてはならない。
 この世に愛がある限り、その愛から漏れた者たちの負の感情は決してなくならない、ということを。
 第二、第三のしっとマスクは現れるかもしれないのだ。
 おのおの、それを決して忘れてはならない。


―後書き―
 ………変なテンションで書いてしまいました。
 今回はIfです。本編とはまったく関係ありませんのでw
 前回の感想でバレンタインについてのコメントがあったのでつい書いてしまった。今では反省しています。
 前回のレス返しは次回の本編での後書きで行います。
 では、皆さんの今日という日が良かったと思いながら。
 ハッピーバレンタイン?


―おまけ(つい書いてしまった。だが、後悔はしていない。うん。たぶん)―
「ふ〜。今日も一日がんばりました」
 疲れた体を引きずりながら自室に戻るシンは、格納庫での一件を思い出して笑った。
 恵まれない子に愛の手を、と書いた箱を持ちながらチョコをゲットしようとしていたヨウランたちになぜか溜飲が下がる気分だった。
 そんな言いようのない爽やかさを感じながら部屋に帰ったシンは、そこにレイ以外の人物がいて驚いた。
「あれ?なにをしてるんだ―」
 名前を呼ぼうとした瞬間、シンは自分の唇にやわらかいものが押し当てられるのを感じ、それと同時に口の中に甘いものが広がるのを舌で感じた。
「?!」
 突然のことに驚くシンの気持ちとは裏腹に、舌は貪欲のその甘さ、チョコレートのそれとそれ以外の甘さをむさぼろうと動いた。
 部屋の中に淫らな水の音がどれくらい響いただろうか。
 想像できない方法でチョコを渡してくれた相手は、上気した頬で極上の笑みを浮かべながら部屋から出て行った。
 その後姿を見送ったシンは、少し感覚が鈍っている唇を押さえながらチョコの感想を口にした。
「………うわ。すっげー甘い」
 今まで食べたチョコの中で最高の味だったとシンは呆然とした意識の中そう思った。

 誰がチョコを渡したか?(各自で脳内補完してください)

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